レビュー
カードメーカーオリジナルデザイン採用のOC版GTX 980とGTX 970計2枚を試す
GIGABYTE GV-N980G1 GAMING-4GD
MSI GTX 970 GAMING 4G
GV-N980G1 GAMING-4GD メーカー:GIGA-BYTE TECHNOLOGY 問い合わせ先:CFD販売 050-3786-9585(平日10:00〜12:00,13:00〜18:00) 価格:未定(※2014年9月29日現在) |
GTX 970 GAMING 4G メーカー:MSI 問い合わせ先:MSIサポートページ 実勢価格:4万8000〜5万3000円程度(※2014年9月29日現在) |
それを追加テストするのが本稿……と述べようとしたところで,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)から,同社オリジナルのGTX 980カード「GV-N980G1 GAMING-4GD」も,筆者のところへ届いた。そこで今回は,GV-N980G1 GAMING-4GDのカード詳細を紹介しつつ,カードメーカーオリジナルのデザインを採用したクロックアップ仕様のGTX 980およびGTX 970カード2枚の検証を行ってみたい。
GV-N980G1 GAMING-4GDはTDP 600W対応のクーラーを搭載。コアクロックは9%引き上げられ1228MHzに
ただし,PCI Express補助電源コネクタの構成は,リファレンスカードの6ピン×2から,8ピン×2に変更されている。最大375W(75W+150W×2)もの供給が可能というわけだ。GTX 980における消費電力の目安となるTDP(Thermal Design Power)が165Wなので,仮にGTX 980が165Wを消費するとしても,その倍以上の余裕があるわけだ。
物理インタフェースはDisplayPort 1.2
2スロット仕様の本クーラーは,羽のところに凸型の筋が5本入っているのだが,これにより,風量は一般的な羽形状と比べて23%向上できているとのことだ。
クーラーは,GPUとはシリコングリス経由で直接,メモリチップとは熱伝導シート経由で触れる構造になっている。GPUとメモリチップを覆う銅製プレートには8mm径が5本,6mm径が1本と計6本のヒートパイプが組み付けられており,熱を2つある放熱フィン部へと運ぶ仕様だ。GPU側のヒートフィン部が,エアフローを向上させるという三角形構造「Triangle Cool」になっている点や,空気抵抗を下げるため,フィンの高さが1枚おきに変えられている点も含め,このあたりの仕様はGV-NTITANBLKGHZ-6GD-Bと同じである。
組み合わされるメモリチップはSamsung Electronics製の4Gbit GDDR5「K4G41325FC-HC28」(7.0Gbps品)で,これはリファレンスカードに搭載されたものと同じだった。
独自ツールの「Gaming App」によって「OC」「Gaming」「Silent」の3つから動作モードを切り替えられるのは,最近のMSI製カードらしいところ。OCモードではベースクロックが1140MHz,ブーストクロックが1279MHzまで上昇し,Silentモードではコアクロック1051MHz,ブーストクロック1178MHzに抑えられる。ちなみに,デフォルトではカードの規定クロック動作が設定されたGamingモードで動作する仕様だ。
後述するテスト環境だと,各モードでブースト最大クロックは順に1304MHz,1265MHz,1215MHzへ上がることを確認できている。
GPUレビュー時のスコアと2製品を比較
GTX 970 GAMING 4GではOCモードを利用
テストのセットアップに入ろう。今回,GV-N980G1 GAMING-4GDはカードの定格クロック,GTX 970 GAMING 4GはOCモードで動作させることにする。
比較対象には,GTX 980リファレンスカードと,MSI製オーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.0.0)でリファレンス相当の動作クロックにまで落としたGTX 970 GAMING 4Gをまず用意。さらに,前世代の最上位モデルとなる「GeForce GTX 780 Ti」(以下,GTX 780 Ti)と,競合製品である「Radeon R9 290X」(以下,R9 290X)とも比較することにした。
テストに用いたグラフィックスドライバは,GTX 780 Tiのみ「GeForce 340.52 Driver」で,それ以外のGeForceではNVIDIAからレビュワーに配布された「GeForce 344.07 Driver」を用いる。R9 290Xの動作に使うのは,テスト時の最新版となる「Catalyst 14.7 RC3」だ。そのほかのテスト環境は表のとおり。
テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション15.2に準拠。テスト解像度は2560×1600ドットと1920×1080ドットの2つを用いる。R9 290Xのみ「Battlefield 4」(以下,BF4)において,DirectX 11モードに加えて,Mantleモードでのテストも実施する。
なお,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性があるため,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」を,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。
……と,ここまでの説明で気づいた人もいるとは思うが,今回のテスト環境は,グラフィックスドライバも含め,GTX 980とGTX 970のGPUレビュー時とまったく同じ。そのため,GTX 980とGTX 970,GTX 780 Ti,R9 290Xのスコアは同記事から流用していることをあらかじめお断りしておきたい。
クロックアップでGTX 980の牙城は盤石に
GTX 970もGTX 780 Tiを凌駕する場面が増える
以下,グラフ中に限り,GV-N980G1 GAMING-4GDを「GBT GTX 980 OC」,GTX 970 GAMING 4GのOCモードを「MSI GTX 970 OC」と記載すること,グラフは基本的にGeForce→Radeonの順でモデルナンバー順に並べているが,グラフ画像をクリックすると,より高いテスト条件のスコア順に並び変えたものを表示するようにしてあることを断りつつ,テスト結果を順に見ていこう。
グラフ1は「3DMark」(Version 1.3.708)の総合スコアをまとめたものだ。GV-N980G1 GAMING-4GDはGTX 980比で7〜9%程度,GTX 970 GAMING 4GはGTX 970比で4〜5%程度高い値となった。いずれも,動作クロックの違いをほぼ踏襲した結果になっていると述べてよさそうだ。Fire StrikeのExtremeプリセットで,GTX 970 GAMING 4GのOCモードがGTX 780 TiおよびR9 290Xと肩を並べている点は注目したい。
続いてグラフ2,3はBF4の結果となる。ここでは,DirectX 11モードでテストした「R9 290X」,Mantleモードでテストしたものを「R9 290X Mantle」と表記した。
GV-N980G1 GAMING-4GDは対GTX 980で5〜8%,GTX 970 GAMING 4GのOCモードは対GTX 970で約4%のスコア向上と,3DMarkと比べると若干縮まり気味ながら,おおむね同傾向と言っていいだろう。GTX 970 GAMING 4GのOCモードは,GTX 780 Tiとほぼ並び,R9 290X Mantleに迫る。
なかなか面白いテスト結果が出たのがグラフ4,5の「Crysis 3」だ。解像度2560
GPU負荷が高くなる局面では,より高い動作電圧での動作が許容され,(GV-N980G1 GAMING-4GDでは)より高性能なクーラーが組み合わされることの効果が出ていると推測される。
「BioShock Infinite」のテストスコアをまとめたのがグラフ6,7である。
対GTX 980で5〜9%程度のスコア差をつけるGV-N980G1 GAMING-4GDの立ち位置は盤石。GTX 970 GAMING 4GのOCモードは,描画負荷の低い「High」だとGTX 780 Tiの91〜93%程度に留まるのが,描画負荷の高い「UltraDX11_DDOF」では逆に1〜2%程度のスコア差を付けている。GPUレビュー時にも触れたとおり,これはドライバの最適化不足を指摘できそうだ。
GPUレビュー時にも描画負荷が低すぎてCPUボトルネックが生じ,スコアが頭打ちになっていた「The Elder Scrolls V: Skyrim」だけに,今回も多くのテスト条件でスコアの頭打ちが生じている(グラフ8,9。
GV-N980G1 GAMING-4GDは「Ultra設定」の2560
グラフ10,11の「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)でも,「標準品質(デスクトップPC)」の1920
GTX 970 GAMING 4GのOCモードのスコアが今ひとつだと思うかもしれないが,今回テストに用いているGTX 970はGTX 970 GAMING 4Gをリファレンスクロックにまで下げた状態のものなので,優秀な「Twin Frozr V」クーラーのおかげで,リファレンス設定時でもより高いクロックで動作するケースが多く,結果,描画負荷の低い局面でGTX 970 GAMING 4Gとのスコアが縮んでいるという可能性は考えられよう。
新生FFXIV キャラ編における平均フレームレートを知りたいという人のため,グラフ10’,11’も用意したので,興味があればこちらも参照してほしい。
性能検証の最後はグラフ12,13の「GRID 2」だ。1920×1080ドットではスコアの頭打ちが出ているため,ここでは2560
GTX 970 GAMING 4GのOCモードは対GTX 970で6〜7%程度,対GTX 780 Tiで15〜17%程度高いスコアと,こちらも景気がいい。
クロックアップ状態でも消費電力の低さは光る
GPUクーラーの冷却性能と静音性はいずれも高い
GTX 980とGTX 970の消費電力がかなり低いことはGPUレビュー記事を見てもらえば分かると思うが,クロックアップモデルでもそのメリットは損なわれていないのだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を比較してみることにした。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定して,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とする。
その結果はグラフ14のとおり。アイドル時の消費電力はGV-N980G1 GAMING-4GD,GTX 970 GAMING 4Gとも,リファレンスカードと大差ない。一方,アプリケーション実行時だと,GV-N980G1 GAMING-4GDはGTX 980比で10〜26W,GTX 970 GAMING 4GはGTX 970比で3〜12W,それぞれ高い値を示した。後者でそれほどスコア差がないのは,同じカードを使っているためだろう。
いずれにせよ,GTX 780 Tiと比べると,順に56〜70W,84〜97W低いわけで,これは文句なしに立派だ。とくにGTX 970 GAMING 4Gは,今回のテスト環境において,ほとんどのケースでシステム全体の消費電力を300W内に収めており,これは見事というほかない。
最後に,WINDFORCE 3X 600WおよびTwin Frozr Vの実力を確認しておこう。3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 0.7.9)からGPU温度を追った結果がグラフ15となる。
各カードは搭載するクーラーが異なり,温度センサーの位置も異なるので,横並びの比較には向かない。なので,GV-N980G1 GAMING-4GDとGTX 970 GAMING 4Gでどの程度の温度に収まっているかの確認のみに留めるが,GV-N980G1 GAMING-4GDは,高負荷時に64℃と,非常に低い。WINDFORCE 3X 600Wの実力はすでに明らかになっているが,やはり,冷却能力はかなり高いと述べていい。
一方のGTX 970 GAMING 4Gでは,GPUレビュー記事でも紹介したとおり,GPU温度が60℃に達するまで,搭載するTwin Frozr Vクーラーのファンが回転を始めないため,アイドル時の温度が47℃と高め。ただ,高負荷時の温度はやはり70℃未満にまとまっており,こちらも優秀といえるだろう。
肝心の動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,どちらもかなり静かな印象だ。とはいえ言葉では伝えきれないと思うので,今回は,両者のGPUクーラーの動作音を録音したサウンドファイルを用意してみた。
録音にあたっては,グラフィックスカードから30cm離した正対位置にマイクを置き,1分間のアイドル後,新生FFXIVベンチ キャラ編を実行。その間を余すところなく収録している。GPUクーラー以外では,「Core i7-4790K」の製品ボックスに付属するCPUクーラーが動作する状態の音となる。
GTX 970 GAMING 4Gのファンは75秒を経過したあたり,つまりは新生FFXIVベンチ キャラ編実行後15秒あたりでファンの回転が始まったので,そのあたりに注意して,下に示したファイルを聞いてみてほしい。
GV-N980G1 GAMING-4GDの動作音
GTX 970 GAMING 4GのOCモードにおける動作音
どちらも,ファン回転数は徐々に上がっていき,再生開始から4分が経過したあたりで最も動作音が大きくなっている。両者を聞き比べてもらうと分かるが,GTX 970 GAMING 4GのOCモードのほうが若干静かだ。
GPUクーラーの優秀さはかなりのメリット
さらなるオーバークロックを目指せる点も魅力
GV-N980G1 GAMING-4GDは,クロックアップ分の性能向上があり,それでいて消費電力はGTX 780 Tiよりも明らかに低い。さらに,GPUのTDPスペックからすると不釣り合いなほどの電源回路とGPUクーラーが組み合わされているので,自己責任を覚悟すれば,ユーザーレベルでさらなるオーバークロックを試すときの強力な武器となるはずだ。オーバークロックには興味がないという場合でも,純粋に速いだけでなく,温度が低く,動作音が静かなのだから,食指が動く人は多いのではなかろうか。
現在のところ国内価格は発表されていないが,登場となれば注目を集めるのは間違いない。
実勢価格は4万8000〜5万5000円程度(※2014年9月29日現在)。生産終了となったものの,依然として流通在庫に6万〜7万円台の値札が付けられているGTX 780 Tiカードと比べると間違いなくお買い得だ。
どちらも,製品としての総合力は非常に優秀である。あとは予算次第だと思うが,どちらを選んでも,その完成度に後悔することはないだろう。
GIGABYTEのGV-N980G1 GAMING-4GD製品情報ページ(英語)
MSIのGTX 970 GAMING 4G製品情報ページ
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