インタビュー
ヴァニラウェア神谷盛治氏,大西憲太郎氏インタビュー。マフィア梶田が「オーディンスフィア レイヴスラシル」の魅力について聞いた
クリエイターの競い合いで生まれた
高レベルの“食”グラフィックス
マフィア梶田:
これってなにげにあまり言及されたことがないと思うんですが,やはりヴァニラウェア作品といえば食べ物じゃないですか。本作からも食への執着がひしひしと伝わってきましたが……そもそもなぜ,あそこまで食にこだわるんですか?
そうですね。元はプリンセスクラウンで,絵本に出てくるような食べ物を出そうというのが始まりですが,その前からプレイヤーの心を動かすことができる要素として,三大欲求について考えていました。
マフィア梶田:
食いたい,眠りたい,ヤリたい。ですね。
神谷氏:
それです(笑)。“眠りたい”は寝てしまってはゲームを遊んでもらえないし,“ヤリたい”を入れるとアダルトゲームになってしまいます。
マフィア梶田:
そうですね(笑)。
神谷氏:
でも,“食いたい”は表現できると思ったんです。ゲーム中で美味しそうな料理を出して,お腹の虫を鳴らさせることは可能だと(笑)。朧村正からは,料理が大きく描かれているので破壊力は抜群です。実は朧村正は,開発後半まで料理はカット予定だったんですが,入ってよかったですね。
マフィア梶田:
あれっ,そうだったんですか。
神谷氏:
「くまたんち」の制作を終えたシガタケくん(※)が空いたおかげで。時間の都合上ボツになりかけてた料理を,「いい具合によろしく」ってぶんなげで任せたら,もの凄い気合入れて作ってくれて……。
※ヴァニラウェア所属のイラストレーターで,同社のほぼすべての作品に携わる。「ハバネロたん」の原作者としても知られている
マフィア梶田:
あのクオリティの和食や和菓子のグラフィックスを作り上げたんですか。
神谷氏:
はい。オーディンスフィアの料理をつくったのは山下くんというデザイナーなんですけど,おそらくシガタケくんは……。
大西氏:
そうですね,オーディンスフィアに対抗していたんですよね。
神谷氏:
それで今度は,シガタケくんに対抗心を出して,山下くんはドラゴンズクラウンでさらに進化した料理のグラフィックスを作り上げたんです。ワーム肉ですら凄く美味しそうに仕上げてましたからね。
マフィア梶田:
いまでこそ「ダンジョン飯」が流行ったりしていますが,それの先駆けとも言えるじゃないですか。
神谷氏:
どうなんでしょう。ドラゴンズクラウンの時は,倒したスクリーマーの肉を食べて冒険する「ダンジョンマスター」なんかがネタ元でしたが。
マフィア梶田:
漫画やゲームのように,2Dで料理を美味しそうに表現するって,凄く難しいですよね? ゲーム業界では,ヴァニラウェアがトップを突っ走っていると思いますよ。
神谷氏:
これについては彼らデザイナーの賜物ですね。“ゲテモノ料理”というコンセプトだって,とんでもなく美味しそうに描かれましたから(笑)。
グウェンドリンには理想とする
すべての女性像を入れたかった
マフィア梶田:
三大欲求の話ですが……実はヤリたいも入ってませんか? 神谷さんのタッチからはフェチズムへのこだわりを凄く感じるんですよ,なんせ俺は相当なスケベですから。
神谷氏:
ほんのちょっと(苦笑)。いやまあ,フェチというか……僕は姿かたちの魅力はいろいろあると思っています。大きな胸も魅力だし,胸がなくったってそれは魅力じゃないですか。個性的であることも,ちょっとした欠点もチャームポイントの女性はいます。
そうやっていろんな形で,女性の魅力を描いていけたらと……まあ……簡単にいうとフェチズムですね(笑)。
マフィア梶田:
人間の女性だけでなく,プーカ族も妙に色っぽいんですよね。ケモナーまでしっかりカバーしている。
神谷氏:
(笑)。あっ,あとですね,狙って入れているだけじゃなくて,仕事がキツかったり徹夜が続くと,どうしてもやる気パワーが下がるじゃないですか。“エロ”は最後の動力として機能するんですよ(笑)。
僕の絵でそういう絵を見たら,10倍界王拳で乗り越えたんだなと思ってください。
マフィア梶田:
「このおっぱいを塗るために,とにかく寝ないで頑張る!」みたいなことですか(笑)。
こんな話題から飛ぶのもアレですが,いろんな魅力ある女性像を描きたいという神谷さんにとって,理想のヒロイン像っていうのはどんなものですか?
神谷氏:
そうですね,いま僕は描くチャンスをいただけるんで,コンセプトを絞って割と好きにできるんですが,グウェンドリンを描いたときは……プリンセスクラウンのグラドリエルのときもそうだったんですが,「これが最後かもしれない」と思っていたので,理想とするヒロイン的な女性像を全部入れようとしてました。
マフィア梶田:
理想を全部ですか……。
神谷氏:
大人っぽいけど幼くてとか,凛々しくて険しいけど優しくてほんわかしているとか……無謀な全部入りが目標でした(笑)。
「やっぱり無理かも」とうっすら気づきながらも,それでもなんとか練り込もうと,幼くしたり大人びさせたり,目尻を上げたり下げたり,デザイン画に落ち着くまで,もの凄く悶絶したのを覚えています。
マフィア梶田:
その結果,オーディンスフィアという世界を生み出すことにもなる理想のヒロイン,グウェンドリンが描き上がるわけですね。
こんな環境から唯一無二の「いいじゃん!」を
作り出せるクリエイターが神谷さん
マフィア梶田:
イラストの話になったので,制作環境についてお聞きしたいと思います。
というのも昨年末に漫画家の押切蓮介さんと対談したんですが,そのとき神谷さんの……言葉を選ばずに言えば,小さなモニターや乱雑な机,ベッド代わりに使っている年季の入ったソファーが話題になったんですよ。
神谷氏:
制作環境は,話してオープンにしちゃうと夢がないというか(苦笑)。
いやもう,押切さんの連載(※)でも取り上げられていますし,気になっている読者も多いと思うのでぜひお話を伺いたいんですよ。
聞くところによると,かなり古いツールを使われているとのことで……何年くらい,現在の環境で作業を?
神谷氏:
そうですね,それこそラクジン時代からあんまり変わってないんじゃないかな……。
大西氏:
途中で一回変わりましたよね。
神谷氏:
パソコンとかは変わりましたね。でもツールはPainterの古いのをずっと使ってます。
大西氏:
神谷さんはタブレットもずっと初代Intuosを使っていたんです。それがUSBじゃなくてシリアルケーブルだったんですけど,PCが壊れて新調したら差し込み口がなかったんです(笑)。それでいい加減買い換えましょうとIntuos 4にしたんですよね。
神谷さんがツールを変えたのはそれくらいでしょうか。僕が記憶しているうちだと。
神谷氏:
職人とかほめられた話じゃなく,単に面倒くさがりでいろいろ使いこなせないだけで(笑)。
新しいツールもシガタケ君に言われて時折触りはするんですが,微妙に筆のタッチや色の混ざりが違うと,どうも描くのに時間かかっちゃって。
大西氏:
たしかに使用しているのは古いPainterですが,色の混ざり具合はいまでも最高ですよ。
マフィア梶田:
筆のタッチが変わってしまうとなると,作風にも影響が出てしまうから,なかなか替えられませんね。そんな神谷さんの姿って,大西さんにはどのように映っているんでしょうか。
大西氏:
神谷さんは体裁だけ取り繕って,仕事ができるみたいなポーズをとる人じゃないんですよ。それでいて,唯一無二の「いいじゃん!」という作品を生み出せる人なんです。それは尊敬しますね。
神谷氏:
本当に? まあ割りとだめな感じで,モニターや机も大きかったりするぶんごみごみしちゃうから,大きくても無駄だと悟りました(笑)。
マフィア梶田:
ぜひインタビューあとに,そのごみごみした机とベッド代わりのソファーを拝見したいと思います(笑)。
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