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エンディングは炎上必至? ヨコオタロウ氏らを集めた,NieR:Automataの発売2周年を祝した「SINoALICE」×「NieR Replicant」コラボ記念座談会
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印刷2019/02/22 12:00

インタビュー

エンディングは炎上必至? ヨコオタロウ氏らを集めた,NieR:Automataの発売2周年を祝した「SINoALICE」×「NieR Replicant」コラボ記念座談会

 2017年2月23日に発売されたPS4向けソフト「NieR:Automata」(以下,オートマタ)の2周年を祝して,シリーズ作品の「NieR Replicant」(以下,レプリカント)と,ポケラボとスクウェア・エニックスが提供中のスマホゲーム「SINoALICE」iOS / Android。以下,シノアリス)によるコラボイベントが,2019年2月21日から開催されている。

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 そして開催日が間近に迫っていたころ,ヨコオタロウ氏をはじめ,ニーアシリーズの新規シナリオチームと,ポケラボの開発陣を集めた,レプリカントコラボについての座談会が設けられた。

 ニーアシナリオ班の発足からこれまで,シノアリスのシナリオ制作の事情,さらに作品同士の関係性などにも触れてきたので,いずれかの作品を遊んだことのある人は,ぜひとも“今のヨコオさんと頼れる仲間たち”の様子をご覧いただきたい。

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「NieR:Automata」公式サイト

PC版「NieR:Automata」公式サイト


「ニーア レプリカント」公式サイト


「SINoALICE」公式サイト

「SINoALICE」ダウンロードページ

「SINoALICE」ダウンロードページ



ニーアコラボの売上額は〇億円!


4Gamer:
 本日は各社の面々にお集まりいただき,ありがとうございます。まずはニーアをよく知らないという人のために,本シリーズについて簡単にご説明いただけますか。

ヨコオタロウ氏(以下,ヨコオ氏):
 結局,みんな死にます。

4Gamer:
 それはそうかもですが(笑)。

ヨコオ氏:
 もうちょっと説明しますと,最初のシリーズ作品は「ニーア レプリカント」と「ニーア ゲシュタルト」の2本で,レプリカントは“兄妹の話”を,ゲシュタルトは“父娘の話”を描いています。文明が滅びかけた未来の世界で,病気になってしまった妹,あるいは娘を助けるという物語です。
 助ける対象と物語の本筋はどちらも同じなので,プレイヤーキャラクターとしての主人公の立ち位置が変わるだけで,あとは同じです。たぶん。作ってたのは10年前なのでもう忘れました。

4Gamer:
 では,コラボの開催日である2019年2月21日に,これまでのDLCや各種特典などを封入した特別版として,PS4向けソフト「NieR:Automata Game of the YoRHa Edition」が発売される,オートマタについてはどうでしょう。

「NieR:Automata Game of the YoRHa Edition」パッケージ
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ヨコオ氏:
 オートマタの話をすると,必然的にレプリカントのネタバレになっちゃうんですが。

前田翔悟氏(以下,前田氏):
 そろそろいいんじゃないですか。

ヨコオ氏:
 でしたら,オートマタはアンドロイドと宇宙人が戦う,SFバトルものです。
 あれ,あんまりネタバレになってないですね。

4Gamer:
 大丈夫そうですね(笑)。オートマタについてはすでにシノアリスでのコラボを終えていますが,当時の反響を振り返ってみるといかがですか。

前田氏:
 オートマタコラボは,シノアリスのリリース2か月後くらいにやったんですが,あのときはリリース時にいろいろとありまして……。

4Gamer:
 ああ,今では懐かしいお話しです(笑)。

前田氏:
 シノアリスはローンチ前から「オートマタとコラボします!」と打ち出していましたので。その節は,プレイヤーの皆様に大変ご迷惑をおかけしてしまいました……。ただ,当時のゲーム業界では,ローンチ前から「〇〇とコラボします」と発表することはあまりなかったので,その流れもあってか反響はものすごかったです。
 おかげさまで,売り上げもだいぶすごいことになりました(笑)。

ヨコオ氏:
 儲かったんですか?

前田氏:
 〇億円くらい……。

4Gamer:
 すごい金額です……。今回はそれ以上を目標とされていたり?

前田氏:
 がんばります(笑)。当時発売されたばかりだったオートマタと,今から9年前に発売されているレプリカントとでは事情は異なりますが,なにより伝えたいのは「ニーアシリーズとして通じるものをユーザーさんに届けられたら」の気持ちですから。

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「シノアリス」原作/クリエイティブディレクターのヨコオタロウ氏
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「シノアリス」プロデューサーの前田翔悟氏


ニーアシナリオ班は,全員まさかの未経験者


4Gamer:
 オートマタのコラボシナリオはヨコオさんが書かれたそうですが,レプリカントのコラボシナリオも同じく担当されているのでしょうか?

ヨコオ氏:
 オファーはいただいてたんですけど,忙しくてずっとお断りしていたんですよね。
 でも,そのころにちょうどスクエニさんで“ニーア関係の新規シナリオチームのメンバー募集”をしていて,体制が整ってきたので,「これなら僕じゃなくてもコラボシナリオを書けるようになるんじゃないか」と思い,ようやくOKさせてもらった感じです。

4Gamer:
 つまり,同僚や後進に任せるスタンスといったところですか。

ヨコオ氏:
 そもそもですけど,僕の本業ってシナリオライターじゃないんですよ。オートマタのときはシナリオのほとんどを書いていましたけど。
 僕はゲームディレクターとして骨格だけを作って,あとはライターさんにお願いするっていうスタイルでやっていきたかったので,これを実践するためのニーアシナリオ班ってわけです。そして当のメンバーが,この2人になります。

岩永幸紀氏(以下,岩永氏):
 岩永です。よろしくお願いします。

松尾勇気氏(以下,松尾氏(ニ)):
 松尾です。ここにはポケラボの松尾さんもいるので紛らわしいかと思いますが,よろしくお願いします。

松尾綾樹氏(以下,松尾氏(シ)):
 はい,ポケラボの松尾です(笑)。シノアリスのシナリオなどを担当しています。

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「ニーア」新規シナリオチームのライターの岩永幸紀氏
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「ニーア」新規シナリオチームのライターの松尾勇気氏
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「シノアリス」リードクリエイティブプランナーの松尾綾樹氏

ヨコオ氏:
 あれ,今回のシナリオ制作の流れって,どうなってましたっけ。

松尾氏(シ):
 2人がバリバリ書いて,ヨコオさんが「これじゃダメ」と言っている感じだったかと。

松尾氏(ニ):
 ヨコオさんに骨格を用意してもらって,僕らがそれに沿ったプロットなりシナリオなりを組んで,ヨコオさんに何度も修正していただいてから完成,といった流れでした。制作物についてはすべてヨコオさんに監修してもらっています。

松尾氏(シ):
 コラボシナリオを書く前に,みんなで勉強会みたいなこともやりましたよね。結局,ただの交流会になっていましたが(笑)。

ヨコオ氏:
 こっちの松尾さん(シ)はこれまで,シノアリスのイベントシナリオやウェポンストーリーなどを執筆してきたので,「今までの知見を,まったくキャリアのないシナリオ班に伝授してほしい」とお願いして,レクチャーしていただいたんです。

4Gamer:
 へー。シノアリスのシナリオって,わりと特殊な文法ですものね。

岩永氏:
 勉強会でも,いわゆる本に書かれているような一般論とは違う,ユニークなノウハウを教えてもらえました。

松尾氏(シ):
 いや結構,教科書っぽいことが中心だった気もするんですけど(笑)。僕もプランナーとしてこの業界に入り,気づいたらシナリオを書くようになっていただけなので,「ゲームシナリオはこう書く」みたいな作法は当初,あまり分かっていなかった身ですしね。
 だから,シナリオの正しい書き方などはヨコオさんが教えているだろうと思い,僕から教えさせてもらったのは「実際に現場で起きた,困った事態の対処法」が主でした。なにも決まっていないなか,リリース日だけが決まっている――とかの体験談を。

4Gamer:
 ん? 「僕も」ってことは,シナリオ班にも未経験者がいるんですか?

松尾氏(ニ):
 ええ,というか,ニーアシナリオ班は現役ライターの集まりではなくて,駆け出しライターみたいな人たちの集まりなんですよ。なので,まずはさまざまな経験を持っているポケラボの松尾さん(シ)から,技を伝授させていただこうとなり。

ヨコオ氏:
 ニーアシナリオ班をあらためて紹介させていただきますが,結成は約1年前でして,メンバーはこの2人とあと4人の計6人です。顔出しも今のところは2人だけです。一気に全員出しちゃうと,なんかこう薄まるかなと思って,担当作品のリリースごとに紹介させていただこうかなと。

前田氏:
 スマホゲーム的な発想ですね(笑)。

ヨコオ氏:
 いろんな事情があるんですって(笑)。
 それで,メンバーは全員シナリオライターとしての経験がなくて,ゲーム業界も未経験なんですよ。唯一,松尾さん(ニ)だけはファミ通の出身ですが,ゲーム開発にいた人は誰もいません。そういうかなり変わったチームです。

松尾氏(ニ):
 現役の専門学生もいますからね。

ヨコオ氏:
 学校に在籍中で最近20歳になった子ね。あと,チーム発足後にすぐ産休に入った女性とかもいます。それくらい多様性に富んでいます。

4Gamer:
 なんだか漫画作品のような環境ですね(笑)。

ヨコオ氏:
 松尾さん(シ)は,シノアリスの前にも文章を書いていたんでしたっけ。

松尾氏(シ):
 趣味みたいなものだけで,いわゆる世に出ているものはひとつもないです。

ヨコオ氏:
 ほら,そんな松尾さん(シ)も今では立派に成長して,ニーアシナリオ班にいろいろ教えられる男になったんですから。

松尾氏(シ):
 (笑)。

ヨコオ氏:
 そして岩永君と松尾さん(ニ)の2人には,去年の4月から半年くらい技術のラーニングに注力してもらいました。最近になって普通にシナリオを書けるようになってきたので,今回のコラボで実践投入となります。

松尾氏(ニ):
 厳密にいうと,シノアリスのウェポンストーリーは少しだけ担当していました。

岩永氏:
 オートマタコラボの復刻開催のときに,ポッドとかのウェポンストーリーを書いていました。

松尾氏(ニ):
 でも,それくらいです。世に出ているものは。だから,ちゃんと自分たちが作ったと言える制作物は今回が初めてになります。

4Gamer:
 一般論ですが,普通なら経験者をチームに集めるかと思いますが,ヨコオさんはなぜ未経験者を揃えたのでしょう。

ヨコオ氏:
 お仕事を手伝っていただきたいというより,企画とかデザインとか,ゲームのことを総合的に考えられる「最終的にディレクターになれるような人」と一緒に仕事したかったので,そのためのメンバーを探していたんですよ。
 それにスキルを最初から持っている人なんて当然いませんので,じゃあ勉強する意欲がある人,学びを忘れない人など,そういう方々を採用させていただきたいなって。

4Gamer:
 そういうことでしたか。

ヨコオ氏:
 募集時も一捻りして,最初に課題を出してもらったあと,全員一律で「面白くないし,デザインもよくないし,分かりにくい」といったリテイクを出したんです。そして“1回めから2回めでどのように変わるのか”の差を見させてもらいました。その伸び率が大きかった人から採用させてもらったのが,今のニーアシナリオ班です。
 そしたら結果的に,ゲーム業界の経験者が誰もいなかっただけで。

松尾氏(シ):
 松尾さん(ニ)と岩永さんはもう,ヨコオさんのお弟子さんのようなものですよね。

岩永氏:
 僕(しもべ)です!

前田氏:
 たしかに,その恰好だと僕(しもべ)かも(笑)。

この日,ニーアシナリオ班の2名は“YoRHa パーカー”を着用していたことから
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ヨコオ氏:
 その点,ポケラボさんはまったく従う気のない僕(しもべ)ですよね。

前田氏:
 そんなことないですって(笑)。

ヨコオ氏:
 岩永君なんて介護のお仕事をしていたんですよ? ゆくゆくは僕の介護もしてもらうつもりです。

岩永氏:
 お風呂にも入れられるライターです。

ヨコオ氏:
 それウリにしてこうよ!
 あと,シナリオ班にも各担当がありますが,レプリカントコラボに関しては岩永くんを中心に作業をしてもらっています。ですが岩永くんはまだ若いですし……あれ,岩永くんって今いくつだっけ?

岩永氏:
 27歳です。独身です。

ヨコオ氏:
 アピール(笑)。まぁ,こんな感じで若い子たちが多いんで,松尾さん(ニ)にはパパみたいに彼らの面倒を見てもらっています。

松尾氏(ニ):
 僕だけ,圧倒的にヨコオさんの年齢に近いですからね(笑)。

4Gamer:
 今日この場にいらっしゃっている皆さんも,雰囲気がお若いですものね。

ヨコオ氏:
 そうなんですよ。20代が多いんですよ。

松尾氏(ニ):
 明るく楽しい職場です。

岩永氏:
 作るものはめちゃくちゃ暗いけど。

4Gamer:
 ちなみに,課題の伸び率以外にも採用理由はありましたか?

ヨコオ氏:
 頑張る気持ちを見せてくれたのが大きいのですが,あとは「いい人そう」ですかね。やっぱ,嫌なオーラを出してる人はイヤじゃないですか? 僕,心が弱いからマイルドな人がいいんですよ。

一同:
 …………。

松尾氏(ニ):
 み,みんなおんなじトーンではありますね。

ヨコオ氏:
 穏やか系チームですね。その穏やか系が書いているのが,暗い話ってだけで。

松尾氏(シ):
 この前の勉強会という名の飲み会でも,ニーアシナリオ班はなんだか「家族で集まってる感じ」でした。みんなの穏便な雰囲気が似通っているというか。

ヨコオ氏:
 えっ,ポケラボさんの飲み会は違うんですか? みんな金の亡者みたいな?

前田氏:
 金の亡者って(笑)。
 ポケラボの場合は「みんなでわいわい作りたい」って人が多いですね。性格的にもそれこそマイルドな人が多いので,ニーアシナリオ班とは近いと思いますよ。

ヨコオ氏:
 本当のところはどうなんです。松尾さん(シ)。

松尾氏(シ):
 だからヨコオさんが思うほどギスギスしてないですってば(笑)。ポケラボも明るく楽しい職場ですよ!

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レプリカントのコラボシナリオは,しみじみ暗い


4Gamer:
 一旦まとめると,レプリカントのコラボシナリオは,岩永さんらがヨコオさんの意図を汲んで制作していったんですよね。

松尾氏(ニ):
 汲めた……かどうかは分かりませんが。

岩永氏:
 リテイクはめっちゃ重ねましたね。

松尾氏(ニ):
 リテイクしまくって,どうにか完成した感じなので。なかなかすんなりとはいきませんでした。

ヨコオ氏:
 まだ基礎ができていない部分もあるしね。そういうところも含めて調整していきました。
 それと,コラボシナリオは基本的にニーアシナリオ班が書いたものですが,(プレイヤーに)ちょっと叩かれる気がするので,その責任を2人に被せちゃうのが忍びないんですよね。だから,僕が今回どれくらい関わっているのかを,どういう風に伝えればいいのか,これがまた悩ましいんです。

岩永氏:
 10割ヨコオさんです(ぼそ)。

ヨコオ氏:
 コラボシナリオはめっちゃ暗いですが,それは僕の指示によるものなので,ニーアシナリオ班を嫌いにならないでください。嫌いになるなら僕を嫌いになってください。

(一同笑)

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岩永氏:
 最初に提出した全体のプロットは,ヨコオさんに「全然面白くない」と言われたので,すべて真っ新にして書き直しました。
 そこからいろいろと話を積み重ねていって,結果的に「ニーアとエミールの話にしよう」となって,どんどん暗くなっていって。

松尾氏(ニ):
 そうそう,リテイクするたびに暗くなっていって(笑)。最初はもうちょっと明るい話だったのに。

4Gamer:
 受け取られ方はどうあれ,松尾さん(ニ)と岩永さんはプレッシャーを感じていますか。

松尾氏(ニ):
 それはもう,あります。

岩永氏:
 ありますね。

ヨコオ氏:
 シナリオ班としても初の大きめな仕事だもんね。しかもそれがレプリカント。

松尾氏(ニ):
 レプリカントの人気の高さはよく分かっています。僕ら自身も大好きなタイトルですから,それをこうやって扱わせてもらうことになるっていうのは,「ファンの方々にどう思われるのか」がかなり気になるところです。

4Gamer:
 さぞかし緊張されていると。

松尾氏(ニ):
 すごいドキドキします……。

岩永氏:
 だから叩かないでください……(笑)。

4Gamer:
 話の方針はヨコオさんのご指示ということですから……(笑)。

ヨコオ氏:
 僕は叩かれ慣れてるから平気だけど,20代の若手は叩かれると心にきて,すぐ辞めてしまうんじゃないかと不安になっているので,みんな優しくしてください。

松尾氏(シ):
 でも,物語を書いていたら,いつかはどこかで大なり小なり炎上するじゃないですか? 今のうちに体験しておくのもいいと思いますよ(笑)。

ヨコオ氏:
 松尾さん(シ)は炎上したんですか?

松尾氏(シ):
 すこし炎上しました。

ヨコオ氏:
 それが勉強になったんですか。

松尾氏(シ):
 勉強になりましたねー。「これはやってはいけない」ってのは頭で理解していても,執筆中になぜかやってしまうことがあるので。今ではより敏感になりました。

4Gamer:
 その過ちは「書きたいのに世間に受け入れられないこと」でしょうか? それとも「設定の辻褄があわない」といった間違いで?

松尾氏(シ):
 うーん,どれかというと,人それぞれの考え方と言うんでしょうか。
 自分と近いところにある考え方は,意識せずともなにがダメで,なにがやっちゃいけないのかは分かるんですが,ちょっと離れた場所にいる人への配慮はなかなか見えてこないもので。そういった異なる考え方を持つ人たちに,なるべく不愉快な思いをさせてしまわないよう,最近はそれらも踏まえての物語構成を考えるようになっています。

4Gamer:
 となると,内容に関わる倫理チェックともまた違いそうですね。

松尾氏(シ):
 ええ,最終的に「プレイヤーの皆さんにとってメリットがあるのかないのか」に落ち着きますので。

4Gamer:
 しかし,そういった全体の意見を反映しすぎると“平坦に”なったりしませんか。

松尾氏(シ):
 創作面というより,普通に友達と会話していて,思ってもいないところで特定の人を傷つけるような発言をしちゃってた,みたいな。「冷静に考えたらよくないなと分かること」といったものですから。人としてちゃんとしているかどうかですかね(笑)。

ヨコオ氏:
 それと,個人のTwitterでなにかを発言するのと,パブリックな製品でお客さんに届ける発言とでは,求められる立ち居振る舞いが違います。「これはよくて,これはだめですよ」って話もシナリオ班には常日頃からしています。

岩永氏:
 よく叱られています。

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ヨコオ氏:
 あと,コラボシナリオでは「ニーアファンには分かって,シノアリスファンには分からない部分」がどうしても出てきてしまうんですが,そのうえで“分からなくても楽しんでもらえる内容”には,絶対にしなきゃいけないよねと。
 基本的なストーリー説明は入れてはいますし,レプリカントを知らなくてもフワッと理解できる,そんな雰囲気を心がけています。これもまた,さまざまなお客さんに見ていただくことを意識するという話ですね。

4Gamer:
 すばらしい心がけだと思います。

ヨコオ氏:
 まぁ,今回のところは暗い話で,皆さんに平等に不快になっていただくんですけど。

松尾氏(ニ):
 ずーん,ってなりますよね(笑)。

4Gamer:
 ひどい(笑)。ちなみになにか仕掛けはありますか? オートマタコラボのときは「夢オチかな?」と思っていたら「あれ?」っていう展開につながりましたが。

ヨコオ氏:
 シノアリスの世界は,現実の世界と絡めるときに特殊な演出をしないといけなくて,セットアップがどうしても同じような構造になってしまいます。
 そのなかでどのように違いを見せるかというと,僕は「設定よりも味わいを大事に」と思っているので,オートマタのときとは異なる味わいが出せるようにはしています。

4Gamer:
 味わいが違う,暗いシナリオだと。

ヨコオ氏:
 シノアリスのシナリオは前提として,僕自身がスマホゲームで文字を読まないことから,文章をあまり出さない仕様でとお願いしています。「ワンタップですぐ飛ばせるようにしたい」って。
 そういう意味では,今回のコラボシナリオもそれほど多くを語っているわけじゃないんです。ニーアとエミールの小さい話って感じです。それなのに,よくもまあ,こんなちっちゃな話であんな酷いことをしたなっていう。

松尾氏(シ):
 それ,大体ヨコオさんのせいですよね?

ヨコオ氏:
 そうだけどさあ。オートマタのときはもっとサラッとした感じだったのに,今回はなんていうか「なんでこんな話にしたの(怒)?」って内容じゃないですか。しみじみとひどい。みんな怒ると思うんですよねー,これ。

松尾氏(ニ):
 怒りますかねぇ……。

前田氏:
 大丈夫,じゃないですかねぇ……。

松尾氏(シ):
 でも,ヨコオさんのせいですよね?

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コラボガチャでは,本作最大数の6キャラが追加実装


4Gamer:
 ニーアとエミールのお話というのは分かりましたが,なぜカイネを出さなかったのでしょう。

ヨコオ氏:
 ボイスが2人までしか録れなかったんです。予算的な問題で。

4Gamer:
 想像していたよりもメタっぽい理由が(笑)。

前田氏:
 いくつかあったプロットのなかには,カイネが出てくるものも当然ありました。でも,最終的にニーアとエミールの話に落ち着いたんです。

4Gamer:
 コラボで出てくるニーアは,遊佐さんのニーアだけですか?

(※ニーアは幼年期がCV:岡本信彦さん。青年期がCV:遊佐浩二さんなことから)

ヨコオ氏:
 そうです,予算的な問題で。そういった状況で誰と誰にしようと考えて,「遊佐さんと門脇さんの2人がいいんじゃないか」との結論になりました。
 門脇さんにはオートマタにも出演してもらいましたし,多数のイベントに登壇してもらっていますからね。一方,遊佐さんはお久しぶりになりました。相変わらずのイケメンボイスでした。

4Gamer:
 遊佐さんはたしか,2011年に発売されたドラマCD以来でしたか。収録はスムーズにいきましたか?

ヨコオ氏:
 すごくスムーズでしたよ。キャラ作りも全然やり直す必要がなくて,当時のままスルッとやってくださりました。


4Gamer:
 エミールに関しては“エミールヘッドのほうのエミール”ですか?

ヨコオ氏:
 ヘッドのほうです。時系列的にエミールヘッドになったあとですから。

4Gamer:
 ほかにもコラボキャラクターはいるんですよね。

前田氏:
 ええ,合計で6キャラいます。

ヨコオ氏:
 シナリオに出てくるのは,青年期のニーアとエミールの2人だけですけどね。予算的な問題で。

前田氏:
 「幼年期のニーア」「カイネ」「デボルポポル」「少年版のエミール」は,コラボキャラクターとしてのみの登場になっています。

4Gamer:
 コラボキャラクターのイラストは描き下ろしと聞いていますが,ジノさん作ですか?

前田氏:
 ジノさんはオリジナルキャラクターデザイン担当なので,今回はいつも全体をまとめてくれているシノアリスのアートディレクター監修のもと,イラストレーターさんに担当してもらい描き下ろしています。

ニーアは幼年期がCV:岡本信彦さん。青年期がCV:遊佐浩二さんなことから。画像はコラボ期間中にログインするだけで獲得できる「青年ニーア/パラディン」ジョブ
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4Gamer:
 コラボにあたって,ポケラボ側は「こういうシナリオがいい」「このキャラクターがいい」といった提案はしたんですか。

前田氏:
 いや,我々からはまったくないです。

ヨコオ氏:
 ポケラボさんは「ガチャにどのキャラを出していいのか」だけに夢中なので,ストーリーとかどうでもいいんですよ。

前田氏:
 そうなんですよ。いやそうじゃないですよ!
 創作面に影響を出したくなかったんです。今回もコラボPVを用意しましたが,制作チームにも「どのキャラがどこで獲得可能か」などの仕様しか伝えていませんし。

4Gamer:
 ヨコオさんの作品性を護るために,とか?

前田氏:
 いえ,前回がそうだったから,今回もそれでいいやみたいな(笑)。
 もちろん,レプリカントは僕もすごく好きな作品です。シノアリスの開発スタート時にはまだオートマタも発売されていなかったので,当時の僕はヨコオさんの作品性を知るためにとレプリカントを遊びましたが,一気に持っていかれました。そこから「こんな作品を作れる人と関われるなら,絶対にいいものが作れる」と思い,シノアリスのプロジェクトに踏み切ったんです。今では感慨深いですね。

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ヨコオ氏:
 そもそも当時は前田さん,断ってましたからね。シノアリスの企画。

前田氏:
 そうでしたね,断っていました。当初,スクエニの藤本さん(スクウェア・エニックス プロデューサーの藤本善也氏)からお話があったときは「ヨコオ,タロウさん? ……ふぅん?」くらいの知識だったもんで(笑)。

4Gamer:
 まぁ,どの業界でもないとは言えない理由ですし……(笑)。

前田氏:
 でも断るにしても,ちゃんと知ってから断りたかったんです。そのときにヨコオさんのことを調べて,レプリカントをプレイしてみたら,めちゃくちゃ面白かったわけです。僕は昔からゲームをよく遊ぶほうですが,歴代のプレイ作品のなかでも指折りの,いやもはや人生で一番好きなゲームかもしれません。
 ……という紆余曲折もあり,レプリカントとのコラボはいつか絶対にやりたいなと。

4Gamer:
 一方でニーアシナリオ班の皆さんは,それこそ「ドラッグ オン ドラグーン」からヨコオ作品に触れているような人も多いのでしょうか?

松尾氏(ニ):
 バラバラですね。募集時期がオートマタの発売後だったので,少なくとも「オートマタはやってる人」が多かったです。そこからシリーズ作品を遡るだったり,もしくは最初からコアコアなファンだったりは人それぞれです。
 とはいえ,今ではみんなヨコオ作品を全部プレイしていますね。

4Gamer:
 例えば,シナリオ班のなかで「俺のほうがヨコオスピリッツ知ってるんだ!」みたいな,マウントの取り合いは生まれていませんか(笑)?

松尾氏(シ):
 あー,ありそう(笑)。

松尾氏(ニ):
 「違うんだよなぁ。これこそがヨコオワールドなんだよなぁ」とかですか(笑)。

ヨコオ氏:
 そういえば岩永君,さっきなんか紙を持ってたよね。そういうのじゃないの?

岩永氏:
 ああ,これはですね,“ヨコオさんが言ってたすごく良いことメモ”なんです。

ヨコオ氏:
 んん? 僕がすごい良いことを?

岩永氏:
 プロットを直すときとかにヨコオさんに言われてきた,金言の数々ですよ。

ヨコオ氏:
 えー? 僕なに言ってたんだろ。

前田氏:
 「××」(配慮を欠いた一言)とかじゃなくて?

4Gamer:
 ひどい(笑)。

岩永氏:
 僕が設定関係で試行錯誤していたとき,無意識に正解を探してしまっていたことがありました。「これは(設定的に)あっていますか? 間違っていないですか?」みたいなのです。そのときヨコオさんに言われたのが,「そういうのはよくない。おまえら1回死んでこい」でした。あっ,これは違いました。書き間違えです。

ヨコオ氏:
 口にしなくてもそういうオーラ出してるしね。

岩永氏:
 真面目に言うと,「原作を知っている人が新しいエピソードだと思えるような,自分がファンとして見て嬉しい話をとりあえず書きなさい」と教えていただきました。

岩永氏が持ち込んだ,数ページにわたるメモ用紙
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松尾氏(シ):
 あー,それ僕も聞いていました。「すごくヨコオさんらしいなぁ」って思っていたので憶えています。

前田氏:
 ヨコオさんって,お客様のことをまず一番に考えているんですよね。

ヨコオ氏:
 そうですよ? なのになんでこんなひどい話ばっかなんだろう。

松尾氏(シ):
 ファンもそういうのを求めているからじゃないですか?

ヨコオ氏:
 そうか,ファンのせいか。

4Gamer:
 求めてるのは間違ってませんが(笑)。

松尾氏(シ):
 ゴシップ記事と一緒ですよね!


シノアリスとニーアシリーズの関係性とは?


4Gamer:
 このあたりでシノアリスにも言及させてもらいますが,本作のメインシナリオはレプリカントを彷彿させる内容になっていますよね? やはり意識してきたのでしょうか。

ヨコオ氏:
 いや,全然意識していないです。

前田氏:
 うーん,どのあたりがレプリカントを彷彿させるんでしょう?

4Gamer:
 えーっと。例えば,スノウホワイトを殺した犯人が「由良明義」で,レプリカントで「テュラン」が人間だったときの本名が由良正義だったり,スノウホワイト計画だったりですとか。

ヨコオ氏:
 うおっ,よくご存じですね(笑)。

4Gamer:
 「現実篇」でも徐々に謎が明らかになってきました。つまり,今回のレプリカントコラボは“シノアリスの物語進行にあわせたもの”なのかと考えていまして。

ヨコオ氏:
 いえいえ,まったくの偶然ですよ(笑)。
 今のお話を聞いていて「ああ,そう思っていただけるならそれもいいな!」って思いましたが,本音で言うと,やっぱり偶然です。単純にポケラボさんが今ここでお金儲けしたいからってだけですよね。

前田氏:
 違うとは言いませんが人聞きが悪すぎますよ!
 話を続けさせてもらうと,シノアリスについてはグランドデザイン(長期的な全体構想)を用意しており,4年先くらいの予定をあらかじめ決めていて,そこに「〜〜コラボをいついつにやる」と記述しています。ただ,当時はなにも意識していなかったことです。現行のストーリーとコラボの関連性を勘ぐってもらえるのは面白い効果といえますが,今回に関しては「たまたま」以上の意図はないです。

4Gamer:
 あら。グランドデザインのことは存じていたので,なおさら綿密に組まれていたのがメインシナリオとコラボの相互関係なのかと思っていました。

前田氏:
 すみません,数年前にはそこまでは考えていなかったです。ただ,コラボは基本的に同じようなものばかりにしないようにしてきました。前回やったのは「スペースインベーダー」コラボでしたが,これが本流からは離れた施策だったのもあり,今回はより世界観が近いものをと想定していました。
 あとはもう,オートマタの2周年を記念した「NieR:Automata Game of the YoRHa Edition」と,シリーズコンサートのBlu-ray「NieR:Orchestra Concert 12018」の発売に合わせてですね。これらが大きな理由です。

2019年2月27日発売のBlu-ray「NieR:Orchestra Concert 12018」
画像集 No.021のサムネイル画像 / エンディングは炎上必至? ヨコオタロウ氏らを集めた,NieR:Automataの発売2周年を祝した「SINoALICE」×「NieR Replicant」コラボ記念座談会

4Gamer:
 把握いたしました。でも,シノアリスの内容がレプリカントを彷彿させるものとなってきているのは,間違いではないと思っています。言ってしまえば,シノアリスはニーアシリーズに連なる作品に位置付けられる可能性があるのではないでしょうか?

ヨコオ氏:
 うーん,さっきもちょっと言いましたが,シノアリスの世界観はちょっと特殊ですから。あらゆる世界とつながっている構造にしている理由は,「どうせソシャゲはコラボとかでよく分かんないのがいっぱい入ってくるんだろ」くらいのもんで,「なら,そういう世界とは一体どういう場所なのか?」から考えて設計していったものですし。
 たしかにギシンアンキとアコールに微妙に関係があったりとか,そういう裏の話は存在するんですけど,それはあくまで設定であって,僕個人としては“単独で楽しめる作品であってほしい”と思ってやってきました。

4Gamer:
 コラボシナリオの方針と同じ考え,というよりそこが原点ですかね。

ヨコオ氏:
 僕は世に出す製品を「なるべく違うものにしていきたい」と考えています。でも,そういうふうに考えていても,自分のクセみたいなものがどうしても出ているんでしょうね。今ここで「前の作品を彷彿させる」と言われて,「あー,失敗したなー」って反省している最中ですので(笑)。僕自身は違うものを作ろうとしていたのに,自分では分からないうちにクセが出ちゃってる。ここが僕の限界なんでしょう。

4Gamer:
 つまるところ,意識されているわけではなかったと。

ヨコオ氏:
 ええ。僕は本当に違うものを作りたかったので。レプリカント,オートマタ,シノアリス,それぞれ違う方向を目指していましたし。

画像集 No.016のサムネイル画像 / エンディングは炎上必至? ヨコオタロウ氏らを集めた,NieR:Automataの発売2周年を祝した「SINoALICE」×「NieR Replicant」コラボ記念座談会

4Gamer:
 じゃあ,ヨコオファンゆえに深読みしすぎてしまっただけですかね。最初にオートマタのコラボをやって,メインシナリオで現実篇が公開されて,レプリカントのコラボもきてと――これって「シノアリスの“今”がニーアの世界にどんどん近づいてる」と感じていて。なので,融合篇でも両者をつなぐなにかが出てくるのではないか……みたいに。

ヨコオ氏:
 先に言いますよ。融合篇ではなにも分かりません(笑)。
 それにニーアの謎をシノアリスで明かしたら,どっちもやっていないと理解できなくなっちゃいます。ここもそれぞれのお客さんのために,単独の作品でも楽しんでもらえるようにしなければならない部分です。ちょっとしたおまけ要素くらいなら考えますけど。

4Gamer:
 「ニーアシリーズをやってたら楽しめるかも」くらいの小ネタですか?

ヨコオ氏:
 そうですね。やるかは分かりませんけど。

前田氏:
 ちなみに融合篇はレプリカントコラボのあと,春ごろに公開できればと,現在進行でヨコオさんと岡部さん(サウンドコンポーザーの岡部啓一氏)と準備しています。

4Gamer:
 ついでなので言ってしまいますが,融合篇のPVを見たときに「黒文病みたいだなー」と感じました。これも深読みでしょうか。

ヨコオ氏:
 あー,天使文字とか使ってましたね。そこらへんの共通項はたしかにありますね……。そうか,というか,そういうのをやめれば違うものになるのか(笑)。

松尾氏(シ):
 僕はヨコオさんのネーミングセンスが印象的かもしれません。キャラクター名とか見ると「ああ,ヨコオさんっぽいネーミングだ」と思いますし。
 オートマタの作中で使われている単語については,ヨコオさんの原点と言われている,大原まり子先生の小説「ハイブリッド・チャイルド」からきてるんですよね? 9割近く一緒でしたし。それに世界観的なもの以外でも,東京タワーにドラゴンが突き刺さるとかのリスペクトがあります。

ヨコオ氏:
 だって,僕はあれを読んでゲームディレクターになろうと思ったんだもん。

松尾氏(シ):
 ヨコオさんにとっての聖書なんですよね。そういうリスペクトの欠片がどの作品にも散りばめられているから,作品同士につながりがあるように見えるんですかね。
 あっ,大原先生のハイブリッド・チャイルドは,ヨコオファンならぜひとも読んだほうがいいですよ!



シノアリスの結末は炎上必至……?


4Gamer:
 チラッと耳にしましたが,グランドデザインにおいては“シノアリスのエンディング”はすでに用意されているとか。

ヨコオ氏:
 はい。スマホゲームはサービスがいつ終わってもおかしくないので,エンディングだけはきちんと作っていて,その間の物語を伸ばせるシナリオ設計にしておいたんです。
 ただですね……シノアリスはちょっと予想外にヒットしちゃったんですよ。

4Gamer:
 悪いことではないですよね?

ヨコオ氏:
 おかげさまで,当初考えていたスケジュールよりも,かなーり長くなっちゃったんです。僕としては4年先のスケジュールが決まっていること自体,もはや狂ってると思いますが,とにかく結果的に中間の話をどんどん作っていかなければならなくなり。
 最近はシナリオ会議中にいっつも「(どうしよぅ……? どうしよぅ……?)」って,松尾さん(シ)のほうをチラチラ見てます。

松尾氏(シ):
 シノアリスは隔週でシナリオ会議をやっているんです。そのときは僕もいつもヨコオさんのほうを「(これ,どうしましょうか……?)」ってチラチラ見てます。そんな感じで,皆さんにもっと楽しんでいただけるものを目指して制作しています(笑)。

4Gamer:
 仮定ですが,現在用意しているエンディングは,どのタイミングでシナリオが終わったとしても,納得できるような終わりになるのでしょうか? 現実篇でも終わっても,融合篇で終わっても,そのエンディングなら万事解決というような。

ヨコオ氏:
 いやー,納得できるかは別の問題ですね。

松尾氏(シ):
 というか,絶対に納得できないと思います。

ヨコオ氏:
 “スマホゲームへの呪いをぶちまけたようなエンディング”ですからね。そのまま提供したもんなら,たぶん地獄みたいなことになります。

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4Gamer:
 「シノアリスのデータが全部消える」とかですか。恐ろしい。

ヨコオ氏:
 今それをやっても驚きはないと思いますよ。そもそもスマホゲーム自体,サービスが終わったらすべてのデータが没収されて,消されるようなものですし。
 まぁ,シノアリスについてはいろいろありますが,なんにせよ予想外の長さになったがゆえの創作を迫られています。そのぶん,登場人物たちを深堀りできるのは楽しいんですけど,そろそろ融合篇のあとも考えないとだよね,松尾さん(シ)。

松尾氏(シ):
 はい。ヨコオさんも。

ヨコオ氏:
 僕は歳なんで,今後はこうやって若い世代に書いてもらっていきたいんですよ。
 シナリオ班も,今は仮名で「ニーアシナリオ班」と呼んでいますが,いずれはもっとちゃんとした名前を付けて,そこで各自が研鑽して,独立して,それぞれディレクターなりライターなりで活躍してくれるようになってくれるといいんですよねー。

4Gamer:
 後進の育成も楽しみになっていそうですね。

ヨコオ氏:
 そうですね。直近の理由は「僕の仕事が回らないので手伝ってほしい」に尽きますが,僕が若いころは,年上の人たちが上層に詰まっていて「作りたいものが作れない!」ってストレスが強かったので。だから,自分が年寄りになったとき,同じ存在になりたくない。やる気のある,若い人の芽を伸ばせるような人になりたい。ずっとそう思ってきました。
 なかなかうまくいかなかったりもしますけどね。

4Gamer:
 今のまま順調に進んでいけば,いずれはヨコオチルドレンの第一世代や第二世代が,未来のゲーム業界で活躍する日がくるかもしれませんね。

松尾氏(シ):
 一応,すでに第一世代はいますよね。

ヨコオ氏:
 育成に失敗した第一のチルドレンがね。

(一同笑)

ヨコオ氏:
 育て方を間違えた結果,僕から見てもおぞましい,邪悪な生き物になってしまったんです。そういうのが何人かいるので,今度はそうならないようにしないと(笑)。
 でも,とにかくやっぱり,クリエイターは作品によって評価されます。将来的に彼らが中心になってなにかを作るとき,今の僕の存在が少しでも役に立っていれば嬉しいです。やる気がない人を無理やりディレクターとかにしても,回らない業界ですし。

4Gamer:
 とても誠実な考え方だと思います。

ヨコオ氏:
 ああーもう,こういうインタビューだとどうしても僕がいっぱい喋っちゃうから,これもよくないんですよね。もうインタビュー出るのやめます。僕がたくさん喋ってるとこはカットしておくか,僕じゃない人が喋ってることにしておいてください。

4Gamer:
 そう言わずに(笑)。それでは最後に,レプリカントコラボの魅力をそれぞれ,あらためてまとめてもらってもよろしいですか。

岩永氏:
 シナリオは先ほど申し上げたとおり,わりとひどいというか,そんな楽しい気分になれないものになっていると思います(笑)。

松尾氏(ニ):
 ファンからも「大体ロクなことにならない」と思われているでしょうし,実際にそう思われるものかと(笑)。そのなかで,ひとつでも予想を裏切るというか,予想外の暗さを感じ取ってもらえたら,非常に嬉しいです。

前田氏:
 レプリカントっぽい,どろっとしたものは残りますよねー。

ヨコオ氏:
 シリーズ作品のなかでもオートマタはまともで綺麗な話でしたけど,オートマタしか知らない人には相当ひどく映るんでしょうね。

一同:
 …………。

ヨコオ氏:
 なんでそこで黙るの!?

4Gamer:
 ファンとしては,まぁ,オートマタは綺麗に終わったほうとは思えるものの(笑)。

ヨコオ氏:
 そうですよね? 今回のコラボではレプリカントやドラッグ オン ドラグーンに潜んでいた歪さというか,非社会性というか,そういう部分が存分に出ていますから。ニーアの内臓を見ているみたいで楽しいですよ,きっと。

松尾氏(シ):
 ああでも,ヨコオファン的に懐かしい感じなのは確かですね。僕もシナリオやBGMを送ってもらったときに「ああこれ! あの草原を走っていたときのやつだ!」とか,当時の思い出が次々と蘇りましたので。

前田氏:
 レプリカントのBGMはいっぱい入っていますね。原作をプレイしていた人にはより懐かしく,新しく触れる人には新鮮なシノアリスの姿に映るかと思います。そして雰囲気が気に入ったら,ぜひとも原作も遊んでみてください。

松尾氏(シ):
 あと,一気に6キャラも追加されますからね! 過去最高ですよ! ガチャもいっぱい回せますね! ぜひぜひ!

ヨコオ氏:
 シノアリスって,ガチャを引く回数が増えましたよね。売れたと思ったら,狩りつくすかのように追加していく。ポケラボさんは焼野原にしようとしてますよね?

前田氏:
 だから人聞きが悪いですって! コラボではやはり,ファンの皆さんが好きなキャラクターはなるべく登場させたいと思っているので,今回もお気に入りのキャラがいましたら,ぜひとも遊んでいただければ幸いです。

4Gamer:
 ありがとうございました。私もオートマタの2周年記念ともども,レプリカントコラボを楽しみにさせていただきます。

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■NieR 最新情報
○NieR GOTY
 物語、世界観、キャラクター、音楽、そしてアクション。その全てが高く評価され、世界中で人気を集めているアクションRPG『NieR:Automata』。『NieR:Automata Game of the YoRHa Edition』は、『NieR:Automata』ゲーム本編に、DLCや各種特典などを追加した特別版です。

タイトル:NieR:Automata Game of the YoRHa Edition
対応機種:PlayStation 4(パッケージ/ダウンロード)
発売日程:2019年2月21日(木)
販売価格:4,800円+税
権利表記:(C) 2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

○NieR シリーズ初のオーケストラコンサートが映像化
タイトル:NieR:Orchestra Concert 12018【Blu-ray】
発売:2019年2月27日
価格:6,300円+税
仕様:スリーブケース付き Blu-ray Disc 1枚
サウンドディレクター&コンポーザー:岡部啓一(MONACA)
ディレクター:ヨコオタロウ
指揮:大井剛史
演奏:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

「NieR:Automata」公式サイト

PC版「NieR:Automata」公式サイト


「ニーア レプリカント」公式サイト


「SINoALICE」公式サイト

「SINoALICE」ダウンロードページ

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ニーア オートマタ - PS4
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