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「Fit Boxing」プレイヤー必見! “中の人”に聞く,開発秘話と正しい運動法。プロによるレクチャー動画もあり
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印刷2019/03/16 00:00

インタビュー

「Fit Boxing」プレイヤー必見! “中の人”に聞く,開発秘話と正しい運動法。プロによるレクチャー動画もあり

 Joy-Conを両手に握り,ボクシングスタイルのエクササイズをするイマジニアのNintendo Switch用ソフト「Fit Boxing」。Switchで気軽にボクシングスタイルの運動が楽しめることが話題となり,2018年12月20日の発売以降,ジワジワと売れ続けているタイトルだ。

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 本作のトレーニングメニューは,一般社団法人フィットボクシングジャパンが推奨するボクシングプログラム「フィットボクシング」をベースとしており,ジャブにフック,ストレートといったパンチに加え,ダッキングやブロック,ウィービングといったさまざまな運動が楽しめる。
 また,早見沙織さんや田中敦子さん,大塚明夫さんといった有名声優陣が演じる6人のインストラクターが“個人指導”してくれ,コツコツと継続していけば彼/彼女らの着せ替え衣装も手に入る……といった,モチベーションを維持する仕掛けが用意されているのもポイントだ。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Fit Boxing」プレイヤー必見! “中の人”に聞く,開発秘話と正しい運動法。プロによるレクチャー動画もあり

 発売前の露出が少なかったにも関わらず,2018年12月20日の発売以降,ニンテンドーeショップのランキングで上位をキープするなど隠れた話題作となっている本作だが,手がけるのは,かつてイマジニアの子会社であるロケットカンパニーでフィットネス系ソフトを開発し続けてきたメンバーである(ロケットカンパニー自体は2016年にイマジニアに吸収合併)。
 ロケットカンパニーは,「シェイプボクシング Wiiでエンジョイダイエット!」(2008年),「シェイプボクシング2 Wiiでエンジョイダイエット!」(2010年),「ビリーズブートキャンプ Wiiでエンジョイダイエット!」(2011年)といった作品群を発売してきたが,1つの会社が継続してフィットネス系ソフトを作ることは珍しい。「Fit Boxing」のヒットがあるのは,こうしたノウハウの積み重ねが少なからず影響を及ぼしているのは間違いないだろう。
 今回4Gamerはそんなイマジニアを訪問し,インタビューを実施。そもそもイマジニア(ロケットカンパニー)がエクササイズソフトを作ることになったきっかけや「Fit Boxing」の開発エピソード,効果的なエクササイズ方法などを聞いた。


プロが正しい動きをレクチャー! 「Fit boxing」指南動画


 さて,インタビューの前に本作のエクササイズメニューや,インストラクターのモーションキャプチャなどを行った一般社団法人フィットボクシングジャパン 代表理事 武藤直樹氏によるレクチャー動画を掲載しよう。すべての根幹となる「基本姿勢」を始め,「ダッキング」や「ウィービング」など,ボクシング初心者にはあまり馴染みのない動きを解説してもらった。動きのコツがいまいちつかめないという人は参考にしてほしい。

画像集 No.022のサムネイル画像 / 「Fit Boxing」プレイヤー必見! “中の人”に聞く,開発秘話と正しい運動法。プロによるレクチャー動画もあり

■基本姿勢


ポイント
  • 体幹の軸を意識して,腹筋を引き上げて胸骨と鼻筋までを真っ直ぐにする
  • 体幹を軸に体を回旋させる。左足を前にした構えの場合,後ろ側の右足で床を蹴って体を回し,腰を正面に向ける
  • 基本の動きはストレート,フック,アッパーすべて同じ

■ダッキング/ウィービング


ダッキングのポイント
  • 目線は常に正面を意識する
  • 股関節から曲げていく。膝関節だけ動かしたり,腰から動かない
  • 左右のダッキングでは体を動かし過ぎない。足の軸に体を乗せる
  • 相手のジャブやストレートを避けるイメージ

ウィービングのポイント
  • 初動はダッキングの沈む動作,上がるときに体の向きを変える
  • 頭や体を大きく動かさない。体幹を軸にして向きを変えるだけ
  • 相手のフックを避けるイメージで

■ステップ(ステップインジャブ)/ボディジャブ


ステップ(ステップインジャブ)のポイント
  • 常に進行方向にある足を先に出す(前に行くなら前足,後ろに行くなら後ろ足)
  • ステップ後は必ず基本の姿勢に戻ることを意識する(足がくっつきすぎたり,バラバラになったりしない)
  • ステップからのパンチはしっかりと後ろ足を着地させてから打つ

ボディジャブのポイント
  • その場で腰を落とすのではなく,一歩踏み込んで腰を落としてパンチする
  • パンチの方向はやや下,重心は体の前低めに持ってくる

■そのほか

  • コンビネーションパンチで前後のテンポがずれた場合は,その場で膝を動かしてタイミングを調節する
  • パンチを打つときは,肘を伸ばしきらない
  • パンチを止めるポイントで意識して力を入れるとトレーニング効果が上がる



ボクシングとしての“正しい動き”より,運動する“気持ち良さ”を優先


 ここからは本作のゲーム制作に携わったイマジニア モバイルメディア事業本部 社長室の橋田寛幸氏と,フィットボクシングジャパンの武藤直樹氏へのインタビューをお届けしよう。イマジニアのフィットネス系ソフトへの取り組みや効果的なエクササイズの仕方を聞くことができた。

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イマジニア モバイルメディア事業本部 社長室
橋田寛幸
「Fit Boxing」の開発やプロモーション全体に携わる
画像集 No.004のサムネイル画像 / 「Fit Boxing」プレイヤー必見! “中の人”に聞く,開発秘話と正しい運動法。プロによるレクチャー動画もあり
一般社団法人フィットボクシングジャパン 代表理事
武藤直樹
協栄ボクシングジムで勤務後,フィットボクシングジャパンを設立。現在はジム,フィットネスクラブなどで活動中

4Gamer:
 よろしくお願いします。まずは二人が「Fit Boxing」へどう関わっているのかを教えてください。

橋田寛幸氏(以下,橋田氏):
 イマジニアの橋田です。「Fit Boxing」では,開発とプロモーション全体に関わっています。

武藤直樹氏(以下,武藤氏):
 フィットボクシングジャパンの武藤です。トレーニングプログラムの組み立てと監修,インストラクターのモーションキャプチャとセリフのタイミングを担当しました。

4Gamer:
 セリフ自体ではなく,タイミングをですか。

武藤氏:
 はい。トレーニングプログラムを作るうえで,プレイヤーさんに声を掛けるタイミングを指示しています。

4Gamer:
 なるほど。インストラクターが励ましてくれるタイミングがジムのトレーニングみたいだなと思っていましたが,そうした秘密があったわけですね。
 さて,イマジニアのエクササイズソフトの歴史は,2008年にロケットカンパニーから発売された「シェイプボクシング Wiiでエンジョイダイエット!」までさかのぼりますが,そもそもフィットネスをテーマにしたゲームを作ることになったきっかけは何だったのでしょう。

橋田氏:
 ちょうど任天堂さんの「Wii Fit」がヒットした時期で,それをきっかけにホームフィットネスとゲームを結ぶ流れが生まれていました。そのなかで「エンターテイメント性があり,もっと激しいエクササイズソフトを提供できないか」と思い,ボクシング系エクササイズのシェイプボクシングをベースにした「シェイプボクシング Wiiでエンジョイダイエット!」を作ったんです。

4Gamer:
 運動と一口に言ってもさまざまな種目がありますが,そこからボクシングを選び,リズムゲームにした理由を教えてください。

橋田氏:
 シェイプボクシング自体が音楽に合わせてボクシングをするというエクササイズだったので,リズムゲームとはすごく親和性が高かったんです。おかげさまで,シェイプボクシングシリーズは全世界80万本を売り上げるなど好評でした。

4Gamer:
 では,Nintendo Switchで「Fit Boxing」を出そうと思われた理由を教えてください。

橋田氏:
 Joy-Conの遊び方を見たときに,ボクシングエクササイズとの相性が良さそうだなと言う考えが浮かびました。また,サイズが小さく,Wiiリモコンよりも手の中に握り込めるようになっていたのもポイントです。
 「シェイプボクシング2」のヒットから8年が経ちましたが,運動やダイエットは普遍的なテーマなので,きっとニーズはあるだろうと思いました。

4Gamer:
 Joy-Conのサイズ感は良いですよね。開発において苦労されたポイントはどこですか。

橋田氏:
 パンチの判定をセンサーでどこまで認識させるかという点には非常に気を使いました。この判定は厳しすぎてもゆるすぎても爽快感が損なわれるので,開発チームも最後まで苦労して調整したポイントです。

4Gamer:
 判定を厳密にし過ぎないというのは興味深いです。パンチの種類を間違えてもタイミングさえ合っていれば割と認識されますし,極端な話,寝転んでJoy-Conを振っているだけでも認識されますよね。あの判定は意図的に緩くしているんですか。

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橋田氏:
 はい。「Fit Boxing」では,ジャブやストレート,フック,アッパーなど,さまざまなパンチを打ち分けます。こうした違いを厳密にチェックし過ぎると,プレイヤーが正しくプレイしているつもりでも,なかなか認識されずにストレスフルなゲームになってしまうんです。

4Gamer:
 判定を細かくして厳しくするのではなく,「ちゃんとサボらずにパンチを打ち分けてくれるだろう」「手本通りにやってくれるだろう」というプレイヤーの良心に委ねているように感じました。

橋田氏:
 はい。遊び方はプレイヤーそれぞれですが,「Fit Boxing」はエクササイズを目的としたソフトなので,結局マジメにプレイしないと効果はありません。なので,プレイヤーに委ねています。

4Gamer:
 確かに「最小の労力で高得点を出す」というよりは,「体重を落とす」とか「体を鍛える」といったことがプレイヤーの目的ですからね。

橋田氏:
 現在のJoy-Conでも,パンチの違いを今よりも厳密に認識させることはできます。しかし,常に正しいフォームでプレイするというのは難度が高く,楽しくプレイすることとはかけ離れていってしまうんです。

4Gamer:
 プレイヤーが正確だと思ったフォームでも,ボクシングとして見ればそうでない場合がある。そこの判定を厳しくし過ぎると,プレイヤーがやる気をなくしてしまうかもしれないと。

橋田氏:
 そうですね。こうした調整は難しかったですし,かなり時間を使いました。厳密にしすぎない,緩くしすぎないという状態で,いかに気持ちよくエクササイズを楽しめるかに力点を置いて調整を行った結果,今のバランスに落ち着きました。

4Gamer:
 発売後,プレイヤーからどのような反響がありましたか。

橋田氏:
 皆さんから「思ったよりも体に負荷がかかってきつい,でも楽しく続けられる」と感謝のお声を多くいただいています。12月の頭に配信した体験版もおかげさまで好評で,特に年明けから大きく売り上げを伸ばしています。

4Gamer:
 「思っていたよりきつい」というのは確かに個人的にも共感できるところがあります。実際,ダッキングなどが絡んでくると汗だくになります。プレイしている年齢層はどのあたりが中心なのでしょうか。

橋田氏:
 年齢性別問わず,幅広い層の方に楽しんでいただいていますが,メインは30代から40代の方です。なかにはご家族そろってお楽しみいただけているようです。

4Gamer:
 体のことを考え始める年齢層の人が利用しているわけですね。

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ゲーム内容もシェイプアップ。余分なものが削ぎ落とされたゲームデザイン


4Gamer:
 「Fit boxing」は,これまでのタイトルからさまざまな要素が削ぎ落とされ,ゲームとしてかなりシンプルになっている印象を受けます。
 「シェイプボクシング」にはバラエティ豊かなミニゲームがありましたし,「シェイプボクシング2」にはコンボを決めるとステージがディスコ調になる「パーティタイム」など凝った演出がありました。普通ゲームの続編を作るうえでは,新要素を“盛って”いくことが多いですが,なぜ削って“シェイプアップ”していったのでしょうか。

左が「シェイプボクシング2」,右が「Fit Boxing」のプレイ画面。背景やパンチアイコンなど「Fit Boxing」はかなりスッキリした印象
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橋田氏:
 そうですね……確かにおっしゃる通り,今までのタイトルと比べると作りはシンプルになっていますが,開発側としては「削ってシェイプアップするぞ!」と特別意識していたわけではありませんでした。
 企画を立てるうえで,過去のシリーズをプレイした方の声を集約していくと,エクササイズ目的で使用されていることが明確だったので,そこを突き詰めていった結果,比較的シンプルな内容になりました。あとは,本作が世界市場を意識していたことも理由にあると思います。

4Gamer:
 パンチを示すアイコンも,「シェイプボクシング」ではマンガ風の絵だったのが,本作ではピクトグラム風になっていたり,使用されている曲が邦楽から洋楽になっていたりします。これらも世界を意識しているからということでしょうか。

橋田氏:
 はい。特に楽曲は世界市場を意識しつつ,幅広い年代に合わせたノリの良い楽曲を候補にあげていきました。

本作の収録曲。洋楽の有名タイトルがズラリ
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4Gamer:
 インストラクターのデザインについても,旧作はリアルに寄せた絵柄でしたが,フォトリアル調とアニメ風の中間的なバランスになっていますね。

橋田氏:
 そうですね。世界展開も視野にいれていたので、多種多様な国籍と年齢性別を問わず楽しんでいただけるものを示した目指した結果,現在の形になっています。

4Gamer:
 インストラクターを演じる声優も幅広くかつ豪華な布陣になっていますね。

本作のインストラクターたち。国内版グローバル版ともに日本語と英語音声の切り替えが可能なのもポイント
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橋田氏:
 キャスティングに関しては,幅広い世代にアピールすることを考えつつ,キャラクターデザインから声優さんのイメージを当てはめていきました。
 特にベルナルドのキャラクターデザインを初めて見た瞬間に「このキャラクターの声優は大塚明夫さんだ!」と思ったんですよね。「スティーヴン・セガールに教わっているような感じになるといいな」と決め打ちでオファーしました(笑)。
 キャラクターがよくしゃべるので「個人レッスンをしてもらっているようだ」というお声もいただいています。

4Gamer:
 基本的にどのインストラクターも優しくて“ほめて伸ばす”タイプの性格ですよね。いわゆる鬼教官のようなキツイ性格のキャラクターは案としてなかったのでしょうか。

橋田氏:
 当初は,厳しく当たってくるインストラクターを入れようという話もありましたが,最終的には気持ちよくプレイしていただくことを重視しました。田中敦子さんが声を担当されているラウラに,厳しく指導されたいな……と思うことはありますね(笑)。

4Gamer:
 ボイスを追加するようなアップデートを期待してしまいます(笑)。
 “遊んでいくと新しいレッスンメニューが加わる”“連続でのレッスン日数をカウントする”“新しい衣装が増える”など,モチベーションの持続についても配慮されている印象を受けるのですが。

橋田氏:
 そうですね。楽しんで継続していただけるように色々な目標を散りばめています。
 また,モチベーションもそうですが,いきなりレッスンが難しくなって,脱落してしまうことがないように,プレイヤーの実力に合わせてレッスンが開放されていくような仕組みにしています。


20代から80代まで。幅広い年代層が楽しめる「Fit Boxing」


4Gamer:
 さて,ここからは武藤さんにお話を伺っていきます。まず運動プログラムとしてのフィットボクシングとはどういうものなのでしょうか。

武藤氏:
 ボクシングトレーニングを安全かつ効果的に行うことを目的とした本格派ボクシングプログラムです。

4Gamer:
 武藤さんがフィットネス系ソフトに関わったのはいつからでしょうか。

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武藤氏:
 「シェイプボクシング Wiiでエンジョイダイエット!」からですね。イマジニアさん(ロケットカンパニー)とは10年ほど前からのお付き合いになります。「Wii Fit」からホームフィットネスのブームが起こり,そこで“ボクシングをテーマとしたフィットネスソフトを出したい”というオファーをいただき,エクササイズメニューの制作などに携わっています。

4Gamer:
 武藤さんの教室にゲームを遊んだ人が来られたことはありますか。

武藤氏:
 前作のときはそうした例は見ませんでしたが,今回の「Fit Boxing」ではゲームをきっかけに受講に来られた方がおられます。

4Gamer:
 教室にはどういった年齢層の方が多いのでしょうか。

武藤氏:
 ゲームソフトと同じで30〜40代が多く,男女比は半々くらいです。ダイエットしたい主婦から,ボクシングの技術を本格的に習得されたい男性まで,目的もさまざまですね。

4Gamer:
 教室でのエクササイズと聞くと女性の方が多いイメージがありますが,男性もかなりいるんですね。

武藤氏:
 おっしゃる通り,普通スタジオプログラムは男性が少ないんですが,ボクシングのエクササイズは例外なんですよ。あと午前中ですと,80歳の方が来られることもありますね。

4Gamer:
 80歳! お元気ですね。やはり,運動不足解消や体力強化のために来ておられるのでしょうか。

武藤氏:
 それももちろんあるのですが,お話を聞くと「運動でいかに負荷をかけるか」というより「決められた時間に場所に来ること自体に意味があるんだ」「皆と同じメニューをこなせなくても,その場にいることに意義がある」と考えておられるそうなんです。

4Gamer:
 外出や,世代を越えた触れあいのきっかけになっているということなんでしょうか。

武藤氏:
 そうですね。また「ボクシングのエクササイズを受けること自体が誇りやステータスにもなっているから,あまり年寄り扱いして欲しくない」とも言われます。今でこそ珍しい例ですけど,これから高齢化に従ってこういう方々も増えてくるのではないかと思っています。

4Gamer:
 お年寄りがフィットボクシングをしても大丈夫なのでしょうか。

武藤氏:
 まったく問題ないですよ。さすがに高齢者の方は,早く体を動かすというより,やれる範囲でメニューをこなしていただく形になりますし,内容も安全性を重視したものになりますが。ただ,どちらかというと,高齢者の方のほうが安心して見ていられます。40代くらいの方が一番心配ですね。

4Gamer:
 若い方が体力はあるはずなのになぜでしょうか。

武藤氏:
 なまじ若くて「俺はまだまだ動けるぜ!」と自信を持たれているだけに,こちらが指示していないような動きをされるんですよ。とにかくスピードだけを追求したり,マンガっぽくひねりを入れたり(笑)。もちろん,こちらからも注意させていただくんですが。

4Gamer:
 「Fit Boxing」を始めたばかりの自分がまさにそんな感じでしたね。耳が痛いです。メニュー作りについて,スタジオプログラムとゲームではメニューの作り方などは違うのでしょうか。

武藤氏:
 基本的には同じです。ゲームで新しいメニューを増やすタイミングなども,アドバイスさせていただきました。運動による負荷を示す「強度」と,コンビネーションの難しさの尺度である「難易度」という考え方があります。

4Gamer:
 それぞれ別の尺度なんですか。

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武藤氏:
 はい。例えば,打ち分けるパンチの種類が少ない「難易度」の低いコンビネーションでも,リズムや休ませ方を変えれば「強度」を高くすることができます。同じパンチの組み合わせでもここを変えることで,だいぶ「強度」が変わってきます。

4Gamer:
 パンチや休みの組み合わせ方が大事なんですね。

武藤氏:
 はい。「この動きはしないよな」というコンビネーションや流行でない動きを洗い出し,現在の考え方に基づくものに変えていきました。

4Gamer:
 ボクシングの技術や動き方にも流行があるんですか。

武藤氏:
 これに関しては,自分の感覚的なものが大きいですね。動作の繋ぎ方や,カウントの休み方などは,昔と考え方が変わっているところがありますから。

4Gamer:
 ゲームでも,「防御して攻撃,パンチを避けて反撃」といった言葉が出てきますが,ボクシングとしての実戦性は意識されているのでしょうか。

武藤氏:
 実戦性を意識したものとそうでないものの両方が混ざっています。例えばウィービングは実戦だともっと体を深く沈めて腰を丸めるんですが,フィットボクシングでは安全性を重視し,動きを変えています。一方でダッキングの相手の懐に入っていき,パンチを返す動きは,実戦ですぐに使っていけますよ。

4Gamer:
 なるほど。「強度」と「難易度」は別と言うお話がありましたが,受講者のモチベーションを上げるにはどちらをアップさせるのが有効なのでしょうか。

武藤氏:
 どちらというものでもないですね。シンプルな動きで「強度」が高いのが好きと言う方,難しくて負荷がかかるのが好きという方の両方がおられます。ただ,あまりに「難易度」が高すぎるとコンビネーションを覚えるのに精一杯になってしまって,体を使えないことが多いです。言い換えれば,“自分がどこの筋肉を使っているかということを意識する余裕がなくなる”ということなんです。

4Gamer:
 メニューの通りにパンチを打つことと,うまく体を使うことは別のテーマなんですね。

武藤氏:
 そうです。パンチを打つにしても腕だけを動かすのではなく,体幹や胸,背中を意識すれば,運動がより効果的になりますから。

4Gamer:
 筋トレですと,動かすところに手を当てると効果が上がると言われていますね。

武藤氏:
 レッスンでも,意識の高い人は自分で体を触りながら筋肉が“動けているかどうか”をチェックしていますね。

4Gamer:
 ゲーム側では,新しい衣装やメニューが増えることでモチベーションを維持していますが,スタジオプログラムだとどうなっているのでしょうか。

武藤氏:
 フィットネスのグループは,褒めて伸ばすことが大事ですね。「こうした部分がダメです」というより「このようにしたら,もっと良くなるんじゃないでしょうか」という言い方をします。
 もっと本格的にボクシングの技術を学びたい方もおられますので,ミット打ちや縄跳びなどボクシングジムでやるような運動をするメニューもご用意しています。この段階になると人間性が見えてくるので,褒めて伸ばすべきか,厳しくした方が伸びるタイプなのかを判断し,より効果的に指導しています。

4Gamer:
 褒めて伸ばす手法はゲームにも生かされていると思います。こうしたノウハウのおかげで,楽しくエクササイズできるわけですね。

武藤氏:
 安全に安心してエクササイズを楽しんでいただく取り組みを行い,そこで生徒さんが自分自身を認められるようになる。フィットボクシングは“自分自身を好きになれる場”を提供していると言ってもいいかもしれません。そして,「この教室が楽しいから,時間を作って来ているんだよ」と言っていただけることが,インストラクターである自分自身のやりがいや生きがいにもなっているんですよ。

4Gamer:
 運動を通して自分を好きになれ,結果として体も健康になれる。そうした生徒の姿から,インストラクターも元気をもらうということなんですね。

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「継続は力なり」。栄養と休息を取り,無理なく続けていこう


4Gamer:
 さて,ここからは「Fit Boxing」でエクササイズするうえでのアドバイスをお聞かせください。巷では「Fit Boxing」にハマるあまり,靴や重りといった用具を買う人までいるようなのですが,ゲームのプログラムに物足りなくなったら,重りやダンベルなどを持って負荷を上げても問題ないのでしょうか。

武藤氏:
 私たちもダンベルを持ってボクシングトレーニングをすることもありますし,大丈夫です。ただ,最初はあまり無茶をせず,軽いところから始められるといいと思います。

4Gamer:
 筋肉を作っていくうえでどのように休んでいけばいいかを,専門家の視点から教えてください。

武藤氏:
 筋肉痛になったときは,無理せずに休んでください。ただ,休むというと何もせずに体を動かさないというイメージが一般的ですが,実は軽く体を動かしたほうが調子が良くなることもあります。動けないぐらい体が痛い場合は別ですが,散歩やプールでのウォーキングといった“積極的休養”で適度に運動するといいでしょう。痛くないところを動かすトレーニングをしてもいいですね。

4Gamer:
 ゲームだとご褒美があるので,筋肉痛でもついつい毎日頑張ってしまいがちだったので,これからは休むようにします(笑)。
 栄養についてはどうでしょうか。食事のタイミングは運動前,運動後,どちらが効果的なのかもお聞かせください。

武藤氏:
 食事の時間については諸説ありますが,運動する前に食べてしまうと,血液が胃に行ってしまいます。なので,個人的には運動した直後に食事をするのがいいと考えてます。あとは水をたくさん飲んで,乳酸や老廃物を流してしまうのも大事ですね。そもそも筋膜は水でできていますので。
 運動前であれば,食事というよりサプリメントを取るくらいがいいと思います。私の場合,朝起きたときは水だけ飲んですぐに走りに行きます。体のグリコーゲンをすべて枯渇させてその後にしっかりと食べるということをしていますね。

4Gamer:
 運動の後にはどういったものを食べると良いのでしょう。

武藤氏:
 やはりタンパク質ですね。昔はタンパク質も植物性の方が良いと言われていましたが,今は肉の油も含めて体に良いと言う見解が一般的ですので,肉,魚,大豆なんでもいいです。あとは,野菜を食べて疲れを取る抗酸化物質を取り入れるのも大事ですね。次の日の動きが全然変わってきますから。
 また,糖質も玄米やそばで取るといいでしょう。少し前は糖質を制限するダイエットが流行しましたが,インスリンが急激に分泌される白米や小麦粉より,血糖値の上昇が穏やかな玄米やそばが良いとされています。

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4Gamer:
 なるほど。貴重なエクササイズのアドバイスありがとうございました。
 さて,ゲームに関してですが,今後何かアップデートの予定はあるのでしょうか。SNSでは,「追加インストラクターや追加曲を有料DLCで配信してほしい」「アパートやマンション住まいだとステップ系のメニューが難しいのでデイリーからステップ系を外す機能がほしい」などの意見が見られますが。

橋田氏:
 今のところ具体的に何かお話しできるということはありませんが,さまざまな可能性を検討しております。

4Gamer:
 個人的には,1日が切り替わる時間を設定できると便利だなと思います。今は切り替わり時間は0時で固定ですが,夜にお仕事をされているなどさまざまなライフスタイルの方がおられますので。あと,液晶ディスプレイの遅延を調整できるようなコンフィグも欲しいなと。

橋田氏:
 住宅事情からステップ系のメニューを……というお話は多くいただいていますね。そのほかの意見も開発全体へフィードバックしておきます。

4Gamer:
 今後の展開に期待しています。では,最後にインタビューを通じて「Fit Boxing」に興味を持った方と,プレイヤーにメッセージをお願いします。

橋田氏:
 このインタビューで「Fit Boxing」に興味を持たれた方には,ぜひ無料の体験版を試してみてほしいです。プレイしていただくと,きっと効果が実感できると思います。
 そして,すでにプレイされている方には,実際のフィットボクシングのレッスンに参加していただくのもおすすめです。エクササイズのポイントを教えてもらうだけで,感じ方や効果が全然違ってきます。

武藤氏:
 「Fit Boxing」は,“ボクシング的なエクササイズ”ではなく,本格的なボクシング技術を気軽に楽しんでいただけるゲームです。既に始められている方は,ご自分のフォームを鏡や動画で客観的に見るのがオススメです。また,同じメニューでも力を入れたり,スピードを出したりといった取り組みをしてみてください。筋肉の動きなどが変わって意識が全然違ってきますから。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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 体感ゲームブームから始まり,Wiiでムーブメントを起こしたエクササイズ系ゲーム。「Fit Boxing」は,どこでも持ち歩けるNintendo Switch用ソフトということでさらに遊びやすくなった印象がある。ちなみに筆者は,冷蔵庫の上に設置した電子レンジの前に本体を置きトレーニングしている(ここに置くとちょうど画面が目線の高さになり,レンジの扉の反射で自分の姿も見えるので,フォームチェックもできるのだ)。こうした場所を選ばない使い方ができるのも,携帯機としての側面があるNintendo Switchならではと言えるだろう。アップデートやDLCなど,今後の「Fit Boxing」の展開に期待したいところだ。

「Fit Boxing」公式サイト

フィットボクシングジャパン公式サイト

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