テストレポート
非力なPCやスマホでも「Cyberpunk 2077」や「Forza Motorsport」を高画質でプレイできるクラウドゲームに挑戦だ!
通常のゲームは,PCやゲーム機,スマートフォンの内部でほぼすべての処理を行っている。だから,リッチなグラフィックスのゲームを動かすには,手元のマシンに高い処理能力が必要となるわけだ。
それに対して,クラウドゲームサービスは,手元のマシンで行うのは,キーボードやマウス,ゲームパッドなどの入力処理と,映像を画面に映す処理程度。実際にゲームを動作させているのは,インターネットの向こうにクラウドサーバーだ。画像のレンダリングなど負荷の高い処理は,サーバー側で実行するため,十分に高速かつ低遅延なインターネット接続さえあれば,非力なノートPCやスマートフォンでも,リッチなグラフィックスのゲームがプレイできるのが大きな魅力である。
また,最近の大作ゲームは必要なストレージ容量が多く,100GBを超えるようなタイトルも珍しくないので,あっという間にストレージを圧迫してしまう。その点,クラウドゲームであれば手元のマシンにゲームをインストールする必要がないので,残りのストレージ容量を気にしなくていいのもポイントの1つである。
日本国内で利用可能なクラウドゲームサービスとしては,NVIDIAの「GeForce NOW」と,Microsoftの「Xbox Cloud Gaming」,ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation Plus」のクラウドストリーミングが代表的なサービスとして挙げられよう。そこで本稿では,PCやスマートフォンでも利用できるGeForce NOWとXbox Cloud Gamingについて,それぞれの特徴を紹介する。
GeForce NOW
GeForce NOWは,NVIDIAが提供するクラウドゲームサービスで,「Steam」や「Epic Games Store」といったプラットホームで購入したゲームをクラウドサーバー経由でプレイできるというものだ。
GeForce NOWは,PCはもちろん,MacやiPhone,iPad,Androidスマートフォン,さらにはChromecastやAndroid TV内蔵テレビなど,幅広い機器で利用できる。動作に必要なシステム要件はかなりゆるく(関連リンク1,関連リンク2),たとえばWindows PCの場合,「2コア以上のx86系CPU」「容量4GB以上のメインメモリ」「DirectX 11以降をサポートするGPU」であり,10年ほど前のノートPCでもらくらくクリアできるだろう。スマートフォンも条件がゆるく,iOS 14.3以降に対応したiPhoneや,Android 5.0以降とメインメモリ容量1GB以上を備えたAndroid端末が要件として挙げられている。こちらもかなりハードルが低めで,利用できない機器を探すほうが難しいかもしれない。
GeForce NOWは,世界各地で展開しているが,日本国内では,ソフトバンクが「GeForce NOW Powered by SoftBank」を,KDDIは「GeForce NOW Powered by au」としてサービスを提供している。
それぞれのプランと月額料金は以下のとおりだ。
フリープラン | プレミアムプラン | |
---|---|---|
混雑時の アクセス |
通常接続 | 優先接続 |
連続プレイ 可能時間 |
30分 | 6時間 |
リアルタイム レイトレーシング |
非対応 | 対応 |
月額料金 | 無料 | 550円 |
auスマートパス プレミアムプラン |
プレミアムプラン | |
---|---|---|
混雑時の アクセス |
通常接続 | 優先接続 |
連続プレイ 可能時間 |
1時間 | 未公開 |
リアルタイム レイトレーシング |
非対応 | 対応 |
月額料金 | 無料 (※auスマートパス プレミアム 月額548円) |
1980円(au/UQ mobileユーザー 1650円) |
注目すべきはソフトバンクで,無料で始められるフリープランを用意しているのがポイントだ。1回あたりのプレイ時間が30分と短いうえに,サーバーが混雑する時間帯は,ひんぱんにスタート待ち時間が発生するデメリットもあるのだが(※プレミアムプランでも,同時接続ユーザーが多いときは待ち時間がある),クラウドゲームサービスがどんなものか気になるという人も試しやすい。なお,GeForce NOWの利用にあたって,ソフトバンクやKDDIとの回線契約は必要ない。たとえば,NTTドコモやMVNOと契約している人が,GeForce NOW Powered by SoftBankやGeForce NOW Powered by auに申し込むことも可能だ。
ここまでサービスの概要を説明してきたが,肝心なのは「どんなゲームがプレイできるのか」だろう。GeForce NOW Powered by SoftBankの場合,公開している対応タイトル(関連リンク)を見ると,「Cyberpunk 2077」や「Cities
また,「原神」や「Apex Legends」いった基本プレイ無料ゲームもラインナップしているので,Steamなどでゲームを購入したことがない人でも,気軽に始められる点も魅力の1つと言えようか。
一方,GeForce NOW Powered by auの対応タイトルリスト(関連リンク)を見ると,その数は750と,だいぶ少ない。疑問に思ってKDDIに確認したところ,「少なくとも1500タイトル以上のタイトルに対応している」とのことなので,単純にリストが更新されていないだけのようだ。
NVIDIAは,米国時間の毎週木曜日に「GeForce NOW Thursday Updates」として,GeForce NOWの対応タイトルを追加している。自分がすでに購入したゲームやセールで購入予定のゲームが追加されているかどうか,こまめにチェックすると良いだろう。
ここからは実際に,GeForce NOWで手持ちのゲームをプレイしてみよう。2016年発売の薄型ノートPC「Razer Blade Stealth」とAndroidスマートフォン「Pixel 7a」でテストしているが,今回はスマートフォンでのテストを中心に説明する。
日本国内で提供されているGeForce NOWの場合,設定可能な解像度は最大1920×1200ドット,最大リフレッシュレートは60Hzだ。Androidアプリでは「画面が小さすぎて読みづらくなる」という理由から,標準設定が1280×720ドット(機種によってアスペクト比に合わせて前後する)となっている。この設定はGeForce NOWの設定にある「ストリーミング品質」から変更が可能だ。
まずはCyberpunk 2077をプレイした。ゲーム内の設定から解像度を1680×720ドット,画質設定を「レイトレーシング:中」に設定して,パストレーシング以外のレイトレーシングを有効とした。この状態でゲーム内のベンチマークテストを実行したところ,平均フレームレートは42.6fps。なめらかな表示とまではいかないが,ゲームプレイには問題ないレベルだ。映像表示も美しく,レイトレーシングを有効としているので,水たまりに映り込む看板などもリアルに表現されている。
入力遅延はわずかにあるもの,こちらもゲームプレイに問題を感じるほどではない。どちらかというと,通信状況に起因する画面表示の問題が気になった。GeForce NOWのシステム要件では,通信速度は15Mbps以上が必須,50Mbps以上が推奨となっている。テストした通信環境は,50Mbpsをクリアしているのだが,画面表示が一瞬崩れたり,カクついたりした。Cyberpunk 2077のようなRPGでは,「こんなこともあるか」で流せるが,対戦ゲームでとくに勝ち負けが重要なランクマッチなどでは不安が残るので,利用を避けたほうがよさそうだ。
続いては原神をプレイしてみよう。原神は2022年6月にGeForce NOWでプレイ可能となった(関連記事)。サービス開始時点では,PCでしかプレイできなかったが,その後,8月にはスマートフォンでのクラウドゲームプレイも可能になった。
「原神はスマートフォン版もあるのだから,そっちをプレイすればいいのでは?」と思うかもしれない。ただ,原神はスマートフォン向けゲームの中でもとくに映像表現がリッチで,快適にプレイするにはかなり高性能なスマートフォンが必要だ。エントリーからミドルクラスの端末や,古い端末でプレイするには,かなり画質設定を抑えなければならない。
また,アプリのサイズも大きく,内蔵ストレージ容量が128GB以下のスマートフォンでは,容量のやりくりが厳しい。クラウドゲームサービスでは,こうした問題を気にすることなくプレイできるというわけだ。
画質設定は「高」に,フレームレートは60fpsに設定してテストしたが,描画負荷が高いスメールあたりのマップでも,スムーズに動作した。秘境に入る前のロードも,普段のスマートフォン版をプレイするよりも少し短い。Cyberpunk 2077と同じように,少しカクつく場面はあるものの,基本的には問題なくプレイできたと言って良いだろう。
最後に,GeForce NOWを使ううえでの注意点というか,「快適にプレイしたいなら,こうするとがいい」という点を2つ紹介したい。
1つめは,加入するならプレミアムプランを選ぶべき,ということ。ソフトバンクは無料で利用できるフリープランを用意しているのだが,先述したように,1回あたりのプレイ時間が短い。プレイ可能時間が経過してセッションが終了しても,再度接続すればプレイできるのだが,時間帯によってはサーバーが混雑しており,かなりの待ち時間が発生することがある。週末の夜以降は数百人の待機していることも珍しくない。プレミアムプランの加入者は,優先してサーバーに接続できる。値下げ後は,プレミアムプランでも待ち時間が増えたものの,フリープランに比べれば,あまり待たずに済む。
筆者も以前はフリープランを契約していたが,待機時間の長さに我慢なくなり,プレミアムプランに切り替えた。現在のフリープランは,あくまで「自分の環境でも使えるか試せる」程度だと思ったほうが良いだろう。
もう1つは,スマートフォンでプレイする場合は,ゲームパッドを用意したいことだ。
GeForce NOWは,バーチャルゲームパッド機能を備えており,タッチでも操作できるのだが,これが使いにくい。ソフトバンクのFAQにも「バーチャルゲームパッドを使用して集中したゲームプレイや,長時間のゲームプレイはおすすめできません」と明記しているほどだ。
システム要件(関連リンク)に,各プラットホームで動作を確認した周辺機器が記載されているので,チェックしてみておこう。
ちなみに,が原神とフォートナイトなど例外もあり,これらはGeForce NOWのバーチャルゲームパッドを使わずに,スマートフォン版と同じような感覚でタッチ操作できる。ゲームパッドよりもスマートフォンでの操作に慣れているという人は試してみるといいだろう。
Xbox Cloud Gaming
続いてはXbox Cloud Gamingを紹介しよう。
Xbox Cloud Gamingは,Microsoftのサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」の一部として提供されるクラウドゲームサービスだ。
Xbox Game Passは複数の料金プランを用意しているのだが,Xbox Cloud Gamingを利用したい場合は最上位の「Xbox Game Pass Ultimate」への加入が必須となる点に注意したい。
月額料金は1210円であるが,最初の14日間は100円となるキャンペーンも実施しており,気軽に試せるのも嬉しいところだ。
システム要件は,GeForce NOWほど明確な記載がなく,Windows PCは,「Windows 10 October 2020 更新プログラムパッケージ」以降で,Bluetooth 4.0以降を搭載したものとなっている。スマートフォンの場合は以下のとおり。
- Android:Android 6.0以降
- iPhone:iOS 14.4以降
- iPad:iPadOS 14.4以降
Microsoftによると,「Reddit」のフォーラムで検証済みデバイスの一覧を公開しているそうだが(関連リンク),実際にチェックしたところかなり数が限られており,参考にならなかった。ただ,GeForce NOWと同じく,基本的には多くの機器で動作可能だろう。実際にRazer Blade StealthとPixel 7aで問題なく利用できた。
対応タイトル数は,347と少なめ。Xbox Cloud Gamingに限らず,Xbox Game Passは提供するゲームが月に1〜2回入れ替わる仕組みとなっている。一方でXbox Game Passは,新作タイトルを発売日からプレイできる「Day1リリース」を実施しているのがポイントである。2023年11月に発売したばかりの「龍が如く7外伝 名を消した男」や,「ペルソナ5 タクティカ」もDay1リリースとしてプレイ可能だ。
このほかにも「Starfield」や「Lies of P」などの話題作もラインナップに入っている。
プレイできるタイトルの違いに,GeForce NOWとXbox Cloud Gamingの違いがよく現れていて興味深い。普段からPCゲームを買っている人が,所有しているタイトルをクラウドゲームでも遊べるのがGeForce NOW,気になっていた最新ゲームを体験できるのがXbox Cloud Gamingと言える。自分の志向や用途に合わせて利用するサービスを選ぶと良いだろう。
また,スマートフォン版のXbox Game passアプリで対応ゲームを調べると,スマートフォンに最適化されたものや,タッチ操作が可能なものがアイコンで分かるようになっている。Xbox Cloud Gamingでもゲームパッドのほうが遊びやすいことに違いはないが,タッチ操作で気軽にプレイできるゲームを探したいという場合に便利だ。
それでは,Xbox Cloud Gamingでも実際にゲームをプレイしてみよう。
まずは,ソウルライクアクションRPGの「Lies of P」だ。画質設定は「パフォーマンス重視」を選択した。激しい戦闘が多い本作だが,操作遅延はごく短いようで,快適にプレイできた。ただ,GeForce NOWと同じように通信環境による画面の表示崩れはあった。
続いては,「ライフ イズ ストレンジ」などを手がけたDON'T NOD開発の「Jusant」だ。本作は,荒廃した大地にそびえ立つ塔をひたすら登っていくアクションゲームだ。登るルートをじっくり考えながらプレイするタイトルなので,アクションとは言えど操作遅延の影響が少なく,クラウドゲームサービスに適した作品と言えるかもしれない。
プレイ自体は基本的に快適だったのだが,ゲームが急に終了してしまうトラブルに何回か遭遇した。Jusantはオートセーブ機能があるのだが,これもうまく働いていないケースがあるようで,3回くらい同じ場面を繰り返しプレイする羽目になったところもある。オートセーブがないゲームでは,自衛のためにいつも以上にこまめにセーブを心がけたい。
最後に,レースゲーム「Forza」シリーズの最新作「Forza Motorsport Standard Edition」をプレイした。レースゲームはシビアな操作が求められるが,Xbox Cloud Gamingでも十分に快適に遊べる。
残念だったのは,Forza Motorsportに限らず,Xbox Cloud Gamingでは簡易的な画質設定しかできない点だ。Forza Motorsportは,レイトレーシングへの対応が見どころの1つなのだが,Xbox Cloud Gamingはレイトレーシングの設定だけではなく,HDRを有効化することもできないようだ。
GeForce NOWでは,対応するゲームならレイトレーシングやHDRの設定が可能なので,はっきりと差がある。この点もサービス選びの指針となるだろう。
ゲーム体験を大きく変えるクラウドゲームサービス
まずは体験してみよう
GeForce NOWとXbox Cloud Gamingのどちらも,思った以上にゲームを快適にプレイできた。高性能なゲーマー向けPCやゲーム機でプレイするのとは異なり,画質面やフレームレートに制限があるのは確かだが,どんなデバイスでも気軽にゲームをプレイできるのは大きな魅力だ。
PCゲームをあまりプレイしないという人にこそ,クラウドゲームサービスを体験してみてほしい。初心者にはXbox Cloud Gamingがおすすめだ。GeForce NOWと比べて,プレイ可能なタイトルは少ないがゲームを別途購入する必要がないのはポイントだ。また,話題の新作タイトルをすぐに試せるのもメリットと言える。繰り返し長く遊びたいゲームが見つかれば,それを購入しておき,所有するソフトが増えてきたらGeForce NOWに切り替え,あるいは併用するといった使い方も良さそうだ。
GeForce NOW Powered by SoftBank公式Webサイト
GeForce NOW Powered by au公式Webサイト
MicrosoftのXbox Game Pass公式Webサイト
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