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[超会議3]「ウルトラストリートファイターIV」エキシビションマッチ会場で,杉山P&綾野APにアーケード版稼働後のあれこれを聞いてみた
このステージイベントは,ウメハラ選手を始めとする有名プレイヤー達を招いてのエキシビションマッチを中心としたもの。加えて,先日発売日が決定したばかりの家庭用ゲーム機版「ウルトラストリートファイターIV」(ARCADE / PS3 / Xbox 360 / PC)の情報も,本作のプロデューサー・杉山晃一氏,アシスタントプロデューサー・綾野智章氏から,改めて紹介されるなど,盛りだくさんのステージとなっていた。
本稿では,意外な展開の続出となったエキシビションマッチの内容をレポートするとともに,カプコンの杉山氏,綾野氏両名へのミニインタビューをお届けしていこう。
「ウルトラストリートファイターIV」公式サイト
意外な組み合わせが続出したエキシビションマッチ
今回のエキシビションマッチでは,対戦カードがそれぞれマゴ選手対かずのこ選手,ももち選手対ときど選手,ボンちゃん選手対ウメハラ選手と決まっており,それぞれ5試合先取のルールで行われた。
ただし,直前の試合で負けた側のプレイヤーは,キャラクターを変更できるルールが採用されているのがポイントだ。アーケード版ウルIVの稼働から約1週間ほどという時期ということもあってか,各選手とも新キャラクターを含めたさまざまなキャラクターを繰り出し,ガチなトーナメントでは中々見られない,バラエティに富んだ対戦カードが見どころとなった。
コミュニティに正面からぶつかっていくこと――杉山P&綾野APミニインタビュー
4Gamer:
早速ですが,今回のステージでも紹介が行われた5人目の新キャラクター,ディカープリについて聞かせてください。まず,新キャラクターとして彼女が選ばれたのには,どんな理由があったのでしょうか。
まずストーリー的な面を掘り下げたかったというのが,大きな理由ですね。ストリートファイターIVシリーズは,時間軸でいうとストリートファイターIIIシリーズよりも前という位置づけなんです。そこでシャドルーにまつわるエピソードを掘り下げるために,今回はベガ親衛隊――Dollsから,キャミィとの因縁がとくに深いディカープリに白羽の矢を立てました。
4Gamer:
ベガ親衛隊から選ぶのであれば,ストリートファイターZEROシリーズに登場していたユーリやユーニでも良かったのでは?
綾野智章氏(以下,綾野氏):
いやいや,キャミィとの因縁が深いというのがポイントなんですよ。キャミィとベガの関係というのは,実はこれまであまり描かれてこなかったじゃないですか。ストリートファイターシリーズの世界観を深めるという意味では,彼女でなければならなかった。ステージでもお見せしたとおり,オープニングムービーにも力が入っているので,ぜひ期待していただければと思います。
杉山氏:
アニメーションのクオリティが,もの凄く高いんですよ。
綾野氏:
今回のアニメーションはサンライズさんにお願いしたんですが,「作画枚数多くなりませんかね?」ってずっと無理を言い続けて(笑)。相当頑張っていただきました。
4Gamer:
なるほど。ディカープリは「ストリートファイターZERO3」のデモシーンが初登場ですが,今回のデザインはUDONが手がけたコミックス版準拠ということででいいのでしょうか。
杉山氏:
UDONさんデザインのディカープリは,鉤爪を武器として使っていたんですが,ウルIVではダガーの様な形状の武器を装備しています。また彼女の持つ“憎しみ”を表現する意味でも,サイコパワーを使った攻撃が多くなっていますね。
綾野氏:
プレイヤーの皆さんからは,キャミィ+バルログって良くいわれるんですけど,全然そんなキャラクターではないんですよ。むしろ開発中は,バルログのことは頭の片隅にもなかったくらいで。
杉山氏:
公式ブログに,バルログの鉤爪が映った写真が載っていて,「5人目はUDONのコミックで鉤爪を装備していたディカープリに違いない!」って噂された事があったんですけど,皆さん深読みしすぎです(笑)。でも,それが結果的にはなぜか正解だったという。
綾野氏:
あの鉤爪は,スパIIXの頃にコスプレ用に発注したもので,ディカープリとはまったく関係ないんですけどね(苦笑)。まあ,小野(小野義徳プロデューサー)がヒント出し過ぎたのが良くない!
4Gamer:
確かに(笑)。では,そんなディカープリのバトルコンセプトは?
綾野氏:
まだ細かいところは言えないのですが,モーションには拘って制作しています。キャミィはコマンド技がメインですが,ディカープリはタメ技を中心にしていますし,戦闘スタイルにどれだけ違い持たせられるか,ということ自体がコンセプトになっているんです。
4Gamer:
海外でのお披露目時に行われたエキシビションでは,かなり強そうという印象を受けましたが。
綾野氏:
あれはまだ,ちゃんとチューニングされていない状態でしたからね。
杉山氏:
皆さんに触っていただける頃には,かなりトリッキーなキャラクターとして完成しているハズです。色々な動きが可能ですし,その分使いこなすことができれば,おっしゃるとおりとても強いかもしれない。そういうキャラクターが好きな人には,ぜひとも挑戦してみてほしいキャラクターです。
誰がウルIVを作っているのか
4Gamer:
では,稼働から10日ほどが経過したアーケード版について,現時点でのプレイヤーの反応はいかがですか?
綾野氏:
反応は上々です。キビしい意見をいただきつつではありますが,むしろ話題になっている事が自体がありがたいと思っています。
4Gamer:
公開されたチェンジリストを拝見すると,最終ロケテスト版からはあまり変化が無いようにも感じましたが,これはなぜなのでしょうか。
綾野氏:
最終ロケテストって,僕等にとっては答え合わせのようなものなので,余程大きな反響がないかぎりは,あまり変わることはないですね。ただロケテストはどうしても期間が限られるものなので,稼働後に問題が発覚することはありえると思っています。
杉山氏:
ゲームバランスについては,どうしてもしばらく遊びこんでいただかないことには見えてこない側面があります。なので,現在は寄せられたご意見を蓄積し,整理することに努めています。ただ,アップデートによる調整はもちろん視野に入れていますので,引き続きご意見をいただけるとありがたいです。
4Gamer:
ちなみに細かいところなんですが,公式ブログでガイのEX武神旋風脚が不具合として上げられていました。あれは,発生が2フレームであるがゆえの問題だと思うのですが……。
杉山氏:
おっしゃるとおり、ご迷惑をおかけしており申し訳ないです。ただ,発生が2フレームであること自体は仕様です。それに紐付くK.O.時にゲージが減らないとか,ほかの技でキャンセルできてしまうといったところは,意図していない挙動ですので,修正する方向で考えています。
4Gamer:
分かりました。ではシステム面についてですが,レッドセービングアタック(以下,赤セビ)のコマンドも「弱P+中P+中K」と,ベータロケテスト時から変更がありません。ここはプレイヤーのコミュニティ内でも議論があったように思いますが,どうしてこの形になったのでしょうか。
綾野氏:
もちろん色々検討はしました。よく言われる「強P+強K」という案も考えましたが,そうするとアピールをどこに持っていくかという話になります。これをスタートボタンに振るとなると,今度はいわゆる“小パン辻式”※ができなくなってしまうんです。アピールの設定を「無し」にすればこれも回避できますが,そうすると「アピール無し」設定をプレイヤーに強制していると捉えられかねない。もしかすると,コアなプレイヤーからはアピールなんていらないって言われてしまうかもしれないですが,僕等としてはそれは違うと思っていて……。
※小パン辻式……弱Pとスタートボタンを1フレームずらして連続で入力することで,弱P入力を2フレーム継続させるテクニック。コンボなどで弱Pを絡めたシビアな目押しが要求されるときに非常に有用。
4Gamer:
キャラクターの個性の一つですものね。
綾野氏:
そうなんです。それともう一つ,防御手段としての“セビグラ”※が強すぎたのも,今回のコマンドが採用された理由になっています。
※セビグラ……セービンググラップの略。中P+中K入力後,すぐに弱P+弱Kを追加入力することで,セービングアタックを発動させつつ投げ抜けができるというテクニック。これにより,打撃と通常投げの双方を回避できる。
4Gamer:
プレイヤーからは,「赤セビでアーマーブレイク属性の技を受け止められたらいいのに」という声が良く聞かれましたが,そういった意見については?
綾野氏:
ありましたね。でも,それをやってしまうと赤セビ重ねの起き攻めが強くなりすぎてしまいますし,今度は対赤セビ用の技を考えなくてはならなかったりと,プレイヤーが覚えることが多くなりすぎるんですよ。なので,今のところは考えていません。
4Gamer:
確かにそのとおりですね。いや,意外……といってはなんですが,ちゃんと考えられてるんだなって,逆に納得してしまいました(笑)。
綾野氏:
先ほどガイの話がありましたが,ゲームバランスについては,これからもずっと考えていくつもりです。EX武神旋風脚の発生が2フレームなのは意図したものですが,それで良かったのかどうかも含めて,見直しは続けたい。現時点では確約はできませんが,次の大きなアップデートに修正を盛り込めたらと思っていますね。
杉山氏:
一口に調整といっても,意見をいただいてから反映するまでには,通るべき工程がいくつもあるんです。日米で意見を交換して,さらにはデバッグしてとなると,どうしても時間がかかってしまう。お待たせしてしまって申し訳ないですが,必ず良いものにしていきますので,ご期待ください。
4Gamer:
その開発体制についてなんですが,本作の開発というのは日米のどちらが舵をとっているのでしょうか。日本からみると,どうも北米主導という印象がありますが。
綾野氏:
これまでのシリーズ作品はすべて日本国内でしたが,ウルIVに関しては日米共同ですね。
杉山氏:
日本のQA(品質管理)チームと,Combofiend(Capcom USAで本作のSenior Online Community Specialistを務めるPeter "ComboFiend" Rosas氏)を始めとしたCapcom USAのチームがお互いに意見交換をしながらチューニングしています。
綾野氏:
日米の意見はかなり違っていて,面白いんですよ。立ち回りの面白さを追求する日本チームと,連続技の可能性を広げるUSAチームって感じで。議論の末,ときには喧嘩にみたいになったり(笑)。まことの吹上を地上の相手にも当たるようにしてくれ,とかね。
4Gamer:
ああ……それはなんというか,分かる気がします。日本のプレイヤーからは出てこない発想というか。
杉山氏:
ただ,プレイヤーの皆さんからの意見は,日米に限らず,ワールドワイドから取り入れようというのが今作のコンセプトです。とくに日本のプレイヤーのレベルが高いのは,海外でももちろん分かっていますから,日本からの意見は重視される傾向にあります。
綾野氏:
うん。そんな開発体制でありながら,日本のアーケードが世界で最も早い稼働になったというのは,僕としてはやっぱり意味があると思っていて。僕自身がアーケードっ子だったのもあるかもしれませんが,アーケードでストリートファイターがプレイできないなんてことになったら,すごく寂しいじゃないですか。
コミュニティに絡んでいく,という決意
4Gamer:
では少し切り口を変えた質問になるのですが,公式ブログや大会の配信などを見ていると,本作ではプレイヤーの意見に積極的に耳を傾けようという姿勢を強く感じます。これは綾野さんの舵取りなんですか?
綾野氏:
誰のというよりは,カプコンとしての方針ですね。
杉山氏:
そこは去年,僕と綾野の2人体制になったとき「どんどんコミュニティに絡んでいきますよ」と表明したとおりです。
4Gamer:
ああ,なるほど。Capcom USAでも,コミュニティに歩み寄る姿勢を見せていて,海外では話題になっていますね。でも個人的には,先日の公式ブログの投稿がけっこう衝撃的で。ダルシム対ヒューゴーの話なんですが,公式でこれにコメントしちゃうのかって。
杉山氏:
あれも,コミュニティに絡んでいくという狙いの延長ですね。
4Gamer:
しかし,ああいうネガティブな話題って,普通はスルーするものじゃないですか? コメントを出したところで,中級者以上にとってはそりゃそうだって話だし,初心者には伝わらないというか。もちろん触れてくれること自体が嬉しいという評価もあるとは思いますが。
綾野氏:
おっしゃることは分かりますよ。ただ……コミュニティに絡んでいくと決めたからには,良い面も悪い面も併せ呑む必要があると思うんです。悪い面を怖がっていたら,良い面も出せない。なので,今回は……この際ぶっ込んでみようかなって(笑)。
杉山氏:
格闘ゲームって,コミュニティの基盤がしっかりしている分,ほかのジャンルと比べてプレイヤーさんと対話しやすいジャンルだと思うんです。だから,何かネタがあればちゃんと拾うこと。それこそ正面切ってぶつかっていくことが,大事なんじゃないかと。
4Gamer:
ただ今の取り上げ方だと,綾野さんが悪者に見えかねないのでは?
綾野氏:
製品に対して責任を持つこと,そしてそれを伝えることが,自分の役割だと思っています。それに何も言われないよりは,ちゃんと意見を言ってくれた方が製品は良くなるわけで。まあ,もし皆が持ち上げてくれるなら,僕は嬉しいですけどね(笑)。
(一同笑)
4Gamer:
分かりました(笑)。では最後に,ウルIVプレイヤーに向けてメッセージをいただければと。
綾野氏:
さっきも言いましたが,僕はゲームセンターで育った人間なので,アーケード版を世界最速で出すことができて非常に満足です。やっぱりストリートファイターがアーケードで遊べるのは嬉しいですし,そこは皆さんと共有できる気持ちなんじゃないかって思っています。今は8月7日に家庭用ゲーム機版を,ずれることなく皆さんのお手元にお届けできるよう,そしてゲームバランスがより良くなるよう全力投球していますので,応援よろしくお願いします。
杉山氏:
いい話は全部綾野に言われちゃいましたが,自分としては,e-Sports的な盛り上がりを日本でも立ち上げていきたいと考えています。日本で培われてきたアーケードの大会文化を,海外はもちろん,格闘ゲームを遊んだことのない人に届けたい。格闘ゲームがスポーツとして認められるよう,ぜひ皆さんにもウルIVに乗っかっていただけたらと思っています。よろしくお願いします!
4Gamer:
本作のこれからの展開にも期待させていただきます。本日はありがとうございました。
「ウルトラストリートファイターIV」公式サイト
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