インタビュー
F.A.T.E.システムで世界は動く――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」クローズドβテスト・フェーズ1開始直前,吉田直樹氏インタビュー
吉田氏もゲームパッド派に? 直感的な操作が可能な世界初のMMO専用ゲームパッドUI
最後に,PS3版についてお話します。
改めてになりますが,PC版とPS3版は同時発売を予定しています。そしてもちろん,どちらからでも同じサーバーに接続してプレイできます。
アカウントに関しても,PC版で使っていたものをPS3版で使えますが,コードをお買い上げいただいて,PC版のアカウントをPSNアカウントにバインドしていただく必要はあります。
4Gamer:
ロードマップでは,PS3版のβテストは,フェーズ3(以下,β3)からの予定ということですね。
吉田氏:
はい。β3からPS3版のテスター当選者の方は参加できます。
4Gamer:
ちなみに,PS3版のテストクライアントは,ダウンロードになるんですか?
吉田氏:
そうです。ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)さんに協力していただき,PlayStation Network上でまずダウンローダーを落としていただいて,そのソフトからスクウェア・エニックスのサーバーにつないで,クライアントをダウンロードするという形になります。
4Gamer:
なるほど,ディスク配布といった形ではないんですね。
吉田氏:
そして,PS3版と言えば世界初のMMO専用ゲームパッドUIですが,良い出来になったなと思っています。もちろん,PCでもゲームパッドモードとして使えますが,PS3版のプレイヤーのために開発したUIなので,楽しみにしていただきたいですね。
4Gamer:
動画を見てみると,L2/R2を押すと,ちゃんとその操作で使えるアクションの内容(名称)がポップアップするんですね。すごく分かりやすいと思いました。スクリーンショットが公開された当初は,アイコンを覚えておかないといけないと思っていましたから。
吉田氏:
ええ,最初の印象はそうなんですよね(笑)。ですから,今回は実際のプレイ動画にしてみたんですよ。ご覧いただいたように,MMOだということを感じさせないインタフェースが実現できたと思います。
4Gamer:
このデザインに行き着くまで,紆余曲折はあったのでしょうか。
吉田氏:
実は,デザイン自体は1発で決まっているんですよ。確か,皆川(※)と2011年の4月くらいから議論を始めたと思います。当時,旧FFXIVのアップデート計画がだいたいできあがり,並行していた新生のサーバー設計やグラフィックスの水準だったりの基幹思想もできあがったころで,いよいよゲームパッドモードだねと。そして出てきたのが,(2011年)9月中旬くらいかな。
※皆川裕史氏:新生FFXIV リードUIアーティスト兼リードWebコンテンツアーティスト
4Gamer:
かなり早い段階で固まったんですね。
ええ。そして,僕が皆川にオーダーしたのは,アクションを選ぶという行為をカットしてくれというものでした。
マウス/キーボード操作だと,ショートカットにアクションを入れてしまえば,ターゲットしたあとにワンキーで発動するじゃないですか。マウスでの発動もアイコンをクリックするだけの1アクションです。
でも,旧FFXIVの操作はターゲットしたあとに「アクションを選ぶ」「押す」になるので,1手順多くなります。これがマウス/キーボードインタフェースと比較したとき,入力速度差で致命的になります。
4Gamer:
旧FFXIVの場合,ゲームパッドで遊ぶときは,ホットバー上のアイコンを左右で選んでいましたね。忙しい場面ほど大変です。
吉田氏:
とにかくアクションを選ぶという行為を必須にしないでくれと頼んだんです。そうするとシフト押しにするしかないだろうね,とだけ僕からオーダーして,上がってきたのが最初からあの見た目だったんです。
4Gamer:
なるほど。
吉田氏:
実際に作って触ってみるまでは,僕も皆川も本当にいけるか不安でしたが,組み上げてみてうちのバトルチームにも大好評だったので,いけるかなと考えました。もう皆川は,ずっとパッドモードでしかプレイしていないですし(笑)。
僕は両方を確認しなくちゃいけないので,両方を使い込んでいるんですが,もしかして,これゲームパッドのほうがいいのかな……なんて思い始めています。
4Gamer:
吉田さんから,その発言が出るとは。でも,確かに映像を見ていると,すごく直感的に遊べそうなんですよね。
吉田氏:
例えば,ターゲットを決めてロックオンしたら,R2の4スロットを使いながら,キーボードも同時に使う。突き詰めていくとゲームパッドも使ったほうが上にいくんじゃないか,というのが正直な感想なんですよ。
4Gamer:
戦闘中にゲームパッド片手に,キーボード操作……なんか斬新です(笑)。
吉田氏:
あくまで最終的にいきつけば,の話ですけど(笑)。今回は片手側だけでもパレット自体は8枚あるので,例えば,パレット1にパレット2を呼び出すアクション,パレット2にパレット3を……と切り替え用のアクションを入れておけば,残りの3つのスロット×8枚のパレットで,24アクションが可能になります。
4Gamer:
それだけあれば,十分ですね。
吉田氏:
そしてもう片方には,バフだったり,挨拶だったり,1回使えばしばらく使わないものを登録していると,住み分けもできますしね。
4Gamer:
急いで使わないものは,方向キーに手を戻してから使うと。消費アイテムもスロットに入るんですか。
吉田氏:
基本的に,マウス/キーボードモードでアクションパレットに入れられるものは,ゲームパッドモードのクロスホットバーでも全部入ります。
4Gamer:
ところで,動画を見ていて気になったんですが,ターゲットをパーティメンバーに切り替えたときに,パーティメンバーリストの該当キャラクターにアンカーが付いていませんでした。これは,ヒーラーが迷いそうだなと。
これは対応がまだなんです。ちゃんと分かりやすくしますので,そこはご安心ください。現状でも,例えば回復専用のパレットを作って,パーティプレイヤー1にケアル,プレイヤー2にケアルという感じでマクロを入れておけば,ターゲットしなくてもHPバーを見ながら,ボタンを押すだけでもケアルはできます。
4Gamer:
ところで,動画のキャラクターが着ていた装備はヘビィ・ダークスチールですが,あのカラーリングは旧FFXIVにはなかったですよね。
吉田氏:
ええ,β3から染色できますが,あれはその一つですね。いま,すべてのアセットにカラーエディット対応をやっている最中なんですよ。
4Gamer:
もう一つ,しれっとヒナチョコボが後ろをついてきていました。絵としては何度か見たものですが,今回のムービーでも役割が何の説明もないままだったので,あれれ? と思ったのですが。
吉田氏:
ああ(笑)。あれは,ミニオンと呼んでいるキャラクターで,遊びというか,コンテンツというか,単純にプレイヤーについてくるだけです。
4Gamer:
あー,そういうものだったんですか。確か,ボムもいましたよね。
吉田氏:
ええ,いっぱいいるので,好きなものを手に入れて連れて歩いてください,というものです。
4Gamer:
とくに成長するわけではないんですね。
吉田氏:
ないです。ですので,フォーラムでも「そんなに期待するものではない」と言っていたのですが(苦笑)。しかし,その分だけ我々もかなりの数を作れるので,店で売っているもののほか,コンテンツやクエストのクリア報酬で手に入るものもあります。
4Gamer:
てっきり戦闘に参加するものかと思っていました。
吉田氏:
それは,以前からお話している「バディ」を別に作っているので(笑)。
4Gamer:
そうでした。そういえば,旧FFXIVで乗っていた騎乗用のチョコボは,そのまま新生FFXIVに引き継がれるんですよね。
吉田氏:
はい。騎乗用というか,彼らがバディになります。バディ専用のチョコボがいるわけではありません。それに,プレイヤーのみなさんも,これまで一緒にいたチョコボに思い入れがあると思いますから。
4Gamer:
では,付けた名前も一緒に引き継げるんですか。
吉田氏:
はい。引き継がれて,ちゃんと名前も表示されるようになります。
公式自らPC版とPS3版の比較動画を公開。次世代機,将来への対応は?
4Gamer:
今回,三都市分のウォークスルームービーと,ハンズオンでウルダハ/リムサ・ロミンサを見せていただきましたが,光の使い方がすごく特徴的だなと思いました。
ええ,ライティングの表現には,かなりこだわっています。奥行きに対しての霞んでいるところとか,とくにウルダハでは乾いた空気の中で,太陽の強い照り返しを表現していて,意図的に屋根などが白飛びするようにしています。リムサ・ロミンサの海に関しては,飛び込みたくなるような海にしてくれと言っています。なんか気持ちよさそうですよね(笑)。
4Gamer:
実際に飛び込めないんですか?
吉田氏:
まだダメです(笑)。
4Gamer:
お,“まだ”ですか。飛び込めるようになる日を楽しみにしています(笑)。
吉田氏:
落下ダメージは入りましたけどね。
4Gamer:
確か,β1のテスト内容に落下ダメージの検証が入っていましたね。これは高さによってダメージが変わるんですか。
吉田氏:
そうです。死亡ダメージが出た場合は,残り1に丸め込みます。ただし,モンスターのヘイトリストに載っていると,結局死んでしまいますけど(※ヘイトリストに載った状態では丸め込みが発生しないとのこと。2月22日配信のレターLIVEより)。
これに関連して,αテストのマップ範囲のコリジョン(※いわゆる見えない壁)を全部外したので,行ける場所はかなり増えています。ですので,例えば木箱の上にアチーブメントを置いておいて,プレイヤーが見つけるといったこともできるようになりました。アクションゲームにするな! と怒られそうですけど(笑)。
リムサ・ロミンサ レッドルースター農場付近 |
リムサ・ロミンサ シダーウッド付近 |
リムサ・ロミンサ モラビー造船廠付近 |
リムサ・ロミンサ オシュオン大橋 |
4Gamer:
いろいろなところに行けるのは楽しそうです。その分,スタック対応のサポートも大変になりそうですけど。あとリムサ・ロミンサなどには,高低差のかなり大きなところがありますが。
吉田氏:
塞ぐところは,ちゃんと塞ぎました。さすがに新米のプレイヤーさんが転落死オンラインにならないように,ですね(笑)。
4Gamer::
「EverQuest」のWood Elfの街ですか(笑)。
吉田氏:
僕もEQを始めたときはWoodElfだったんですが,なんで街にこんなに死体があるのかなと思ったら,5分後に自分が死体になってましたね(笑)。柵で止まってくれると思ったら,自動で乗り越えて転落死と。
4Gamer:
そして,さらに水で溺れるわけですね(笑)。そんな移動時のハプニングから聞くわけではないのですが,ウルダハやリムサ・ロミンサにおける,移動時の利便性はどうでしょう。αテストのグリダニアでは,「都市内転送網」がありましたが。
吉田氏:
施設は全部揃えています。移動に関しても都市内転送網を引くので,三都市の利便性は互角ですね。最初の1回だけ移動距離が変わるかもしれませんが,そこまで一緒だとどこも同じような街になってしまいますから。マーケットは三都市をつないでいるので,どこで出品するというのは関係なくなります。
4Gamer:
(人の多い)ウルダハに張り付いておかないと,みたいなことはなくなりそうですね。
それにしても,PC版とPS3版で同じ場所を比較する動画を,公式で公開するというのは,ずいぶん思い切ったことをするなと思いました。もちろん,プレイヤーは気になるだろうとは思いますが。
ウルダハ エメラルドアベニュー |
ウルダハ サファイアアベニュー国際市場 |
ウルダハ 中央ザナラーン |
ウルダハ シラディハ遺跡付近 |
グリダニア キャンプ・トランキル付近の夜 |
グリダニア シルフの仮宿 |
吉田氏:
気になりますよね(笑)。きっと別々に出しても,編集して比較動画を作るでしょうし,それなら公式でやりましょうと。
4Gamer:
なるほど。PS3版は,この動画でどれくらいの完成度になるんでしょうか。
吉田氏:
最適化という意味では,これで75%くらいですね。クオリティがほぼ確定できたので,あとは動画でも感じるとおり,フレームレートの高速化を最後の山場として行っています。今はもう何ミリセカンドだったり,マイクロセカンド削るというところまで突入しています。ですから,まさにPS3の性能の限界に挑戦している最中ですね。SCEのテクノロジストの方にも協力していただきながら,まだPS3でもここまで行けるぞという限界を目指しています。
4Gamer:
まさに佳境といったところですね。
吉田氏:
はい。動画を見ていただくと分かると思いますが,かなり細かくLOD(遠景)の処理を行っています。たぶん,自分の周辺を見ている限りでは,PC版とあまり区別がつかないんじゃないかなと思います。もちろん,細かなクオリティは下げていますが。
4Gamer:
PS3版の表現は,PC版で言うと,どれくらいのスペックになりますか。
吉田氏:
PC版には,標準/高品質/最高品質といったプリセットを用意していますが,PS3版は標準と高品質の中間くらいのセットアップになります。ただ,PC版の標準プリセットは,シャドウが全部オフになりますが,PS3ではシャドウを全部適用しているので,そこまでクオリティが落ちません。
4Gamer:
細かなところは,PS3用に調整しているわけですね。
吉田氏:
一方でキャラクター表示数は,メモリの問題でどうやってもPCには勝てません。何が一番の差かというと,そこですね。ですが,そもそも新生FFXIVは,最大コンテンツの人数を想定して作っています。最大でもクリスタルタワーを始めとするアライアンスレイドで,24人と決めているので,そこさえ維持できればという感じですね。
ウルダハ エメラルドアベニュー |
ウルダハ ルビーロード国際市場 |
リムサ・ロミンサ 眼鏡岩付近 |
リムサ・ロミンサ モラビー造船廠付近 |
グリダニア 十二神大聖堂付近 |
グリダニア 十二神大聖堂前 |
4Gamer:
PC版はクオリティの上限を設けることはなく,天井知らずにするということでした。そうするとコンシューマ版はどうなっていくのか気になりますよね。(次世代機の噂が出ている)このタイミングでお聞きしたいのですが,いずれ次世代機が登場したとき,それに対応していくのでしょうか。
※2013年2月21日,PlayStation 4が発表された(関連記事)
吉田氏:
うーん,次世代機に関しては,現時点で正式なコメントが出ていませんので。
まずは,プレイヤーのみなさんにずっとお約束していて,お待たせさせてしまっているPS3版を,満足していただける状態でリリースするのが最優先です。そのために,その何マイクロセカンドという世界のなかで,対応をしています。というか,今,うちの開発にPS3以外のことを言うと「ふざけるな」と言われますよ(笑)。
4Gamer:
それは……そうでしょうね(笑)。
吉田氏:
ただ,次世代機というものが仮に発表されるとしたら,間違いなくPS3よりも性能が上がるわけですから,新生FFXIVのクライアントを動かすこと自体は何の苦でもないことです。
それこそ,サーバーをクロスプラットフォームで展開してもいいというお話があれば……仮に,PlayStationの次世代機が登場するとしたら,同じPlayStationのグループですから,同じサーバーにするのはダメだとは言わないと思います。
4Gamer:
そうですね。MMORPGですから,どのプラットフォームで出るにせよ,どこからでも共通のアカウントで,共通のサーバーにゲームに接続できるという環境を,プレイヤーが選択できるものが望ましいと思います。
吉田氏:
やはり,社運を賭けているプロジェクトですから,一人でも多く,一台でも多くのハードで遊んでいただきたいんです。
そのために,まずはPC版とPS3版をしっかりとやります。その後,世界中の人にもっとプレイしてもらうために,いろいろなことをしていくつもりです。
4Gamer:
何よりも再始動を成功させることが,「FFXIV」という作品では重要なことでしょうね。
吉田氏:
はい。いまはPC/PS3版を待っていればいい。でも,その先に未来もあるかもしれないよ,くらいに思っていただけると。もちろん,お話できるタイミングがきたら,何かしらさせていただこうと思います。
4Gamer::
分かりました。では最後に,本作のクローズドβテストを,そしてこれからの展開を待っている読者に向けてコメントをお願いします。
吉田氏:
本当にお待たせしました。いよいよ製品版ローンチに向けてのクローズドβテストが始まります。おかしな話ですが,プレイヤーのみなさんが,FFのナンバリング作品の開発に参加するという機会はめったにないと思います。
今回,ここまでおつきあいしてくれたプレイヤーの皆さんには,最初から参加できるようにさせていただいきますので,ぜひたくさんプレイをしてください。無理にフィードバックしなくてもいいです。楽しく遊んでください。これからも突っ走っていくので,ぜひたくさんの人に参加していただけたらと思っています。よろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」公式サイト
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