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  • コーエーテクモゲームス
  • 発売日:2017/11/30
  • 価格:通常版:9800円(+税)
    TREASURE BOX:1万3800円(+税)
    GAMECITY & Amazon.co.jp限定セット:5万2800円(+税)
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「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー
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印刷2017/04/29 00:00

インタビュー

「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー

画像集 No.009のサムネイル画像 / 「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー
 コーエーテクモゲームスの歴史シミュレーション「信長の野望」シリーズの最新作となる「信長の野望・大志」PC / PS4 / Switch)が2017年4月28日に発表された。
 第1作の発売からおよそ35年という歴史を重ね,累計販売数が1000万本を突破しようかという人気シリーズの最新作は,どのようなものになるのか,気になっている人は多いだろう。

 4Gamerでは本作のプロデューサーを務める小山宏行氏と,ディレクターの木股浩司氏に話を聞いたので,その模様をお届けしよう。


最新作を手がけるのは「信長の野望」のベテランプレイヤー


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 小山さんは以前から「信長の野望」シリーズ作品を手がけられていて,4Gamerのインタビュー記事にも登場いただいていますが,これまで関わったタイトルを改めて教えていただけないでしょうか。

「信長の野望・大志」プロデューサー 小山宏行氏
画像集 No.006のサムネイル画像 / 「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー
小山宏行氏:(以下,小山氏)
 「蒼天録」「革新」「天道」「創造」です。スーパーファミコン版「覇王伝」や,ニンテンドーDS,3DS向けの移植なども担当しましたが,ゲームの根本的な部分に関わったのは蒼天録と,革新以降のタイトルです。

4Gamer:
 入社した時から「信長の野望」を作りたいという思いがあったのでしょうか。

小山氏:
 そうですね。自分で遊んでいて,「面白いゲームを作る会社だな」と思ったのが,入社試験を受けるきっかけでしたし。
 アクションゲームがあまり得意ではなくて,じっくり考えてプレイするものが好きだったのですが,たまたま友達が持っていた「信長の野望」を一緒に遊んだら面白くて,自分でも買って遊ぶようになったという感じですね。

4Gamer:
 もともと歴史好きだったのですか。

小山氏:
 興味はありましたけど,そこまで好きというわけでもなかったんです。やっぱりゲームをプレイして熱が高まった感じですね。その友達からは「三國志」も教えてもらいました。

4Gamer:
 ゲームが入口になったんですね。では,木股さんが関わったタイトルを教えてください。

「信長の野望・大志」ディレクター 木股浩司氏
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー
木股浩司氏(以下,木股氏):
 私はω-Forceで「戦国無双」に参加して,その後は他のシリーズ作品でリードプランナーを担当していました。もともとシミュレーションゲームが好きで,自分でも作りたいと思ったので,無印の「創造」から現在のチームに入りました。その後「創造 with パワーアップキット」「創造 戦国立志伝」を手がけて,今「大志」を作っています。

4Gamer:
 「信長の野望」はやはり入社前からプレイされていたんですか。

木股氏:
 はい。初めてプレイしたのは,ファミコンの「戦国群雄伝」で,その後には「将星録」「烈風伝」を夢中になって遊んでいました。コーエーでもシミュレーションを作りたいと思っていましたが,ω-Forceに配属されて,アクションを作っていた感じですね。いや,もちろんアクションも好きですが(笑)。

4Gamer:
 では,お2人がプレイヤーとして体験した「信長の野望」で,ナンバーワンを挙げるとしたらどのタイトルになるでしょうか。

小山氏:
 難しいですが,「将星録」はそれまでのスタイルから大きく変わって,衝撃的でしたね。
 「天翔記」ぐらいまではプレイヤーのイマジネーションに訴えるというか,ビジュアルをあまり重視してこなかったと思うのですが,「将星録」では箱庭的要素が入ってきて,自分のやっていることが分かるようなったと思います。

4Gamer:
 確かに「将星録」は,以降のシリーズ作品の基礎を作ったと思います。

小山氏:
 正直なところ,最初は「どうやってプレイすればいいんだ」と戸惑うこともありましたが,いったん流れを掴むと,やったことの成果が目に見えて分かるので,もっとやりたいという気持ちにさせてくれる作品でした。

木股氏:
 私は「将星録」の完成形とも言える「烈風伝」ですね。内政と合戦が同じ場所で行われて,自分が作った町で合戦が起こると,そこの内政値が減るといった仕組みは「将星録」から引き継ぎつつ,グラフィックスなどが強化されました。城の門を開けて,天守へ向かっていくところまでを再現する攻城戦も面白かったです。当時の1枚マップの完成形でしたね。


“強い弱い”で判断しない,人間味のあるAI


4Gamer:
 それでは,最新作「信長の野望・大志」について聞かせてください。
 「信長の野望」シリーズのタイトルは,「三國志」のようなナンバリングでなく,サブタイトルが付けられますよね。これを考えるのはなかなか骨が折れると思うのですが,今回「大志」とした理由を教えてください。

小山氏:
 本作のAIをゲームに落とし込むうえで,「志(こころざし)」というのが1つのキーワードになっており,そこから「大志」という名前が生まれました。
 サブタイトルは,私たちが考えた候補から,最終的にはゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウが決める形なんですが,今回シブサワ・コウからはAIを強化してほしいという要望があり,私達としても,AIを特徴的な要素として考えていましたので。

4Gamer:
 今作ではAIが目玉になると。

小山氏:
 今までのAIは,単に「強いか弱いか」だけで語られがちでしたが,戦国時代の大名は,それぞれ異なる個性,あるいは野望といったものを持っていたはずで,そこを表現したいと思っています。
 信長には「天下布武」という野望がありましたし,朝廷の権威を復活させたいと願う大名家もいました。もっと小さな大名になれば,天下の趨勢よりも家の存続が第一だったでしょう。

4Gamer:
 なるほど。天下統一とは別の目標を見据える大名まで再現するということですね。ちなみに,サブタイトルの候補はどれくらいあったのでしょうか。

木股氏:
 開発だけでなく,ほかの部署にも協力してもらって,数百は出ましたね。

小山氏:
 ただ,「大志」を超えるものはなかったと思います。

4Gamer:
 シブサワ・コウさんへ最終的な候補を出すときも,「大志が選ばれるだろう」と思われていましたか。

小山氏:
 そうですね。3つほど案を出しましたが,みんな「大志」だと思っていたようです。

4Gamer:
 木股さんもですか。

木股氏:
 そうですね。「大志」は安心感,安定感みたいなものが感じられていいなと思っていました。数百も候補を考えると,中にはアバンギャルドなものが出てくるんですよね。「綺羅星」とか(笑)。そういうのも面白いですが,やはり「大志」かなと。

4Gamer:
 以前は「天翔記」「将星録」といった勇ましいものが多かったですが,2文字になってからは,「革新」「創造」など,普段よく耳にする言葉が選ばれていますよね。

小山氏:
 「革新」に決めたときは「これで大丈夫かな」という気持ちもありましたが,自然に受け入れていただけたと思います。それまでは「なんとか伝」とか「なんとか録」というパターンだったんですが,「革新」以降はそれも打ち破って,選択の幅が広がりました。

4Gamer:
 「大志」以外の候補も,差し支えなければ教えてください。

小山氏:
 個人的には「神威」(かむい)の語感が割と気に入っていましたが,先ほどお話ししたように,最終的には「大志」がイチオシでしたね。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー

4Gamer:
 それだけ本作にピッタリの名前ということですね。すでに半分聞いてしまったような気もしますが,そのAI,「志」について,もう少し詳しく聞かせてください。

小山氏:
 自分のライバルとなる大名がいることで,初めて感じられる面白さを表現します。さきほども話しましたが,単に強い,弱いで判断するのではなく,それぞれの大名の性格や目標を感じ取って,それを利用しながら戦略として成立させていくのが今回の大きな目標となるので,そこを楽しんでほしいですね。

4Gamer:
 「志を感じとる」ということは,外交が重要になるのでしょうか。

小山氏:
 志は目に見えるものではないので,プレイヤーにどう伝えるのかを試行錯誤しているところです。
 例えば「義」に生きる上杉謙信であれば,助けを求めてきた小さな大名には救いの手を差し伸べる一方,領土拡大に走っている大名家を倒そうとする,といった形でゲームに反映させます。私利私欲に走り弱い大名を倒して領土を広げていると,謙信ににらまれてヤバいぞ……と感じられるものにしたいですね。

4Gamer:
 小勢力の真田家でプレイしているときに,徳川家のような大大名に攻められたら,謙信を頼る……といった,史実に近いプレイがやりやすくなりそうですね。謙信からすれば真田に味方にして徳川と敵対するのは効率的ではないですが,志がそれを上回ると。

小山氏:
 先ほどもお話したように,以前から“損か得かで判断するAI”を変えなければいけないと思っていました。「大志」でそれを実現して,その後のAIは「大志」からさらに進化させたものにしていく予定です。

4Gamer:
 武将の性格や思想を表すパラメータとしては,これまでにも「主義」や「士道」というものがあって,忠誠度や武将同士の相性に影響していました。個人的には人材の集め方が面白くなる一方で,いきなり武将が家を出て行くなど,困ってしまう要素でもありましたので,そのあたりが気になるのですが。

小山氏:
 志に相性的な要素がないわけではありませんが,相性を表現するために入れるものではないですね。

木股氏:
 その人の「自分はこう生きたい」という思いなので,それによって配下武将同士の仲が悪くなるとか,忠誠度に大きな影響が出るということは現状予定していません。
 大名の志が国や勢力の理想,方向性に影響するというイメージです。

小山氏:
 あとは,配下からの提案や助言を受けるようなケースがあるとすれば,そこに志を反映させる余地はあると思います。配下武将が大名になるケースもありますから,武将それぞれに志を設定します。

4Gamer:
 配下武将は志を反映させた提案をしてくるわけですね。基本的に1武将につき1つの志を持っているのでしょうか。または複数持ちうるものなのでしょうか。

小山氏:
 検討中の部分ではあるので,はっきりとは申し上げられませんが,信長などの有名大名はそれぞれ固有の志,それ以外の武将には汎用的なものを持たせる予定で,それも何かの契機で変化すると面白いかなと思っています。

4Gamer:
 戦国時代には,有名な“裏切り男”が何人かいますので,彼らが志システムの中でどう振る舞うのかも気になります。

小山氏:
 今までのシリーズ作品では,単に忠誠度が低いといった“裏切りやすいキャラ”でしたが,実際には彼らも裏切りたくて裏切った人ばかりではないはずです。
 「自分の地位を守りたい」「生き延びたい」という思いのためには裏切りも辞さないのであって,「俺は裏切りたいから裏切る」ではないですよね。
 本作では,根本となる志から行動が生まれるようにしていきたいと思っています。

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4Gamer:
 調略を仕掛けるときは,そういったところを意識すると面白そうですね。
 より人間らしいAIになるようですが,外交や人と人とのつながりはどのようにコントロールされていくのでしょうか。

小山氏:
 コントロールの仕組み自体は調整している最中なので,現時点ではっきりとは言えません。また,プレイする状況や大名によっても変わってくるとは思いますが,「大志」では,外交せずに自分の力だけで天下を統一するのはちょっと難しい,というバランスにしたいと思っています。
 「同じ大名と敵対しているから手を組もう」「志が自分に近いから友好関係を結ぼう」といった判断をして,担当官を立て,書状などでやり取りをしながら交渉を進めていく感じを再現したいですね。トントン拍子に話が進むケースもあれば,なかなか話が進まずに時間がかかるケースもあるというリアリティが出せれば面白いんじゃないかなと思っています。

4Gamer:
 合戦についても聞かせてください。本作では部隊が道以外のエリアも自由に移動できるようですが,そうなると戦略性も高まりそうですね。

画像集 No.017のサムネイル画像 / 「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー
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木股氏:
 これまでは部隊の移動時と合戦で別のマップが用意されていましたが,本作では,敵味方の部隊が近づくと,そのまま視点が寄っていってその場所を舞台に合戦が始まる,という仕組みを考えています。マップがそのまま戦場になるので,バリエーションもすごく豊富になるかなと。

小山氏:
 なので,「どこで戦うか」というのが重要な要素の1つになってきます。山の陣を張って迎え撃つと有利になるとか,川は移動しづらいといったことだけではなくて,広い戦場でないと大軍が動かしづらいといったことまで入れるつもりでいます。

「創造」(左)と「大志」(右)の関ヶ原
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4Gamer:
 そうなると確かに合戦前の駆け引きが面白くなりそうです。
 ところで,「大志」ではBGMや映像表現が“和”を意識したものになるということですが,このタイミングで和風の要素を強調するのはなぜでしょうか。これまでのシリーズ作品も和風であったとは思うのですが。

小山氏:
 もちろん戦国時代のゲームなので,和風ではありましたが,例えば前作の「創造」であれば,音楽にハリウッド映画的な要素を取り入れるといったこともやっていました。
 それを「大志」では,純日本的に行こうと強く打ち出した感じですね。

4Gamer:
 例えばフルートを使っていた部分を尺八に変えるといった感じでしょうか。

小山氏:
 楽器が変わるのはもちろんなんですが,リズムや曲の作り方でも和を追求したいと思っていて,その1つがヨナ抜き音階です。このあたりは言葉で説明するのが難しいのですが,楽曲を聴いていただければ分かると思います。

4Gamer:
 それはそうですね。楽しみにしています。
 あと,「大志」では,一部武将のイラストが戦時と平時で変わるのも新しい要素です。

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小山氏:
 はい。シリーズの初期は顔だけでしたが,最近の作品ではバストアップや,場合によってはもう少し大きくキャラクターが表示されるようになってきました。これまでは武勇の高そうな武将は甲冑を着せて,そうでない文治派武将は平服にしていたんですが,シーンによっては違和感が出てきてしまうので。

木股氏:
 落ち着いた会話のシーンなのに,鎧に刀を持って出てこられてしまうと……ということですね。

4Gamer:
 自分も,武将全員に複数のイラストを用意するのは大変と分かっていながら残念に思っていたので,そこが改善されるのは嬉しいですね。
 イラストつながりの質問なのですが,実際の人物がモデルですし,「戦国無双」みたいにはっちゃけるわけにもいかないですよね。かなり制限があると思うんですが,新たに描き起こす場合はどのように違いを出すのでしょうか。

木股氏:
 例えば,その武将が使っていた鎧が新たに発見されたらそれを描いてみるとか,実は詩が好きだったなどというエピソードがあれば,それに合う姿にしてみるなどして,イメージを変えていくようにしています。

小山氏:
 ただ,新しいイラストにした結果「誰?」となってしまっては困ります。ある程度イメージが固まっている武将の場合は,“らしさ”というか,一般の人が考えるイメージの中で新しさを出していきます。なかなか苦労するのですが。

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4Gamer:
 現時点だと,登場武将数は確定していないと思いますが……。

小山氏:
 はい。ですが,過去最大級の2000人以上にできればと思います。

4Gamer:
 2000人と言っても,それぞれにパラメータを振ってイラストを作り,さらに今回は志を付けなくてはいけないわけですよね。

小山氏:
 はい。いやあ,大変ですね(笑)。

木股氏:
 いつものことと言えば,いつものことなんですけどね(笑)。

4Gamer:
 2000人それぞれに,基となる資料があるわけですよね。

木股氏:
 しかもその資料が実は間違いだったということもよくあります。例えば,皆さんがよく知るあの太った武田信玄の肖像画も,実は信玄じゃなかったというのが通説になっています。そういったところにも対応していかなければいけません。

小山氏:
 かといっていきなり痩せた信玄を出すと,先ほど話したように「誰?」ということになりかねないので,悩ましいんですよね。

4Gamer:
 そういう変更のタイミングってどこかで誰かが変えている感じなんですか。例えば,今川義元は「天道」で,それまでの暗君的なイメージからガラッと変わった印象があるのですが。

小山氏:
 例えば,漫画のヒットなどがきっかけで,コアな層のイメージが傾けば変えやすいんですが,肖像画が違いましたというレベルの話だと,すぐに変えるのは難しいですね。そこはタイミングなり状況なりをうまく判断してやっていく感じです。

4Gamer:
 開発チームには,そういった武将の資料を集める人もいらっしゃるんですか。

小山氏:
 専任の者はいます。あくまでエンターテイメントでありつつ,史実に近づけるというスタンスでやっているので,さすがに古文書などになると深く紐解くことまではしませんが,ニュースや書籍,映画,漫画なども含むさまざまな資料を見渡して,武将のイメージを探っています。

4Gamer:
 「信長の野望」シリーズは作品ごとに特徴があって,それぞれにファンがいると思いますが,一方で,今回が初めての「信長の野望」だというプレイヤーもいます。
 難しい質問だとは思いますが,そういったさまざまな期待にどう応えていくのでしょうか。

小山氏:
 前作の「創造」は,多くのプレイヤーに楽しんでいただけたと思っていますが,「もっとこうしてほしい」といった要望もあって,なかなか難しいですね。
 ただ,「信長の野望」は単に戦国時代を題材としたゲームではなく,戦国時代のゲームを引っ張るべきものだという自負がありますので,基本的には本格的であることというか,リアリティにこだわっています。

4Gamer:
 リアリティですか。

小山氏:
 単に史実を再現するというのではなく,“日本人が思う戦国時代”をしっかりと感じ取れるシミュレーションゲームにしたいと思っています。
 「なるほど,これが戦国時代だよね」という体験ができれば,シリーズそれぞれのファンの多くに楽しんいただけますし,そのうえでゲームに入りやすいよう,導入部分なども強化すれば,大河ドラマなどを見て戦国時代に興味を持った人にも遊んでいただけると思います。

4Gamer:
 なるほど。木股さんはそのあたり,いかがですか。

木股氏:
 今,小山が話したことを踏まえてですが,基本的には戦国時代に少しでも興味のある方に遊んでもらえるものにしたいと思っています。今までのシリーズ作品でも,シミュレーションゲームとしての色が強かったり,歴史を描くことに寄っていたりといった特徴がありますが,そのあたりのバランスをうまく取りたいですね。

4Gamer:
 “戦国時代”を重視するのは,小山さんと共通していますね。

木股氏:
 「創造」でも多くの歴史イベントを作りましたが,どちらかといえば学校の教科書で習うようなものでした。それを「大志」では,武将の逸話にフォーカスしたいと思っています。例えば,ある武将が合戦で負けて逃げる途中,まんじゅうを盗んだのを見つかり,出世払いするからと言って見逃してもらって,後日本当に出世して戻ってくる……というような。

4Gamer:
 より武将に親しみが湧きそうです。そういえば,「大志」には,山県昌景が猿に導かれて見つけた温泉で疲れを癒やすというイベントもあるようですね。

画像集 No.018のサムネイル画像 / 「信長の野望・大志」では,武将の“人間味”を表現する。小山宏行プロデューサーと木股浩司ディレクターへのインタビュー

木股氏:
 ああいう話って,探してみるといろいろあるんです。知っているようで知らない戦国時代を,皆さんにお伝えできればなと思います。

4Gamer:
 大河ドラマにほんのちょっと出てくるエピソードみたいな感じですよね。

木股氏:
 まさにそういうところですね。武将や戦国時代に親しみを持っていただきたいです。


信長のように,過去にとらわれず,いい意味でプレイヤーを裏切る


4Gamer:
 小山さんは今回初めて開発チームのトップになったわけですが,気持のうえで変化はありますか。「創造」のプロデューサーだった小笠原さんは,それまでシリーズ作品に関わることがなかったので,それまで自分の中で温めていたアイデアを盛り込んだと聞きましたが。

小山氏:
 立場が変わったと言えば変わったんですが,実際にはそれほどでもというか……ちょっと難しいですね。前作までは,ディレクターとして開発現場と小笠原の橋渡し役をやっていました。「大志」は現場から少し離れる形にはなりましたが,プレイヤーに楽しんでいただけるものを作りたいと思っているところは変わらないですね。何だかんだで現場から離れられないところもありますし(笑)。

4Gamer:
 自分の中ではあまり変化はないと。

小山氏:
 ただ,責任の重さは感じます。これまで小笠原が表現していた部分を,今度は自分が考えてやっていかなければいけないですから。それがプレイヤーに楽しんでいただけるものなのか,これまでも常に意識していましたが,そのウェイトは大きくなっていますね。

4Gamer:
 過去のシリーズ作品は意識されていますか。

小山氏:
 開発に携わったタイトルもありますから,意識していないわけではないですが,「過去に倣ってこうしよう」といったことはないですね。
 もちろん好評だった要素は基本的に取り入れるべきでしょうが,だからといって単純にそれを合体させれば面白いゲームができるかと言えば,そうではないですから。

4Gamer:
 確かに。

小山氏:
 あくまでその作品のコンセプトに沿ったシステムを作るのが基本で,過去作に似たシステムがあるとか,作ったシステムがうまくいかないときに参考にすることはあると思いますが,過去作に縛られることはありません。
 プレイヤーの期待をいい意味で裏切るようなものでないと,満足させられないんじゃないかなと思っています。「えっ,こんなことやって大丈夫?」と言われるぐらい驚かせたうえで,「実際にプレイすると面白い!」と言われるようなゲームを目指したいですね。

4Gamer:
 おっしゃる通り,「予想の範囲内」のものだったら,熱中することはないでしょうね。

小山氏:
 「信長の野望」は何だかんだで“国を豊かにして,兵力を蓄えて,隣国を攻めて広げていく”というベースは変わらないですよね。それだけをずっと続けていてもプレイヤーは飽きてしまうし,驚きもないので。それに付随する部分に頭を絞って,最終的にいいゲームを届けたいと思っています。

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4Gamer:
 木股さんはそのあたりいかがでしょうか。

木股氏:
 過去のシリーズ作品をまったく気にしないわけではないですが,個人的にはそれよりも「Hearts of Iron」「Civilization」「Stellaris」など,今世界中の人々が楽しんでいるシミュレーションゲームを意識しています。それらに後れをとらないようにしたいですね。
 「信長の野望」はキャラクターゲームの側面もあるので,今挙げたタイトルとは違う部分も多々ありますが,最新のシミュレーションゲームが持つリアリティをどんどん取り入れていきたいです。

4Gamer:
 世界を意識しているわけですね。

木股氏:
 「創造 withパワーアップキット」からはSteamでも販売するようになりましたので,世界的にも通用するものにしていきたいと。ちょっとビッグマウスですが(笑)。

4Gamer:
 いえ,そうしないと生き残っていけないですよね。PC向けの“ストラテジーゲーム村”は結構小さいので,自分のような“村民”が世界中の国で待っていると思います。

木股氏:
 私もその村民の1人ですね(笑)。

4Gamer:
 ところで,シブサワ・コウさんさんが出された書籍「シブサワ・コウ 0から1を創造する力」には,織田信長という人物の革新性や創造性に惹かれて「信長の野望」を作ったと書かれていました。そこでお聞きしたいのですが,お2人が惹かれる武将とその理由……「大志」で言えば志にあたるものは何でしょうか。

小山氏:
 ちょっとシブサワ・コウと比べられるのは……(笑)。

4Gamer:
 (笑)。そこはあくまで個人的な意見ですので。

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木股氏:
 私は島津家久がすごく好きなんです。彼は耳川の戦い,沖田畷の戦い,戸次川の戦いという3つの合戦で大勝を収めた,合戦のプロフェッショナルなんです。
 自分が合戦で勝つためには何をすべきかを徹底的に研究していて,特に沖田畷の戦いでは,戦場をよく観察したうえで,「少しでも後ろに下がったら斬る」という厳しい軍法「場定め」を使って兵士を動かすんです。
 そういう規律を自分で作って大戦果を挙げているのが,ほかの武将にはない魅力ですね。

4Gamer:
 ストイックというか,確かにプロフェッショナルですね。
 よくビジネス誌で,経営のモデルとして武将の生きざまが紹介されたりしますが,現場でチームを実際に動かしているお二人の場合,そういった知識って役立つことはありますか。

小山氏:
 ビジネス上の話なら,やはり信長の考え方は参考になるでしょうね。変な先入観を持たず,このやり方でやってきたから,これでいいという発想はしません。昔の成功体験を引きずっていてはいけない,とは今よく言われますが,信長はあの当時からそれを分かっていたと思うと,改めてその凄さを感じますね。

4Gamer:
 あの時代で,過去にとらわれないというのは相当難しかったでしょうからね。
 小山さんが惹かれる武将は誰でしょうか。

小山氏:
 個人的には大谷吉継が好きです。戦国時代は生き馬の目を抜くような世界ですが,その中で友である石田三成のために戦ったところがいいですよね。当時の状況にそぐわない行動をするギャップのようなところに「いい人だな,友人になりたいな」と。

4Gamer:
 その場に流されないところは魅力的ですよね。

小山氏:
 もちろん織田信長はさまざまな面で凄いと思いますが,近くにいたらいつ殺されるか分からないですから(笑)。

4Gamer:
 昔を引きずらない,というお話は,さきほどの過去作に対する意識と通じるところがありますし,大谷吉継のように損得よりも義を重んじて行動するような人物は,「大志」だとより“らしさ”が出そうな気がしますね。
 では,最後に4Gamer読者にメッセージをお願いします。

小山氏:
 このインタビューを読まれる人には「創造」のプレイヤーも多いと思うのですが,今回の「大志」を「創造」以上の驚きと楽しみを提供できるタイトルにすべく,鋭意制作中です。早ければ夏頃には細かいシステムの情報もしっかりとお伝えできるようにしたいと思っておりますので,ご期待ください。

木股氏:
 私もPCでシミュレーションゲームをプレイするのが好きです。日本ではだんだん数が少なくなってきていますが,シミュレーションゲームやPCゲームを盛り上げられるようなものを作れればいいなと思っています。ぜひご期待ください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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