プレイレポート
「三國志」ナンバリングタイトル12作を一気にプレイ。最新作の発売を前にシリーズの歴史を振り返る“三國志マラソン”で見えてきたものとは
三國志VII(2000年)
君主や太守クラスなら,ほぼ従来通りのストラテジーゲームとしてプレイできるはずだ。コマンドは行動力で縛られており,これを消費して内政などを行っていくことになるが,君主個人が行動力を消費して開墾などしようものなら,国は立ちいかなくなる。君主は必要な仕事を配下に割り振っていくという形で,都市や国家の拡大を進めていくことになる。
なお,命令にはノルマがあり,これが達成できていないとお叱りを受けることになるが,ある程度以上に能力がある武将であれば,行動力のすべてを注ぎ込まなくてもノルマの達成は可能。浮いた行動力で自分の能力値を高めたり,ほかの武将との関係を深めたりといったことに手を広げていける。
全体的に見て,RPG色の強い作品となっており,戦闘もストラテジーゲームというよりはSRPG的なニュアンスが強く感じられる仕上がりで,そういう意味では統一感がある。
さまざまな遊び方ができるわけだが,やはり太守以上の地位にしたほうがプレイのしがいはある。軍師などでプレイすると,どうしても「クリック,ただひたすらクリック」になりがちなのだ。またそうやって実績を積み重ね,優れた諜報・内政の重鎮として後方に置かれると,一生前線と無縁なまま,ただただクリックしてゲームを終えることにもなりかねない。まぁそれも人生ではあるが。
本作は完全な新機軸ということもあり,各所に実験的な試みが散見される。だが完成度が低いかというと,そんなことはない。散々「クリックだけの人生」と揶揄してはいるが,実はこれはこれで結構楽しく,筆者のお気に入りは軍師プレイだ。このあたりも個人の趣味によって評価が分かれるところだろう。
ともあれ,本作の路線は「三國志VIII」へと引き継がれることになる。
三國志VIII(2001年)
本作において最も注目すべきは,膨大な量のシナリオかもしれない。黄巾党が暴れている時代からカウントして,その数は実に50以上。状況によっては何進が黄巾党を討伐して,そのまま天子を禅譲されちゃったりする。三国志の物語を知っているプレイヤーであれば相当楽しめるはずだ。
また「結婚して家庭を持ち,子育てして,親子で戦場に赴く」「義兄弟の契りを結んで云々」といった展開もシステムでサポートされている。
とはいえ,まだこの路線は手を入れる余地があると判断されたのか,3年後に登場する「三國志X」では,さらなる進化を遂げることになる。
三國志IX(2003年)
本作の大きな特徴としては,戦略マップと戦闘マップが統合された,「一枚マップ」であることが挙げられる。
例えばこれまでは,平時に軍隊を移動させるのであれば,それは「コマンド」として処理され,マップ上にユニットが現れることはなかった。逆にいざ戦争となれば,普段見ているマップとは別のマップになり,その上でユニットを操って戦ってきた。
本作ではこの「戦略マップ」と「戦闘マップ」の区別がなくなり,軍隊を移動させる場合でもマップ上にユニットが出現するし,敵国と戦闘するために出陣するときも同じマップ上にユニットが出現し,そのまま戦闘を行う。
基本は1武将=1コマンドのシステムで,1ターンは10日,3ターン=1か月となる。
コマンドの入力はターン開始時に行い,それが実行されていくのを10日間見守るというプロット方式。もちろん,長距離の移動など,10日では終わらないものもあるので,その場合はターンをまたいで継続されていくことになる。
1ターン10日とは言っても,プレイ感覚としては短く,敵が接近してからの対応が可能なこともままあるが,もちろんこの間合いを間違えると「1ターン差で城が陥落しました」ということもあり得る。軍隊の行軍にかかる時間は前もってしっかり把握しておきたいところだ。
一枚マップを活用する形で,さまざまな新要素が生まれ,プレイフィールも変化した。マップ上に陣を敷いて戦争の中継地点にしたり,罠を張ったりすることもできるし,敵の大軍を城で受け止めておいて,別働隊が後背を突くといった戦略も一枚マップのシームレスさで実現されている。
同盟軍との連携も同様で,従来だとどうしても「同盟軍が殴ったのを見てから,後出しで殴る」「同盟軍の支援要請に従って援軍を出して,同時に殴る」「互角の勝負で疲弊した敵軍を,同盟軍がおいしく頂いていく」展開の3択なところがあったが,本作では「視界に入った同盟軍の動きに合わせて行動する」といった柔軟性がある。
張魯が立ったぞ,なら俺も! |
やっぱりダメでした |
1武将=1コマンドなので,どうしてもクリック数が増えがちだが,委任のシステムはよく練られており,ゲームの勘所がつかめない場合は序盤から積極的に活用していくのも手だ(不慣れなプレイヤーはAIより悪い選択をままするため,まずAIに行動させておいて,そこから定石を見つけていけばいい)。
定石を知らないとこんなことに |
全体的に見ても,戦争・内政・外交のバランスが非常に良く,遊んでいてさまざまなオプションが思いつく,好ゲームに仕上がっている。セミリアルタイムということもあり,Paradox Interactiveのゲームが好きなプレイヤーであれば,本作も相当楽しめるのではないか。実際,シリーズのファンの間でも,本作を高く評価する人は少なくない。
三國志X(2004年)
非常に荒っぽく言ってしまうが,「太閤立志伝」は,オープンワールドの先駆者の一人だ。「戦国時代の日本における武将の一人として,何をしてもいい」というゲームデザインは,「オープンワールド」という括りで語られるべきゲームなのである。
本作が発売された2004年は,オープンワールドゲームの名作「グランド・セフト・オート III」発売の翌年であり,業界的にも「オープンワールドを作るには何が必要か」のノウハウがそれなりに共有されてきた時期にあたる。そのうえVIIとVIIIの蓄積もあるためか,明らかに「こなれた」作りになっている。
本作におけるコマンドは「日数」で縛られ,何らかの指示を出すと,設定された日数が経過する。このため,「君主自ら畑を耕すなんて時間の無駄。配下ができることは配下にやらせればいい」という状況になるわけだ。
かくして,本作でも君主レベルでプレイするのであれば,配下に指示するという形でプレイが進行する。これによって浮いた時間を何に使うかと言えば,配下と語らって親密度を高めたり,重要な外交交渉の席に赴いたり,コイツだけは絶対獲るという勢いで人材の説得に出向いたりとさまざまだ。
一方で配下は相変わらず上からの命令に従うのだが,クリックだけで終わりがちな内政に対し,諜報活動などは実際にマップ上を旅して目的の都市に行き,そこで諜報活動を成功させ,帰ってくるまでが仕事となっている。
このため「道中で野盗に会って身ぐるみ剥がされました」「潜入先でバレて大変なことになりました」といった事案も発生しやすい。戦いの前線に赴かなくても多少の緊張感が生まれるのだ。
また,本作では仕官前にできることが非常に増えた。
中心となるのは「酒家での依頼」で,これはランダムに生成されるクエストを達成してカネを稼いだり名声を得たりするのが目的となる。これもまた,内政系のクエストは街の中でのクリック一発だが,「だれそれを探せ」といった話になるとマップ上を旅して歩くことになる。
なお,仕官前に私兵を雇い入れ,事実上の独立勢力を作ることもできる。こういった独立勢力は以前の作品でも作ることは可能だったが,本作ではそれがぐっと楽になった。
このように本作では,これまで手薄となってきた部分に一定レベルのボリュームを持ったシステムを導入することで,オープンワールドとしての完成度を高めている。
ではそうやって要素が増えたから君主は煩雑になったかと言えばそうでもなく,「戦役モード」という大規模戦闘モードが導入されている。
従来,「三國志」における戦いは,1つの国ないし都市を取り合うものだった。一方,「戦役モード」は,1つのエリア(=複数の都市)の支配権を巡って,特定の勝利条件をもとに大部隊で戦闘を行うものとなっている。この場合,戦闘は一枚マップの上で解決される。
もちろん1つの都市を奪う「戦争」も用意されており,こちらは「戦役」に比べるとよりミクロな視点での戦いとなる。この場合は一枚マップではなく,戦争専用のマップが開く。
また,一騎討ちや舌戦といった,「個人が活躍するシステム」も多数用意されている。これによって,マクロからミクロまで,どんな立場でも三国時代の動乱を追体験できるというのが,本作の醍醐味と言えるだろう。
もちろん,歴史イベントもかなり作りこまれているが,これに関しては好みの差もあろう,というところではある。
本作で一つだけ残念なのは,一騎討ちや舌戦のシステムが凝りすぎていて,理解するのに時間がかかることだろうか。攻撃の相性関係などまで覚えてプレイするのには,少々負担を感じるが,総じて言えば,本作は「三國志VII」「三國志VIII」を一歩先に進めた,優れた作品として仕上がっている。
ちなみに,最新作「三國志13」も全武将プレイとなっているので,本作からどのような進化を遂げているかが気になるところだ。
三國志11(2006年)
一枚マップで10日1ターンという構造は,「三國志IX」を継承している。内政すら一枚マップの上で表現され,商業の発展や農地の拡大についても,それに対応した施設をマップ上に置いていく(都市ごとに置ける地点は決まっている)形になる。
本作もおなじみの1武将=1コマンドだが,軍師のお勧めに従ってクリックしていけば,最小手数で望む行動を実現可能だ。
本作は基本的に「三國志IX」の発展形ではあるが,いささか要素を詰め込み過ぎたきらいがある。特にプレイヤーに負担を強いるのが街の発展で,「隣接する商業施設の効率を上げる」といった建物もあるため,最初からある程度のグランドデザインを持っていないと,効率化が果たせなくなる。
そのうえで,そういった施設は「合成」してレベルを上げるシステムになっており,このあたりはもう煩雑の一言に尽きる。ましてやそうやって成長させた施設が戦火で燃えた日には,復興までの道のりに心が折れそうになってしまうのだ。
「戦争はそういうものだ」と言われればその通りなのだが,その辛さをクリックで体験させていただかなくても……というのが正直な感想である。
ゲームとしてはなかなか忙しく,完全なターン制とはいえRTS的な充実感のある作品だ。「とにかくギッチリと遊びたい」という人には,良い選択肢になるかもしれない。
三國志12(2012年)
マップは戦略マップ・戦闘マップ・街マップの3枚に分かれており,ある意味で「間違いのない」構成だ。
システムとしては半プロット式といった感じのもので,「武将への命令(コマンド)」という概念をあまり表に出さずに,うまく1武将=1コマンドのメカニズムを利用している。
具体的に言えば,これまで武将にコマンドを出すという形で行われてきた行為のほとんどを,「街に特定の建物を建てて,その建物に武将を配置する」という操作で代行させたのである。
例えば従来であれば,兵隊を補充したければ「徴兵」コマンドを実行していた。しかるにコマンドを一度実行すれば,それはもう取り返しがつかなかった。民忠の改善も同様だ。
だが本作には徴兵というコマンドも治安というコマンドも,存在しない。代わりに,街に兵舎を建て(これだけでも1ターンあたり兵士がある程度増える),そこに武将を配置する(適性が合っていれば兵士が増える速度が上がる)ことで,徴兵速度を管理する。
このため,「これで次のターンに行く」ボタンを押すまでは,武将の配置換えは自由にできる(「三國志IV」の「内政担当」を好きに入れ替えられるのと一緒)。これはとてもストレスが少ない。また,建物単体でも最低限の効果はあるので,「三國志VI」に見られた,武将不足に陥って動きが取れなくなる,ということも起きにくい(そもそも都市数に対して武将は十分に用意されている)。
戦闘は完全にRTSで,「三国志大戦」のようなゲームを意識した構造になっている。アクションゲームが苦手という場合は,完全にAIに委任してしまってもいい。
なお発売当初はこの戦闘におけるパス・ファインディングAIにかなり大きな問題があり,AI間の戦闘がしばしばあり得ない展開になったり,プレイヤーが強烈にストレスを感じたりしていたが,現状ではこの問題はクリアされており,しっかりと戦闘を楽しめる。
古い「三國志」ファンからは「淡白すぎる」という評価を受けることもままあるが,RTS部分がきちんと機能している今,サクサクと戦略パートをこなし,人材マネジメントをしながら,RTSとしての戦闘を楽しむというテンポで,過不足なく楽しめる作品として完成したように思える。
個人的には,「三國志」に限らずこの手のストラテジーゲームで一番不満を感じてきた,「外交」の不透明さに対して,本作では分かりやすすぎて戸惑うくらいの透明度を確保しているのが高評価だ。贈り物でポイントを稼ぎ,そのポイントを消費して同盟を結んだり援軍要請したりするというシステム(しかも揺らぎが少ない)は,外交をただの作業や「基本的にはやっても無駄な神頼み」にはしていない。ほとんど必殺技レベルの凶悪さではあるので,「やりすぎだろう」と言われたら反論もできないが。
ともあれ,「三國志IV」系のシステムは,「三國志12」でほぼ完成のレベルに達したと考えてよいだろう。現代人のタイムスケールにあったプレイ感を持つ,好作品に仕上がったと言える。
まとめにかえて
以上,年末年始を延々と「三國志」につぎ込んだ成果がこちらである。
通してプレイしてみると,どの作品にも独特の良さがあるし,またなんだかんだで段階を踏んでより良いゲーム,より新しいゲームを目指して先に進んでいるのだな,という印象を強く受けた。30年間常に変わらなかったところとして見えてきたのは,人気シリーズでありながら複数の方向性を試したり,以前の作品でやり過ぎたところや足りなかった部分をきっちり直しつつ,尖った要素も入れてきたりする“揺り戻し”の姿勢だ。
戦闘バランスは各作品ごとにバラつきが大きめだが,これについても「前作でのアンバランスさ」「わりとチートっぽくなってしまっているところ」を適切にしようとする形跡が見られる。Web上の攻略サイトなどを見ると,「戦闘における必勝法」的な記事が(特に初期作品において)散見されることもあり,このあたりはゲーマーと開発者のあくなき戦いの歴史といった感じで,これもまた趣深い。
そして,最新作となる「三國志13」にもこの揺り戻しを図る要素が導入されているのだろう。
ある程度予想はしていたことではあるが,30年の歩みというのは,それを同時代として体験してきた場合と,今回のようにまとめて「歴史」として体験する場合でまるで違う印象を受けるのだな,というのが今回の記事を執筆した率直な感想だ。筆者も個人的に「三國志II」「三國志III」あたりにはいろいろと思い出があるが,改めていま遊んでみると「こんなゲームだった(はずだ)」という印象がいろいろと覆ることも多く,とても興味深い体験となった。
それだけに,誰もが手軽にシリーズ作品を通してプレイできたら,と願わざるを得ない。若い世代のプレイヤーには,自分が生まれる前にリリースされたものをぜひプレイしてほしいし,「信長の野望」「三國志」と聞いただけでネガティブになる“食わず嫌い”(実は筆者にもそのきらいがある)の人も,実際に触ればその印象が変わるかもしれない。
過去作品が最新のコンシューマゲーム機に移植されることもあるが,全作品がひとつのプラットフォームで遊べるようになる前に世代が移ってしまうので,最近「信長の野望」や「三国志ツクール」が販売されるようになったSteamに期待だろうか。
今回の記事中で何回も書いたことだが,ゲームの評価というものはその人の趣味で大きく変わる部分もあり,実際に遊んでみるのと,人の話を聞くのでは,ゲームの印象はまるで違う。そんなことを改めて強く感じさせられた三國志マラソンだった。
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