レビュー
待望のシリーズ最新作で市長になって,人々の幸せを願おう
シムシティ
「シムシティ」は1989年に初代が発表された箱庭系ゲームの元祖である……などというと必ず元祖本家家元論争が発生するので,「元祖に近い」ぐらいにしておくが,そういう作品だ。
プレイヤーが市長となって自分の街を建設していくというテーマは,その後の作品においても一貫しており,また,とくにこれといって決まったゴールがなく,自分の好きなように遊べるシステムというのも,ゲーム史におけるマイルストーンとなっている。
「シムシティ」公式サイト
そんなシムシティシリーズの最新作「シムシティ」が,オンラインプレイに対応したタイトルとして登場した。シムシティといえば,天災で街が破壊されることで知られているので,マルチプレイと聞いた時点で,これはきっと他人の街に災害を起こしたりできるに違いないと思われていたフシもあった(過去のインタビュー参照)が,フタを開けてみると,かなり新鮮なオンラインプレイが可能なゲームとして仕上がっていた。
今回はそんな新しいシムシティを,ざっくりレビューしてみたい。
最初に知っておいてほしいこと
筆者はストラテジーゲームが大好きだし,シムシティも好きだ。好きだが,苦手である。最初にシリーズ作品を遊んだのは中学生の頃ではないかと思うが,そのときから苦手で,今になっても苦手なので,これはもうスキル「シムシティが苦手」ホルダーであると胸を張って言っていいと思う。
なぜ苦手なのかを考えると,「終わりがない」ことが,たぶん原因だと思われる。ナチスやローマ帝国は滅ぼせばよく,クーデターを試みる反逆者は軍隊で鎮圧すればいいが,シムシティの市民はそうはいかない。その点を危惧した4Gamer編集部からは「戦争は起こせませんので,人民の福利厚生を願ってください」と忠告されているのだが,まったくもってそこが最大の問題だ。
シムシティにおける市民は不滅の存在であり,都市がある限りそこにおり,なにくれとなくいちゃもんをつけてくる。なんという強敵だろうか。その割に,公害だの犯罪だの怪獣だのを理由に簡単に出て行く。なんという強敵であろうか。
民兵なり自警団なり対空砲なり(本稿ではたいへんムダな知識だが,対空砲の水平射撃は非常に高い制圧力を持っており,世界の某所には対空砲を持っているという理由だけで,その地域の政治的リーダーになった人物もいるらしい)さえ使えれば,筆者もきっとシムシティがうまくプレイできるようになるに違いないと思うのだが,そういうゲームではないのでやむを得ない。目指せ福利厚生! がんばるぞ。
軽くシステムの説明なんぞを
実際の都市経営を始める前に,本作のシステムを簡単に紹介しよう。
シムシティにおいてもプレイヤーの立場は「市長」だ。ゲームの目的はとくに決まっておらず,プレイヤーは好きに都市を作り,市民は好きに文句を言う。とにかく人口を増やし巨大な都市を作ることを目指してもいいし,観光とカジノで成り立つ都市を作ってもいいし,ハイテク工業都市を建設してもいいという感じで,「これをしなくてはならない」というものはない。
目標は自分で決めるわけだが,言うまでもなく自分で決めた目標を必ず達成できるとは限らない。都市を運営していくにはさまざまな資源やインフラが必要であり,これらは都市が拡大するに従って,より大規模に完備していかねばならなくなる。都市がうまく行けばいくほど,そうした資源確保やインフラ完備に必要となる費用が上昇していくので,市長は税収と歳出のバランスをうまくとりながら,都市の発展を目指すわけだ。
ご存じのように,今回のシムシティはオンラインプレイが可能だ。「可能」という奥歯にトウモロコシがはさまったような物言いをするのは,プレイにあたってサーバーへの接続が必須(つまり,ネットに接続できる環境が必要)だが,「自分がプレイするエリアに他のプレイヤーの都市を参入させない」ことも可能だからだ。いわゆる「鍵をかける」的なコントロールである。
鍵をかけていない場合,自分がプレイしている地域(リージョンと呼ばれる)に,ほかのプレイヤーが都市を建てにくることがある(もちろん特定のプレイヤーを招待することもできる)。1つの地域には複数の都市が建設でき,それぞれの都市は高速道路や鉄道で接続されているので,都市間で住人の移動があったり,公共サービスの共有が行われたりする。自分の都市に職場がなければ仕事がある都市へ「通勤」することもあるし,学校に通うために昼間だけ移動する市民も出てくるし,高級ショップが並ぶ街に買い物客が殺到するということもある。犯罪者が流れ込んでくることもあるけど。
リージョンでは,ほかのプレイヤーと協力して「偉業」の建設もできる。これは非常にコストのかかる建物だが,その絶大な効果はプレイヤー全員で共有される。偉業の建設は,本作における一つの目標といってもいい。
以下,これまた簡単に都市建設の要素を紹介しよう。
●都市の基盤:道路
道路のクオリティによって,その道路の周辺に建つ建物のクオリティも決まってくるので,財政に余裕ができてきたら,なるべく広い道路を敷設していきたい。交通渋滞は街の発展に大きな影響を与えるので,渋滞しにくい広い道路を引くことを前提に街の設計を考えるのだ。
●都市のコンテンツ:地区
本作の最も基本的な建物は,住宅地区,商業地区,工業地区の3種類に分類される。道路に沿ってこれらの地区を設定すれば,その土地に市民が勝手に住宅を建てたり,工場を建てたりする。
その地区に住んでいる市民の所得と,隣接する道路の幅によって,どのような建物が建つかが決定される。つまり,高所得の住民が6車線道路に沿って建てた住宅は高層マンションになるし,低所得の住民があぜ道に沿って家を建てればバラックめいた建物になるというわけだ。
ちなみに建物は,所得の向上や道路(または公園などの建物)の変化などによって,自動的に建て替えられていく。
●都市を駆動させるもの:エネルギーと水
シムシティの市民は現代人であるから,電力と水の供給が欠かせない。電力は発電所,水は給水ポンプやポンプ場から供給できる。
発電所は風力から火力,原子力までさまざまだが,いずれも一定の環境破壊を引き起こす(風力の場合は騒音)。発電所はできる限り住宅エリアから離れた場所に設置しておきたい。
水は地下水が豊富なエリアから汲み上げることになるが,問題が2つある。地下水の汚染と,枯渇である。
地下水は,工場や発電所,ゴミ捨て場などによって汚染されていく。汚染された地下水を市民に供給すると満足度が下がるだけでなく,病気を蔓延させる原因となる。
また地下水はどんどん減っていくので,これを克服するためには,下水処理場とのコンビネーションが必要になる。
●都市の裏側:廃棄物処理
下水は,下水パイプや下水処理施設を設置することで処理できる。ただしこれらの施設には処理能力の限界があるため,都市を拡張するに従って同じように拡張していく必要がある。また下水処理施設は処理したあとの水を地中に放出するので,処理施設の近隣では地下水が豊富になる。水源の確保はポンプ場と下水処理施設のコンボというのが一般的な手法となるため,これらの施設の周囲に地下水を汚染する施設を建てないようにしたい。
ゴミ処理は,単純にゴミを回収して焼却するもよし,リサイクル工場を置いてゴミの排出量そのものを減らしてもよしだ(後者の場合,やはりゴミ集積所が必要にはなる)。
●都市の保全:警察・消防・医療
市民が増えれば,犯罪,火災,病人に怪我人などが発生する。これらはそれぞれ警察,消防,病院で対処でき,それぞれの建物は周囲の地価を上昇させる。
ただし,いずれも結構なコストがかかるほか,1軒でカバーできる範囲に限界がある。街の拡大にあわせて適切に拡張していきたいところだ。
●そのほかいろいろ:教育・交通などなど
また初代から変わらず交通渋滞はシムシティの華であり,路面電車やバスはこれに対抗する基本的な手段となる。本作の場合,交通渋滞によって消防車のような緊急車両の到着が遅れたり,ごみ収集の効率が悪化したりするため,トータルで見ると渋滞解消はかなり重要だ。
これ以外にも,「特化」として鉱物資源を掘削したり,カジノを建てたり,貿易用の倉庫を建てたりなどなど,できることは多い。
●他の都市との連携
とりあえずこれだけ押さえておきたい
何かと要素が多い(ホントにすごく多い)本作だが,とりあえず以下の点だけ押さえておけば,いきなり都市が破綻することはない。
・建物は道路に沿ってのみ作られる:いきなり最初から広い(=高い)道路を敷設すると,とそれだけで経済的に破綻するので注意
・電気と水と下水処理は必須:どんな小さな街でも,この3つは絶対に欠かせない。真っ先に場所を確保しよう(電気は地下水を汚染しない風力がオススメ)。いずれも接続する道路は最も細い道で構わない。
・警察,消防,医療を急がない:これらは問題が出てきてからでも遅くない。ときどき遅いこともあるけれど,気にしない。これよりはゴミ処理のほうが先に問題になることが多いし。
・ほかの都市のことなんて気にしない:とりあえず最初は自分の都市だけ見ていても構わない。自分の都市もうまく回らないのに人様の都市との連携なんて論外……などという綺麗事ではなく,人様の都市からの各種供給はいつ切れるか分からないので,まずは自活できなくては危険が危ない。
・最初からうまくいくはずがない:2つ3つぐらいの都市を破綻(ないし,成長限界に突入)させれば,自分なりにさまざまなノウハウが身につくので,まずはスクラップ&スクラップの精神で。
実際にやってみよう
工学系の人には「マニュアルなんて,分からなくなってから読めばいいんだよ」スピリッツがあると古くからいわれているが,これはゲームにおいては100%の真実だ。ということで,グダグダ考える前に実際に市長になってみようではないか。
筆者はとりあえず「ネオ・セヴァストポリ」(岬に建つ都市),「ネオ・バクー」(油田がある都市),「ネオ・ハリコフ」(台地に建てた工業都市,のちに観光都市に転身)と作ってきて,だいたい本作のセオリーを理解したところだ。たぶん理解した。たぶん。
で,シムシティ苦手スキルを持つ筆者ではあるが,本作はそんな筆者をしてそれなりにうまく都市経営している気分にさせてくれる難度である。さすがは21世紀のゲーム,どんなユーザーでも遊ばせてくれるサービス精神にあふれている。その一方,もう一段階先に進もうとすると行き詰ったりバランスを失ったりすることもあった。つまり「難しいことをやろうとすると難しくなる」のが本作というわけだ。ゲーム,かくあるべし。
それはともあれ,桁違いの投資が必要となる「偉業」は無理として,自力で十分に到達できそうなところまで行ってみたいのはゲーマーのサガ。まずは一つのゴールとして,ハイテク工業都市を作ってみたい。
都市名は「ネオ・スターリングラード」。この名前なら多少悲惨な結末に陥ったとしても,史実よりはずっとマシなはずだ。最初から成功を約束された都市名といえよう。
ネオ・スターリングラードの盛衰
いや待て! まだ衰えると決まったわけじゃない! つうか今から街を作るんだってば。とりあえず最初に街の大まかなイメージを考える。といっても「こんなデザインの街にしよう」というイメージではなく,水源や発電所,住宅地と工業地帯の位置関係などをおおまかにデザインするわけだ。
具体的には水源(=汚水処理施設に隣接),発電所と工業地帯(=土壌汚染を引き起こすので水源と住宅街から離れた場所),ごみ処理施設(=土壌汚染の可能性があるので水源からは絶対に離しておく)のロケーションだ。実はこの段階でもう一つ考えておくべき問題があるのだけれど,今回はパス。というのも,その問題は都市がうまくいったときに発生する問題だからだ。うまくいったときのことなんて,うまくいってから考えればいい。
風向きがだいたい西→東方向なので,工業地帯や下水,ゴミ集積所は東側に作ることにする。消去法で住宅街は西側になるが,高速道路に接続する道路はさまざまな物資が行き来する文字どおり都市の玄関口になるので,北西に人口密集地を作って渋滞で都市が窒息してしまうのは避けたい。
都市の基本的な構造は「碁盤の目」とする。円を基本とした美しい市街もすばらしいアイデアだが,なにしろ本作の街は狭い。本当に狭い。ちょっと贅沢にスペースを使うと,あっという間に土地が埋まってしまう。四角い大地を有効に利用するためには,四角い都市を作るしかないのだ。エリアによっては陸地が丸くなっているものもあるので,そういうところなら円形の城塞都市みたいなのを作っても良いのだが,今回はそうではない。
水,下水,電力については,給水塔,下水パイプ,風力発電で問題ない。水と電力については多少不足しても建て増しで対応できるので,最初に大規模な拡張が必要になるのは下水だろう。これは単純な建て増しではラインが混乱する可能性がある。
公共サービスとしてはこれ以外に消防,警察,医療およびゴミ処理があるが,とりあえずこのあたりは「問題だ」と住民に言われてから対応する。いや,そりゃね,医療体制が整ってないと人が死にますよ。でも毎日せいぜい数人だし,都市には数千人って人がいるし,つまり君たちの代わりはいくらでもいるし。みたいな。
と思っていたものの,なにやら医療施設を建てろ建てろと市民どもがうるさく言い始めたので,満足度を上げるため,やむなく診療所を建設。
診療所は維持コストがかかるものの,周辺の地価向上に寄与し,最終的に街を大きくしてくれる。人口が増えれば人頭税……もとい住民税も上昇するので,診療所の維持コストはペイできるどころか黒字になる(中盤くらいまでは),といった感じでいいことずくめでだ(中盤くらいまでは)。
そうこうするうち,街の人口は5000人をオーバー,ちょっとした都市へと昇格した。人口5000人でちょっとした都市というあたり,シムシティはアメリカのゲームだなあと思う。日本で「過疎問題が起きている」と言われる町でも,1万人くらいは割と普通にいるのだ。
街の東側に作った工業団地が発展し,生産物の出荷に困るようになったので貿易センターを設置。作られた貨物を一時的に収納する施設としても機能するので,工場が自社生産物に埋もれて倒産するという事態を回避できる。
ゴミ問題発生(人口約5000人)
人口5000人前後を行き来する頃,ついにゴミ問題が顕在化した。つうか,今まで君らゴミどうしてたの? 庭に埋めてたの? いやそれ無理だろ。だが無理だと分かっていても,問題になるまで放置するのがネオ・スターリングラードのルールだ。というわけで,ようやくごみ処理問題に真面目に向き合うことになった。だが実はこれがけっこう厄介で,問題は複数段階にわたってしまう。
まず最初の問題は,排出されたゴミをゴミ収集車で回収しなくてはならないということ。ゴミ収集車はゴミ集積所におまけでついてくるが,問題が顕在化したばかりの都市に散らばるゴミを回収するにはちょっと台数が足りない。
これはとりあえず収集車の数を増やして対応するとして,次の問題は集めたゴミは「そのまま集めておく」以外できないということだ。無論,ゴミを焼却する施設を建てることはできるが,なにせ建設費が高い。そして維持費も結構高い。しかも大気汚染が凄い。なので焼却場を作るまでは集めたゴミをひたすら積み上げ,収容スペースが足りなくなったら拡張をするしかない。
またゴミ処理のもう一つの姿として,「リサイクル」という手段がある。こちらはごみ処理と違う系統で,リサイクル処理車を巡回させてリサイクルできるゴミを集め,それらをプラスチックや金属として再生するというルートだ。
プラスチックにしても金属にしてもなかなかいい値段でグローバルマーケット(シムシティをプレイしているプレイヤーがアクセスする市場)に売れるのでリサイクル施設は早めに作りたいところだが,市民の教育レベルが低いと「リサイクルって食えるのか?」的なノリでリサイクルボックスは空っぽのまま。しかもリサイクル処理場が高価なので序盤ではとても手が出ない。要はゴミの処理なのだが,なかなか遠大な話になってしまう。
でまあ,とりあえずはゴミ処理所を作って,収集車を巡回させ,ゴミを一箇所にまとめておくことにした。「まず隗より始めよ」ってやつですね。
電力問題,医療問題発生(人口約7500人〜2万5000人)
続いて7500人くらいの頃に電力不足が顕在化。これには風力発電の風車を増設することで対応する。安い買い物ではないが,電力は余剰状態をキープしておかないと工場の操業から公共機関の運営までとにかく悪影響が出る。「ギリギリ足りている」ではシムシティの電力は足りないのだ。最悪,ほかの都市から電力を購入できるが,電力売買の不安定っぷりは半端ないので,あくまで一時しのぎと考えるべきだろう。しかし風力発電による電力確保も,人口が1万5000人に届く頃には限界が見えてくる。風力発電所を拡張していけばまだまだ風力で賄えるが,風力発電はとにかく場所を食うのだ。スモール&コンパクトな都市なら風力で回しきれるが,工業都市を目指す我がネオ・スターリングラードではとても無理。ということで石炭発電と石油発電で悩むが,石油発電を選択する。これで当面の電力事情はクリア。
人口が2万5000人に到達した頃,診療所の医師が「健康問題が多い」と指摘してきた。そんなに多いのかねと思ってパネルを見ると,1日あたりの死者が25人となかなかの数値を叩き出している。いやでも2万5000人のうちの25人でしょ? 1000人に1人でしょ? それって多いですか? いや,多いですよね。数万人の軍団が跡形もなく殲滅されたり,数千万人の国家が蹂躙されて消滅したりといったことが日常的に発生するストラテジーを好んでプレイする筆者だが,シムシティはどっちかといえば1人の市民の死に大騒ぎしたほうがモア楽しめるゲームだ。
というわけで,やむなく診療所を新設,医療機関のカバー範囲を広げ,救急車も増便して救急医療体制を整える。福利厚生のアンテナ高いですね,いいですね(自画自賛)。
同じタイミングで水の供給が限界に達したので,給水ポンプを下水処理場に隣接して設置。限界といっても地下水にはあちこちに余剰があったのだが,そうやって場当たり的に地下水を汲み上げていると工場による土壌汚染をうかつに広げられない……じゃなかった,最終的に効率が悪い。いずれ地下水枯渇で廃止しなくてはならない給水塔を乱立させるよりは,システマチックかつ長期的に水資源を確保したいのだ。
幸い,下水処理施設は処理し終えた水を周囲に散布するので,その周囲では地下水が豊富になる。これを給水ポンプで汲み上げ,市民はその水を使って生活してこれを下水に変え,その下水は処理されて給水ポンプから市民に供給される。これは実に理想的な永久機関ではないか……って,夢のないことを言うと,下水処理施設も給水ポンプも維持のために電力や費用がかかるので,永久機関ではまったくないけど。
安定期に突入(人口3万2000人〜10万人)
そうこうするうち,市民の死者も1日8人くらいに落ち着いてきた。人口は3万2000人に到達しているので,4000人に1人だ。だいぶまともな数値になってきた。まだ多いことは多いが,当面このラインで良いだろう。なあに諸君らの代わりは(以下略)。一方,ネオ・スターリングラードは都市名が良かったのか,治安が極端に良い。普通ならこの段階で警察署が1つ(かつ設備も最低限)というのはあり得ないのだが,6万人に到達してようやくパトカーを1台追加してもいいかな? という程度だ。数値で見ると1日あたりの犯罪発生数は0がキープされている。なんにせよ警察コストが安いのはありがたい。いずれ補強は必要になるとしても,それは問題になってから考えよう。
やがて人口は10万人を突破。さすがにそろそろ大都市と呼んでいいレベルである。小学校,高校,コミュニティカレッジといった教育機関も設立したので,市民の教育レベルも上昇。リサイクル工場を建てたところ,ザクザクとリサイクル用の資材が集まってくる。意識が高い。リサイクル資源はとりあえずプラスチックに変換,グローバルマーケットに出荷する。
プラスチックの売り上げもあって資金繰りが非常に好調なので,そろそろ大物のハコモノを建てていく。まずはハイテク工場都市にとっての生命線の一つ,大学である。ハイテクノロジーは高度な教育なしには成り立たないのだ。
またハイテク工場では,発生する火災もハイテクなため(化学薬品などが燃える),普通の消防車では歯がたたない。そのため大規模消防署を建設,危険物火災に対応できる消防車やはしご車(都市が過密化し始めたため,高層建築が増えてきた)を完備。おお,なんか真面目に福利厚生やっている……ような気がする。ハイテク工場っていう目的がなかったら,絶対にやらないけど。
市民の教育レベルもほどよく上がってきたところで,続いてプロセッサ工場を建設。プロセッサ工場はプラスチックと合金を原料に,プロセッサを生産する。プラスチックはリサイクル工場から供給されるので,とりあえず合金だけをグローバルマーケットから買い付ける。ちなみに,リサイクル工場から合金も手に入るのだが,さすがに量が足りない。
生産されたプロセッサをグローバルマーケットに出荷すると,これが実に良い感じに儲かる。プロセッサは偉業の達成に必要となるほか,テレビなど,プロセッサを用いたさらに高価な製品の製造にも使えるため,グローバルマーケットでは人気の商品なのだ。
渋滞問題発生(人口10万人〜30万人)
初期の目標も達成したところで街を見なおしてみると,そろそろ渋滞が酷くなってきた。一応バスは完備しているし,道路は基本的にすべて6車線なのだが,それでも流れが悪すぎる。渋滞は本作において,もしかしたら住民に次ぐ強敵かもしれない。警察,消防,医療は建物そのものの影響力もあるが,とりわけ警察と消防は「それが必要とされている場所に急行できるかどうか」が極めて大きなファクターになる。医療ももちろんそういう事態はあるのだが,多くの病人やけが人は自力で病院まで移動してくる。しかし,犯罪者と火事は自分からは来てくれない。
大規模かつ高密度な渋滞は,これら「人間が作る都市インフラ」のほぼすべてを破壊してしまう。何台消防車があっても現場に到達できなければ焼け野原が広がるばかりだし,何台パトカーがあっても渋滞につかまったままでは犯人逮捕はおぼつかない。ゴミは街中に残留し,けが人を病院に運べない。
交通整理を目指して道路の追加や引き直し,路面電車やシャトルバスを大量に導入するが,渋滞はなかなか緩和しない。理由は簡単で,渋滞が緩和して都市の環境が向上すると,高度な教育機関が揃い電気も水も豊富にあって福利厚生に優れた我らがネオ・スターリングラードには,新たなチャンスを求めて次々に市民が移住してくるからだ。これぞ資本主義的構造。
大渋滞で機能不全を起こしている物資輸送ルートを見直し,各種建造物の配置を再アレンジ,単純な人口ではなく経済的,科学技術的な面におけるさらなる発展を望むことも可能だ。また交差点の構造を見なおしてある程度まで人口を保ったまま渋滞解消を目指すこともできる(ただし,「こちら」や「こちら」の記事にもあるように,開発元のMaxisもこの交通渋滞については問題視しており,その解消を目指したパッチの配布なども行われているので,現在はだいぶ解消しているはずだ)。
ぶっちゃけテレビ作って売るようになれば,収支が多少赤字でも(多少というのは言葉のアヤで,実際には「かなりの」)問題ではなくなるし,公害は最低限に抑えてきているのでイベント会場経営に手を出して興行を副業にしてもいい……。
だが,今回はここまでにしておこう。人口は30万人,史実におけるスターリングラードの60万人に比べると半分だし,人口だけを伸ばすならまだ都市には余力がありまくりだったりもするが,あれだ,成功しているうちに「満足した! 余はいたって満足じゃ!」めいたエンドマークをつけておけば,なんとなくうまくいったように見えるではないか。見えますよね。見える。うん見えた。
しかしあれですね,現実世界においては,何があろうがコレを永久に続けねばならんのだと思うと,都市を築いた人類というものは,同時に実に面倒な重荷を背負ったものだと思う。だってこんなのいつかバランス崩れて崩壊するに決まってるじゃない。ゲームだから勝ち逃げできるが,現実では勝ち逃げは許されない。何らかの天災,人災が起きてもなお,「プレイ」し続けねばならないのが現実なのだ。
いやあ,ゲームって本当に素晴らしいですね。
マルチプレイが面白い都市経営
本作は1人でコツコツやっていても面白いが,マルチプレイだとさらに面白い。それほど盛んな交流があったり,「StarCraft」シリーズや「Age of Empire」シリーズのような緊密な連携があったりはしないが,知り合いとボイスチャット(ないし各種インスタントメッセンジャー)でバカ話をしながらプレイしているくらいが非常に心地よい。災害が起こったとしても,1人でプレイしているときはムカっとくるだけだが,マルチプレイのときは,いい話のネタになる。
とはいえ問題がまったくないわけではない。交通系の処理に関して疑問を抱いているゲーム開発者も少なくないし,どう見てもバグとしか言いようがないトラブルが発生することもまだある。
また2013年3月現在,本作ではMODが使えない。これは将来的に解決される(MODをサポートするという表明は,なされている)予定だ。そのため「そのあたりはMODで解決できるのでは」という問題に対しても,現状では打つ手がない。
過去の話とはいえ,サービス開始直後にはサーバー問題が発生し,海外のレビューサイトが評価を下げるという事態に陥ったことも指摘しておく必要があるだろう。サーバーは現在,大幅に強化され,今ではおおむね解決されたようだが,それでもなおマレにログイン障害が起きたりする。個人的には「立ち上げ時にログインゲームになってしまうのは,オンラインゲームの華」と思いはするが,そう言って笑える変わり者ばかりではあるまい。
あえて将来的な不安を言うなら,グローバルマーケットというシステムにある程度まで依存して成り立つゲームであるゆえに,ユーザーが少なくなったときにどうなるのかという点が挙げられる。サーバーの統廃合などでクリアできる問題だが,何年も経ったときにどうなるかは神のみぞ知るだ。
総合的に見れば今回のシムシティは間口が広く,奥行きの深い仕上がりとなっているように思う。一つの都市が狭いため,「1回のプレイで遊びつくす」ことが事実上不可能というのもチャレンジ精神を煽る。オンラインプレイで分業を進めれば,かなり極端な都市を作ることも可能だし,ソロプレイで同じ地域に複数の都市を建てていくことも可能なので「1人連携」を極めることもできるだろう。
「シムシティ」公式サイト
シムシティが苦手で仕方ない筆者ですら,苦しみながらも楽しい市長ライフを満喫できているので,これが最初の市長経験という方でも,きっと本作を楽しめるはずだ。というかたぶん筆者よりうまくやれる。
箱庭系が好きなら無条件,そうでなくても,とにかく面白いゲームならどんと来いという人なら,ほとんど留保なくオススメできる好ゲームであるのは間違いない。花粉飛び交うこの季節,休日をインドアで過ごすのに不足ない作品だ。
- 関連タイトル:
シムシティ
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