インタビュー
「Hearthstone」開発者インタビュー。新しい拡張パック「コボルトと秘宝の迷宮」の新要素について聞いてみた
「コボルトと秘宝の迷宮」は,「World of Warcraft」のプレイヤーにはおなじみの“コボルト”と呼ばれるクリーチャーを題材にしたものだ。
同作では,頭に1本のロウソクを乗せたネズミのような風貌をしており,エルウィン・フォレストからレッドリッジマウンテンズまでの,Lv10〜30くらいのダンジョンに巣食っている。そして,何を目的にしているのか穴を黙々と掘り続けているという,奇妙なクリチャーだ。
プレイヤーが近寄ると逃げてしまうこともあり,雑魚モンスターという印象しかなかったが,とにかくコボルトたちはその後も穴を掘り続け,財宝を見つけ出したり,ドラゴンのいる洞穴に行き着いたりしていたらしい。そんな,ウォークラフトのファンにはなじみ深い,クラシカルな雰囲気を持つ作風に仕上げられたのが,この「コボルトと秘宝の迷宮」というわけだ。
ゲームデザイナーのディーン・アラヤ(Dean Alaya)氏と,UI Designerのマックス・マー(Max Ma)氏は,共に2014年にBlizzard Entertainmentに入社した同期にあたる。もっとも,アラヤ氏は「World of Warcraft」のテスターとして3年ほど雇われており,正規雇用された直後にマー氏がモバイルゲーム会社から移籍してきたらしい。
アラヤ氏はウォークラフトの世界観に関する知識と情熱を買われ,マー氏はモバイルゲーム業界で培ったユーザーインタフェースのエキスパートとして,「Hearthstone」のプロジェクトを始動させるための20人のメンバーとして活動し始めることになったのだ。
本稿では,そんな2人に「コボルトと秘宝の迷宮」の詳細について聞いてきたので紹介しよう。
4Gamer:
オープニングセレモニーの発表では,ゲームディレクターのベン・ブロード(Ben Brode)氏が,「クラシカルなファンタジーのルーツに戻る」という話をされていましたが,それはどういうことなんでしょう。
ディーン・アラヤ (以下,アラヤ)氏:
「World of Warcraft」(以下,WoW)のプレイヤーであれば,コボルトという存在だけでも親しみを覚えてくれるでしょうが,Blizzardでは「我々がストーリーを作るのではなく,すでにあるストーリーに新しいストーリーを作らせよう」と,よく言われます。
今回の話でいうと,多くのWoWプレイヤーがレベルアップして別のゾーンで戦っている間,コボルト達は諦めずに穴を掘り続け,その結果,山岳地帯に大きなダンジョンが広がった,とうわけですね。我々が新しいストーリーをいちから作るまでもなく,すでに10年以上にわたって作り上げられてきた世界観を利用することで,ファンには懐かしさと新しさを感じてもらえるわけです。
4Gamer:
今回の大きな目玉になるのが,新しいシングルプレイモードとなる「Dungeon Run」ですが,これはどういう内容になるのでしょうか。
マックス・マー (以下,マー)氏:
「Dungeon Run」は,これまでとはまったく異なるゲームモードです。プレイヤーはゲーム開始時に,自分のものとは異なる10枚のカードを与えられ,合計で48人いるボスからランダムでチョイスされた8人のボスと戦うというマッチを8回こなしていきます。それぞれのボスがユニークなパワーとそれに準ずるカードを持っており,ボスごとに異なるチャレンジをプレイヤーに与えてくれるわけです。
4Gamer:
“ローグライク”なゲームプレイとアナウンスされましたが,どのあたりがそうなるのでしょう。
マー氏:
1マッチに勝利すると,新しいカードが3枚与えられます。これらのカードは,攻撃系だったり防御系だったりと,プレイヤーのスタイルに合わせて選択できますが,次のマッチに勝利できるかどうかは,ボスの属性にもよりますので,ランダム性はかなり高いと言えるでしょう。
負けると,その時点ですべてを失って最初からやり直しですから,その点では“ローグライク”と形容できます。生きるか死ぬかのアドベンチャーを体験できる楽しさを味わってもらいたいですね。
4Gamer:
つまり,自分の手持ちカードを失ったりすることなく,「Dungeon Run」という環境の中ですべてが完結しているのですね。ルートしたカードなどはキープできるのでしょうか。
アラヤ氏:
マッチ後には,トレジャーカードというそれなりにパワフルなカードを入手できます。しかし,こちらも「Dungeon Run」内のみで利用できるものです。唯一の条件として,9つのクラスを使って9回「Dungeon Run」を踏破した場合に限り,「Candle King」という,通常のマッチでも利用できるカードが入手できます。これが,プレイヤーにとってのやり込み要素になるでしょう。
4Gamer:
キャンドルキングと聞くと,エルウィン・フォレストのコボルトたちの族長”ゴールドトゥース“を連想しますね。
マー氏:
そのあたりは,お楽しみに(笑)。
4Gamer:
ミニオンには,「相手のデッキを破壊する」と書かれている10/10の「Azari, the Devourer」とか,恐ろしいカードがいっぱいですね。
アラヤ氏:
自分のパーティにいるミニオンを破壊する代わりに,コピーを2枚作ってしまう「Carnivorous Cube」とかもあります。
4Gamer:
今回は「Gather Your Party」というカードに代表されるように,「招集」という新しい要素が加わっているのも特徴的ですね。
アラヤ氏:
プレイヤーのデッキからカードを1枚引くというのはすでに存在しますが,「Gather Your Party」は,ミニオンカードのどれかを引き出します。強力なミニオンを持っていると有利にプレイできるでしょう。
4Gamer:
マーさんはUIのデザインを担当しているとのことですが,「コボルトと秘宝の迷宮」でとくにこだわった部分はどこでしょうか。
マー氏:
どうすればダンジョンの奥深くに進んでいるような雰囲気を作り出せるかという部分ですね。どのように色合いなどのディテールを作り込んでいけば良いのか,試行錯誤しました。やはりカギとなるのは「ロウソクの火」です。
4Gamer:
そもそも「Hearthstone」は,マーさんが以前に関わっていたモバイルゲームとはUIデザインにおいて異なるものなのでしょうか。
マー氏:
とても違います。私はもともと学校を卒業してからDeNAのアメリカ支社で「トランスフォーマーレジェンズ」などに関わっていました。1作を5〜6週間で作っていくモバイルゲームと比べて,PCプラットフォームのゲームはじっくりと練り込みながら作るため,当初は戸惑いを隠せませんでした。
しかし,同じシメントリックなデザインでありつつも,さまざまな動きが表現されていること,そして異なるプラットフォームでも同じプレイフィールを達成しなければならないことなど,3〜4年の開発期間になっていく理由を身に染みて感じましたね。
4Gamer:
すでに幾つかの「コボルトと秘宝の迷宮」向けカードが公開されていますが,この拡張パックを代表するものがあるとすれば,どんなカードを選びますか。
アラヤ氏:
月並みなところで言うと,プリースト用のレジェンダリーウェポンになる「Dragon Soul」ですね。もう別のクラスのヒーローから盗んで来る必要もなくなったんです。スペルを3連続で使うと5/5のドラゴンを1匹招集するのですが,引いた後は何度でも使用できるから,うまくはまれば圧倒できるはず。
マー氏:
じゃあ僕は「Unidentified Elixir」を選んでおきます。どんな効果があるのかも分からないポーションを飲んでみようという,場当たり的な探検家の雰囲気が「コボルトと秘宝の迷宮」の世界観に良くマッチしていると思います。ファイアードラゴンと戦っているときに飲んだポーションがファイアープロテクションの効果をくれたりすると本当に楽しいです。
4Gamer:
ところで,50パックの大人買いをしたときに,1パックずつ開けていくのに結構な時間がかかったりしますが,これをまとめて開けるような仕様は考えていませんか。
マー氏:
まとめて開けるのはもったいないですよ。1枚1枚,どんなカードが入っているのか確かめながら開けていくのが楽しいので。まあスペースバーを押せば時間は短縮できる小技はあるんですけどね。
4Gamer:
それでも30分くらい掛かってしまいますよね。
マー氏:
まあそうですけど,1パックずつ開ける楽しみを味わってください。それを楽しめなくなっているのなら,その人の感覚は麻痺しちゃってます(笑)。
4Gamer:
では最後になりますが,この「コボルトと秘宝の迷宮」でファンにアピールできるポイントがあれば教えてください。
アラヤ氏:
やはりファンの皆さんには,これまでのシングルプレイヤー用コンテンツとはまったく違う「Dungeons Run」の楽しさを体験していただきたいですね。我々は,今後の拡張パックが登場した後も,多くのプレイヤーに楽しまれるゲームモードになると願っています。
「Hearthstone」公式サイト
「Hearthstone」ダウンロードページ
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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