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「クライシス 3」のゲームプロデューサーが本作の魅力を語り尽くす。プロフェット隊長も登場したファン感謝祭の模様をレポート
「凱旋帰国」って,プロフェット隊長って日本人だったの? という疑問がまずあるが,それはさておき,ステージには本作のプロデューサーであるCrytekのマイク・リード(Mile Read)氏と,クライシス 3の主人公である“プロフェット隊長”が登場。FPSプレイヤーとして知られる,uNleashed氏,BRZRK氏,Stansmith氏の3人が司会進行および解説を務める形で,イベントが始まった。
「クライシス 3」公式サイト
まずは,秋葉原を散策したり,ゲームショップの一日店長を務めたり,合コンに参加したりといったプロフェット隊長の「ヒミツ活動」が写真で報告されたが,あまり詳しく書いてもしょうがない気がするので,これについては公式サイト「プロフェット隊長の秘密基地」を参照してほしい。プロフェット隊長は,合コンでモテモテだ。
続いて,ドイツ・フランクフルトにあるCrytekの社屋や,開発室の様子が写真で紹介された。Crytekの入っているビルのほかの階には,投資銀行などが入っており,Tシャツで歩き回るCrytekの社員は,ちょっと浮いているらしい。
そのあと,ファンからもらったクライシス 3についての質問をリード氏にぶつけるコーナー,「おしえて、マイク!」へ移った。コーナー名はもう少しなんとか……という気にならないわけでもないが,質問と答えを,いくつか抜粋して紹介しよう。
質問:「クライシス 3」をコンシューマ機で制作するとき,最も苦労した部分はどこですか。
リード氏:
マルチプラットフォームタイトルの制作はいろいろと苦労がありますが,今回,とくに大きかったのが,PCで実現できているグラフィックスを,コンシューマ機にどう最適化するかということです。何を残して何を捨てるか,バランスをうまく取ることに苦労しました。
実はPC版も大変で,ハードウェア構成が決まっているコンシューマ機に比べ,PCはユーザーごとにハードウェアが違うといっていいほどです。ここが,開発において苦労する点ですね。
質問:クライシス 3では初めて「弓」が登場しましたが,そのアイデアはどこから。
本作には,シリーズ初期のテーマに帰るという基本コンセプトがあり,そのため,舞台をジャングルに戻しました。「狩り」というのもコンセプトにありましたので,そうしたテーマに沿った武器として弓を登場させました。前作の主人公は追い詰められる側でしたが,本作では主人公がハンターとして追いかける側になります。弓はハンターを象徴する武器という意味もあるんです。
質問:日本のタイトルで,好きなものはありますか。
リード氏:
私が最初に買ったコンシューマ機はファミコンで,最も好きなゲームは「メタルギア」です。「メタルギア ソリッド」やりたさに,PlayStationを買ったほどです。
質問:もしプロフェット隊長と,スネークが戦ったらどちらが勝つでしょうか。
リード氏:
分かりません(笑)。でもきっと,ステルス性の高い戦いになるんじゃないかな。勝負がつくまで,時間がかかりそうですね。
質問:Crytekの写真を見ると,個性的なスタッフが揃っているようです。こういう個性的なスタッフでは,マネジメントに苦労したりはしませんか。
リード氏:
スタッフのマネジメントは,私達にとって課題の一つです。アーティストなどのクリエイティブスタッフと,プログラマーなどの技術スタッフが席を並べて作業する業界は,ゲーム以外にはないでしょう。アーティストであり,技術的側面も要求されるレベルデザイナーのような職種もありますね。そのような複雑な作業を管理する,正しい方法は存在しないと思っています。
マネジメントには力を入れていますが,いろいろな個性を持った多くの人達が融合することで,予想もしなかったことが生まれ,それがこの仕事の魅力の一つだと思っています。
質問:クライシスシリーズの今後はどうなりますか。
リード氏:
過去5年続けてきた結果,クライシスというブランドについては,ある程度皆さんに認識してもらえたことと思います。世界観も固まってきたので,その中でまた少し違ったスタイルやテイストの作品を出していきたいですね。
そう聞くと,FPSとしてのクライシスシリーズは完結するのだと感じられるかもしれませんが,たぶんそうはならないでしょう。まだ具体的にお話しできることはありませんが,何かあればその都度お知らせしていきます。
質問:まったく違うジャンルへの挑戦はありますか。
リード氏:
現時点なら,どんな方向へも進んでいけると思います。例えばRTSなども可能性としてはあるでしょうし,もっと違う展開も考えられるのではないでしょうか。
シリーズを通じて「FPSとはどうあるべきか」を学べましたので,ここまで蓄えたことを生かして進むべき方向は,たくさんあるでしょう。
質問コーナーはここで終了し,次にファンを中心としたクライシス 3のプレイ大会が行われた。来場者の中から事前に登録した10名ずつ2組に加え,BRZRK氏とStansmith氏が順に参加し,11名で10分間のデスマッチを戦うというものだった。
すでに発売されているゲームだけあり,参加者のほとんどが本作の経験者だったが,中にはここで本作を初めて遊んだにも関わらず,BRZRK氏とStansmith氏をしのぐ腕を見せる人も現れ,超ハイレベルな戦いが繰り広げられた。観戦した来場者も,BRZRK氏とStansmith氏の解説を聞きつつ,本作の高速バトルを大スクリーンで堪能できたはずだ。
このあと上位入賞者の表彰式や,イベントスポンサーであるAMD提供の豪華賞品がもらえる抽選会などが行われ,イベントは終了となった。
ここからは,イベント開始前,メディア向けに行われたリード氏への合同インタビューの模様を簡単にお届けしよう。
――リードさんの,クライシス 3における役割を聞かせてください。
マイク・リード氏(以下,リード氏):
私がCrytekに入社したのは昨年(2012年)5月で,シリーズ従来作には関わっていません。それはともかく,本作の開発では「ディレクターボード」という組織を編成し,アニメーションやストーリー,音楽など,ゲームのさまざまな要素について決めていきました。私はそこで,主にチーム内部や外部とのコミュニケーションを担当しました。
――本作に関わる前とあとで,シリーズに対する印象や考え方などに変化はありましたか。
大きく印象が変わったということはないですね。第1作のリリース当初は,私の持っていたPCでゲームを動かすことができず,結局遊べずじまいだったんです(笑)。その頃から,高い技術を駆使したゲームであり,FPSジャンルの中でも独自の地位を築いたシリーズであると思っていました。
クライシス 3はゲーム開発のノウハウを知り抜いたスタッフの作品であり,彼らがこのプロジェクトにどれだけの情熱を注いでいるかを,この作品に関わったことで知りました。
――クライシス 3は,どういったゲームにしようと考えていたんですか。
リード氏:
まずは,これまでシリーズをプレイしてきた人々のため,ゲームを根底から変えるようなことはせず,ストーリーテリングの部分だけはもっと進化させようと考えていました。具体的には,最近のゲーム開発で一般的となった「パフォーマンスキャプチャ」を使い,リアルなキャラクターによる映画的なストーリーの表現方法を採用しました。こういった,リアルなキャラクターについては,今後も追求していきたいと思っています。
――本作でシリーズを初めてプレイする人に,どのような点をアピールしたいですか。
ゲームプレイについては,よりすんなりとゲーム世界に入り込めるよう,シリーズとして初めてとなるチュートリアルを導入するなど,細かい変更を加えています。ナノスーツの機能も「マキシマムアーマー」と「クローク」だけにするなど,シリーズのビギナーでも気軽に楽しめるものになっていると思います。
マルチプレイモードでは,マップを大きくしたり,ゲームのテンポをアップしたりなどしています。
シリーズ従来作では「ストーリーが分かりづらい」という声もありましたが,これについては反対に,ゲーム中で手に入るデータなどを読み込むことで,深みのあるストーリーを楽しんだという人もいたので,プレイヤー次第だと思います。
従来作のファンも,本作が初めてという人も,今回は登場キャラクターの作り込みを見てほしいですね。従来作ではキャラクターの個性が描き切れていませんでしたが,先ほどお話ししたパフォーマンスキャプチャ技術を使ったことと,シナリオにライターのスティーブン・ホール(Steven Hall)氏を起用したことで,各キャラクターにしっかりとした肉付けができました。
――新規ユーザー獲得という部分で,マーケティングではどのようなプランを考えていましたか。
そうですね,今回のマーケティングは,新規の方を取り込むべく,その内容を大きく変えました。これまでのキャンペーンは,ある意味すごく「真面目に」取り組んできたんですが,今回はあのプロフェット隊長の「SUIT UP」キャンペーン(関連記事)のように,ゲームのイメージを崩さない範囲で,少しくだけた内容でユーザーに訴えています。
――クライシス 3のDLCや,次回作のプランなどを教えてください。
リード氏:
リリースして間もないので,DLCや次の展開に関して具体的なことは考えていません。これまでにたくさんの資産を溜めてきましたので,それらをどう活用していくかを,今後の目標として考えていくことになるでしょう。
――本日は,どうもありがとうございました。
「クライシス 3」公式サイト
会場にはシャープの4Kディスプレイ「PN-K321」でクライシス 3がプレイできるという,たぶん史上初の試遊台が置かれていたので,さっそく挑戦してみた。用意された2台のPCはそれぞれCPUやグラフィックスカードが異なっていたが,筆者がプレイした向かって左の台は,「Radeon HD 7970」を搭載したSapphire製グラフィックスカード「SAPPHIRE HD7970 VAPOR-X」2枚をCrossFire構成にしたもの。CPUはAMDの「FX-8350」で,メインメモリ容量は8GBといった感じだ。
AMDの担当者に聞いてみたところ,この構成のPCならだいたい14万円前後で揃えられるのではないかという話で,ついクラッときてしまったが,4Kディスプレイがだいたい40万円前後と聞いて現実に戻った。ムービーを撮影して,読者にもこの感動を味わってもらうというミッションを受けていたのだが,途中から試遊台の前で何かの中継が始まってしまったため,試遊台に近づけず,撮影のチャンスを逃した。うーむ,残念。(松本隆一)
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(C)2011 Electronic Arts Inc. Trademarks belong to their respective owners. All rights reserved.
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