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[Unite 2015]女性だけのゲーム開発ワークショップ「Game Girl Workshop」は,いかなるコンセプトで生まれ,どのようなゲームを生み出したのか
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印刷2015/04/15 18:23

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[Unite 2015]女性だけのゲーム開発ワークショップ「Game Girl Workshop」は,いかなるコンセプトで生まれ,どのようなゲームを生み出したのか

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 2015年4月13日から2日間にわたり,東京都内で開催された,Unity開発者のためのカンファレンス「Unite 2015 Tokyo」。14日には,「Game Girl Workshop のねらいと成果」と題した講演が行われた。
 タイトルにある「Game Girl Workshop」とは,10代の女性を対象に,ゲームの作り方を集中的に教えるという試みだ。それがいかなるコンセプトの下に生まれたものなのか,そして,結果としてどのようなゲームが生み出されたのかについての講演が行われたので,本稿で紹介したい。

「Unite 2015 Tokyo」公式サイト

「Game Girl Workshop」公式サイト



女性だけのゲーム開発ワークショップ


Unity TechnologiesのUser Experience Researcherで,Game Girl Workshopを運営するNevin Eronde氏
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 講演を行ったのは,Unity TechnologiesのUser Experience Researcherで,Game Girl Workshopを立ち上げたメンバーの一人でもあるNevin Eronde氏だ。同氏はまた作曲家でもあり,サウンドアーティストでもあるという多才な人物で,以前,開発者が1か所に集まってゲームを作るイベント「Nordic Game Jam」を実施した経歴も持っている。

 デンマークやパレスチナなど,これまでいくつかの国と地域で行われてきたワークショップだが,もともとは中東の女性達を対象にしていたようだ。Eronde氏はまず,ワークショップを始めたきっかけはゲーム産業に携わる女性が少ないことと,「中東にはゲームをプレイする人は多いものの,中東で開発されたゲームはあまりない」という主旨の講演を聞いたことだと述べた。
 中東ではゲームは新しい産業であるため,女性が関わるチャンスも多いはずだと考えたEronde氏は,Andrea Hasselager氏と共に,女性のみを対象としたGame Girl Workshopをスタートさせた。そこにはまた,「ティーンエイジャーの女性を集めてゲーム開発ツールの使い方を教えたら,どんな作品を生み出すのだろうか?」という興味もあったという。

Game Girl Workshopを立ち上げた,Nevin Eronde氏(左)と,Andrea Hasselager氏(右)
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 Game Girl Workshopは,短期間で集中的にデザイン,オーディオやグラフィックスの作成,プログラミングなど,ゲーム制作の基礎を学ぶワークショップで,2010年に行われた初のGame Girl Workshopでは,8〜10歳の女性10人ほどを2つのチームに分け,それぞれのチームで異なったゲームを開発してもらった。
 その結果,参加者からは「自分に絵の才能があるとは思わなかった」「プログラムのコーディングがこんなに楽しいなんて」といった喜びの声が聞かれ,また教育委員会や学校,参加者の両親からも肯定的な意見が寄せられたという。

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 よく聞かれるのが「なぜ男性を混ぜず,女性だけでワークショップを行うのか?」という点だとEronde氏は語る。大きな理由は,男女混合のグループを作った場合,男性のみが精力的に活動してしまうことが多いためだ。参加者を女性のみにすれば,こうした心配がなく,女性自身が考え出したゲームが生まれるという。
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 女性が自分のペースでゲームを開発できる環境を作るためには,いろいろな苦心もあった。ワークショップの受講者が「自分もゲーム業界で活躍できる」と思えるロールモデル(模範とか手本)になってもらうため,講師全員を女性開発者とし,通訳が必要な場合も女性通訳を探し出し,できる限り女性のみの空間を作り出したそうだ。

 Game Girl Workshopは,3〜5日間にわたって行われ,参加者にはUnityとそのプラグインであるPlayMakerなどの開発環境が提供される。
 開発において最も重要なのが,参加者によるブレーンストーミングだ。このワークショップでは「シューティング」や「迷路ゲーム」といった“ひな形”はなく,ブレーンストーミングによって生み出された物語が,ゲームへ落とし込まれていった。ゲームと物語の区別がついていない参加者も少なからずいたため,ゲームそのものやゲームデザインについての説明は行ったものの,あくまで参加者の自主性が尊重されたそうだ。

パレスチナで行われたワークショップの様子。講師からは「明るい/暗い」「若い/年老いた」など,相反する2つの単語がテーマとして与えられたという
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サウンドやグラフィックスの素材はすべて手作り。水の泡の効果音を作るため,水槽の水にストローを差し込んで息を吹き込むといったことも行われたそうだ
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 講演では,ワークショップで作られたゲームの実演と解説も行われた。中でも特徴的な傾向を示したのが,パレスチナのワークショップで作られたゲームだという。
 Eronde氏が特徴としてまず挙げたのは,すべての作品の主人公が男性だったことだ。女性だけで作るゲームなのだから,女性を主人公にしてもよさそうもの。なぜ男性を主人公にしたのかと参加者に聞いたところ,「男性なら世に出ていろいろなことができるが,女性にはできないから」という答えが返ってきたそうだ。
 また,パレスチナで作られたゲームの世界観にファンタジー的な要素はなく,すべてが現実的だったのも大きな特徴だという。例えば「Flower Garden」は,花畑の花が虫に食われる前に鎌を投げて花を摘み取ったあと,トラックに乗って市場へと売りに行く……と実際に即した展開になっている。
 筆者もこのゲームをプレイしたのだが,虫に鎌を当てても何も起こらない。鎌で害虫をやっつけても良さそうなものだが,現実にそんなことをする人はいないので,ゲームにも出てこないのだ。

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パレスチナのワークショップで作られた「Flower Garden」。男性が花畑から花を摘み,トラックに乗って市場へ売りに行く
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 パレスチナのワークショップで作られたゲームは「農夫や猟師など男性が登場する,アーキタイプ的な物語」であり,スウェーデン,デンマーク,ドバイのワークショップで作られたものは「日常生活における葛藤などを反映した,個人的な物語」だったとEronde氏は述べた。

Game Girl Workshopで作られた,「Twilight」というゲーム。主人公の女性を操作して森に入り,火や風,水の魔法で敵と戦う。敵ごとに属性が違うため,魔法との相性を考えて攻撃する必要がある
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「Find Me」では,指定されたのと同じ人を,人混みから探し出す。聞いていると不安になるゲーム音楽は,作曲経験のない女性によって作られた
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デートがテーマとなった「Movie Night」。主人公の少年を操作し,迷路を抜けて彼女の家にたどり着き,汚れた皿をキレイに洗えば,晴れて彼女とデートできる。デートしたいが,問題が起きたり用事を言いつけられたりするという,日常で起こりうる出来事がテーマになっている。デートの相手の服装を選べるあたりは,女性的な感性といえるかもしれない
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 Eronde氏は最後に「女性のゲーム開発者を教育するためにできることは,まだたくさんあると思っています。我々の活動をソーシャルメディアでフォローしてください」と今後への意欲を語り,講演を締めくくった。

 Game Girl Workshopの公式サイトでは,これまでの活動が紹介されているほか,ワークショップで作られたゲームが掲載され,実際に遊ぶこともできる。興味がある人はチェックしてほしい。

「Unite 2015 Tokyo」公式サイト

「Game Girl Workshop」公式サイト

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