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ポーランド生まれの「Shadow Warrior」をレビュー。想定外のリメイク作品で,あの伝説の忍者マスターになるのだ
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印刷2013/11/01 10:00

レビュー

カルト的作品のリメイク版が,ポーランドから見参

Shadow Warrior

Text by 松本隆一


画像集#005のサムネイル/ポーランド生まれの「Shadow Warrior」をレビュー。想定外のリメイク作品で,あの伝説の忍者マスターになるのだ

「Shadow Warrior」公式サイト


 彼の名前はロー・ワン。日本の巨大企業ジラ・エンタープライズ(Zilla Enterprise)のボディガードを務めるマスター忍者だ。
 誰でも知っているように,日本の大企業はどこでもこのような忍者を雇って暗殺や謀略のために使っているのだ。だがある日,ワンはジラの社長が闇のクリーチャーを使って日本を支配しようという野望を持っていることを知り,同社を退職した。ワンの力を恐れたジラは,クリーチャーの刺客を次々に差し向け,かくして忍術の奥義を尽くしたワンの孤独で残酷な戦いが始まったのである……という,たったこれだけのテキストなのにツッコミどころ満載な設定のゲームが,1997年に発売されたFPS「Shadow Warrior」だ。

1997年にリリースされたオリジナル版「Shadow Warrior」。現在「Steam」で無料配信が行われているので,興味のある人はプレイしてみよう(関連記事
画像集#001のサムネイル/ポーランド生まれの「Shadow Warrior」をレビュー。想定外のリメイク作品で,あの伝説の忍者マスターになるのだ

 「パチンコ屋」「富士」「罪」といった日本語の看板が並び,日本の漫画/アニメにインスパイアされたというか,まんま持ってきたようなデザインのクリーチャーが襲いかかるという,勘違い日本のオンパレードが筆者のハートに深く突き刺さった一本だった。

 開発は当時「Duke Nukem 3D」のヒットで絶好調のデベロッパ3D Realmsで,企画段階ではシリアスな作品になるはずだったが,「Duke Nukem 3D」のヒットを受けてユーモア路線に変更したという。それがどこまで本当だか知らないが,ゲームに出てくる奇妙な日本も,あえて日本のイメージをカリカチュアライズしたものなのだ。とはいえ,「小さな村」を「少し村」と表記するなど,もしかすると割と本気でいろいろ間違えていたのかもしれないという気もするんだけど。

あの伝説の忍者が,驚いたことに,帰ってきた


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 余談ながら,FPSプレイヤーの王道はやはり,「DOOM」から「DOOM II」,そして「Quake」シリーズから「Half-Life」などへ続く流れだと思うが,筆者の場合「DOOM II」から「Duke Nukem 3D」で妙な方向にカーブを切り,この「Shadow Warrior」や「Redneck Rampage」などへ進み,やがて「Serious Sam」「Postal II」をやり込むという,非王道路線まっしぐら。個人的にもターニングポイントの一つとなった思いで深い作品といえるのだが,ターンしてどこへ行ったのかは,自分でもよく分からない。

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 そんな「Shadow Warrior」が2013年,リメイクされてしまったというのだから驚きだ。この想定外の挙におよんだのは,ポーランドのデベロッパであるFlying Wild Hog。本作の前には大マジメなSF FPS「Hard Reset」を制作しているが,同社は「Painkiller」シリーズのPeople Can FlyやCD Projekt REDなどのスタッフが集結して作られたメーカーであるらしい。
 カルト的な「Shadow Warrior」がアメリカを遠く離れたポーランドでリメイクされてしまったのが面白いところ。やるなあ,ポーランド。

 新作「Shadow Warrior」の主人公もロー・ワンという名前だが,前作のような上半身裸でタトゥー入れまくりの老人というぶっ飛んだキャラクターではなく,ごく普通のとっぽい感じのお兄ちゃんだ。もっとも,ゲーム中にくだらないことをベラベラしゃべるのは同じで,それがウザいという海外のレビューもあるのだが,個人的には英語なので気にならないです。

主人公ロー・ワン。最初はこんな見かけだが,ゲームが進むにつれてちょっとだけオリジナル版に近づく
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 そんなワンは,ジラ・エンタープライズのCEOであるオロチ・ジラ氏に依頼され,ミザヤキ氏(ミヤザキの書き間違いではない)のもとへ伝説の刀「ノブツラ・カゲ」を買いに行くのだが,交渉決裂。激しい斬り合いになるが,そこへジラが差し向けたと思われるクリーチャー軍団が出現し,なんだかよく分からないうちにミザヤキ氏は殺され,ノブツラ・カゲはいずこかへ消えてしまう。

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 実はこの刀,古代の神々が跋扈する闇の世界とつながっており,持つ者に強大な力を与えると同時に世界を破滅の縁に追いやるものでもあるのだ。というわけでワンは,ノブツラ・カゲを追って戦いの渦に飛び込んでいくことになる……というのが本作のざっくりしすぎなストーリー。なかなか壮大だ。とはいえ,基本的にプレイヤーは出てくる敵をどんどん倒して前へ前へと進んでいくだけなので,物語はまあ心のスミにでも留めておけばいいという感じもする。正直,前作がどんな話だったのか,筆者は何周もプレイしたのに全然覚えていない。

鼻歌を歌いながら風呂に入る謎の少女。おお,懐かしいと思った人は1997年版のプレイヤー
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 ゲームデザインは,昔のFPSを現在の技術で再現するというものになっている。「1人で敵5000人を倒すとか,おかしいだろ」→「いつも仲間と一緒に戦う」,「ヘルスパックを取りに戻るのが面倒」→「体力自動回復」,「戦闘中にカードキーとか,普通拾わない」→「パズル要素の削減」,「エリアごとに敵の数が決まっているなんて,現実的じゃない」→「敵のリスポーン」といったような流れでモダンなFPSが確立(大ざっぱすぎですが)されてきたわけだが,そういうフィーチャーをなるべく排した,いわゆる「オールドスクール」なゲーム性を追求しているという。

 したがって,アドバイスをくれるコンパニオン的なキャラクターはいるものの,基本的にプレイヤーは一人で突撃するのだ。序盤で持っているのは日本刀と銃だが,銃の性能がそれなりなので,戦いは接近戦闘,つまりメレーが主体になる。一人称視点でメレー系のアクションをメインとしたタイトルはいくつかあるが,うまくいった例はあまりないような気がする。しかし,本作の斬り合いはかなり爽快なものになっている。

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うわー!
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スキルを鍛えれば,ヘルスパックなしである程度の体力回復が可能だ
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 理由は明らかで,首は飛ぶわ手足は切れるわ胴体真っ二つだわで,反応が明確だからだ。出血量も盛大で,難度「Normal」程度なら,ああ,オレってこんなに強かったんだという事実を堪能でき,偉くなったように気になれる。実はオリジナル版のチャンバラも似たような感じだったのだが,グラフィックスがショボかったのでなんということもなかった。今回は,グラフィックスの向上によって,描写はかなり残酷であり,そういうのが苦手だという人は遠慮しておいたほうがいいかもしれない。

 オリジナル版にはなかったものとして,成長要素が挙げられる。パワーアップできるのは「スキル」(Skills),「パワー」(Powers)そして「ウェポン」(Weapons)という3つのカテゴリで,スキルは敵を様々な方法で倒したり,マップに隠された杯のようなオブジェクトを拾うことで得られる「カルマ」で,またパワーは同じくマップに隠された「KIクリスタル」を拾うことで,そして「ウェポン」はマップに落ちているお金を拾うことで,それぞれパワーアップできる。さあ,拾いまくれ。

「スキル」のパワーアップ画面。体力を回復したりキズを癒す「RESTORATION」には,「DRAIN SOUL」など6種類のパワーアップ項目があることが分かる
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「パワー」のパワーアップ画面。獲得すると,タトゥーが増えていく
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「ウェポン」は,拾ったお金を使ってパワーアップする。アチーブメントには「すぺてのパワーの獲得」「すべてのスキルの習得」,そして「すべての武器をアップグレード」という項目があるので,それらは可能である模様
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 掲載したスクリーンショットからも分かるように,スキルとパワーは,いくつかのジャンルに分かれており,項目は多岐にわたっている。例えば,スキルのうち「MOVEMENT」カテゴリに属する「INNER RESERVE I」は,スタミナを20%上昇させるという内容で,シンボルは,なぜか知らないが「銭」だ。
 こうした細かいパワーアップ要素により,自分のプレイスタイルに合ったキャラクターの成長が可能になる。ただし,もともとワンは割と強めの設定であり,またスキルもパワーも種類が非常にたくさんあるので,いちいち注釈を読むのがちょっと面倒。個人的には,あまり小まめにパワーアップさせなくても,ゲームを進めるうえではそれほど困らないという印象だ。もっとも,マップが進むと突然強い敵が出現したりするという,バランスに難ありの部分もあるので,折を見てやっていたほうがいいかもしれない。とくに中ボスとか,急に強くなりすぎ。

左の写真のようなシールドがある場合,右の写真のようなオブジェクトを破壊することで解除され,先に行けるようになる。簡単だ
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ハイクオリティなグラフィックスで
爽快なアクションを楽しもう


 ゲームエンジンは,Flying Wild Hogが「Hard Reset」のために開発した「Road Hog」エンジンが使われており,画面の雰囲気は非常に良好だ。
 マップはもっぱら一本道だが,場所によってはとんでもなく広いところもあり,鍵を拾ったりオブジェクトを破壊してバリアを解除したりというパズル要素があるため,手がかりを探して,広いマップをあっち行ったりこっち行ったりすることもある。個人的に探索は嫌いではないので平気だが,人によっては面倒に感じるかもしれない。
 パズルそのものは普通にプレイしていれば問題なく解けるレベルだが,ときどき,どこへ行っていいか分からなくなることもあるはずだ。これは,筆者が群を抜いた方向音痴であるせいもあるが,倒すべき敵をすべて倒さなければ次へ進めないというシステムが採用されているからでもある。したがって,ステルス要素はないわけだ。

ゲームの途中で訪れることになる大阪。ジラ・エンタープライズの倉庫などがある
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居酒屋なのか薬局なのかよく分からないが,そのどちらでもないので,気にすることはない
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 話の流れの都合上,ここに書くが,本作はシングルプレイ専用タイトルで,マルチプレイはない。これもまた,オールドスクールなFPSを狙ったためかもしれないが,オリジナル版にはワン同士が戦う,ごくプリミティブなマルチプレイが用意されていた記憶がある。
 ともあれ,そのぶんシングルプレイはたっぷり用意されており,18チャプター構成で,一目散に目的地に進んだ場合8〜10時間,シークレットを探して歩き回れば15時間以上かかると発表されているので,ボリュームは十分だ。全般的にマップのデザインは優れており,広々とした場所で無数の敵を相手に切り結ぶことができる。ロケーションも豊富で,何かが変な日本のマップをほっつき歩いているだけでも楽しめるのは,日本人ならではの特権だろう。

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 最近,過去作がリメイク(「リブート」や「リボーン」などと呼ばれるみたい)されるケースが少なくないが,元になるのはたいてい「不朽の名作」だったり「大ヒット作」だったりする。それだけに,今回の「Shadow Warrior」は異色だ。実名を出すのははばかられるが,「Shadow Warrior」がオッケーなら,アレとかコレとかどうすか? というタイトルは個人的に割とある。まあ,それが実現するためには,本作が商業的にも成功しなければならないわけだけど。

ゲーム中,最も多い死因は爆死。ドラム缶や消火器など,お約束のオブジェクトばかりではなく,自動販売機やオートバイ,そしてアーケードゲーム機まで,かなりなんでもかんでも爆発するので,しばしば巻き込まれてしまう
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 無数の敵を次々に倒し,それが終わるとマップ探索というセットを繰り返すため,単調だという印象は強い。操作方法にもこなれていないところが残るし,武器や敵の種類もそれほど多くはない。しかし,大作とは呼べないものの,狙いのしっかりとしたゲームであり,ゲーム好きを十分に楽しませてくれるのは間違いないだろう。長期的戦略が求められたり感動的なストーリーが味わえる作品とかもいいけど,たまには頭を空っぽにしてクリーチャーどもをめった斬りにしたいという人は,ぜひプレイしてみよう。

「Shadow Warrior」公式サイト

Steam「Shadow Warrior」紹介ページ

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