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[GDC 2014]「スプリンターセル ブラックリスト」のリードゲームデザイナーが語る“より良いチュートリアルの作り方”
セッションの内容に入る前に,題材となっている「スプリンターセル ブラックリスト」(以下,ブラックリスト)を簡単に紹介しておこう。本作は,アメリカ大統領直属の秘密組織「フォース・エシュロン」に所属する主人公,サム・フィッシャーの活躍を描くステルスアクションシリーズの最新作。日本では2013年9月に発売されている。
誰にも見つからず,殺しも犯さない「ゴースト」,気付かれずに敵を倒していく「パンサー」,正面きって戦いを挑む「アサルト」という3つのプレイスタイルが用意されており,ステルスアクションとはいってもゲームプレイの自由度は高い。また,銃火器以外にも無人飛行機や催涙ガス,EMPといった豊富なガジェットが登場するのも特徴と言えるだろう。
さて,セッションに登壇したMalville氏は,本作ではプレイヤーが興味をなくす前に,いかに短時間でステルスアクションの遊び方を覚えてもらうかが大事だった,と前置きしてから事例の紹介を行った。
最初のトピックは,プレイヤーが最初にプレイすることになるチュートリアルステージ。ここで11種類ものアクションの操作方法をプレイヤーに学んでもらうべく,ステージが作成されたが,あまりいいものはできなかったようだ。
セッションでは,そのステージの様子が公開されたのだが,アクションを1種類ずつ,淡々とこなしていくといった感じだった。Malville氏は,プレイヤーがあまり楽しそうではなかったことや,ただアクションに成功しているだけで,そのアクションをどんな場面でどのように使えばいいかという,“文脈”が抜け落ちていることなどを問題点として挙げた。
そこで,開発陣は「カバーアクションを駆使して,敵に気付かれずに行動する」「発見されないよう,明るい場所を避ける」「必要があれば,敵を組み伏せる」といったゲームの核となる部分に立ち返って,構成を練り直すことにした。
その結果,このステージで操作方法を学ぶアクションは11種類から8種類に減らされ,先導役のキャラクターが「隠れろ」「ライトを避けて進め」と指示を出す中で,何回もカバーアクションを繰り返しながら進むものに変更された。
この変更について,Malville氏は「最初のステージでは,ゲームの核となる部分をプレイしてもらうべき。それ以外の要素は,プレイヤーを惑わせることになる」と解説した。
続いてはガジェットの使用だ。冒頭で紹介したように,さまざまなガジェットを駆使してステージを進むのが,本作の魅力の1つとなっている。だが,プレイヤーテストを始めてみると,13種類用意されているガジェットのうち,「フラググレネード」(爆発で金属片をまき散らす殺傷用手榴弾)しか使わないプレイヤーがほとんど。ステルスアクションなのに,殺傷用のガジェットが一番人気ではマズイ。
このテスト結果を受け,開発陣はガジェットを4つのジャンルに分けて表示するようにして,各ガジェットの解説に「パンサースタイル向き」「アサルトスタイル向き」といった,推奨するスタイルを追加している。プレイヤーが,ガジェットの性能を把握しやすいようにしたわけだ。
さらに,初期段階ではフラググレネードを装備から外し,購入価格も引き上げて,リストでも下に表示されるように変更。その代わり,ステルス用のガジェットは価格を下げ,リストの上のほうに表示させることにした。
また,ミッション突入前の装備画面には,サムをサポートするチャーリーから「●●を持っていったほうがいいよ」といった感じで,声によるアドバイスが追加されている。
なんというか,開発陣がオススメ商品を売ろうとするスーパーの店員のように思えてきたのは,筆者だけだろうか……。
こうした努力の甲斐あって,改善後のテストでは,ステルス向けガジェットの使用率がフラググレネードより高くなり,ガジェット全体の使用率も向上したという。
そして,開発陣が最も苦労したと思われるのが,「マーク&エクスキュート」の認知だ。これは専用のゲージを溜めた状態で,敵に気付かれないまま,ある程度の距離まで接近して,ターゲットにマークを付けてから発動すると,サムが次々とヘッドショットを連発して敵を一掃できるという,なかなか派手で爽快なアクション。本作の戦闘における目玉と言える要素だが,プレイヤーテストでの使用率は低く,このアクションによるキル数は平均で全体の6%に過ぎず,最も低いプレイヤーはわずか0.6%(キャンペーンモード全体のキル数は2人)とのこと。
マーク&エクスキュートについて,プレイヤーからは「発動できる距離が分からない」「一度使った後,いつ使用可能になるのかが分からない」「ちゃんと説明されていないので,よく分からない」といったフィードバックがあったそうだ。画面に押すべきボタンを表示するというチュートリアルを用意したものの,あまり使用率は上がらなかった。
その理由は,プレイヤーがマーク&エクスキュートの存在や操作方法を忘れてしまうこと。ちょっと複雑な操作になると,チュートリアル直後は覚えていても,次のステージに進むころには忘れてしまうというわけだ。
そこで開発陣は,チュートリアル以後もロード中やプレイ中の画面に,ときおり操作方法を表示させることにした。場合によっては「[RB]ボタンでターゲッティングしろ」といったような,最初のチュートリアルに近い形のメッセージもあり,何度でもプレイヤーに訴えるようにしたとのことだ。
その結果,マーク&エクスキュートでのキル数は平均で15%に,最も低いプレイヤーでも5%にまで向上している。
最後にMalville氏は,「ゲームの冒頭を大事に」「テストは問題の発見だけでなく,改善策の確認にも使う」「手法を変えて,何度も情報を与える」という,本作の開発で得た教訓を提示。さらに,「人それぞれで学び方は違うのだから,私達はそれに合わせなければならない」と語ってセッションを終えた。
筆者はゲームをプレイしているときに「あれ,あのアクションってどうやって出すんだっけ……」となることが多いので,なかなか興味深いセッションだった。そして,たとえどれだけいいものを作っても,知ってもらう努力をしないことには,なかなか使ってもらえないというのは,どこの世界でも同じだと思わされた次第だ。
「スプリンターセル ブラックリスト」公式サイト
4Gamer「GDC 2014」特設ページ
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(C) 2013 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Tom Clancy's, Splinter Cell, Blacklist, Sam Fisher, the Soldier Icon, Ubisoft and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.
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