企画記事
あなたはいくつ観劇した? 「A3!(エースリー)」メイン&イベントストーリーからMANKAIカンパニーの公演と歩みを振り返る
2020年5月14日,リベル・エンタテインメントの「A3!(エースリー)」(iOS / Android)のメインストーリー第三部前半の配信が開始された。本作は,“稽古”をとおして個性豊かな劇団員たちを育成し,数々の公演を成功へ導いていくイケメン役者育成ゲーム。物語の核となる「メインストーリー」や,期間限定のイベントで公開される「イベントストーリー」,劇団員たちの日常を楽しめる「バクステストーリー」によって物語が展開し,多くのファンを魅了してきた。これまでのメインストーリーでは老舗劇団のMANKAIカンパニーを舞台に,若い役者たちの成長や仲間との絆が描かれてきたのだが,このたび配信がスタートした第三部前半では劇団の過去に関わる人物たちが登場し,“永遠”をテーマとした新たな物語が展開する。そんな第三部公開を記念して,本稿ではこれまでに行われてきたMANKAIカンパニーの公演を紹介しながら,劇団の歩みを振り返ってみたい。
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老舗劇団で若き“つぼみ”たちが花開く「A3!」の世界
おさらいを兼ね,まずは本作の物語をざっくりとおさらいしよう。メインストーリーの始まり(第一部)は,以下のような流れとなっている。
――あらすじ(第一部)――
東京郊外の街,天鵞絨(ビロード)町。この町の「ビロードウェイ」と呼ばれる通りは,多くの劇団が拠点とし,劇団員たちの聖地となっている。そんなビロードウェイにある,かつて人気を誇った老舗劇団「MANKAIカンパニー」は,いまや借金まみれで潰れかけだ。創立者の娘であり元役者の主人公(プレイヤー)は,失踪した父から届いた手紙を頼りに劇団を訪れる。
そして,まだ“つぼみ”の若き役者たちとともに,劇団の存続をかけて舞台を作り上げていく。はたして,MANKAIカンパニーの運命は――。
続く第二部では,季節ごとに分けられた4つの組それぞれに新しい劇団員を迎え,“家族”をテーマとした物語が綴られていく。なお,メインストーリーやイベントストーリーで描かれる劇団の公演は,組ごとの「公演」と,組をまたいだキャストによる「ミックス公演」がある。その2つを紹介する次項では,役者本人たちの物語にはあまり触れず,あくまでも“劇団の公演内容紹介”という形をとっているので,演劇雑誌を読むようなイメージで楽しんでもらえれば幸いだ。なお,各組のキャラクターの見どころはさらに次の項にて紹介する。
MANKAIカンパニー公演紹介
【旗揚げ公演】
(※メインストーリー第一部)
(※メインストーリー第一部)
新生MANKAIカンパニーは当初,劇団員と支配人のたった2人だけだった時期があるという。新しく就任した主宰がオーディションなどを経てメンバーを集め,春組から順番に本公演を行っていた。当初は取り壊しの危機もあったようだが,冬組が結成された頃には,強豪のライバル劇団・GOD座とのタイマンACT(舞台対決)が行われるまでに成長したようだ。
◎春組「ロミオとジュリアス」
新生MANKAIカンパニーの記念すべき旗揚げ公演。かの有名な戯曲「ロミオとジュリエット」のストーリーをベースに,男性同士の友情を描いた意欲作だ。春組の役者は全員が初舞台ながら,その立ち回りからは良いチームワークであることがうかがえる。脚本や衣装も他劇団に引けを取らない完成度で驚かされた一作。
◎夏組「Water me!〜我らが水を求めて〜」
「アラビアンナイト」をベースとしたコメディ劇。新生MANKAIカンパニー夏組はメンバーの平均年齢が若く,観ていると元気がもらえるような,イキイキとした明るい舞台作りが特徴だ。主演の皇 天馬はテレビや映画など映像の世界でも活躍中の俳優だが,舞台で殻を破り,新境地を見せてくれた。
◎秋組「なんて素敵にピカレスク」
マフィアを題材としたハードボイルドな一作。身体能力の高い役者たちのアクションも必見で,ソリッドな空気感が新生秋組の売りのようだ。異なる魅力を持つ主演2人の対比も興味深く,演劇経験者の芝居の巧みさも光っている。
◎冬組「天使を憐れむ歌。」
人間に恋をした天使の美しく愛しい悲劇。本作はGOD座との対決「タイマンACT」の舞台であり,指定のテーマが「天使」だったという経緯がある。確かな演技力がある主演を元GOD座の役者が準主演として支え,観る者の涙を誘う。
【第二回公演】
(※イベントストーリー)
(※イベントストーリー)
◎春組「不思議の国の青年アリス」
言わずもがな「不思議の国のアリス」をモチーフとした物語で,青年アリスは大学生,帽子屋は大学の教授という楽しい設定だ。うさ耳などの衣装も可愛い。
◎夏組 「にぼしを巡る冒険」
うさ耳の次はネコ耳! 夏組の2作目はネコだけが住む世界で巻き起こる“にぼし”という宝をめぐる冒険ものだ。ポップな公演曲も耳に残る。
◎秋組「異邦人」
近未来のディストピア風な世界観の物語。バイクでのチェイスシーンがあったり,準主演が女性役を務めたりと,かなりの意欲作でもある。
◎冬組「主人はミステリにご執心」
大正時代を舞台に財閥の子息とそれに仕える執事が活躍する,とある殺人事件をめぐるミステリー作品だ。冬組ならではの大人な空気感に酔いしれる。
【第三回公演】
(※イベントストーリー)
(※イベントストーリー)
◎春組「ぜんまい仕掛けのココロ」
スチームパンク風の世界観で,人間とホムンクルスの間に生まれた友情ストーリーを描く。その美しい結末には誰もが涙することだろう。
◎夏組「抜錨!スカイ海賊団」
大航海時代の「海賊」をモチーフとした,立ち回りも痛快な一作。なお,初代夏組も「海賊」モチーフの舞台を上演したことがあるらしい。
◎秋組「任侠伝・流れ者銀二」
この舞台はまさに秋組の本領発揮といったところだろう。本職に迫るほどの気迫を見せる主演の存在感,それを支える役者たちの熱演もお見事。
◎冬組「真夜中の住人」
人間と吸血鬼が織りなす絆を描く現代劇。物語の中心である吸血鬼の孤独感,胸が締め付けられるようなエンディングが儚く美しい。
【第四回公演】
(※メインストーリー第二部)
(※メインストーリー第二部)
MANKAIカンパニーは,この頃に各組それぞれに新しい劇団員を迎えた。お披露目となる第四回公演では主演を新劇団員が務め,準主演は各組のリーダーが支えるというキャスト構成になっている。
◎春組「エメラルドのペテン師」
アメリカを舞台とし,“オズの魔法使い”のモチーフが散りばめられたファンタジー。4作目にして登場した新劇団員は,エスプリの効いた台詞回しが良く似合う。
◎夏組「初恋甲子園」
夏組らしいフレッシュな学園スポーツもの。主演には野球経験があり,それが立ち回りに説得力を生んでいる。学生時代に戻りたくなるような爽やかさを感じさせる作品だ。
◎秋組「DEAD/UNDEAD」
人を食らう“アンデッド”がはびこる荒廃した世界を描く。これまでのMANKAIカンパニーにはない凝ったメイクも素晴らしい。アンデッドとハンターのアクションはさすがの一言だ。
◎冬組「怪人Fと嘆きのオペラ」
もはや説明不要の名作「オペラ座の怪人」をベースとした悲劇で,登場人物はすべて男性キャストでアレンジされている。終盤の圧倒的な迫力には,誰もが心を掴まれるだろう。
【第五回公演】
(※イベントストーリー)
(※イベントストーリー)
◎春組「Knights of RoundIV THE STAGE」
「ナイラン」の愛称でおなじみ,大人気RPG「Knights of Round」の初の舞台化作品。主演役者の思い入れが深い本作は,シリーズのディレクターも太鼓判を押した傑作である。
◎夏組「SHI★NO★BI珍道中」
おとぼけ忍者2人組が活躍するコメディ劇は,夏組らしく笑いがいっぱいの愉快な舞台だ。花火がバックに描かれたフライヤーも大好評だったとのこと。
◎秋組「燃えよ饅頭拳!」
秋組としては珍しい,コメディタッチのカンフーアクション。かなりの練習を重ねたであろう見事なアクションもありつつ,底抜けに明るい舞台を作り上げ,秋組の新境地を開拓した。
◎冬組「剣に死す。」
宮本武蔵の生き様を描く時代劇。武士や商人,女形などそれぞれの役柄を見事に表現し,独特の世界観で魅せる。ラストの一騎打ちでは手に汗握る緊張感を味わえる。
【第一回ミックス公演】
(※イベントストーリー)
(※イベントストーリー)
すべての組が第五回公演までを終えたところで,組をまたいだ出演者による「ミックス公演」が行われた。なお,「ミックス公演」はその後も行われるようになったスタイルの1つである。
◎第一回ミックス公演「ウラオモテTEACHER」
とある名門私立校を舞台とした学園もの。普段は地味な教師と教育実習生のかけあいが楽しい。生徒たちの熱演も光り,学生時代を思い出す一作だ。
【第六回公演】
(※イベントストーリー)
(※イベントストーリー)
MANKAIカンパニーの第六回公演では,各組ともこれまでに主演を務めていない役者がメインに抜擢され,新しい魅力を見せてくれた。
◎春組「春ケ丘Quartet」
私立の全寮制音楽学校を舞台とした学園もの。劇中ではなんと役者全員が実際に楽器を演奏し,見事な音楽を披露。幅広い才能に驚かされた。
◎夏組「花の王子さま」
お姫様の呪いを解くべく王子たちが奮闘する内容で,多くの観客を魅了した。剣や魔法で戦うこともなく,優しさで心が救われるような舞台だ。
◎秋組「Fallen Blood」
ダークヒーローをモチーフとし,秋組ならではの男らしい魅力で観るものをとりこにする作品。人知れず活躍する孤独なヒーローの姿に涙する。
◎冬組「Risky Game」
カジノが舞台のギャンブラーを主人公とした物語。普段とは異なる雰囲気もありながら,冬組らしい安定感は健在。ラストシーンの余韻が素晴らしい。
【第二回〜第六回ミックス公演】
(※イベントストーリー)
(※イベントストーリー)
各組の公演を六回まで数えたところで,組をまたいだキャストによるミックス公演が続いた。初演から着実に演技力を磨いた役者たちの,さまざまな組み合わせによる舞台は必見だ。
◎第二回ミックス公演「駆け巡る」
あるプロサッカー選手の苦悩と,仲間たちとのふれあいを描く。爽やかな感動を呼ぶ本作は,スポーツ劇としても人間ドラマとしても素晴らしい。
◎第三回ミックス公演「The Luminous Circus」
潰れかけのサーカス団を舞台としたファンタジーを描く。「本当に大切なものは何か?」を問いかけるこのうえなく純粋な,貧しくてもプライドを失わない団長の姿に胸が熱くなる。
◎第四回ミックス公演「ラスト・ランウェイ」
服飾学校を舞台としたドラマが展開。ファッションがテーマの1つになっているだけあって,劇中での見事な衣装の数々は必見だ。主演,準主演の2人も非常に息のあったコンビネーションを見せてくれる。
◎第五回ミックス公演「陰陽の宵」
MANKAIカンパニー初の和風ファンタジーでは,大人な魅力のメイン2人と異国情緒あふれる助演の演技が光る。ラストの展開には涙を禁じ得なかった。
◎第六回ミックス公演「Scarlet Mirror」
名探偵ホームズと宿敵モリアーティ教授のストーリー。2人が対峙するシーンはこのうえない緊張感で,アクションも見応え抜群だ。
各組&キャラごとの見どころを紹介
さて,演劇雑誌風の公演紹介に続いては,「A3!」本編の紹介に移ろう。ここでは組ごとに公演を取り上げ,主演を務めたキャラクターを中心とした見どころをあらためて紹介する。
◆春組
春組公演一覧
- 「ロミオとジュリアス」(メインストーリー第一部第1幕)
- 「不思議の国の青年アリス」
- 「ぜんまい仕掛けのココロ」
- 「エメラルドのペテン師」(メインストーリー第二部第5幕)
- 「Knights of RoundIV THE STAGE」
- 「春ケ丘Quartet」
◎佐久間咲也(主演作「ロミオとジュリアス」)
咲也が「ロミオは自分の役だ」と訴えた場面では,その叫びだけでこれまでの彼の苦しみと祈りが伝わるようで胸が痛くなった。けれど決して卑屈にならないのが咲也の魅力でもある。The show must go on,舞台は終わらない。そして人生もまた終わらない。だから決して振り返らず,前を向いて歩いていくのだ。
◎碓氷真澄(主演作「不思議の国の青年アリス」)
真澄の家庭の事情についてはぜひメインストーリー第二部第5幕にも注目しておきたいところだが,ここでは至との年の離れた兄弟のような関係性に和んだ。何ごとにも器用な真澄ではあるが感情の面では不器用で,そんなところが多くの人を惹きつけているのかもしれない。
◎皆木 綴(主演作「ぜんまい仕掛けのココロ」)
「離れていても,心はつながっている」。シトロンの言葉がしみる本作は,現実と舞台で描かれる物語がリンクしており,筆者的に“感動で泣いたストーリー”の上位にランクインしている。スランプに陥った綴に至がかけた言葉も名言なので,ぜひ多くの人に読んでほしい一作だ。
◎卯木千景(主演作「エメラルドのペテン師」)
千景はMANKAIカンパニーの中でも「食えない大人」の1人に入るかもしれない。彼については初登場のストーリーのほか,メインストーリー第二部第8幕での活躍や,密とのエピソードにも大いに注目しておきたい。千景は一枚も二枚も上手に見える,余裕さを感じさせるところが格好いい。
◎茅ヶ崎 至(主演作「Knights of RoundIV THE STAGE」)
「大人にはいろいろあるから」と,これまでに心情や過去をなかなか明かしてこなかった至が,自身が思い入れのあるゲームの舞台化作品に出演することをきっかけに一皮むけた感がある。彼を見ていると,大人になってからの成長というか,人としてより深みを増していくところに心が動かされる。
◎シトロン(主演作「春ケ丘Quartet」)
ストーリー中でも語られているが,旗揚げ公演から比べると,シトロンの役者としての成長が伝わり胸が熱くなる。シトロンについては,冬組のガイが登場したメインストーリー第二部第8幕を外しては語れないので,そちらもぜひチェックを。ユーモアがあり,ルックスも良くて実はスペックも位も高い,はずるい。
◆夏組
夏組公演一覧
- 「Water me!〜我らが水を求めて〜」(メインストーリー第一部第2幕)
- 「にぼしを巡る冒険」
- 「抜錨!スカイ海賊団」
- 「初恋甲子園」(メインストーリー第二部第6幕)
- 「SHI★NO★BI珍道中」
- 「花の王子さま」
◎皇 天馬(主演作「Water me!〜我らが水を求めて〜」)
実力派の人気俳優,天馬の愛すべきキャラクター性には誰もが惹かれるのではないだろうか。天馬はいわゆる「ツンデレ」に当たるのかもしれないが,本人はまったく意図していないであろうところがまた愛しい。人間としての成長もめざましく,次第に頼もしいリーダーぶりや役者としての貫禄を見せられるようになったのも魅力的だ。
◎瑠璃川 幸(主演作「にぼしを巡る冒険」)
入団当時は,中学生ながらプロ顔負けの衣装デザインで活躍する幸だったが,この物語で座長との二足のわらじからスランプに陥ってしまった。そんな幸が一成に“ある一言”をこぼす場面は,筆者の中でもとくに印象に残っているシーンだ。他人に流されず常に誇り高くある姿は,見ているこちらも背筋が伸びる。
◎斑鳩三角(主演作「抜錨!スカイ海賊団」)
MANKAIカンパニーきっての“謎”だった三角の生い立ちが分かるストーリー。この話をはじめとしたエピソードのおかげで,筆者は「夏組と花火」というキーワードだけでちょっと泣けてしまうようになった。なお,この舞台で描かれるイベントストーリーには,第三部につながる伏線や初代夏組についての描写もあり必見である。
◎兵頭九門(主演作「初恋甲子園」)
これまでにもその存在が示唆されていた十座の弟・九門の入団ストーリー。兄弟愛と友情,新しくできた仲間との絆,夏らしく熱い物語に「青春っていいなあ……」とつぶやきたくなる。彼が夏組という素晴らしいチームに入れて良かった。これからの活躍にも期待!
◎三好一成(主演作「SHI★NO★BI珍道中」)
一成の才能は,生まれ持ったものだけでなく,努力によって築かれてきたものだと感じている。非常に真面目で,ものごとに対して真摯に向き合う彼だからこそ,このとき選んだ答えには拍手を贈りたい。ところで,一成はあんなに“パリピ”なイメージなのに,美大での専攻が日本画というところにやられた人は多いのではないだろうか。
◎向坂 椋(主演作「花の王子さま」)
椋は年若く,ときどきネガティブに陥ることもあるが,他人を受け入れる懐の深さはどんな大人にも引けを取らないと感じる。そんな彼にとって念願の王子さま“役”は,見ているこちらも「頑張れ!」と声援を贈りたくなった。イベントストーリーに登場する女の子が正直羨ましい……!
◆秋組
秋組公演一覧
- 「なんて素敵にピカレスク」(メインストーリー第一部第3幕)
- 「異邦人」
- 「任侠伝・流れ者銀二」
- 「DEAD/UNDEAD」(メインストーリー第二部第7幕)
- 「燃えよ饅頭拳!」
- 「Fallen Blood」
◎摂津万里(主演作「なんて素敵にピカレスク」)
秋組は“ポートレイト”という一人芝居によって全員が殻を破った感があるが,なかでも生き方そのものを大きく変えることになったのが万里だ。努力せずなんでもこなせてしまう器用さは,結果として彼を孤独にしてしまっていたが,それを活かせる舞台という世界や仲間たちに出会えたことは,どれだけの喜びであったのだろうかと思わずにはいられない。
◎伏見 臣(主演作「異邦人」)
いつも穏やかで優しい臣にはつらい過去があった。人前で弱みを見せない彼だったが,この作品をとおして後悔の気持ちを断ち切ることができたのだった。メインストーリー第一部第3幕で太一の想いを受けとめた臣は,このストーリーで太一に救われる場面があり,胸が熱くなった。ラストの笑顔も泣ける……。
◎古市左京(主演作「任侠伝・流れ者銀二」)
左京の初主演作は,ズバリ(!)任侠ものだ。それまではどこか仲間との間に線を引いていた左京だったが,若い役者たちはそれを乗り越えてぶつかってきた。彼の過去の話も良かったが,筆者がとくに感動したのは,十座が言った「愛」という言葉だ。ちなみに本イベントストーリーでは,第二部から登場する莇と九門(莇の名前は出ず,それらしき表現のみ)も登場する。
◎泉田 莇(主演作「DEAD/UNDEAD」)
ヤクザの組長の息子である莇は,メイクアップアーティストになりたいという夢があった。幼少の頃から彼を見ていた左京との関係性の変化に胸を打たれる。莇は思春期らしい反抗ぶりと,恋愛には奥手なところが微笑ましすぎると思う。なおメインストーリー第二部第7幕では,第三部に新キャラクターとして登場する莇の親友・荒川志太とのエピソードが満載なので要チェックだ。
◎七尾太一(主演作「燃えよ饅頭拳!」)
メインストーリー第一部第3幕での太一の慟哭は,筆者的“「A3!」で泣かされたシーン”の一,二を争う場面だった。そこに思い入れがある人ほど,彼が初主演作に挑むことになった本イベントストーリーは刺さるのではないだろうか。人の痛みを自分のことのように理解し,ひたむきに努力を続ける彼の幸せを心から願いたくなる。
◎兵頭十座(主演作「Fallen Blood」)
ついに十座が主演を……と胸熱になった一作。彼は自分が器用ではないことをよく知っており,愚直なまでにまっすぐ芝居にぶつかる。その熱が周りの皆を動かしていることを,彼自身が気づいていないところに惹かれる人も多いだろう。ライバルである万里を始め,仲間たちの無骨な愛情表現に嬉しくなってしまった。
◆冬組
冬組公演一覧
- 「天使を憐れむ歌。」(メインストーリー第一部第4幕)
- 「主人はミステリにご執心」
- 「真夜中の住人」
- 「怪人Fと嘆きのオペラ」(メインストーリー第二部第8幕)
- 「剣に死す。」
- 「Risky Game」
◎月岡 紬(主演作「天使を憐れむ歌。」)
冬組は演技経験者が2人もいるとはいえ,初っ端からGOD座との対決とはかなりのプレッシャーがあったと思う。あまり表には出さないものの,紬には一度こうだと決めたら絶対に折れない強さがある。そういう揺るぎない強さがあるからこそ,繊細な演技はただそれだけで終わらないのかもしれない。
◎有栖川 誉(主演作「主人はミステリにご執心」)
人の気持ちが分からない,という誉が冬組の仲間と出会い,止まっていた時計の針を再び動かしたようなストーリーだった。普段はにぎやかで空気を読まないように見える彼だが,本当はこのうえなく優しく,人に惜しみなく愛を与えてあげられる人のように感じる。劇中劇では密とのナイスコンビぶりが微笑ましい。
◎雪白 東(主演作「真夜中の住人」)
「A3!」は舞台と現実がリンクしたストーリーが多いが,このイベントストーリーでは劇団きっての“大人”である東のどうしようもない孤独が描かれた。筆者が冬組に抱くイメージは,少しずつ明けていく空のような,淡く白い優しい光で,彼にはそれがよく似合う。冬組は他人でも家族でもない“運命共同体”という名言が生まれた物語。
◎ガイ(主演作「怪人Fと嘆きのオペラ」)
春組第三回公演(「ぜんまい仕掛けのココロ」)ラストで謎の人物として登場していたのが,本メインストーリー第二部第8幕の中心となるシトロンの元従者・ガイだ。自分をアンドロイドだと言い,本物の機械のようなハイスペックぶりを見せるのだが,実は……。彼が人間らしさを取り戻す一連の物語は必見。また,このストーリーでは春組メンバーが大活躍するのも見どころの1つだ。
◎高遠 丞(主演作「剣に死す。」)
元GOD座の実力者である丞は第五回公演にして初の主演となり,まさに真打ち登場といったところだ。剣の道にしか生きられない武蔵は丞自身とも重なり,不器用だが熱い生き様に胸を打たれる。口数は少ないが,彼もまた紛れもない努力の人であることが伝わるイベントストーリーだ。
◎御影 密(主演作「Risky Game」)
「A3!」のストーリーにおけるいくつかの要素のうち,密や千景が関係する“とある組織”は,非常に重要な役割がある。その組織や彼らの過去が,本イベントストーリーで少しだけ明らかになる。密がゆっくりと少しずつ,仲間たちに心を寄せていく過程がジンと心にしみる。
第三部開幕に寄せて
現在公開されている第9幕での“劇中劇”は,従来のメインストーリーで描かれてきた組ごとの公演ではなくミックス公演であり,しかも「恒例の春組スタートではなく,冬組と秋組メンバーによる公演」「第4幕のテーマだった『天使』と対をなす『悪魔』モチーフ」など,これまでとは違う展開を見せている。
未読のプレイヤーのために詳細は控えるが,第三部ではMANKAIカンパニーの初代リーダー4人に加え,GOD座側のメンバーとして三角の弟・斑鳩 円,莇の親友である荒川志太が新キャラクターとして登場しており,同じくGOD座の主宰である神木坂レニと元トップの飛鳥晴翔も,物語の重要な役どころとして登場する。第9幕では1つのストーリーにいったんオチはつくものの,次への足がかりとおぼしきネタなども多数散りばめられており,物語はより複雑に進んでいきそうなことが予想され,ワクワクが止まらない。
はじまりの第一部,“家族”をテーマとした第二部,そして第三部は“永遠”を描く物語。「永遠なんてない,それでも――」。「それでも」の次に続く言葉を想像しながら,多くの人に新たな物語を楽しんでほしい。きっと,それぞれに答えが見つかることだろう。
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