レビュー
カード長なんと約21cm。ZOTACの「Mini」なGTX 1080カードを使ってみた
ZOTAC GeForce GTX 1080 Mini 8GB
(ZTGTX1080 -8GD5XMINI /ZT -P10800H -10P)
だからといって,高い3D性能を求めるのであれば,おいそれとただカード長の短いカードを選ぶわけにはいかない……というわけで,「ハイエンドやハイクラスのGPUを搭載しつつ,短いグラフィックスカード」というのは,仮にMini-ITXサイズを実現していなくとも,一定の需要がある。
今回取りあげるZOTAC International(以下,ZOTAC)製グラフィックスカード「ZOTAC GeForce GTX 1080 Mini 8GB」(型番:ZTGTX1080-8GD5XMINI/ZT-P10800H-10P,以下,ZOTAC GTX 1080 Mini)も,まさにその需要に応えるための製品だ。「GeForce GTX 1080」の場合,「Founders Edition」のカード長は実測約267mm(※突起部除く)なのに対し,ZOTAC GTX 1080 Miniは同211mm(※突起部除く)と,56mmも短いのが最大の特徴だが,では,性能面ではどうなのだろう? テストにより明らかにしてみたい。
小さいながらもしっかりした冷却機構を採用するZOTAC GTX 1080 Mini
ただし,さすがにただ短くはできなかったようで,マザーボードに差したときの垂直方向へ,クーラー,基板ともブラケット部から18mmはみ出した格好にもなっている。8ピン
FANの回転数制御で[MANUAL]ボタンを選択すると,スライドバーで回転数を一定にできる |
[ADVANCED]ボタンを押せば,ファン回転数をさらに柔軟に変更可能 |
また[ADVANCED]を選んで追加のダイアログウインドウを表示させれば,温度とパーセンテージの関係を示した折れ線グラフのマウス操作により,ファン回転数設定を10℃ごと,かつ10%刻みで指定できる。
%表記の回転数との折れ線グラフが表示され,10℃ごと,なおかつ10%きざみで,ユーザーがマウスでグラフをクリックすることで変更することが可能になっている。
そう聞くと,「これを利用すれば,GPU温度が60℃に達するまではファン回転を0%に保って静音化できないの?」と思うかもしれないが,残念ながら最低値は10%なので,ファンを停止させることはできない。
限られたスペースで最大限の冷却効果を発揮させるためか,IceStormクーラーはかなりしっかり作り込んである印象だ。
基板はすっきりしつつも電源部はしっかりしており,見る限り6+1フェーズ構成のようだ。GTX 1080のFounders Editionだと5+1フェーズ構成なので,電源周りは強化されていることになる。
具体的なパーツ構成を見てみると,GPU用のMOSFETはUBIQ Semiconductor製のDual N-Channelタイプである「QM3816N6」。フェーズごとにそれを2基ずつ搭載できるような基板設計に見えるが,実際に搭載しているのはフェーズあたり1基だ。
デジタルPWMコントローラはお馴染みの「μP9511P」で,電源部と外部出力インタフェースの間にあった。
動作クロックはわずかに上がったクロックアップ仕様
ZOTAC GTX 1080 Miniは,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルだ。GTX 1080のリファレンスだとGPUのベースクロックが1607MHz,ブーストクロックが1733MHzのところ,ZOTAC GTX 1080 Miniは順に1620MHz,1759MHzなので,わずかに高い設定となっている。メモリクロックは10010MHz相当で変わらなかった。
ちなみに動作クロックは,自己責任を覚悟すれば,前段で紹介したFIRESTORMから設定変更できる。FIRESTORMの中央スライダー部にある「GPU CLOCK」を使えば,ブーストクロックを1MHz刻みで−400〜+2400MHzの範囲から指定でき,さらに「GPU MAX VOLT」を使えば,定格電圧に対するパーセンテージ指定でプラス0〜100%の指定が,メモリクロックも「MEMORY CLOCK」から1MHz刻みで−100〜+1000MHzの範囲から指定できる。別途,消費電力やGPU温度のターゲット値を変更することで,ブースト用のマージンを大きくしたり小さくしたりといったことも可能だ。
Founders Editionと比較し,小型化,クロックアップの影響を見る
今回,比較対象にはGTX 1080のFounders Edition(以下,GTX 1080 FE)を用意した。ZOTAC GTX 1080 Miniは小型化したクロックアップモデルなので,小型化の影響が性能面に出ているのか,わずかなクロックアップの効果はあるのかを確認してみようというわけである。
テストに用いたPCの構成は表のとおり。テストに用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時の最新版となる「GeForce 378.92 Driver」だ。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション19.0準拠。解像度は,GTX 1080がハイエンド向けということもあり,3840
なお,テストにあたって,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。これは,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するためだ。
「ZOTAC GTX 1080 Miniの性能はGTX 1080 FEとほぼ同じ」と言える結果に
テスト結果を順に見ていきたい。
グラフ1は「3DMark」(Version 2.3.3663)のDirectX 11テストである「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものだ。スコア上はGTX 1080 FEを上回っているものの,パーセンテージで言えば約1%――より正確を期すなら0.6〜0.7%――であって,「カードの小型化によって冷却周りに無理が出ていたりはしないが,2連クーラーを採用し,さらに動作クロックも若干引き上げてある効果もほとんどない」という結果になっている。
グラフ2は同じ3DMarkから,DirectX 12テストの「Time Spy」におけるスコアをまとめたものだが,ここでもスコア差は約1%と,Fire Strikeを踏襲したものになった。
実際のゲームではどうか。グラフ3,4は「Far Cry Primal」の結果だ。Far Cry Primalでは,「最高」プリセットでZOTAC GTX 1080 MiniがGTX 1080 FEに対して2〜3%程度高いスコアを示しているが,フレームレート上はわずかに2fpsなので,ほぼ横並びと言ってしまってよいだろう。
グラフ5,6は「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)の結果である。ARKにおける両製品のスコア差は1〜2%程度で,フレームレートにして1〜2fpsといったところ。確かに数字のうえではZOTAC GTX 1080 MiniのほうがGTX 1080 FEより上だが,両者のスコアは拮抗しているとするほうが,正しい論評だろう。
一方,グラフ7,8にスコアをまとめた「DOOM」では若干傾向が異なる結果となった。「ウルトラ」プリセットの2560
DOOMのテストは実プレイを含むものの,それゆえ2回計測して平均を取っているため,ウルトラプリセットの2560
「Fallout 4」の結果がグラフ9,10だ。Fallout 4 ではプリセットにかかわらず,3840
グラフ11,12は「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果だが,比較に用いた両者のスコアは最大で約2%。大きな違いは生じていない。
DirectX 12ベースとなる「Forza Horizon 3」の結果がグラフ13,14だが,ここでもZOTAC GTX 1080 MiniとGTX 1080 Tiのスコアは拮抗している。前者は,パーセンテージにして1〜2%程度高いが,実フレームレートでは最大でも1.6fpsだ。
消費電力はGTX 1080 FEから微増。IceStormの能力は十分に高い
ZOTAC GTX 1080 Miniは多少なりともクロックアップ仕様で,かつ基板設計もオリジナルとなっているため,消費電力が気になるところだ。ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定し,比較してみよう。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。
その結果はグラフ15のとおりで,まず,アイドル時において両者の消費電力はほとんど同じと言ってよいだろう。
続いて各アプリケーション実行時だが,こちらだとZOTAC GTX 1080 Miniの消費電力はGTX 1080 FEから1〜10W増えている。クロックアップモデルと言っても,動作クロックを大きく上げていないため,消費電力もさほど増えていないといったところだ。
続いてGPUの温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 1.18.0)からGPU温度を取得することにした。なお,テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いている。
ZOTAC GTX 1080 MiniとGTX 1080 FEでは,ファンの回転数制御が異なるうえ,温度センサーの位置が同じとは断言できない。そのため,横並びの評価はできず,ZOTAC GTX 1080 Miniが搭載するGPUクーラーのIceStormの冷却性能を見るに留めるが,グラフ16に示したとおり,アイドル時は30℃,高負荷時でも67℃と,しっかり冷却できている。IceStormクーラーの冷却性能は十分に高いと言ってよいだろう。
最後に,そのIceStormの動作音も確認しておきたい。今回はカメラをカードと正対する形で30cm離した地点に置き,PCをアイドル状態で1分間放置した状態から,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを最高品質の3840
テスト開始後,最初の1分間はアイドル状態で,うるさいというレベルまでいかないが,ファンの動作音は相応に聞こえる。そしてGPUの温度が上がると,それに連れてファンの回転数が大きくなり,ベンチマークの実行開始から3分後(=ファイル冒頭から4分後)には,動作音はかなり大きくなった。GTX 1080 FEよりも音は大きい印象だ。
ただ,PCケースに入れてしまえば気にならないレベルでもある。
「GTX 1080カードがコンパクトになった」ことに価値を見出すべき製品
ZOTAC GTX 1080 Miniの実勢価格は7万4000〜7万5000円程度(※2017年4月1日現在)。同日時点で,GTX 1080搭載カードの相場は6万5000〜7万5000円程度となっており,ブランドやクーラーの選り好みをしなければ税込7万円以下で購入することも不可能ではないことを踏まえると,価格はさすがに高めだが,割高すぎるほどでもない。このサイズ感に魅力を感じたのであれば,選択肢として一考の価値ありだ。
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