レビュー
コードマスターズの職人技が冴えるシリーズ最新作
RACE DRIVER GRID 2
コードマスターズから発売された「RACE DRIVER GRID」(PC/PS3/Xbox 360)は,ストリートレースをメインにドリフトバトルやサーキットレース,ル・マン24時間耐久レースなどを戦いながら,駆け出しのアマチュアドライバーがプロドライバーへと成長する過程を疑似体験できるレースゲームだった。さまざまなカテゴリのレースを楽しめたこともあって,夢中になってプレイしたことを覚えている。
あれから4年半,その後継作となる「RACE DRIVER GRID 2」(PS3/Xbox 360,以下,GRID 2)が2013年7月25日に発売された(PC版は同社海外法人から5月28日発売)。
GRID 2については,すでに先日掲載したインプレッション記事でお伝えしているように,コードマスターズが誇るゲームエンジン「EGO」により,リアリティとアクション性が両立したドライブモデルが再現されている。空気をも感じ取れる美しいグラフィックスを始め,幅広い層のプレイヤーがドライビングの楽しさやレースバトルの熱さを感じ取れる作品だ。
「RACE DRIVER GRID 2」公式サイト
キャリアモード「WORLD SERIES RACING」で
ナンバーワンドライバーを目指せ
キャリアモード「WORLD SERIES RACING」は,草レースを楽しむ新米ドライバーが成り上がっていくというサクセスストーリーを体験できるモードだ。立ち上がったばかりの新しいチャンピオンシップ「ワールド・シリーズ・レーシング」(以下,WSR)の創設者パトリック・キャラハンは,動画投稿サイトに投稿されていたプレイヤーの走りを見て,WSRに参戦するドライバーとしてスカウトする。
WSRは,速さを競う一般的なレースのほかに,ドリフト走行やオーバーテイクなどのさまざまな走りに挑戦し,総合的なパフォーマンスが求められる大会。知名度の低いWSRを最高峰の大会にするために,注目度の高い優秀なドライバーを世界中から探し求めているようだ。
注目度を示すバロメーターが“ファン”で,レースイベントに参加して結果を残すことでファンが増えていく。最初は参加できるレースイベントが限られているが,ファンが増えることでワンステップ上のレースイベントに招待されるというわけだ。
キャリアモードは“シーズン”で区切られ,シーズン1〜5までが用意されている。1つのシーズンには,いくつかのレースイベントがあり,その中から挑戦可能なレースで結果を残し,ファンを増やし続けることが基本的な流れとなる。シーズンの締めくくりにはWSRが開催され,そこで勝利すると次のシーズンへと展開していく。
通常のレース以外にも「プロモーションイベント」というカテゴリがあり,これに挑戦すればさらに多くのファンを獲得できる。また,本作には車を購入する概念はなく,レースに挑戦することで選択できる車が増えていくが,制限時間内にコースを走破すると車が手に入る「ビークルチャレンジ」は,やらない手はない。
キャリアモードでは,苦手なレースを必死になって走らなくても,好きなものを選んでこなしていけば,次々に新しいレースに招待されることになる。そのため,非常にテンポ良く進められるのが特徴だ。レースバトルについては難度のバランスが絶妙で,気分を盛り上げる演出と相まって,プレイヤーのやる気が自然に湧いてくるのが嬉しい。
ファンが増えると,ほかのレースイベントから招待を受けるようになる。どのレースに挑戦するのかは自由に選択可能 |
スポーツ専門チャンネル「ESPN」とのコラボにより,テレビ番組でWSRのレース結果が報じられる演出も |
バリエーション豊富なレースモード
ライバルとの勝負に勝利しよう
先ほども触れたが,本作には一般的なレースのほかに,ドライバーの総合的なパフォーマンスが要求されるレースモードが豊富に登場する。
ライバルとの一対一のタイマンレースとなるフェイスオフは,相手に接触してでも先にゴールすれば勝ち。日本的なネーミングの峠も一対一のレースバトルだが,こちらはまずプレイヤーが先行スタートしてレースを戦う。次に,相手が先行スタートして走ることになるが,相手との差を5秒以上に広げるか,先に2勝したほうが勝ちとなる。どちらのレースモードもライバルの前に出たら,抜かれないようにブロックしながら走るのがセオリーだが,後方ばかりを気にしているとクラッシュにつながってしまう。
このほかには,制限時間内の最高走行距離を競う耐久レース,ドリフト走行で得られるポイントを競うドリフト,制限時間内にコースを走破するタイムアタック,制限時間内に計測ポイントを通過して走行距離を競うチェックポイント,一定時間で最下位の車が脱落するエリミネーターなど,前作でおなじみのレースモードも用意されている。
従来のレースゲームにはなかったのがオーバーテイクだろう。コース内をゆっくりと走る邪魔カーを追い抜くと加算されるポイントを競うレースモードで,1台追い抜くたびに100点,200点,300点……と最大1000点まで獲得ポイントが上昇。ただし,制限時間内に追い抜けなかった場合は,獲得ポイントがマイナス100点になってしまう。また,邪魔カーや壁などに接触すると100点に戻るので,大胆かつ繊細な走りが要求され,シンプルなルールだが熱くなってしまうのだ。
レースを盛り上げる要素として,必要不可欠なのがライバルだ。どのレースでもライバル車が1台設定されており(車の上に名前が表示される),ライバルよりも先にゴールしたくなる。ライバルは,コーナーに差し掛かるとインを閉めたり,幅寄せしてきたり,追突したりとなかなか人間臭い走りをするため,レースが非常に盛り上がるのだ。なお,ライバルを含めて,ほかの車の速さはオプション設定により5段階に変更可能なので,プレイヤーの腕に関わらず誰でも熱いレースを楽しめるはずだ。
アメリカ,ヨーロッパ,アジアが舞台
ストリート&サーキットを走り抜け
シーズン1はアメリカが舞台。カリフォルニアの海岸線をモチーフにしたオープンコースや,シカゴとマイアミの市街地コース,そして世界三大レースの1つであるインディ500の開催地 インディアナポリス・モーター・スピードウェイも登場する。
ヨーロッパを転戦するシーズン2は,コース上からサグラダ・ファミリアが見えるバルセロナ,凱旋門やエッフェル塔を望めるパリの市街地コース,特徴的な建物が建ち並ぶコート・ダジュールのオープンロードコースなど,美しい風景も魅力的だ。レースファンならご存じのレッドブル・リンクやブランズ・ハッチ,アルガルヴェ国際サーキットといった有名サーキットも走れる。
シーズン3でいよいよ舞台はアジアへ。日本の奥多摩を舞台にした峠コースが登場するほか,建設中の高層ビルが並ぶドバイ,夜景に見とれてしまいそうになる香港の市街地コースなど,ほかの地域よりテクニカルなコースが数多く用意されている。F1初のトワイライトレースが開催されたヤス・マリーナ・サーキットは抜けないコースとして有名だが,真偽のほどを自分で確かめることもできる。
続くシーズン4,5では,さまざまな地域のコースが混在することになる。3ラウンドのレースがそれぞれ別の地域で行われることもあるので,さまざまなコースの特徴を掴んでおくことが勝利につながるだろう。
新搭載のシステム“LiveRoutes”にも触れておこう。市街地のLiveRoutesコースでは,走行中にリアルタイムでルートが切り替わる。直前でルートが表示されるので,即座に対応する判断力や腕が試されるのだ。通常のレースでは画面左下にコースマップを確認できるが,LiveRoutesコースでは表示されないため,当然難度もアップしている。コースを走り込んで,ルート分岐のパターンが予測できるようになれば,攻略しやすくなるはずだ。
また,さまざまなシチュエーションのコースには,レース中だと見逃しやすい演出や美しい風景が随所に散りばめられている。たまにはレースそっちのけで,お気に入りの車でノンビリ走ってみると思わぬ発見があるかもしれない。
市販車から高級スポーツカー,そしてレースカーまで
幅広い車を乗りこなそう
収録されている車種は,一般道で見かける車から高級スポーツカー,レースカーのほか,多数の国産車がラインナップされている。中には,KTM クロスボウ RやASTON MARTIN One-77といった珍しい車も登場する。
本作は,レースに挑戦していくことで新しい車が手に入るので,豊富な車種を乗り比べて挙動の違いを味わえる。また,ダウンロードコンテンツで新たな車が配信されており,今後の展開も気になるところだ。
Aston Martin One-77 |
Mercedes SLR 722 |
Ford Focus ST 2013 |
Mazda RX7 Type RZ |
Honda S2000 Ultimate Edition |
AUDI RS5 Coupe |
Caterham-Lola SP300R |
Volvo S60 BTCS |
自分で手に入れた車に,エアロパーツやチューニングパーツの装着はできないのは少々残念だ。とはいえ,カラーリングやデザイン,ホイールを好きなように変更可能で,オリジナリティ溢れるマシンを作ることはできる。また,契約スポンサーのステッカーを貼ることも可能になっており,さらに各スポンサーが設定する「レースで3位以内に入る」「ドリフトを決める」などの条件をクリアするとファン獲得につながるのだ。
車の挙動については,コードマスターズらしく幅広い層のプレイヤーが楽しめる“アーケード寄り”な印象となっている。ただ,車ごとに最高速度,加速,出力,重量,駆動タイプ(駆動方式とグリップ/バランス/ドリフトなど挙動特性)が設定されており,これらをベースにして各車の個性が生み出されている。これまでに多数のレースゲームを手掛けてきた同社だけあって,荷重移動などをうまく再現しつつも,車を操る楽しさを存分に味わえるのは「さすが!」と言ったところだ。
“TrueFeel”ハンドリングシステムと呼ばれる,実際の車を操作した際の感触をゲーム内で再現する新技術にも注目したい。
例えば,最初に車に乗ったときは緩いカーブでもリアが流れてコントロールが難しく,乗りにくさを感じる。しかし,操作するうちに徐々にコントロールしやすくなり,最初のときとは次元の違う走りが可能になるのだ。同じ車を操作することで慣れていく感覚が再現されており,思わずニヤリとしてしまった。
車のボディには,クラッシュや接触によるダメージが再現される。本作は接触が多いので,新車のような綺麗なボディのままゴールすることはまれだ。ダメージの影響は,オプションの設定で見た目だけにするのか,車の挙動に反映させるのかを選択できる。後者の場合はダメージが大きくなると,ハンドルを真っ直ぐにしていても左右にブレてしまったり,コーナーが曲がりにくくなったりする。また,ラジエーターを破損した場合には,しっかりエンジンが冷やされずにパワー不足でスピードが伸びないなど,ダメージがリアルに反映されていることを実感できる。
もちろん,前作同様,時間をちょっとだけ巻き戻せるフラッシュバック機能が搭載されているので,派手にクラッシュしても挽回は可能だ。しかも,前作よりも使い勝手が向上しており,アグレッシブな走りをサポートしてくれる。
人間とのバトルが熱いマルチプレイ
レースに勝って賞金と経験値を手に入れよう
キャリアモードの「スプリットスクリーン」では,オフラインで画面分割による2人対戦が可能だが,やはり対戦するなら世界中のプレイヤーが相手になるオンラインマルチプレイに挑戦したい。「GRID ONLINE」では,最大12人のプレイヤーとマルチプレイ対戦が楽しめる。
手軽にプレイしたいなら,メニューから「オンライン・プレイリスト」を選べばいい。レース中のホストプレイヤーに接続されるので,あとは思う存分にレースを楽しむだけだ。
「オンライン・カスタムイベント」では,自分がホストになってコースやルールなどを決めることができる。マルチプレイで選択可能なレースモードは,通常のレースのほかにタイムアタック,チェックポイント,ドリフト,フェイスオフ,耐久レースがある。
やはり人間相手の対戦は,時間を忘れてプレイしてしまうほど熱くなるが,スタート直後に追突されたり,レース展開などお構いなしに突っ込んでくるプレイヤーにイライラすることも事実だ。しかし,本作のマッチングシステムは,衝突やコーナーカットなどのパフォーマンスからプレイヤーを評価し,同じタイプのプレイヤーがマッチングしやすいように進化しているとのこと。マルチプレイのプレイ時間が長くなればなるほど,新しいマッチングシステムの恩恵が感じられそうだ。
マルチプレイではレースを戦って経験値を獲得すると,プレイヤーレベルが上がっていく。これにより,マルチプレイで使用できる車がアンロックされるのだ。そのうえで,稼いだ賞金と引き換えに車を購入しなければならない。このあたりがキャリアモードと大きく違うところだ。
また,コードマスターズのオンラインコミュニティ“RaceNet”に対応しており,ユーザー登録をすると,ゲームやフレンドのデータを閲覧したり,RaceNet限定イベントに参加できるようになる(ただし、同コミュニティは基本的に英語表記)。とくに「RaceNetグローバルチャレンジ」は毎週新しいチャレンジが更新され,ランキングの結果に応じて経験値と賞金が獲得できるのでチェックしておきたい。ほかにも,FacebookやTwitterでマルチプレイの状況を公開したり,YouTubeにムービーをアップロードできたりと,レースゲームのオンラインコミュニティの広がりを実感できるはずだ。
マルチプレイではとにかくレベルを上げて,速いマシンを購入するのが鉄則。地道にレースを繰り返して,賞金と経験値を稼ぐべし |
マルチプレイなら車のアップグレードが可能だ。エンジンやドライブトレイン,ハンドリングを強化して,ライバルに差をつけたい |
車の挙動のリアルさ,車をコントロールする楽しさに関しては,コードマスターズらしいバランスの良さが感じられる。レースゲームの熟練度を問わず,どんなプレイヤーにもお勧めできる絶妙な職人技と言ったところだ。美しいグラフィックスで描かれた風景や,動きの読めない人間同士のバトルを楽しめるマルチプレイも好印象。その反面,収録車種が前作より少ないことや,運転席からの視点がないことなど,ちょっと気になる部分もある。とはいえ,レースの楽しさが実感できる要素は豊富に盛り込まれており,前作をしのぐ完成度と言っていいだろう。
「RACE DRIVER GRID 2」公式サイト
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