連載
Hearthstoneで勝ち抜くためにいますぐあなたが学ぶべきこと 第6回 新拡張セット「Blackrock Mountain」をレビュー
デッキ構築について説明するという連載の性質上,ゲームの遊び方の説明は一切いたしません。すでに遊び方を理解している人が,対人で勝ち抜いていくためのデッキ作りのイロハを中心とした連載となりますので,ご了承ください。
スマホで見るときはこのQRコードからどうぞ |
Hearthstoneカードリスト
第1回 デッキとマナの関係を理解しよう
第2回 初心者向けHero4名をご紹介
第3回 クセのあるHero5名をご紹介
第4回 メタゲームとはなんぞや
第5回 マリガンとプレイングで試合を制しろ
近頃のHearthstone:新拡張の話もアツいですが,スマホ版がリリースされたのも忘れてはならないビッグニュースです。電車の中でも気軽にHearthstoneができると思うと幸せです。プレイ中に電話がかかってきて切断負けにされないかがちょっと怖いですが……。また,Koronekoさんが日本人初のHearthstoneプロプレイヤーになりました! 個人的に本人と交流があったこともあり,とても嬉しいニュースです。これをきっかけに,日本のHearthstone界がますます盛り上がってくれるといいなぁ。
恐るべき「マナコスト軽減」カードたち
今回の拡張セットにおける注目すべきギミックの1つとして,「マナコストの軽減」が見逃せない。これまでも同じギミックを持ったカードは少数ながら存在したが,本拡張ではこのギミックを持ったカードが大量に追加されている。
それらのカードの中でまず注目すべきカードは,Emperor Thaurissanだ。1週間ごとに5段階でリリースされる「Blackrock Mountain」だが,このカードは,その最初の週に登場するやいなや,さっそくランクマッチで猛威を振るっている。
基本スペックは6マナ5/5と“並”だが,「ターン終了時に,手札の全てのカードのマナコストを1下げる」というカード効果が強力無比。召喚直後のターン終了時に発動する効果だけでも十分に強力だが,多くの手札を抱えた状態で2ターン目3ターン目と生き残れば,得られるアドバンテージは絶大だ。
マナ加速で早期に6マナを生み出せるDruidとはとりわけ相性がよく,一度効果を発動するだけでも,Force of nature+Savage Roarコンボが9マナ→7マナへと軽減される。速度を求められるAggroタイプのデッキでは入りにくいが,中速以上のデッキでは入れておいてほぼ間違いないカードなので,今後のランクマッチを戦う上では確実に手に入れておきたいカードだ。
そのほかの「マナコスト軽減」カードでは,Dragon Consort,Solemn VigilといったPaladin専用のカードの強さが目立つ。前者は,5マナ5/5という十分なスペックに加えてマナコスト軽減効果がついているのが強く,後述するDragonデッキでは必須のカードとなることだろう。
後者についても,ターン中に死んだミニオンの数だけマナコストを軽減する効果はPaladinのヒーローパワーやカードと非常に噛み合っており,3未満のマナコストで打てる機会も少なくないだろう。Freeze Mageのような,ミニオンを場にほとんど出さないデッキが相手だと効果を発揮しづらいが,3マナまでで打てれば及第点であるので,汎用性は高い。今後のPaladinデッキにおけるドローの要として,期待大のカードだ。
同じくDruid専用のVolcanic Lumbererについては,ライバルのAncient of Warの存在が大きい。Silence耐性の面では勝っているが,Big Game Hunterの効果に引っかかる攻撃力がネック。コスト軽減効果で7マナ未満にしたいので,採用するなら場にミニオンを多く並べるデッキコンセプトを意識したい。
その一方,汎用のVolcanic Drakeは,積極的にミニオン同士の相打ちを狙っていくZooなどのデッキであれば十分選択肢に入るだろう。4マナ未満まで軽減できれば,6/4というスペックは力強い。
Dragonを軸としたシナジー
もう1つ「Blackrock Mountain」を語る上で忘れてはならないのは,各種カードの「Dragonシナジー」だ。本拡張では「種族:Dragon」のカード,そして,Dragonと組み合わせることで効果を発揮するカードが大量に追加されている。
特に多いのが「手札に種族:Dragonのカードを持っている時」に発動する能力で,この能力を持つカードに強力なものが揃っている。
例えばBlackwing Technicianは,能力を発動すれば+1/+1効果で3/5となり,3マナとしては破格のスペックとなる。Dragonデッキを作るときには,とりあえず採用しておいて間違いないカードだろう。Blackwing Corruptorは,5マナ5/4で能力は対象に3ダメージと,まさに5マナ版Fire Elementalと言わんばかりの効果。こちらも,Dragonデッキを作るときには,デッキの種類を問わず採用しておきたい強力スペックのカードだ。
7マナLegendaryのRend Blackhandも,状況は限られるとはいえ「Legendaryミニオンを破壊する」という強烈な効果の持ち主だ。相手のLegendaryミニオンは大体高マナミニオンであることが多いため,この効果でカウンターできれば絶大なアドバンテージへとつながるだろう。むろん,強さの原因は環境によるところが多いが,状況次第では十分に選択肢に入るカードだろう。
一方,中マナ域の「種族:Dragon」のカードも増え,Dragonに寄せたデッキ構築は,以前に比べてはるかに現実的なものとなった。Hungry Dragonは,デメリット持ちではあるものの,4マナ5/6というスペックの高さが持ち味。相手に召喚された1マナミニオンを無理なく処理できる形で召喚すれば,デメリットもほぼ帳消しにできる。Dragonデッキのみならず,Zooなどのデッキでも採用候補に入る1枚だ。
一方,Dragonkin SorcererやDrakonid Crusherの2枚のスペックはやや寂しく,デッキに入れる場合は,能力起動のために「種族:Dragon」の層を厚くする目的のためになるだろう
LegendのDragonカードは,どちらも高マナ域のドラゴンになっている。ChromaggusはBig Game Hunterに引っかからないギリギリの6/8というスペックかつ「ドローしてきたカードを1枚コピーして手札に入れる」という効果。8マナミニオンともなると,出したターンで仕事する即時性が欲しいので,正直なところ物足りない感がある。デッキに入れるなら,PaladinのDragon Consortと組み合わせて6マナで召喚する,などの一工夫が欲しいところだ。
一方,9マナ8/8のNefarianは,出したターンに「スペルカードを2ドローする」という即時性が魅力。9マナDragon枠は既にYseraやAlexstraszaという強力なライバルがいるが,"スペルを即座に2ドローする"という効果は十分採用に値する効果だ。ドローしてくるスペルカードが対戦相手のクラスに依存している,というのがやや気になるが,全く使い物にならないハズレの数もそこまで多くはないので,一定のリターンは得られることだろう。
これらのカードが追加されたことによって,Dragonデッキはこれまでと比べて飛躍的に組みやすくなった。Dragonは本拡張のテーマの1つなので,デッキビルダーを自負する方は,ぜひDragonデッキの構築に挑戦していただきたい。
そのほかの注目新カード
既に述べたカード以外の要注目カードとして,ヒーローを問わないニュートラルのカードではGrim Patronを挙げたい。
5マナ3/3と素のスペックは微妙に見えるが,「ダメージを受けて生き残った場合,新たに別のGrim Patronを召喚する」というトリッキーな効果を持っている。このカードと特に相性が良いのが,自ミニオンにダメージを与える手段とシナジーが豊富なWarriorだ。
Inner Rage,Whirlwind,Cruel Taskmaster,Death's Biteなどで容易にGrim Patronの増殖を狙える上に,Warsong Commanderと組み合わせることでChargeを付ければ即座に攻撃することもできる。Warsong Commanderを場に出した状態でGrim Patronを召喚し,増殖させることでワンショットキルも狙えるコンボになるのだ。実際にGrim Patronのリリース後,このシナジーを活かしたGrim Patron型のWarriorが徐々に増え始め,ランクマッチで一大勢力となっている。
各ヒーローの専用カードで,既に紹介したもの以外ではまずImp Gang Bossを挙げないわけにはいかない。Harvest Golem強化版といっても過言ではない高スペックのミニオンで,これまで鳴りを潜めていたWarlock Zooデッキを再びトップメタのデッキへと引き上げた。「種族:Demon」であるため,Warlockの各種カードとのシナジーもあり,環境を変えた1枚と言って差し支えないだろう。
そのほかでは,HunterのQuick Shotも外せない1枚。2マナ3ダメージスペルの汎用性は高く,場のミニオンを倒して良し,相手のTauntを無視して本体を攻撃しても良しのカードだ。特にHunterは手札が尽きることが少なくないため,追加効果の1ドローも地味にありがたい。こちらも今後のHunterデッキを考える上で無視できないカードである。
PriestのResurrectも,今後の環境では注目すべきカードだろう。2マナで「ランダムでミニオンを復活」できるカードであるが,全体的にミニオンのマナコストが高いコントロールデッキで使用すれば,概ね2マナより高いコストパフォーマンスを発揮できる。既にランクマッチのPriest Controlデッキでもよく見かけるカードとなっており,今後のPriestデッキに必携の1枚となることだろう。
新環境を堪能しよう
さて,ひと通り「Blackrock Mountain」の新カードについてレビューをしてきたが,いかがだっただろうか? 全31枚と,それほど追加カード数が多いわけではないが,内容は粒揃いのカードであり,新たなデッキを生み出すには十分な土壌と言っていい。特に,「種族:Dragon」関連とそのシナジーに強力なカードが揃っているので,これらを用いた新たなデッキが活躍する未来には,大いに期待が持てるだろう。今後のHearthstoneの環境がどう動いていくのか,新たなメタゲームに注目していきたい。
著者紹介:ルネ
カードゲームやボードゲームの攻略・レビュー記事をメインに担当するフリーライター。第1回ドミニオン世界選手権優勝,第4回ドミニオン日本選手権優勝,その他複数のアーケードカードゲームで全国ランキング入りなどの経歴を持つ。Hearthstoneでは,AmericaサーバのLegendランク18位までの到達,およびGAMERS LEAGUE Season#1でSemifinal進出経験あり。主にアナログのカードゲーム/ボードゲームが大好物だが、コンシューマ,アーケードからソーシャルゲームまで,ゲームと名がつけば何でも食いつく雑食系。
Hearthstoneカードリスト
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」公式サイト
iOS版「Hearthstone: Heroes of Warcraft」ダウンロードページ
Android版「Hearthstone: Heroes of Warcraft」ダウンロードページ
キーワード
(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.