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「GeForce GTX 1080」のSLI構成を試す。「SLI HB Bridge」は必須アイテムなのか?
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印刷2016/08/31 00:00

テストレポート

「GeForce GTX 1080」のSLI構成を試す。「SLI HB Bridge」は必須アイテムなのか?

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 「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)の発表に合わせ,NVIDIAがマルチGPUソルーション「SLI」のアップデートを行ったのを覚えている人も多いだろう。
 NVIDIAは,Pascal世代以降のGPU用に,新しいSLI動作モード「SLI HB」(HB:High Bandwidth)を用意し,「従来型のSLIも利用できるが,2560×1440ドットの120Hz表示や,4K解像度以上では,SLI HBの利用を推奨する」という立場を取っている。

GIGABYTEの協力により,2枚のカードを用意できた
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 では,実際にSLI HBを使うと,従来のSLIを使ったときと比べ,挙動にはどのような違いが出るのだろうか。2016年8月26日の記事で取り上げたGIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)製GTX 1080カード「GV-N1080XTREME GAMING-8GD-PP」(以下,GV-N1080XTREME GAMING)を,GIGABYTEからもう1枚入手できたので,SLI HB動作の検証を行ってみたい。

GV-N1080XTREME GAMING-8GD-PP
メーカー:GIGA-BYTE TECHNOLOGY
問い合わせ先:CFD販売 050-3786-9585(平日10:00〜12:00,13:00〜18:00)
実勢価格:10万8000円程度(※2016年8月31日現在,1枚)
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SLI HBの大きな特徴はDual-Link SLIと転送クロック650MHz


 そもそもSLI HBとは何かという話は,西川善司氏による解説記事で一度お伝えしているが,ここでおさらいしておこう。

ASUSTeK Computer製マザーボード「Z170 PRO GAMING」に付属するSLIブリッジで2枚のGTX 1080カードをつないだところ。これが従来型の2-way SLI(=Single-Link SLI)接続となる
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 SLI HBにおいて,従来のSLIとの違いは2つある。1つは「Dual-Link SLI」で,これは簡単に言えば,カードに用意された2つのSLIブリッジ両方を使って,2枚あるグラフィックスカードの調停を行うモードのことだ。
 NVIDIAが「Single-Link SLI」と区別して呼ぶこともある従来型のSLIだと,2-way SLIを実現するだけならSLIブリッジは1個でよかったが,Dual-Link SLIの実現にあたっては,SLI対応マザーボードに付属するSLIブリッジを2個が必要になる。言い換えると,SLIブリッジ自体は既存のものでよく,とにかく2系統つなげばOKということである。

手元にあったもう1つ,こちらはMSI製のSLIブリッジも接続したところ。これでDual-Link SLIだ
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見た目が豪華なSLIブリッジの例(※写真のEVGA製品が650MHz動作に対応するものだというわけではない)
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 もう1つは,ブリッジを用いた転送クロックが,従来の400MHzから650MHzへと約63%向上したことである。NVIDIAによると,従来型のSLIブリッジであっても,グラフィックスカードメーカーが独自に用意した,装飾付きの豪華なもの――「LED Bridge」とも言われる――であれば650Hz動作するものもあるが,フレキシブルタイプのものは確実に400MHzだそうだ。
 装飾付きの豪華なものは,そのサイズの問題から,Dual-Link SLIで利用できないので,事実上,既存のSLIブリッジだと,Dual-Link SLIと650MHz動作の両立を図ることはできないという。

SLI HBブリッジ。NVIDIAは,マザーボード側のスロット設定に合わせて3種類用意する。いずれも2-way SLI用だ
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 では,SLI HBブリッジの持つ2つの特徴を利用できるブリッジはどれかというと,それが,GTX 1080および「GeForce GTX 1070」と同時発表になった「SLI HB Bridge」(以下,SLI HBブリッジ)である。
 このSLI HBブリッジは,ようやく国内販売の目処が立ったものの,それまでは入手性が低かった。だからこそGIGABYTEは,ハイエンドモデルであるGV-N1080XTREME GAMINGに付属させたわけである。

というわけでこちらが,GV-N1080XTREME GAMINGの製品ボックスに付属するSLI HBブリッジを取り付けた状態。GTX 1080の2-way SLIは,これでフルポテンシャルを発揮できる(とされる)
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GTX 1080カードを2枚差して,SLIブリッジ×1でSLI構成したところ,注意書きが表示された
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 ちなみに,「GeForce 372.54 Driver」を導入した状態でNVIDIAコントロールパネルから確認すると,SLIブリッジを1つだけ接続した状態では「より高パフォーマンスのSLIブリッジを使って体験を向上できます。」という注意書きが表示される。
 これは,SLI HBブリッジを接続するともちろん消えるのだが,SLI HBブリッジを接続せずとも,旧来的なSLIブリッジを2本差した状態でも消えるのを確認できた。つまりNVIDIAコントロールパネル(というかGeForce Driver)は,「SLI HBブリッジを使っているか」ではなく,「Dual-Link SLI動作か」しか,見ていないということになるだろう。


ゲーマーにとって現実的な解像度を使い,3パターンのSLI動作を試す


 以上を踏まえ,今回は,GV-N1080XTREME GAMINGのシングルカードと,従来型のSLIブリッジを1個使ったSingle-Link SLI,2個使ったDual-Link SLI,そしてGV-N1080XTREME GAMINGに付属するSLI HBブリッジを使ったSLI HBと,4パターンのテストを行い,そのスコアを比較することにした。スペースの都合上,グラフ中では順に「Single」「SLI SL」「SLI DL」「SLI HB」と書いて区別するので,この点はご注意を。

 テスト解像度は高ければ高いほどいいのだろうが,今回は,4Gamer読者の大多数にとってより現実的な2560×1440ドットおよび3840×2160ドットに絞り,「実用的な範囲」におけるSLI HBの挙動を見てみたいと考えている。

 GV-N1080XTREME GAMINGの動作モードは,2枚とも工場出荷設定である「GAMING MODE」。そのほかテスト環境はのとおりだ。

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 テスト方法は,4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0に準拠しつつ,マルチGPU動作に対応していない「ARK: Survival Evolved」はテスト対象から省く。一方,「3DMark」(Version 2.1.2973)では,レギュレーションで規定する「Fire Strike」と同じ,2回計測して高いほうのスコアを計測するというやり方で,DirectX 12版テストである「Time Spy」も実行することとした。

 CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するため,マザーボードのUEFIから無効化している。
 なお,ここまで紹介したテスト条件はGV-N1080XTREME GAMINGのレビュー記事とまったく同じであるため,シングルカード時のスコアは同記事のものを流用している。この点はあらかじめお断りしておきたい。


従来型SLIに対して3割以上高いスコアを示すこともあるSLI HB。ただしDual-Link SLIとの違いはあまりない


 スコアを順に見ていこう。3DMarkのFire Strikeにおけるテスト結果をグラフ1で見てみると,従来型のSLI動作でシングルカードに対して68〜81%程度高い数字を叩き出す一方,Dual-Link SLIやSLI HBの“上積み”はほとんどない傾向が見てとれる。
 あえていえば,SLI HBだとほんのわずかにスコアが高いので,たとえば実ゲームかつ5K以上の解像度ならそれが少し広がるかもしれないということは言えそうだが,少なくとも4K解像度までであれば,3つのテスト条件で違いはないという理解でいいだろう。

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 続いてグラフ2は同じく3DMarkからTime Spyの結果となる。対シングルカードのスコア伸び率こそFire Strikeより下がっているものの,SLIの3条件でスコアに大差がないという点では,Fire Strikeと同じ傾向だ。

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 「Far Cry Primal」の結果がグラフ3である。
 ここでは,解像度2560×1440ドットだと相対的なCPUボトルネックによって,スコアは80fps前後で頭打ちになる。そのため3840×2160ドット条件のスコアを見ていくことになるが,まず,従来型SLIはシングルカードに対して約67%高いスコアを示し,SLI HBとDual-Link SLIはそこから約5%高いスコアを示した。転送クロックの引き上げ効果はともかく,Dual-Link SLIには相応の効果が認められるわけだ。

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 さらにグラフ4は「Tom Clancy’s The Division」(以下,The Division)のスコアだが,従来型SLIがシングルカードに対して18〜29%程度のスコア向上となるのに対し,Dual-Link SLIでは48〜58%程度,SLI HBは49〜60%程度と,新しいSLI接続のメリットが大きい。
 ただ,SLI HBとDual-Link SLIの違いはフレームレートで1fpsもなかった。

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 「Fallout 4」のスコアがグラフ5で,ここだと,2560×1440ドット条件では相対的なCPUボトルネックが出ているが,3840×2160ドットだと,SLI HBとDual-Link SLIが,従来型SLIに対して約20%,シングルカード構成に対して23〜24%程度高いスコアを示している。
 というか,従来型SLIでスコアがほとんど上がっていないのは興味深い。

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 グラフ6の「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)だと,SLI HBとDual-Link SLIが,従来型SLIに対して若干高いスコアを示している。
 SLI HBがDual-Link SLIより低い数字を示しているのはなるが,若干なので,ここは落ちているというより,ほとんど変わらないスコアになっていると見たほうが安全ではないかと思う。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 「Project CARS」のスコアはグラフ7のとおりだが,3840×2160ドット解像度でさえ描画負荷が低すぎ,結果,SLIの3条件はスコアの比較が意味をなさなくなってしまった。

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The DivisionとFallout 4で「従来型SLIのスコアが低い理由」を探ると,別の事実が見えてきた


 以上のテストから,(CPUの相対的なボトルネックが発生する条件を除き)SLIの3条件でスコアが大きく変わらないケースと,SLI HBおよびDual-Link SLIが同じようなスコアで,従来型SLIではあまり性能の出ないケースがあることを確認できたわけだが,後者では何が起こっているのだろうか。
 The DivisionとFallout 4で,SLIの3条件におけるフレームレート推移を見たものがグラフ8,9となる。

 これを見ると,一見して従来版SLIではフレームレートが出ておらず,SLIブリッジの帯域幅不足が,描画負荷の高い局面におけるスコアの低迷を招いていることが窺えよう。
 一方,SLI HBとDual-Link SLIはおおむね同じようなスコア傾向で,ときおり極端なフレームレート低下があって,最低フレームレートでは従来型SLIと大して変わらない水準があることも確認できる。この原因は「FCAT 4K」で追試すべき気配を感じるが,ひとまず現時点では「SLI HB,Dual-Link SLIとも,最適化はまだまだだが,全体的にはSLIブリッジの帯域幅効果らしきものを確認できる」とは言えるだろう。

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SLI HBとDual-Link SLIの有効性は消費電力で分かる!?


 SLI構成時の消費電力は,ブリッジチップによって変わることがあるのだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,今回のテストシステムにおける消費電力を測定してみたい。

 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 その結果はグラフ10のとおり。アイドル時はシングルカード構成比でざっくり30Wの“増量”だが,アプリケーション実行時は,ベンチマークスコアに応じた消費電力ぶりになっており,The DivisionとFallout 4では従来型SLIにおける消費電力は,SLI HBおよびDual-Link SLI時と比べて低い。ブリッジ間の帯域幅が足りていないと,2基あるGPUを活用しきれず,結果,ベンチマークスコアも消費電力も低くなっているということが分かるだろう。

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 最後に一応,GPUの温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 1.10.0)からGPU温度を取得することにした。テスト時の室温は24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いてある。

 プライマリ側はセカンダリとの隙間が狭くなり,どうしても,セカンダリ側と比べると十分なエアフローが確保できない。そのため,アイドル時と高負荷時ともに温度が若干高めだ。
 しかし,それでも高負荷時に70℃台前半をキープしているのは立派だ。GV-N1080XTREME GAMINGが搭載するGPUクーラー「WINDFORCE STACK 3X」の冷却性能は,2-way SLI構成においても何ら心配する必要はないレベルにあると述べていいだろう。

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少なくとも4K解像度までであれば,重要なのはSLI HBよりもDual-Link SLI


 以上のテスト結果から,4K解像度のような高解像度環境において,従来型SLIではGTX 1080のポテンシャルをフルには発揮させられない場合があり,その場合にDual-Link SLIは有用であるということが言えるだろう。一方,少なくとも4K解像度までであれば,SLI HBブリッジの650MHz転送がもたらすメリットはごくわずかなので,手元に従来型のSLIブリッジが2つあるのであれば,新規でSLI HBブリッジを探す必要性はあまり感じない結果にもなっている。この点は,Pascal世代のGPUでSLI動作を試したいのであれば,押さえておいたほうがいい情報だろう。

 さて,フレームレートを追ってみて分かったことは,Dual-Link SLIおよびSLI HBを用いたSLI動作に,まだ最適化の余地がかなりありそうであることだ。NVIDIAは今世代から,ゲーマー向けのSLI構成を事実上2-wayまでに絞ったが(関連記事),ひょっとするとNVIDIAは,DirectX 12,あるいはVR時代の本格的な到来を目前として,SLIそのものに何か手を入れつつあるのかもしれない。

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