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「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第5回は,京都出身の中高生テクノポップバンド“εpsilonΦ”を語る

 ブシロードとDeNAの共同企画によるスマホ向けリズム&アドベンチャーゲームアプリ「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」iOS / Android。以下,「ダブエス」)のストーリーを紹介する連載の第5回は,京都出身の中高生テクノポップバンド,εpsilonΦを取り上げる。

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 本稿ではバンドストーリーを中心に,メインストーリーでの活躍やイベントストーリー,各メンバーについても詳しく紹介していこう。なお,記事にはストーリーや設定のネタバレが含まれる場合があるので,気になる人は注意してほしい。

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[2021/04/24 12:00]


εpsilonΦの結成〜現在までの歩み


世界を弄ぶ残酷で無邪気な悪魔
εpsilonΦ(イプシロンファイ)


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 今回もアプリ内のヒストリーなどをもとに,バンドの結成から現在までの歩みを簡単におさらいしていく。参考となるストーリーも合わせて紹介するので,全体の流れの参考にしてほしい。

※執筆時点での公開範囲
メインストーリー:第4章まで+Extra第5章第5話まで
バンドストーリー:第5章まで
楽曲ストーリー:紫夕,奏,唯臣,玲司
各キャラクターストーリー:第3話まで
イベントストーリー:2021年9月まで


<上京前>

εpsilonΦ結成
 フェスを盛り上げるため,ダックリバー社からの命令で宇治川紫夕と烏丸玲司がバンドを組む。その後に二条 遥(勧誘),二条 奏(自分から志願),鞍馬唯臣(玲司の紹介)の順にメンバーが加入し,εpsilonΦが結成される。

DRF出演
 京都での初ライブなどから知名度が上がり,北海道で行われる大型ロックフェス「ディスティニー・ロック・フェスティバル」(通称DRF/ディスフェス)への参加が決まる。
→参考:TVアニメ第9話〜13話

京都にて単独ライブ〜LRフェス出場が決定
 当初は対バン予定だったライブが,相手バンドの辞退により,εpsilonΦの単独ライブになる。その後,LRフェスに出場が決まる。
→ボイスドラマ「コドモノアソビ」


<上京後>※一部順不同

六本木のシェアハウスで共同生活開始〜キックオフミーティング参加
 六本木のシェアハウスで共同生活が始まる。上京にあたり,メンバーは東京の学校に編入する(紫夕:鴨川大学付属中学校,遥,奏,唯臣,玲司:鴨川大学付属高等学校)。LRフェスのキックオフミーティングには紫夕と玲司が参加し,そこで出会った蓮に紫夕が興味を持つ。
→参考:メインストーリー第1章(キックオフミーティングのみ)

スターティングライブ欠場
 紫夕の意向によりスターティングライブを欠場する。本来は一番手だったため,風神RIZING!が繰り上がりでトップバッターとなった。
→参考:メインストーリー第1章〜第2章,バンドストーリー第1章

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曲作りを行う
 各メンバーをフィーチャーした楽曲が作られる。
→参考:楽曲ストーリー「世界は僕のおもちゃ箱」「Insanity of reason」「It’s Showtime!」「Cynicaltic Drummer」

単独ライブ開催〜新レーベルを立ち上げる
 紫夕が父に命じられたεpsilonΦの単独ライブを開催,成功させる。アンコールの場で,新しいレーベルであるスカイフォックス・レコードを立ち上げたと発表する。
→参考:バンドストーリー第3章

スターティングライブ結果発表〜紫夕が蓮の前に現れる
 スターティングライブの結果は第4位。その後,嫌がらせを受けたArgonavisがネットで炎上したことについて,紫夕は蓮にある事実を告げる。
→参考:メインストーリー第3章

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LRフェスに出場
 LRフェスに出場,見事な演奏を見せる。紫夕は,妨害工作にもめげないArgonavisに悔しさをにじませる。
→参考:メインストーリー第4章・バンドストーリー第5章

 次の項からは,バンドストーリーと楽曲ストーリーの内容を紹介していこう。


εpsilonΦのバンドストーリーを語る


――バンドストーリー
あらすじ(第1章〜第5章)――

 LRフェスのスターティングライブを欠席したεpsilonΦ。バンドの中心人物の紫夕は,父親であるダックリバー社の社長から,LRフェスの前に単独ライブを成功させ,実力を示すようにと命令される。紫夕に仕える玲司は新曲を書かせるため,紫夕に他の出場バンドの資料を渡す。紫夕は“新しいおもちゃ”を見つけようと唯臣を連れて下北沢へ出向くと,Argonavisの七星 蓮に会う。

 一方,紫夕に路上ライブを命じられた遥と奏。どこまでも自分を煽る弟の奏に,遥は激怒する。そんな2人の演奏を聴いていた風神RIZING!の椿 大和は,遥のギターは上手いが苦しそうだと感じていた。二条兄弟はやりあえばやりあうほどいい音を出すと満足する紫夕だが,玲司はこのままの状態で本番を迎えることに懸念を示す。紫夕はそんな玲司をよそに,ライブまでに帰ると告げてどこかへ出かけてしまう。

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 紫夕がなかなか帰ってこないと焦る玲司に,バンドの解散を提案する唯臣。玲司が訪れたダックリバー社に現れた紫夕は,バラバラになったバンドらしく「不協和音を奏でよう」と言うのだった。
 そして迎えた単独ライブを成功に導いた紫夕は,アンコールのステージで,新しいレーベルであるスカイフォックス・レコードを立ち上げたと発表する。それは,玲司の父がかつて経営していた会社と同じ名前だった。

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 単独ライブ後のある日,楽器店で遥と大和が出会う。大和は以前の路上ライブで遥が苦しそうだったと指摘し,「お前も音楽を楽しめ」と告げる。その言葉の意味を考える遥に,友達ごっこなんてやめればいいのにと思う奏。奏は「兄には近づかないほうがいい」と大和に忠告するが,大和をライバルだと認めるかのような遥の姿に焦りを見せる。ますますこじれていく兄弟を見た紫夕は,フェス本番が楽しみだと笑う。

 LRフェス当日。紫夕は父親に,εpsilonΦが優勝する可能性はどこにあるのかと問われ,この本番が最後のチャンスだと告げられる。その話を聞いて,やる気を失いかけるバンドメンバーを焚き付け,皆の負の感情を引き出そうとする紫夕。満足いくステージができたかに思われたが,紫夕は父親に呼び出され,εpsilonΦよりもArgonavisに価値があると言われてしまう。愕然とする紫夕に,唯臣は残酷な言葉をかけるのだった――。

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◆注目したいポイント

 εpsilonΦのバンドストーリーは特殊な時系列ではなく,概ねメインストーリーと同じ時間軸で進んでいく。バンドストーリーを読むことで,メインストーリーで起きた出来事の背景がより詳しく見えてくるというわけだ。以下では,バンドストーリーに登場する注目ポイントや,気になるセリフをピックアップしていこう。

単独ライブの規模について
バンドストーリー第1章第2話より
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 紫夕が父親に命じられた単独ライブはダックリバー社によって会場が決められており,その規模に遥が「Zepp並のデカさ」と驚く。
 ARGONAVISプロジェクトのリアルバンドを観たことのあるファンにはおなじみの「Zepp」は全国に存在し,各2000人前後のキャパシティとなっている。デビュー前のバンドがライブを行う会場としては,異例の広さと言えるだろう。ちなみに京都にZeppはなく,関西圏では大阪の2箇所にある(2021年10月現在)。

玲司の回想シーン
バンドストーリー第1章第3話より
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 各ストーリーで時折見られる,玲司の回想シーン。これが誰のセリフかは,イベントストーリー「in the rain」で明らかとなった。それは後ほど解説しよう。

張られていた伏線
バンドストーリー第1章第4話
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 バンドストーリー第1章にて,紫夕が「みんながビックリするようなことが起こる」と言う。その後,誰かの名刺を落とした紫夕を玲司が見かけるシーンがあるが,これはバンドストーリー第3章で明らかとなる,新レーベル設立に関わるものだと思われる。

愛憎渦巻く二条兄弟
バンドストーリー第2章第2話
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 バンドストーリー第2章は,遥と奏の二条兄弟にスポットが当てられる。昔から人当たりがよく,楽器もうまい弟の奏と比べられ,すべて奪われてきたと感じている遥。実はもともとベースをやっていたが、奏もベースをするようになってギターに転向していた。さらに所属していたバンドでも,奏の活躍によって居場所をなくしてしまった過去がある。
 奏は遥の進む道を追いかけるだけでなく,意図的に孤独にさせようとしているが,本ストーリーを読むと,そこにはこじれてしまった愛情があることが分かる。

メンバーの好きな食べ物
バンドストーリー第3章第3話より
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 「阿闍梨餅」は,しっとりとした薄皮の中にたっぷりと餡が入った京都の銘菓だ。もちもちしたおいしさで,こちらは紫夕の好物らしい。そのほかのメンバーの好物は,遥が「天下一品」と季節のフレーバーアイス,奏も同じく「天下一品」。天下一品は京都発祥のラーメンのチェーン店で,過去の記事で解説している。唯臣は好物がとくに明かされておらず,玲司は鶴屋吉信の京観世。京観世とは,小倉羹を村雨(米の粉や糯米の粉などを加えて練り蒸し上げたもの)によって観世水の文様に巻いたものだ。高校生でこれを選ぶセンスはかなり渋いかもしれない。

美しき不協和音
バンドストーリー第3章第5話より
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 それぞれの心がバラバラとなったεpsilonΦの単独ライブ。ステージでは憎しみや怒り,喜びといった感情が渦巻いており圧倒される。個人的にこのシーンはεpsilonΦをよく表した場面だと思うのだが,ここで思い出したのが風神RIZING!のバンドストーリー第3章だ。

 5人が初めて強く結束したあのライブでは,大和がメンバーを俯瞰で見つつ,「これがフウライのライブなんだ」と胸を熱くする。その姿と今回の玲司はある意味で重なるが,奏でられる音やバンドの方向性がまったくといっていいほど正反対なのが非常に面白い。ぜひ,読み比べてみてほしい。

奏のあだ名シリーズ
バンドストーリー第4章第4話より
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 バンドストーリー第4章は再び,二条兄弟のターンへ。そこで新たに現れたのが,風神RIZING!の椿 大和である。彼と遥の関係は後ほど解説するが,ここで驚くのは奏がつけた大和のあだ名「バッキー」。奏はこれまでにも,Argonavisの的場航海を「わたるん」,Fantôme Irisの洲崎 遵を「ざっきゅん」,GYROAXIAの曙 涼を「ぼーの」,果ては旭 那由多を「なゆぴっぴ」と呼ぶなど,怖いもの知らずなところを見せている。

スカイフォックス・レコード
バンドストーリー第5章第3話より
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 バンドストーリー第3章で,紫夕が新レーベル「スカイフォックス・レコード」を立ち上げたと発表する。父親に対する反抗心からの行動であると思われたが,第5章で,「スカイフォックス・レコード」はかつて玲司の父が経営していた会社であり,紫夕の父によって潰されていたことが分かる。

いちばん恐ろしいのは……
バンドストーリー第5章第5話より
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 バンドストーリーではとくに目立った行動はしていないものの,イベントストーリーやキャラストーリーなどでその“恐ろしさ”の片鱗を見せていたのが唯臣だ。第5章で父親の言葉にショックを受ける紫夕に,追い打ちをかけるように話しかける場面は,唯臣の無垢さから生まれる恐ろしさがある。さすがの紫夕も動揺していた様子だ……。


εpsilonΦの楽曲ストーリーを語る


「世界は僕のおもちゃ箱」/宇治川 紫夕
楽曲:Play With You


―あらすじ―
 GYROAXIAとのツーマンライブのため,懸命にフライヤーを配るArgonavisの蓮と万浬に声をかける紫夕。何を考えるか分からない紫夕を怪しむ万浬だったが,そこにツーマンライブの中止の連絡が入る。


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 漫画や映画などで,超お金持ちの人物が庶民の食べ物を口にして「おいしい!」と感激するシーンをよく見かける。が,この話ではハンバーガーを一口食べて「僕の口に合わん」と言い放つ紫夕が非常に“らしい”なと思ってしまった。

 このときは,紫夕が万浬に「叱るのは大切な相手だから」と言われ,全然分からない,気持ち悪いと答える。その言葉だけで,これまでの紫夕がどんなふうに育てられてきたかが分かるような気がした。彼が人を煽ったり傷つけたりするのは,相手から憎しみという強い感情をぶつけられたいからなのかもしれない。それは,愛情と表裏一体のものだ。

「It’s Showtime!」/二条 奏
楽曲:Shake It L⓪VE!


―あらすじ―
 遥のためのパーティーを開いた奏は,以前所属していたバンドのメンバーを招待し,遥と引き合わせる。かつての辛い出来事を蒸し返されて激怒し,帰ろうとする遥。だが,奏は遥をさらに追い詰めていき……。


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 εpsilonΦはどのメンバーも精神的にキツい話が多いが,二条兄弟のそれもかなりキツい。追い詰められる側である遥に感情移入するととくにそう感じるが,奏はなぜこんなふうに遥を傷つけるのか? と考えていくと,実は奏が本心をほとんど表に出していないことに気づく。

 奏は,「兄を強く慕う弟」……と見せかけた「兄を陥れ,自分が優位に立ちたい弟」に見えるが,さらにそのずっと奥に,本当の願いというべきものを隠しているはずだ。その“核”が揺らいだとき,彼は新たな表情を見せるのかもしれない。

「Insanity of reason」/鞍馬唯臣
楽曲:End of reason


―あらすじ―
 公園で,フェリクスを探す燈に出会った唯臣。徹夜明けで倒れる燈を目の当たりにした唯臣は,なぜそこまでして努力をするのかと不思議に思う。そして,燈に飛べない鳥のイメージを重ねた唯臣はある行動に出る。


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 個人的に,εpsilonΦのメンバーは“激しい”人が多いと思う。それは憎しみであったり,怒りであったり,愛情であったりとさまざまな感情を抱えている印象からくる。しかし,そのなかでひときわ異彩を放っているのが唯臣である。

 彼はいい意味でも悪い意味でも「感情」が見えず,人間らしさのようなものがほとんどない。この話で,彼が鳩や燈にしようとした行為は非常にショッキングだった。唯臣という人を理解するにあたり,何か一つストーリーを選ぶとしたら,筆者はまずこれをおすすめしたい。

「Cynicaltic Drummer」/烏丸玲司
楽曲:Cynicaltic Fakestar


―あらすじ―
 紫夕にライブ用の新曲作りをやめると言われた玲司は,やむを得ず,自分にとって大切なある曲を利用して曲を作ることになった。完成した曲を聴いた紫夕は,元になった曲の楽譜を見せるよう命じるのだが……。


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 各メンバーについては後ほど語るが,個人的にεpsilonΦの中で最も“愛”と“憎”,他者への想いと自分へのそれという,相反する感情に振り回されているのが玲司だと思う。

 この話の中で,玲司は大切にしていた曲を,目的を遂行するために利用することになる。そうした自分自身への怒りをあらわにするシーンは,見ていて心が痛くなった。メンバーもドン引きする紫夕と玲司のやりとりは,正直かなり救いがない。ラストの玲司のセリフは希望をにじませるものだが,それさえも聞いていてつらい。

★εpsilonΦメンバーの登場するイベントストーリーを紹介★

 ここでは,リリースから2021年9月までに公開されたイベントストーリーのなかから,εpsilonΦのメンバーが登場するものを紹介する。

「桜散る春の歌遊び」(関連楽曲「千本桜」)
登場メンバー:全員
 春,桜咲くある場所で,サプライズの無観客ライブを行うεpsilonΦ。美しい風景と和風の衣装が素晴らしい。

「壊れた世界の花」(関連楽曲「ニルヴァーナ」Fantôme Iris)
登場メンバー:紫夕,唯臣
 Fantôme Irisのフェリクスと唯臣が対談する。この話は,先ほど紹介した唯臣の楽曲ストーリーのエピソードのその後を知れる。

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「Rockin' Lockin' on」(関連楽曲「ロキ」)
登場メンバー:全員
 GYROAXIAとεpsilonΦが対バンでぶつかりあうストーリー。とくに涼と奏の会話が見どころだ。

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「in the rain」(関連楽曲「unravel」)
登場メンバー:唯臣,玲司
 玲司と遵にスポットが当てられる。たびたびでてくる玲司の回想が詳しく語られている。

「keepout boyz」(関連楽曲「key plus words」)
登場メンバー:全員
 街なかで那由多を見かけた紫夕が,蓮とともに那由多を尾行(?)するストーリー。

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「Live Royal Fes 1st Round 本戦」(関連楽曲「AAside」)
登場メンバー:全員
 LRフェス本戦当日,5バンドがステージに上がる。

「ユメノアト」(関連楽曲「ユメノアト」)
登場メンバー:全員
 スポーツ飲料のCM曲を作ることになったεpsilonΦ。唯臣の“異常さ”が浮き彫りとなり,玲司の旧姓が判明する。

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「銀の新星<SILVER NOVA>」(関連楽曲「銀の新星<SILVER NOVA>」※Argonavis feat.二条 遥 from εpsilonΦ)
登場メンバー:遥,奏
 特撮好きコンビ(?),蓮と遥にスポットが当てられる。振り回される遥がほほ笑ましい,筆者個人的オススメストーリー。

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εpsilonΦ各メンバーを語る


 ここでは,すでに紹介したストーリーに加え,それぞれのキャラストーリーやイベントストーリーなどを交えながら,各メンバーについて語っていこう。合わせて,筆者の好きなセリフもピックアップしていきたい。

宇治川 紫夕
バンドストーリー第3章第4話より
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 紫夕は切れ味鋭い……というより鋭すぎるセリフが多数あるが,筆者がもっとも好きなのがこちら。流れを解説すると,単独ライブ開催前,紫夕はメンバーに言葉をかける。いい意味で言えば“鼓舞”だが,悪い意味で言えば“煽り”と言えるものだ。

 まずは遥に「遥,あんたそんなに奏が憎いんやったら,そのギターで刺しいや」と言い,奏には「奏,あんたは遥に刺されるんなら本望そうやなぁ?」と言う。唯臣には「新しいおもちゃ(蓮のこと)が壊れるとこ見たない?」と興味をわかせ,玲司には「僕のこと叩き潰してくれてもええのに」と言うのだ。

 この言葉には紫夕がなかなかあらわにしない,心の奥底にある願望――他人から激しい感情を向けられるのを欲していること――が表れているような気がしてしまう。

 「世界は僕のおもちゃ箱」などと言い,大人ですら手玉に取る紫夕。彼はまだ子どもと言っていい年齢だが,その心のなかには,さらに小さな彼自身が膝を抱えて座っているイメージがある。本当は愛されたい。でもそれが叶わないなら,憎しみでも何でもいいから誰かの熱がほしいとでも言うような。彼が玲司をそばに置くのは,「使えるから」「いじめるのが楽しいから」だけでなく,憎まれていることが分かっている=激しい感情を感じられるから,というのも理由の一つではないだろうか。

二条 遥
二条 奏楽曲ストーリー「It’s Showtime!」より
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 εpsilonΦのメンバーはそれぞれに“原動力”のようなものがあると思うが,遥のそれは欠けた心や孤独さなどの,「足りないものを埋めること」だと筆者は解釈している。この人を語るには,弟の奏の存在が不可欠だ。奏は人当たりがよく器用で才能があり,どちらかというと口下手で努力型の遥とは正反対である。そのため,過去に遥はたくさんの失望を味わってきたようだ。

 上記のセリフは奏に向けたものだが,「兄貴はいつも孤独だ」と答えた奏に対し,遥は「それでも俺は……」と何かを言いかける。彼は厭世的に見えてまだ何も諦めていないし,どうしようもなくなってしまった自分を,努力によって乗り越えようとしているように見えるのだ。

 遥の人間関係でもう一つ興味深いのは,大和と蓮である。大和は遥の苦悩を“音”から感じ取り,「音楽を楽しめ」と言う。それは遥がいつのまにか失っていた視点だったのだろう,その心に少しだけ光が差したように感じられた。

 一方,蓮はイベントストーリー「銀の新星<SILVER NOVA>」で無理やり遥をステージに上げ,一緒に特撮ソングを歌う。ネガティブな感情を消すことは難しいけれど,下を向いたままでは見えないものがある。遥にはこういう,無理やりにでも明るい場所に引っ張っていく誰かの存在が必要なのかな,とも思う。

二条 奏
バンドストーリー第2章第4話より
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 奏の楽曲ストーリーの紹介で,「彼は本当の欲望を奥深いところに隠している」と書いた。彼が「兄が大好きな弟」「兄を陥れたい弟」といった,何重もの仮面をかぶっているように見える人も多いだろう。では,彼はどうしてそこまで兄を孤独にしようとするのか。

 筆者が考えて出した解釈は,「自分が1人になりたくないから」というものだった。人当たりのいい奏は,学校でも遊びの場でも,きっといつも大勢の人に囲まれているのだろう。だが,友達や仲間の絆なんて脆いものだ。遥は間近で遥という孤独な存在を見てきていて,その血の繋がりだけは決して切れるものではない。奏にとっての「絶対に失われない絆」は,遥ただ1人だけなのかもしれない。

 イベントストーリー「Rockin' Lockin' on」で,奏は涼に「奏くんのベースは,奏くんの音じゃないよね」と言われ奮起する。これこそが前に述べた「彼が“核”に触れられ,揺らいだ瞬間」だ。結果として奏は「遥と繋がれる音,遥に寄り添える音……それが俺の音だ」という結論を出す。

 でも,その音を聴いた涼が「複雑だ」と感じるように,それは本当の意味で彼の音ではない。誰かを心の拠り所にするのではない,奏という1人の人間が出すのは,果たしてどのような音なのだろうか。

鞍馬唯臣
鞍馬唯臣キャラクターストーリー第2話「唯臣と万浬」より
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 ベタな言い方をすると,唯臣はかなり“ヤバい”人だ。どうしてそうなったのか理由は分からないが,彼は喜びや悲しみ,怒りといった感情がすっぽりと抜け落ちてしまっている。今の彼にあるのは好奇心のみで,自分が感情を持ち得ないからこそ,人のそれに強い興味を示す。

 唯臣がすることは何かに似ているな,と思っていたが,それが分かったのがイベントストーリー「ユメノアト」だった。ここでは,過去に唯臣が玲司にしたことが明らかとなる。それは,ただ「玲司の反応が見たい」だけの理由で,伏見家(玲司の生家)に起こった真実を玲司に告げるものだ。「だから僕は,玲司くんにひとつ小さな『影』を落としてみた」というセリフには,小さな子どもが蟻の巣に水を注ぐような無邪気さがあると感じられた。

 先ほど,唯臣を知るには彼の楽曲ストーリーがおすすめだと書いたが,その続きとも言えるイベントストーリー「壊れた世界の花」も注目に値する一つである。フェリクスから「『純潔』という花言葉のソメイヨシノは君を思わせる」と言われた唯臣は,「自分だけでは増えることもできず,自然界では淘汰されるべきいびつな植物。そういう意味での共感はなくもありません」と答える。

 なお,上記画像は,万浬から大家族について聞いたときの言葉だ。唯臣は,“恐ろしい”し“異常”だとは思うけれど,“怖い”とはあまり言いたくない。なぜなら彼は,「寂しい」という気持ちすら理解することができないのだから。

烏丸玲司
バンドストーリー第3章第5話より
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 先ほども書いたとおり,個人的にεpsilonΦのなかでは,玲司がいちばん“感情に振り回されている人”のような気がしている。まず,彼の“原動力”とでもいうべき存在である紫夕に対する想いが複雑すぎる。

 まだあまり詳しく語られてはいないが,玲司と宇治川家の間には過去に何かがあったことが分かっている。それに関連したハッキリとした目的が彼にはあるので,それを達成するためにはどんな犠牲も厭わない。玲司が紫夕から受ける数々の仕打ちを見ていると,そのストレスはさぞかしすごいものだろうと思う。

 だが一方で玲司は,紫夕が作る音楽を心の底から愛してやまないのだ。上記画像は演奏中のモノローグだが,あまりにも情熱的で,この人の持つ“秘めた情熱”がこちらに伝わってくるようで圧倒される。

 感情に振り回される玲司は,ある意味でとても人間的だ。その人間くささには,きっと多くの人が共感できるだろう。彼は弱者になるつもりなど毛頭なく,ただひたすら目指す先に向かってがむしゃらに生きている。血や汗や泥で汚れようがお構いなしだ。頂点に立てばすべてが報われると信じる彼は,その手が届くまで何度でも挑戦するに違いない。


εpsilonΦまとめ


 ここまでに何度か書いているが,εpsilonΦのメンバーにはそれぞれに自分を突き動かす“原動力”,行動原理とでもいうものがあると思う。紫夕なら父に対する憎しみ(と相反する愛情の渇望),遥は欠けた心,奏は兄という存在,唯臣は好奇心,玲司は復讐だ。
 ステージに上がる前,紫夕は全員の負の感情を引き出そうとする場面がある。エグいな……と思うが,ある意味で正しい行為のようにも思える。なぜならそうした強い感情は,ネガティブなものであれ,芸術を生み出すエネルギーになり得るからだ。

 本作におけるεpsilonΦの立ち位置は,「ヒール」に徹底されている。物語によくある“悪役の改心”や,読む人の同情を誘うような描写はほとんど見られれず,読んでいて,ここまですごいとヘイトがたまりすぎてしまうのでは? と心配になるほどだ。

 読者がまだ共感できるという意味で言えば,遥や玲司になるだろう。“まとも”に見える彼らの視点でストーリーを追うと,このバンドは実に狂って見える。あらためて思うが,これがまだほんの中学生や高校生の話であるところが驚きだ。

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 しかし,物語を別の視点で見たらどうなるだろうか。

 例えば,紫夕の目から見た世界は? ひょっとしたら,その景色のなかには愚かな人間と自分を憎む人間しかおらず,本当に失望したくなるようなものかもしれない。

 奏の目に映るのは,自分に背中を向ける兄の姿だ。本当は兄だけが心の拠り所であるのに,奏の心は本人が知らないうちに傷ついてやしないだろうか。

 感情がないように見える唯臣も,もしかしたらそれを忘れてしまっているだけかもしれない。

 歪んだレンズで見る世界でも,のぞく本人にとってはそれがすべてだ。間違っているかどうかなんて,他人には知り得ない。

画像集#036のサムネイル/「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第5回は,京都出身の中高生テクノポップバンド“εpsilonΦ”を語る
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画像集#038のサムネイル/「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第5回は,京都出身の中高生テクノポップバンド“εpsilonΦ”を語る

 今回,εpsilonΦに関連するストーリーを読み返していて強く思ったのは,全員が「苦しそうに見える」ということだった。たしかに,彼らを知ったばかりのころは「何てひどいことをするんだろう」と思っていたのは事実である。けれど,読めば読むほど,彼らを知れば知るほど,その痛みや苦しみが伝わってくるように思えてきた。

 何よりその音楽を聴けば,彼らが決して血の通わない人間ではないことは明白だ。それに,自分にとって本当に価値のないものならば,彼らは音楽をやめるはずだ。ひまつぶしや娯楽なら,ほかに手段はいくらでもあるのだから。

 εpsilonΦの音楽は,無邪気な笑い声のようでもあり,叫びや泣き声のように聴こえることもある。彼らの紡ぐ物語や音には,いつも大きく感情を揺さぶられてしまう。もしかしたらこれこそが,“弄ばれる”ということなのかもしれない。

画像集#039のサムネイル/「ダブエス」ストーリー紹介&解説連載。第5回は,京都出身の中高生テクノポップバンド“εpsilonΦ”を語る

 第6回記事もお楽しみに!

■玉尾たまお(ライター)■

 エンタメ系フリーライター。音楽・ゲーム業界などでの社会人生活を経て,作品やキャラの素晴らしさを文章で伝えるためにライターへ転向。現在4Gamerにて「あんさんぶるスターズ!!」のストーリー解説記事を連載中。このほか追いかけ中のタイトルは「アルゴナビス」「スタマイ」「ツイステ」「ヒプマイ」「パラライ」「刀剣乱舞」「A3!」「まほやく」など。

Twitter(@tamao_writer)


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