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「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く
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印刷2013/06/08 00:00

インタビュー

「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く

「ひゅ〜ストン」で3DSに参入し,

首の皮一枚つながった


画像集#006のサムネイル/「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く
4Gamer:
 3DS参入の第一弾タイトルは,「ひゅ〜ストン」でした。
 井戸に石を投げるだけのゲームを思いついたのには,何かきっかけがあったんでしょうか?

石川氏:
 任天堂で発売前の3DSを見せてもらったときに,「これは凄い! 奥行きが! 奥行きが!」となりまして。

中川氏:
 その話を,僕と北郷に一生懸命するんですけど,何を言ってるのかさっぱり分からないんですよ。何やら興奮はしているんですけど。とにかく「これは売れるよ!」と言っていて。
 そんなに奥行きが凄いなら……ということで,その翌日ぐらいに「奥行きのゲーム」という企画を出したんです。

石川氏:
 何か変なポエムが書かれていたという。

中川氏:
 「井戸の中に何があるかな? 分かりますか……?」みたいな企画書でした。ちょっとファンシーな感じで,まさかあんなテクノな曲が流れるゲームになるとは,その段階では思ってもなくて。

石川氏:
 ノリと勢いでゲームを作ってるんで,最初と最後が違うものになったりもするんです(笑)。

4Gamer:
 ひゅ〜ストンに限らず,ポイソフト作品に共通している部分だと思うんですが,ゲームとして提示されているものは凄くシンプルなのに,プレイヤーによって違う遊び方ができそうな,幅のようなものを感じます。

中川氏:
 石川の根っこには,「ゲームはプレイヤーの好きなように遊ばせたい」という思いが強くあって,それがゲームに出てるんでしょうね。
 彼の意見は「あれもしたい,これもしたい」というものが多くて,僕はどっちかっていうと「ゲームの芯はこれだから,これは必要ない」という具合に引いていきたいタイプなんです。
 だからゲーム作りが,足しては引いてということになりがちで,時には激しい議論にもなるんですけど,最終的に出来上がったものは「何でもできるし,芯がある」というものになっている……といいな!

石川氏:
 僕はゲームの芯が通っているかより,テーマの芯が通っているかを重要だと思ってるんです。ひゅ〜ストンだったら,落ちて行ければいいよっていう。で,せっかく落ちるんだったら,ドーナツで加速してタイムアタックに挑めるような遊びも入れたくなるわけです。

中川氏:
 僕は落下するだけの不自由感を強調したかったんで,ドーナツをくぐって加速とかになると,ズルしている感じがするんですね。でも確かにレースゲームというような観点からだと,アリな設定だし,実際にそれで遊んでみて面白くなったという実感もあったんで,これでいこうと。

石川氏:
 まあでも,レースゲームだったらゴムボールは入らないですよね,木魚とかも。

中川氏:
 ぽよーんぽよーんとか,ポコッポコッていうだけですから(笑)。マトリョーシカも,だんだん小さくなっていったら面白いよね,っていう。

石川氏:
 結果,ゲームとしては思ったより難しいという。

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4Gamer:
 ちなみに,この作品で3DSに参入してみて,いかがでしたか?

中川氏:
 首の皮一枚つながったかな,と(笑)。

石川氏:
 すぐに会社が潰れることは,とりあえずないかな? というところまでは来ましたね。
 会社って最初は種まきなんですよ。ずっと種をまきながら,「これ,実るかなぁ?」と思っていたんですけど,「実る気がするね」というとろまで来た,というぐらいです。

4Gamer:
 例えば規模の多い会社であれば,同時に複数のプロジェクトを動かしておいて,どれかが当たればOKみたいな考え方もありますよね。
 そうではないけれども,大丈夫だろうという自信が持てるようになったのに,何か理由はありましたか?

石川氏:
 まあ,何となく?
 それでも,この人数で複数のプロジェクトなんてことになると,制作は3人しかいないわけですから,1人と2人のチームで……。
 しかもそのうち1人はデザイナーですからね。片方は完璧にアスキーアートのゲームになります(笑)。

4Gamer:
 それはそれで遊んでみたい気もします(笑)。

石川氏:
 現実問題,複数のラインを走らせたとしても,10本出した時点での人月は変わらないと思うんですよね。なので今の規模のまま,1本ずつ作っていって……その,死ぬ前に……何かいい状況になればいけるだろうっていう。

4Gamer:
 ポジティブですね!
 でもそうやっていく中で,例えばひゅ〜ストンの海外展開なども決まっているわけで,いい状況になってきたんじゃないでしょうか?

石川氏:
 いやぁ,本当におかげさまで(笑)。
 ひゅ〜ストンの海外展開に関しては,手が回らないというのもありますし,僕らが英語もろくにできないというのもあって,基本的に任天堂さんにお任せしているんですが。

中川氏:
 一応,翻訳から何から全部やったら……という試算はしたんですけど,ちょっと厳しいな,と。

4Gamer:
 あ,それで海外では任天堂がパブリッシャという形になっているんですね。
 ところで,ひゅ〜ストンを作るとき,何か苦労された点はありますか?

石川氏:
 物理演算を入れたら,重くなったところですね。しかもそれが,ゲームの面白さに直結していないという(笑)。

4Gamer:
 ひどい(笑)。

石川氏:
 後ろのほうの木がごろんごろんっていうだけなんで……。

中川氏:
 物理演算を入れたら面白いって話だったんで……。いろんなものがバラバラ壊れたら面白いなって。

石川氏:
 確かにそうなるんですけど,最適化はしなければいけなくて,そこでの苦労はありましたねぇ。

中川氏:
 まだ3DS向けに開発する経験も無かった頃なんで,体当たりで作ってみて,やきもきするようなことはありました。

石川氏:
 とはいえ,総じて作りやすい気はしています。

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「タケヤリマン」の原点に

「エキサイトバイク」が……?


画像集#011のサムネイル/「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く
4Gamer:
 続いての作品,「タケヤリマン」についても聞かせてください。これもまた……何でこんなことを思いついてしまったんだろう? という印象を最初に持ちました。

中川氏:
 これは,北郷に無茶振りをした結果,生まれたものなんです。

石川氏:
 彼はすごく真面目で,普段から面白いことを言うタイプでもないんですけど。

中川氏:
 ミーティングで煮詰まって,何をしたらいいか? となったとき,北郷に「何か面白い単語ない?」と聞いてみたんです。そうしたら彼が,「ベ,ベルトコンベヤー」と言い出して(笑)。

4Gamer:
 なぜ(笑)。

中川氏:
 それを僕と石川が面白がって,「これだ!」って。「じゃあ向こうから敵が迫ってきて……」。

石川氏:
 「それをバターンって押したらバタンと倒れると面白いぜ?」

中川氏:
 そういう感じでわーっと盛り上がったんです。

石川氏:
 で,「何で倒す?」「竹槍か何かで突いておけば?」「じゃあタケヤリマンだね!」という具合です。

石川氏:
 未来のゲーセンにはそんな遊びがあるんじゃないかな? という設定にして。
 最初のイメージは,的の付いた鬼にボールを当てると「ガオー」と叫ぶ,あれなんですけどね。それがひっくり返ったら面白いだろうし,迫ってきたら怖いだろうし……という感じです。最終的にベルトコンベヤーはなくなってしまったんですけど(笑)。

中川氏:
 竹槍は生きてるのに(笑)。

石川氏:
 ベルトコンベヤーだと,こちらに迫ってきても横の動きがないのがつまらないな? って。

中川氏:
 「ベルトコンベヤーっていう設定,邪魔じゃない? はずそう!」ということになってしまって。

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4Gamer:
 そこでなぜ,竹槍だったんでしょうか? ゲーマーとしては,サンソフトの「いっき」に竹槍が出てきたことなんかを思い出したんですが。

石川氏:
 いや,そこは全然関係ありませんでしたね。
 ……実は関係あるのは「エキサイトバイク」で。

4Gamer:
 へ?

中川氏:
 そうそう。当時,「3Dクラシックス エキサイトバイク」が出たのを見て,ポイソフトがエキサイトバイクをリメイクしたらどうなると思う? という話をしていたんです。
 で,「エキサイトバイク,エキサイトバイク,エキサイク,イクサイク……戦行く!」となって。

石川氏:
 そう!

中川氏:
 竹槍を持って戦に行けばいいんだ! という(笑)。

石川氏:
 だから,竹槍で戦争に行く農民の話という設定があるんです。

4Gamer:
 エキサイトバイクの関係者もびっくりでしょうねぇ(笑)。
 ちなみにタイトル候補には,ほかにどんなものがあったんですか?

石川氏:
 「バンブーなんとか」とか,格好つけたのも考えていたんですけど。

中川氏:
 タケヤリマンって僕が言ったら,それを石川が面白がったんです。

石川氏:
 そんなの言われたら,ほかにないなって思って。

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4Gamer:
 前の2作とうってかわって,次の作品はシミュレーションゲームの「夜の魔人といくさの国 〜さまよえるヴァンピール〜」でした。王だぁ! の続編的位置付けとのことでしたが,これは原点に戻ったということなんでしょうか。それとも,ひゅ〜ストンとタケヤリマンを経て,前に進んだということなんでしょうか。

石川氏:
 進んだと思いたいです……いや,進んだつもりです!

中川氏:
 続編的な位置付けというのは,中身のプログラムでけっこう流用している部分があるんですね。で,前は王様だったけれども,今度はヴァンパイアがやりたい放題やるようなイメージで,国で一番偉い人を噛めばクリア! という。

4Gamer:
 なぜ王様ではなく,ヴァンパイアにしたんでしょう?

石川氏:
 一回やったネタを繰り返すより,新しいことをやりたかったんですよね。
 それに,王様を主人公にした正統な続編となると,もっといろいろと,ちゃんと膨らまさなければいけないですから。

中川氏:
 1と同じようになってはいけないし,かといって違うものになりすぎてもいけないし。

石川氏:
 映画でもなんでも2が名作のことってあるじゃないですか。だから,本当に名作を作れそうな気がしてきたら,ちゃんと2を作ろう……みたいな気持ちはあるんですけど。

中川氏:
 だから,続編を一切作らないというわけではないんです。

4Gamer:
 あくまで機が熟すのを待っているんだ,と。

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「ソフトバンクが勝つと外がうるさい」から生まれた

「マンションパーカッション」


画像集#027のサムネイル/「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く
4Gamer:
 その次に出てきたのが,マンションパーカッションというのも,もの凄い話だと思います(笑)。

中川氏:
 これも実は,デザイナーの北郷のひと言から始まったんです。
 ミーティングの時に「最近,気になることはない?」と聞いたら,「部屋の外で女の人がうるさい」と言い出したんです。よくよく聞いてみると,「ソフトバンクが勝つとうるさい」って。

石川氏:
 球場の側に住んでいる彼が悪いんですけど。

中川氏:
 でも,うるさくても文句は言えないんですよ。
 だったら……壁を叩け! という話になったんです。「今度は君のストレスを発散するゲームにしよう。窓の外がうるさいときはこの声を出して,壁をドンドン叩いてきたらこっちも叩き返して,それがやがてリズムになったらどうだ?」みたいな話になって,盛り上がったんですね。

石川氏:
 だから最初の企画書には,赤ちゃんが窓の外で泣いていたら,そっちにおしゃぶりを投げる。すると,「ヒューン,スポン! オギャーオギャー! ヒューン,スポン」……で,黙る。これを音楽にしようというのも描いてありましたね。
 ただ,そうやってシチュエーションを考えていくと,シチュエーションの数だけボタンが必要になるんです。そうすると,3DSでは足りない。なら,シチュエーションを削ってしまおうと。

中川氏:
 それで,壁を叩く,声を出すという二つの行動だけが残って,今の形になりました。

4Gamer:
 つまり,ホークスが南海のままだったら生まれなかった作品なんですねぇ。
 実際に触ってみて驚いたのが,音楽ゲームやリズムアクションゲームにありがちな「正しい演奏」という概念が,はなから存在しないという点なんです。

中川氏:
 譜面どおりに叩くことより,自分なりのアレンジができたほうが楽しいんじゃないか,そのほうがハードルがぐんと下がるんじゃないか。そういう話はしていましたね。
 好きに叩いて,それで褒められたら嬉しいよね? という。

画像集#025のサムネイル/「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く 画像集#026のサムネイル/「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く

4Gamer:
 音楽を題材にしたゲームの多くが,緻密な演奏をシミュレートしているのに対し,まったく逆の発想ですよね。

中川氏:
 真逆ですね。ゲーム付きサンプラーというか,サンプラー付きゲームというか。遊んでいるうちに曲が作れちゃうよ? というノリの。

石川氏:
 録音機能の無い,ゲーム付きサンプラーというイメージが,一番近いかもしれません。

4Gamer:
 その例えは分かりやすいですね。
 実際,ゲーム的な気持ち良さもある一方で,ツールのような手触りを感じました。

中川氏:
 そこのバランスはけっこう考えましたね。
 石川の場合,叩くことで点数が増えるだけじゃなくて減ることもあって,失敗したらゲームオーバーみたいなデザインが好きなんです。

石川氏:
 「ストレス玉を3回壊せなかったらゲームオーバーです」だと,ゲームとしては分かりやすいじゃないですか。「ダメなこと」が明確なわけで。でも中川は,「ダメなことはナシにしよう」と言うんです。それを聞いていると,「ほっほう……この野郎」という気分になってきて。

中川氏:
 プレイヤーに対して,プラスの方向で褒めることはあっても,マイナスの方向に貶めるような要素は削りたかったんですね。
 だからこのゲームだと,「スッキリ」が0%から上昇していくんですけど,0以下にはならないし,0の状態でストレス玉を壊せなくてもゲームオーバーにはなりません。
 最後までプレイすると,「君はこんな人間だよ」みたいな称号が出るだけです。ただ叩いて,積極的に叩けば叩くほど楽しい感じにしようということで。

石川氏:
 音楽って,音を楽しむと書くじゃないですか。とにかくそこを追求したのが,マンションパーカッションなんです。

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4Gamer:
 その楽しさを突拍子もない演出が盛り上げていますよね。

中川氏:
 ステージクリア時の演出は,うちのデザイナーが魂を込めてますから。

石川氏:
 軽く「こんな風にして」と伝えたら,本当にそのまま……というか,こちらの想像を超えるものに仕上げてきて。

中川氏:
 「このテクノステージは,上がパカーって開いたら大仏の顔が降りてきてさー」みたいに言っていたら,本当にそれを作ってきて,しかも口から「おめでとう」の垂れ幕が出てるし,目からビームは出てるし(笑)。

石川氏:
 言ってみるもんだなぁって。

4Gamer:
 「またこの人達適当なこと言ってるよ……」みたいな感じではなく,全力で乗っかるというか。

中川氏:
 あとで聞いたら「面白いと思った」って言ってましたからね。

石川氏:
 「別に問題はなかった」みたいな(笑)。
 彼はゲームの絵を全部1人で作っているんで,スケジュールが常にきつきつなんですね。でも「面白いと思うし,スケジュールが間に合うなら作るよ」という感じで。

4Gamer:
 何となくですが……デザイナーさんがとてもたいへんそうだなという印象が(笑)。

中川氏:
 一番たいへんだと思いますね!
 こっちで変なこと話して盛り上がってたものをポンッと投げると,真面目にやってくれるんですけど,そこのフィルターを通さないと,たぶん不真面目すぎるゲームになってしまうと思うんです。

4Gamer:
 調整弁のような役割も担っているんですね。

画像集#035のサムネイル/「ゲームを作るのが好きだから,一生続けたい」――ポイソフトはなぜ,“こんな”ゲームばかりを作り続けていられるのか。代表取締役社長の石川 泰氏とプログラマーの中川晃宏氏に聞く
中川氏:
 そうですね。デザイナーはけっこういろんなゲームを今でも遊んでいるので,その経験を元に冷静に分析してくれたりもするんです。僕は逆に,最近のゲームはあまりやっていないので,助かっていますね。
 まあ,そんなだから僕はすごく勝手なことを言い始めるんです。で,そこから議論を重ねていって……。お互いを信頼しているからこそ,辛らつな言葉も出てくるんですけどね。「その企画完全にダメ! 吐き気がするぐらいつまらない!」とか……。

4Gamer:
 吐き気(笑)。

中川氏:
 で,「さすがに吐き気が出ちゃうのはダメだなぁ」って。

石川氏:
 「そう言われてみたら,確かに吐き気がしてきたぞ?」とか。

中川氏:
 それで考え直そうということになるんです。

4Gamer:
 ところで,マンションパーカッションを含め,ポイソフトの作品では,BGMにテクノ系のサウンドが使われていることが多いように思うんですが,それはどなたかの好みなんでしょうか?

中川氏:
 外注でサウンドを担当してくださっているt.komineさんという方が,テクノ系を得意としているというのが大きいですね。やっぱり好きなように気持ち良く作っていただいたほうが,いいものができると思いますし。

石川氏:
 実は王だぁ!の頃からのお付き合いなんですよ。

中川氏:
 サウンドに関しては,最初から外注するしかないという話はあったんです。どこにお願いすればいいのかもいろいろと調べたり,問い合わせたりもしたんですけど,なかなか条件にぴったり当てはまるところがなかったんですね。当時はお金もありませんでしたし。
 で,どうしよう? となったときに,個人で活動しているt.komineさんという方に行き着いて,お願いしてみたところ「昔からゲームの曲を作るのが夢だった」とのことで,快く引き受けてくださったんです。ただ一つ問題がありまして……。

4Gamer:
 問題,ですか?

中川氏:
 t.komineさんはアメリカにお住まいで,物のやりとりができないんです。ネットを介してのやりとりのみという感じで。なので例えば,ゲームに組み込むに当たって容量を小さくしなければいけなくても,機材を渡せないから,実機で確認してもらうことができないんです。

4Gamer:
 ああ……。

中川氏:
 結局,この音が出ていれば正しいというのが分かるムービーを撮影してもらって,こっちで再現できたらOKとか,そういう環境作りも最初はやっていましたからね。で,それももう問題なくできるようになってきたので……。

石川氏:
 ちょっと調子に乗って,音ゲーっぽいものを作っちゃおうというのが,マンションパーカッションだったという。初めてボイスも使ってますからね。t.komineさんの紹介で,転少女(ころすけ)さんという方にお願いして。

4Gamer:
 t.komineさんの作る音楽について,率直な感想も聞かせてください。

中川氏:
 もう完全に信頼しています。いつも出来上がってきたものを聴くと,「合ってる!」とびっくりするぐらいで。

石川氏:
 僕は,マンションパーカッションではタイトル曲が凄く好きで,仕事中もずっと聴いていました。凄く頭に残るんですよ。

中川氏:
 どの曲も,こちらが求める雰囲気を伝えると,そのとおりに仕上げてくれるんです。「そういう曲は作ったことがないんですけど,やってみます!」と。タケヤリマンのときも,「伊福部マーチっぽく!」と伝えたら,ちゃんと雰囲気が出ていて。

石川氏:
 しかも仕事が早いんです。

4Gamer:
 ポイソフト作品の音楽のファンだという方もいらっしゃいますよね。

中川氏:
 そうなんですよね。大いに助けられているという感じです。

石川氏:
 僕らの作ったものではないのに,「どうだ!」って思ってますよ。


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