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[E3 2013]“プレイヤーとキャラクターの一体感”さえ味わえるスポーツゲームの作り方とは。牧田和也氏に次世代機版「FIFA 14」やゲームエンジン「Ignite」について聞いた
なお,牧田氏へのインタビューは,2013年6月6日の記事で別途掲載しているが,取材当時はE3 2013直前だったため,次世代機版とIgniteについて,詳しい話を聞くことはできなかった。今回は次世代機に焦点を絞って,「FIFA」シリーズやEA SPORTSの目指しているものを語ってもらっているので,前回のインタビューと合わせて読んでいただければ幸いだ。
次世代機用ゲームエンジン「Ignite」で
EA SPORTSタイトルはどう変わるのか
4Gamer:
E3 2013が開幕したということで,EA SPORTSレーベルの次世代機版に関するお話からうかがいたいと思います。まず,FIFA 14のPlayStation 4版とXbox One版にも採用されているというIgniteは,どういったエンジンなのでしょうか。
Igniteは,EA SPORTSのタイトル全般に使っているエンジンなのですが,主にグラフィックスやライティング,アニメーションの品質を大幅に向上させます。ゲームプレイにおいても,これまでとはまったく異なる印象をプレイヤーに与えると思います。次世代プラットフォームに見合うゲームを実現するために,全体的な底上げを目的にして作っているエンジンです。
4Gamer:
Igniteの開発に着手した理由を教えてください。
牧田氏:
EA SPORTSシリーズのチームには,それぞれ独自のノウハウや技術がありますが,そういったものをシェアできるようになれば,EA SPORTSタイトルの品質は確実に高まりますよね。なので,あとはいつ(開発を)スタートするか……と考えていたところに,ちょうど次世代機が登場した。それでこのタイミングになったというわけです。
今までも,チーム間である程度の共有はしていたんですが,あくまで部分的なものでした。それをもっと本格的にするために,EA SPORTS全体から優秀な技術スタッフを集めて,スポーツゲームに最適なエンジンを新たに作ろうとしたわけです。
4Gamer:
なるほど。これは最も気になるところなんですが,Igniteが採用されることで,プレイヤーにはどんなメリットがあるのでしょうか。
牧田氏:
絵を描く人にとって,人間のストラクチャ(Structure,構造)は一番難しいと言われています。それは,常に皆が目にしているからであり,人間の動作がものすごく複雑だからです。それをいかにして,より人間らしく再現するかというのが,我々にとっても大きな課題となります。
そのハードルを乗り越えるためには,アニメーションの質を上げ,AIを賢くし,ライティングで人間らしく見せることが重要ですが,Igniteはこれらをクリアしました。よりスポーツ選手らしい動作を再現することで,実際のスポーツに限りなく近いスポーツゲームを提供できます。
4Gamer:
EA SPORTSのラインナップには「FIFA」(サッカー),「NBA Live」(バスケットボール),「MADDEN NFL」(アメフト),「UFC」(格闘技)がありますが,競技が違えば,選手の動作もまったく違いますよね。同じエンジンを共有することで,何か不都合は生じないのでしょうか。
牧田氏:
人間が歩く,走るといった動作は,どんな競技でも必要になります。ただ,それをどうつなぐのか,そこからどんなアクションに派生させるかが特別で,各シリーズによって技術が異なっています。
具体的には,アニメーションだったり,AIだったりしますが,いずれにせよ,人間の基本動作が再現されているかどうかは,最も重要な部分です。家に例えるなら,基礎部分の作り方をEA SPORTS全体で共有して,しかも質の高い土台を作ろうということです。その土台の上に積み上げていく部分は,各シリーズで必要なものが異なるので,それぞれが研究していくことになりますが,まずは土台がしっかりしていないと不安定になってしまいますから。
今回,E3では4シリーズの新作を出展しています。それぞれ進捗状況が異なりますけど,少しでも見ていただければ,選手の動きや体の重心といった,ベースとなる部分に共通するものが確認できると思います。
“プレイヤーとキャラクターの一体感が気持ちいい”
Igniteエンジンによって進化した「FIFA 14」
4Gamer:
ここからは「FIFA 14 ワールドクラス サッカー」についてお聞きします。次世代機版と他機種版では,どういった点が異なりますか?
難しいですね……とにかく,面白くなっていることは間違いないです。人間らしい動きができるようになったので,選手を動かしているだけでも楽しいですよ。メモリやCPUの性能が上がっていますので,計算処理が速くなり,アニメーションの数も相当増やせます。細かな動きが可能にする,「操作する人間と,画面内のキャラクターとの一体感」が気持ちいいですよ。
たとえば,選手と選手がぶつかった時に,事前にぶつかることを察知している場合とそうでない場合では,ぶつかったときの反応や動きが変わってきますよね。そういったことを,キャラクター側で細かく計算できるようになったので,これまで以上に現実に近い動作が見られるようになりました。
4Gamer:
それはつまり,AIの能力が上がったということですか?
牧田氏:
そういうことです。分かりやすく言えば,選手の記憶できる量や判断できる量を計算するスピードが全然違います。選手のAIが向上することは,スポーツゲームでは非常に重要ですから,ぜひプレイして確認してほしいですね。
4Gamer:
世界市場ではトップシェアを占めるFIFAシリーズですが,日本では2番手のポジションに位置していますよね。どのような巻き返し策を考えていますか?
牧田氏:
日本国内のサッカーゲーム市場は年々縮小傾向にありますが,先日のワールドカップ予選を見ても分かるように,サッカー人気には根強いものがあります。来年のワールドカップに向けてサッカー熱が高まるタイミングと,次世代機の登場が重なるということで,我々にとってもいいチャンスだと捉えています。
FIFA 14には,新プラットフォームの性能に見合う品質があるという自信がありますので,ちゃんとアピールすれば,プレイヤーさんに選んでもらえる可能性も高まると考えています。
4Gamer:
これまでFIFAシリーズを遊んだことのない層に向けては,どのようなアピールをされますか?
牧田氏:
まずは一度遊んでいただくことですね。触ってもらえれば,我々がどういう方向性で,どういったサッカーゲームを作ろうとしているのかが理解してもらえる。そこさえクリアできれば,日本でも売れないはずがないと思っています。
4Gamer:
前作では体験版が配信されましたね。
牧田氏:
はい。体験版は引き続き予定していますが,これに加えて体験会のようなイベントを実施する方向で考えています。もちろん,東京ゲームショウも重要な機会だと思っていますよ。
4Gamer:
まだハードの発売日は公開されていませんが,次世代機版はローンチタイトルとして発売する予定ですか?
牧田氏:
もちろん,そのつもりで進めているところです。
4Gamer:
期待しています。最後に,日本のプレイヤーにメッセージをお願いします。
牧田氏:
開発チームは一丸となって頑張っていますが,なかでも次世代機版は,FIFAの魅力を最大限に引き出しています。ぜひ実際に触ってほしいです。必ず驚かれると思いますよ。
4Gamer:
どうもありがとうございました。
このインタビューのあと,牧田氏にEAブースを案内してもらい,次世代機版FIFA 14をプレイすることができた。
実際に画面を見てみると,グラフィックスが良くなっていることは一目で分かる。先日の取材時にPlayStation 3版を見たときにも,同様の感想を抱きはしたが,衝撃のレベルが違う。
さらに,そのリアルな選手達が,実に自然に動いている。モーションが細かくなり,まるでプリレンダリングされたアニメーションのようだ。インタビュー中,「体の重心」や「足の付き方」といった進化のポイントを聞いただけだと,いまいちイメージできなかったのだが,それらが一瞬で理解できた。足の運び方が滑らかになり,体全体を使って動いていることが再現されている。とにかく自然で,それでいてサッカー特有の細かい動きも見せてくれるのだ。ビジュアルのインパクトに加え,ゲームプレイでも圧倒的な違いを見せつけられた形で,次世代サッカーゲームの凄みをヒシヒシと感じた。
最後に,ほかのEA SPORTSタイトルにも少し触れておこう。「NBA Live 14」は技術デモやトレーニングモードを公開していたが,スティックで操作するドリブルのレスポンスがいい。FIFA 14と比較しても格段にいいのだが,それは競技の違いによる最適なバランスによるものだという。FIFA 14では選手を操作している感覚だったが,NBA Live 14は,左右のスティックがそのまま腕や足とつながっているような感覚なのだ。
また,「Madden NFL 25」は,選手のグラフィックスをズームアップして見ることができたが,ヘルメットの傷や汚れ,光源の位置で変わる光の反射,ユニフォームや顔の表情,皮膚に滲む汗といった細部まで描かれていて,やはり驚かされた。
スポーツゲームに特化したIgniteの性能と,それが生み出すあまりにもリアルなゲーム世界を目の当たりにして,「一度遊べば分かってもらえる。分かってもらえれば日本で売れないわけがない」という牧田氏の言葉を,素直に理解できた次第である。
4GamerのE3 2013特設ページ
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