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[CGWORLD 2012]実際のゲーム制作で感じたUnityのメリット&デメリットまとめ――「百鬼大戦絵巻」での実例
開発者によるUnityの評価/感想というと,よく「便利だが,独特の作法がある」「小回りが効かないことが多い」などといった話を聞く。しかし,具体的にどう便利で,どこが不便なのかをプロの開発者に細かく聞く機会はあまりないわけで,その意味でも有益な内容になっていた。
講演は,まず大戦絵巻シリーズの簡単な紹介と,それぞれの開発環境についての説明から始まった。
一応説明しておくと,本シリーズは,セガの「源平大戦絵巻」から始まるiOS/Android向けのゲームシリーズ。自陣にユニットを配置しながら,マップの右側から押し寄せてくる敵を撃退していくという,いわゆるタワーディフェンス型のストラテジーゲームで,単純なルールながらも中毒性のあるゲームシステムが大きな特徴だ。シリーズ累計ダウンロード数75万以上,最新作の「百鬼大戦絵巻」だけでも15万ダウンロード以上を記録するなど,数多あるiOS/Android向けの有料アプリのなかにあって,本作は,かなり高い人気を誇っている作品の一つだ。
畠山氏によると,「源平大戦絵巻」の開発時は,オフィシャルの開発環境であるXcode(Xib)と,セガの自社製ライブラリを組み合わせたものだったとのことで,続編となる「アレクサンドリア大戦絵巻」もそれを踏襲。第3作めの「百鬼大戦絵巻」からUnityを使い始めたとのことであった。とはいえ,環境の移行で一気に開発効率が向上したかというと,畠山氏曰く「そうでもなかった」そうだ。
ただこれは,Unityに問題があったからというわけではなく,もともと他の環境で作っていたゲームをUnityで作り直すことになった経緯など,セガ側の事情も重なったうえでの話。畠山氏も「あくまでも,今回の実例では,という話です。最初からUnityが得意やアプローチで開発していたら,もっと楽だったと思う」とフォローしていた。
ざっくりとした概要を説明したあとは,UI設計,フォント,グラフィックス周りの作りやすさなど,実際にUnityを使ってみてどうだったのか,という話へ。フォントがダイナミックフォントに対応していないため,日本語の表記は画像情報として使用したこと。また,そのためにメモリが圧迫され,専用のシェーダを作って対応したこと。UnityとXSIの相性はあまりよくなかったことなど,実際にゲームを開発するなかで直面した問題が丁寧に報告されていった。これからUnityを使って何かしらゲームを作ってみようと思っている人は,用意されたスライドをざっと眺めていくだけでも,結構参考になりそうな雰囲気である。
一般的にUnityの特徴といえば,ゲーム制作に必要な基本機能が用意されていて,トライ&エラーがしやすい――などというイメージだと思うが,畠山氏が言うには「ある程度のところまでは本当にあっという間。ただ,製品として完成させるところに持っていくのは割と大変な印象」「基本的な機能は揃っているが,本当に基本だけなので,過信は禁物」などなど,少なくともプロユースとして使う場合は,痒いところに手が届かないもどかしさは多々あった様子であった。
ただ,それでも講演の総括としては,「今回の例では,あまりUnityの恩恵は得られなかったというのが正直な感想でしたが,Unity自体はこれから発展していくツールだし,次の作品でも我々はUnityを使っていくつもりです」として,Unityそのものの有用性を認めていたのは印象的。最後には「我々もUnityを研究していきたい」として,講演を締めくくった。
映像関連の話題が中心の「CGWORLD 2012」のなかにあって,ほぼ唯一“ゲーム開発の話”が中心だった本講演。取材前は,「内容がちょっと浮いているし,ちゃんと聴講者が集まるのかな?」と勝手に心配していたのだが,ふたを開けてみれば,男女問わず,多くの学生や開発者が集まっていた。手軽な開発環境として,学生からも支持を集めていると言われるUnityだが,はからずもその関心の高さを実感させられる講演になっていたように思う。
資料まとめ
「百鬼大戦絵巻」公式サイト
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百鬼大戦絵巻
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アレクサンドリア大戦絵巻
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源平大戦絵巻
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