インタビュー
[インタビュー]「ハースストーン」のリリース10周年を記念して,開発チームのメンバーに10年間の思い出を語ってもらった
本稿では,エグゼクティブプロデューサー&バイスプレジデントのNathan Lyons-Smith氏と,リードデザイナーで初期デザインを担当するCora Georgiou氏への,10周年記念メディア合同インタビューの模様をお届けしよう。
Nathan Lyons-Smith氏(@nlyonssmith) |
Cora Georgiou氏(@SongbirdCora) |
最初はプレイヤーとして楽しんでいたが,やがて開発チームの一員に
――現在の担当領域と,これまでの経歴を教えてください。
Nathan Lyons-Smith氏(以下,Nathan氏):
エグゼクティブプロデューサーとしての管轄は,ハースストーンのすべてに及びます。ビジネス的なエンゲージメントを意識し,チームを成功に導きます。マーケティングやパブリッシング,eスポーツなど,すべてを担当しています。
Cora Georgiou氏(以下,Cora氏):
現在は初期デザインチームのメンバーとして,拡張版のカードデザインを担当しています。新しいキーワードを考えたり,カードそのもののデザインをしたりします。カードの場合は,4か月間かけて作り上げたあと,最終デザインチームへと渡しています。
ハースストーンは私が大学に入学したころにリリースされ,とても熱心に遊び倒しました。当時の流行であるeスポーツに興味が向き,2016年ごろからイベントの実況・解説や司会としてeスポーツシーンに関わっていましたが,2019年に最終デザインチームのメンバーになりました。
――これまでの拡張版で最も好きなものは何ですか。
私は「ゴブリン vs ノーム」(2014年12月実装)です。メカメイジがとても楽しくて,「スノーチャガー」を使ってレジェンドランクに到達しました。その後はランク2に到達するのにも苦労していますが(笑)。
Cora氏:
絞りきれないので,2つ挙げさせてください。1つ目は「妖の森ウィッチウッド」(2018年4月実装)で,おとぎ話的な世界観を気に入っています。今となっては悪名高いかもしれませんが,「月を食らうものバク」と「ゲン・グレイメイン」がeスポーツシーンに与えたインパクトはすさまじかったですし,「魔女ハガサ」のキャラクター性も好きです。
月を食らうものバク |
ゲン・グレイメイン |
魔女ハガサ |
2つ目は「コボルトと秘宝の迷宮」(2017年12月実装)です。「肉食キューブ」や各ヒーローの小呪文石が活躍する当時のeスポーツシーンが大好きでした。また,1人用のダンジョンも面白かったですね。
――Coraさんの顔をeスポーツ配信で見たことがある日本のプレイヤーも多いと思います。当時の活動について聞かせてください。
Cora氏:
私は負けん気が強い性格で,eスポーツシーンが大好きでした。大学では放送を専攻し,ラジオ局に入ることを目標としていたのですが,2016年にハースストーンの公式キャスター募集があり,それに応募してみたら受かってしまいました。現在もキャスターをやっているRavenやSottleは当時からの同僚ですし,FrodanやKibler,Savjzとも仕事をしました。
特に印象的だったのは,実況解説を終えてホテルの部屋に戻ってからも,こうしたメンバーと「コボルトと秘宝の迷宮」のダンジョンを遊んだことです。本当にハースストーン漬けの日々でした。
そのような生活を4年ほど続け,新しいことにもチャレンジしてみたいと思っていた時期に,前のゲームディレクターであるAyalaに勧められて最終デザインチームに応募しました。それに合格してからは,毎日カードを作る生活となっています。
――ハースストーンが10年続いた理由は何だと思いますか。
Cora氏:
子供のころからカードゲームを遊んできましたが,唯一の対戦相手は弟でした。ハースストーンが出たときは,いつでも対戦相手がいる状況にわくわくしました。この10年間,プレイヤーの楽しみを追求し,気まぐれで親しみやすいファンタジーを提供してきたことだと考えています。
Nathan氏:
Coraの回答は素晴らしく,付け足すことはありません。これまで一緒に歩んできてくれた全プレイヤーに感謝するとともに,今後も続けていけるよう頑張っていきたいと思います。
――ハースストーンを開発するうえで,変えないようにしてきたことと,変えてきたことを教えてください。
Nathan氏:
ハースストーンチームは,私のキャリアの中で最高のチームです。互いをリスペクトして支え合い,楽しく働いています。5年前にチームに入ったとき,この環境を保つ方法を前任のリーダーに聞きに行きました。楽しい職場を作り,ちょっとした気まぐれさも残すことが,ゲーム自体の面白さやサプライズにつながるのです。
変化としては,より多くの人がゲームを遊んでくれるようにすることを意識しています。カードのダブりを減らすことや,「キャッチアップパック」の導入,UIやチュートリアルのアップデートなど,さまざまなものを変えてきました。
――これまでの開発において,成功したことと,失敗したことを教えてください。
Nathan氏:
最大の成功は「バトルグラウンド」(2019年11月実装)でしょう。「史上最大の酒場の喧嘩」をコンセプトに開発したモードで,最初はプレイヤー以外コンピュータという形式でした。途中で対人戦へと仕様を変更したので,納期は厳しいものとなりましたが,2019年11月のBlizzConに間に合わせることができた開発チームを誇りに思っています。
反省は,報酬レーンを再設計したときのものです。以前のシステムよりも多くの報酬を提供しようとしたのですが,こちらからの発信がうまくいかず,プレイヤーに不満を持たせることになってしまいました(外部リンク)。それからは,プレイヤーに分かりやすい発信を心がけています。
幸いにも私の業務では,間違いのほとんどはプレイヤーに届く前のものです。カードデザインはリリースの約1年前に行っており,うまくいかなかった仕様はボツになります。1度ボツになったカードでも,失敗の理由を分析・改善し,のちの拡張版で収録することは日常茶飯事で,その1つが「レナサル太子」です。
――「バトルグラウンド」の好調の一方で,「マーセナリーズ」には終止符が打たれましたが,この違いをどう分析していますか。今後も,このような大型コンテンツを追加する予定はありますか。
Nathan氏:
何年も続くゲームになるためには,新しい体験をどんどん増やしていく必要があります。その中には,プレイヤーから受け入れられなかったものもありますが,挑戦し続けることが最も重要です。しばらくの間は,王道ハースストーン,バトルグラウンド,アリーナに集中していきたいと思っていますが,将来的なゲームモードも模索しており,開発チームが新たなゲームモードを生み出す日を心待ちにしています。
――開発チームで印象に残っているエピソードを教えてください。
Cora氏:
カードデザインチームには強い絆があり,「カリフォルニア・ピザ・キッチン」というピザチェーンでの食事会が,なぜか私たちの憩いの場になっています。Nathanもよかったらどうぞ(笑)。
また,ハースストーンのフレーバーテキストは,開発チームの全員からアイデアを募集して,候補の中からカードデザイナーが好きなものを選んでいます。その会議は,本当にバカバカしくて,いつも楽しんでいます。
Nathan氏:
個人的には,2019年のBlizzConが最も印象深いです。世界選手権でLiooon選手がチャンピオンとなったことや,会場にリアル酒場を設営したことを覚えています。バトルグラウンドの体験エリアでは,行列がどんどん長くなっていき,大人気コンテンツとなることを確信しました。
――ハースストーンの今後の展望を教えてください。
Nathan氏:
プレイヤーが楽しめる環境を保ち続けることが目標です。さまざまなカードや拡張版,新たな仕様を模索していきたいと思っています。
――最後に,メッセージをお願いします。
Nathan氏:
思い出に浸れて,とても楽しいインタビューでした。これまでやってきたことの素晴らしさを実感しました。
Cora氏:
この10年間の思い出は,ほとんどがハースストーンに関わるものです。このゲームが生まれたことに感謝し,それを通じて人々とつながれたことをうれしく思っています。
「ハースストーン」公式サイト
「ハースストーン」ダウンロードページ
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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