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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第5回。メインストーリー第四章「大戦争」&第五章「一番星」を語る
「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」のストーリーを紹介する連載企画第の第5回は,2020年6月に完結したメインストーリーより第四章「大戦争」と第五章「一番星」を取り上げる。第一章から第五章までで全226話,今回紹介する後半の第四章と第五章だけでも137話という大ボリュームな物語が展開された。メインストーリーは「あんスタ!!」で綴られるすべての物語の起点となるので,できるだけ多くのチェックポイントをおさえながら解説し,筆者の感想や考察とともに紹介していきたい。なお,本稿では詳細なネタバレは控えているが,できるだけ各ストーリーの読了後にチェックするのがおすすめだ。
メインストーリー前半を紹介(第一章〜第三章)
ついに新章がスタートした「あんさんぶるスターズ!!」を今から始める人も安心! 知っているとストーリーの理解が深まるポイントを徹底解説
2020年3月15日に新章へ突入したHappy Elementsのアイドル育成プロデュースゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」。これから本作に触れる人や,お休みしていた人に向けて,新しくなった「あんスタ!!」のゲーム概要や,新章として綴られるメインストーリーを解説しよう。
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ストーリーピックアップ
メインストーリー第四章「大戦争」
――あらすじ――
【盂蘭盆会】から一夜明け,各事務所の代表者が参加する「サミット」が行われた。一方,【盂蘭盆会】への出演を無事こなしたALKALOIDは,Crazy:Bの天城燐音から特殊な方式のドリフェス【アイドルロワイヤル】で手を組まないかと提案される。【アイドルロワイヤル】本番の日になり,ALKALOIDを始めとしたほとんどのユニットに共演を断られたCrazy:Bは,ある過激な方法でES全体に挑戦状を叩きつけるのだった。<全37話/シナリオ:日日日>
◆ストーリーのここをチェック!
ここでは主に,「!」のストーリーを読んでいると分かる小ネタやポイントをピックアップし,解説していく。
・「もう二度と過たぬように,もう誰も喪わぬために」
サミットで朔間 零が言うこのセリフは,「!」のストーリーでも何度か出てくる“名セリフ”と言っていい1つだろう。この言葉は零(「!」の【スカウト!悪魔の館】や【灼熱!南国景色とサマーバカンス】など)のほか,天祥院英智も「!」の【ノエル*天使たちのスターライトフェスティバル】で言っており,ほかのアイドルも,このままのセリフでなくとも「(大切なものを)二度と失わない」という意味の誓いをよく口にしている。
・“使い魔”葵兄弟について
→第五章にて解説
・P機関の佐賀美 陣と椚 章臣,氷鷹誠矢
サミットにおける監査,顧問を兼ねるP機関には,夢ノ咲学院の教師であり元アイドルの佐賀美 陣と椚 章臣,氷鷹北斗の父にして現役アイドルの氷鷹誠矢が所属しているという説明があった。ここで陣が言う「せんせえが褒めてあげよう」というセリフは,「!」のメインストーリー第一部終盤の「せんせえは満足です。よくできました」という言葉を思い出させる。また,章臣の「愚図は嫌いですよ」というセリフは,同じく「!」のメインストーリー第一部にそっくりそのまま登場していた。なお,章臣は元モデルでもあり,第五章で遊木 真が章臣のことを「椚先輩」と言いかけるのはそれが理由である。
・朔間 零が感じる蓮巳敬人への負い目
朔間 零が蓮巳敬人に言う「過去におぬしの願いを拒絶した負い目」とは,過去の夢ノ咲学院(昨年のTrickstarやその前年の天祥院英智の革命よりさらに前)で敬人が起こそうとしていた革命計画のことを指しており,このときの話は「!」の【追憶*それぞれのクロスロード】で読める。2人は幼馴染であり,敬人が零に「坊主」と呼ばれている姿も見られる。
・皇帝の「右手」
蓮巳敬人は昨年までの夢ノ咲学院で,副会長として生徒会長の天祥院英智を補佐していた。英智の“左手”である日々樹 渉が,「!」のストーリーで敬人を何度か“右手(のひと)”と呼んでいたエピソードがある。
・夢ノ咲学院に間諜を放っていた七種 茨
前回の記事で解説したとおり,七種 茨はかなり前から夢ノ咲学院を探っていたことが判明している(「!」の【スカウト!ギャング】ほか)。また,サミットのシーンで自身の生い立ちにまつわるモノローグが出てくるが,彼の出自は(どこまで本当かは不明であるものの)「!」の【奇跡☆決勝戦のウインターライブ】で語られている。さらに今回のストーリーには「自分,最低野郎で本当に良かったです……♪」というモノローグもあるが,これは「!」の【軌跡★電撃戦のオータムライブ】のステージシーンに登場するセリフでもある。
・リバースライブとワンダーゲーム
夢ノ咲出身以外のアイドルは特殊な対バン形式などに弱い,という例として上記2つのライブの名前が登場する。リバースライブ(「!」の【Saga*ぶつかり合うリバースライブ】)とは,佐賀美 陣を筆頭とした夢ノ咲学院の臨時ユニットRain-bowsと氷鷹誠矢が率いるLilithとの対決で,ワンダーゲーム(「!」の【駆け引き◆ワンダーゲーム】)は,巴 日和や乱 凪砂が夢ノ咲学院生だったころに開催されなかった同名のライブを,凪砂と日和が再提案し開催したものである。
・部室に出入りする神崎颯馬&鬼龍紅郎の衣装作り
神崎颯馬が部室の水槽を手入れしている,という話が出てくるのだが,颯馬が所属している海洋生物部は深海奏汰と羽風 薫が卒業してしまったため,現在は颯馬が水槽の管理を任されていると思われる。また,鬼龍紅郎は天城燐音の言葉をきっかけに衣装作りに執念を燃やしている。ちなみに,紅郎は夢ノ咲学院時代に自分のユニットだけでなく,周りのユニット衣装まで手掛けていた。筆者的にかなり印象深かったのは流星隊の【スーパーノヴァ】衣装だ(素材が特殊そうで……)。
・南雲鉄虎の「う〜みゅ」とは……?
南雲鉄虎の口癖「う〜みゅ」。以前確認してみたのだが,おそらく「!」の【スカウト!ヒーローショウ】が初出ではないかと思われる。「う〜みゅ」はこのほかにも「!」の名ストーリー【爆誕☆五色のスーパーノヴァ】や【バトンタッチ!涙と絆の返礼祭】【灼熱☆海辺のビーチマッチ】をはじめとするハロウィンやホリデーパーティーなどの季節イベント,男らしさを追求した【スカウト!ケダモノ】など,昨年は実に多くの「う〜みゅ」が溢れていたので,気になる人はぜひチェックを。
メインストーリー第五章「一番星」
――あらすじ――
【アイドルロワイヤル】は大きな波紋を呼び,Crazy:Bの行動はESのユニットやファンに多大な悪影響を及ぼす結果となった。「サミット」では,ESが総力を上げて開催する一大イベント【MDM】におけるCrazy:Bの処置について話し合われる。そして,【MDM】前夜祭でステージに上がった天城燐音は観客の攻撃を受け,姿を消す。翌日の【MDM】本番,ユニットそれぞれがステージをくり広げるなか,ALKALOIDの天城一彩はある行動を起こすことを決意する……。<全100話/シナリオ:日日日>
◆ストーリーのここをチェック!
・「とりあえず解散しなさい」ネタ
天祥院英智が場を和ませようとしたものの,1人で思い出し笑いをしてしまった結果に終わったこのセリフは,「!」のメインストーリー第一部でTrickstarに向けて放った言葉である。
・プロデューサーのごほうび“金平糖”
ALKALOIDのリハーサルでプロデューサーが渡した金平糖は,昨年度の夢ノ咲学院で“転校生”としてTrickstarの4人と出会い,共に行動していく中で縁ができたアイテムだ(金平糖は氷鷹北斗の好物で,プロデューサーは甘いものの差し入れとして“金平糖シュークリーム”を作ったことがある)。疲れたときには糖分がよく効くが,カロリーを気にするアイドルたちにとってはちょうどいいお菓子なのかもしれない。
・【DDD】での監禁事件
「あんスタ!!」プレイヤーなら周知の事実となった感のある【DDD】の監禁事件は,「!」のメインストーリー第一部にて,瀬名 泉が遊木 真を“監禁”したできごとである。本章での桜河こはくをめぐる騒動は,監禁した側である朱桜 司の「対象を保護した」という主張や食事を与える行為などが共通している。なお,【DDD】で泉が真を監禁する直前の心境は,「!」の【追憶*モノクロのチェックメイト】で明かされている。
・「デュエル」と「ジャッジメント」について
ストーリー中では“周知の事実”として説明が最小限に留められていた本項目について,ご存じの人は多いと思うが少しだけ補足を。「デュエル」と「ジャッジメント」はいずれもKnightsが得意としていたドリフェスの形式の一種で,「デュエル」は昨年の夢ノ咲学院のドリフェスランクで言えば「B1」,非公式の野良試合で,Knightsの伝統的ライブである(詳細は「!」の【ジャッジ!白と黒のデュエル】参照)。一方の「ジャッジメント」とは,【反逆!王の騎行】で描かれたような“内部粛清”のためのデュエルである。
◆ストーリーのここをチェック! 〜ユニット編〜
ここまでの小ネタ解説とはストーリーの登場順が前後するが,ここからは第五章に出てくる,筆者の印象に残った各ユニットのセリフを取り上げつつ,小ネタや見どころポイントなどを紹介する。
・「そんなふうに,簡単に割り切れますか?」/Switch
【盂蘭盆会】ではリストラ寸前のアイドルたちを救うために動いたSwitch。メンバーの春川 宙は,アイドルストーリーで語られているとおり,物や人の“色”が見える共感覚の持ち主であり,そのせいか物事の本質を突く発言も多い。また,宙は本ストーリーで「ししょ〜(逆先夏目)」や「せんぱい(青葉つむぎ)」が天祥院英智に対して「微妙な色を醸し出す」と言うが,これは一昨年の夢ノ咲学院の英智の革命に2人が関わっていたことからくる感情の動きを表しているのだと思われる。とはいえ,宙いわく3人は元々の“色”は似ているそうで,夏目と英智に関しては「!」でのSwitchの初イベント【追憶*集いし三人の魔法使い】ですでに「そっくりだ」と言っている。
余談だが,本ストーリーで宙が言う「かべのなかにいる!」というセリフは,RPGの古典「Wizardry(ウィザードリィ)」に登場する「*いしのなかにいる*」(罠などで石壁の中に飛ばされた状態)というメッセージが元ネタではないかと思われる。
・「あぁ,『何者でもない俺たち』かぁ」/Trickstar
「!」での革命者であり,物語の主人公ポジションだったTrickstarは,本ストーリーでは“良き先輩”としての姿を見せてくれている。彼らがALKALOIDに言う「何者でもない俺たち」というキーワードはこれまでにも何度か出てきているが,時系列として最も古いものは,彼らが夢ノ咲学院1年生のときのストーリーである「!」の【追憶*春待ち桜と出会いの夜】におけるセリフだろう。4人は出会いからアイドルの頂点に登るまでをすさまじいスピードで駆け抜けたが,今年度になっても周囲を驚かせてやまないのは,【新星団★輝きのBIGBANG!】でも分かるとおり。
ところで【MDM】本番において,Trickstarがいろいろなアイドルたちから「なぜか(ステージに)いる」とやたら言われていたのが個人的にツボだった。さすが狂言回し。
・「ぼくは常に輝きたいの!」/Eden
Trickstarが,「!」での革命を終えて次に立ち向かったライバル的存在がEdenだ。Edenは今年度からES所属となり,夢ノ咲学院出身のアイドルと共にESを盛り上げていく立場となった。かつての夢ノ咲学院でのできごともそうだが,言ってみればEdenにはアイドル業界の歴史に古くから因縁のあるメンバーが揃っている。紆余曲折の人生を送りつつも “今”と“未来”に照準をあわせ,常に舞台の真ん中で輝こうとするEdenは,やはり圧倒的に強くて頼もしい。なお,前回の記事で解説した【軋轢◆内なるコンクエスト】は時期が春のため,このメインストーリーよりも前の話になる。
・「この火を,消してはいけない」/fine
【MDM】本番,fineのステージで見られる天祥院英智のモノローグが胸に響いた人は多いのではないだろうか。「!」の【追憶*集いし三人の魔法使い】を読むと,彼の五奇人(日々樹 渉)との対決と,“旧”fineの巴 日和と乱 凪砂(と青葉つむぎ)との決別のエピソードを確認できるので,モノローグの意味がより深く理解できるはずだ。英智の革命関連については「!」の【追憶*モノクロのチェックメイト】や【駆け引き◆ワンダーゲーム】もぜひおさえておきたい。
また,姫宮桃李や伏見弓弦が加入した現在のメンバー構成で最初に行ったライブは【誉れの旗*栄光のフラワーフェス】だが,入院中のため参加できなかった英智の心情は,この春に行われた【春雷*謳歌のテンペスト】で読める(詳しくはこちら)。
・「実は,やっぱりけっこう寂しくはある……」/MaM
【盂蘭盆会】に出演するALKALOIDを応援し,【MDM】前夜祭でも彼らを助けた三毛縞 斑=MaMは唯一のソロユニットだ。彼の特殊な出自や“流星パープル”の話については,「!」の【追憶*流星の篝火】などで知ることができる。また,斑はプロデューサーとは幼少期からの知り合いであると言っていたのだが当のプロデューサーはあまり覚えておらず,その理由については「!」の【躍進!夜明けを告げる維新ライブ】で読める。斑はよく「1人で活動するのが向いている」と口にしていたが,フィーチャースカウト(解説記事)しかり,新章になって以前より本音が出てきているようにも感じられる。
・「憎悪や痛みは我慢できても,愛はどうかな? 耐えられる?」/2wink
第四章で葵 ひなた,ゆうたの兄弟と朔間 零との関係について触れられたが,昨年度の彼らは軽音楽部の先輩後輩の関係であった。また「!」では,ひなたとゆうたは以前から父親との関係をこじらせており,決して恵まれた家庭環境ではなかったことも明らかとなっている。本章で出てくる「勝手に消えようとする兄と納得できない弟」というセリフのとおり,昨年度の彼らは兄弟間でも上手くいかないことが多かったため,零は2人のためにある企画を決行した(「!」の【招福*鬼と兄弟の節分祭】参照)。2winkについては,本連載の次回記事にて再び解説する予定だ。
・「大事なものを永遠に喪ってから悔やんでも遅いのだよ」/Valkyrie
斎宮 宗がパリへ渡ったため,離ればなれとなったValkyrieの久しぶりの本番である。筆者的には,本ストーリーで宗が腹を立てていたCrazy:Bのあるメンバーに対し,優雅ささえ感じるほどの毅然とした態度で対峙していたところにしびれてしまった。そして,「大事なものを永遠に〜」というこの言葉は,幼馴染の鬼龍紅郎の母親との別れや,かつてValkyrieで共に活動していた仁兎なずなとの別れを思い出させる。なお,「他人を間近からジロジロ見てはいけない」という宗の言葉に対して影片みかが「お師さんも同じ」と返すが,その例としては,「!」の斎宮 宗キャラクターストーリー「傀儡の帝王」でのRa*bitsメンバーとの対面シーンなどが挙げられるだろう。
・「ほとんど誰にも見てもらえないし応援してもらえない,望んでもらえない――っていうのは寂しいですから」/Ra*bits
昨年度のRa*bitsは1年生が3人+3年生が1人という平均年齢が若いユニットだったが,新章で1年生たちは2年生になり,本ストーリーにおける主人公ポジションであるALKALOIDの天城一彩の先輩として,頼もしい姿を見せてくれている。【MDM】前半戦の際に紫之 創が言ったこのセリフからは,「!」のメインストーリー第一部で,ほとんど誰もいない講堂で歌い,終わったあとに涙を流したというエピソードを思い出す。同様に,仁兎なずなの過去は「いちど自分で決めたことなら,意地でも曲げんな」というセリフにも現れていると感じられる。彼らはそうした経験を乗り越え,強くてたくましい兎になったのだ。
・「もうオペラは始まってる!」/Knights
夢ノ咲学院の強豪ユニットから,ESのビッグ3に数えられる存在になったKnights。彼らもまたはじめから順風満帆だったわけではなく,むしろ血まみれになるような戦いの歴史を経てきたことは,多くの人が知るとおりだ。彼らの十八番である「デュエル」と「ジャッジメント」については上記で解説したが,実はもう1つ「レクイエム」という“決闘”があり,これは「!」の【レクイエム*誓いの剣と返礼祭】で語られている。ところで,【MDM】ステージでの「(ある人物は)おれたちが預かった!」という月永レオのセリフは,「!」の【対決!華麗なる怪盗VS探偵団】の“怪盗”ぶりを思い出してちょっとワクワクしてしまった(※【怪盗VS探偵団】にレオは登場しない)。
・「そうして我らは,全力で生きておる」/UNDEAD
まずは小ネタ解説から。大神晃牙が羽風 薫に言う「ファンをお花とかリリカルなもんに喩える」は,プロデューサー(昨年の“転校生”)やファンに対しての「たんぽぽちゃん」という呼び名のことである(新章になってほとんど出てきていないかも?)。
また,薫の「ライブステージの経営」と,朔間 零が「子供の頃からなんでもできる」という話は,「!」の【追憶*それぞれのクロスロード】を,乙狩アドニスの家族に関する話は「!」の【灼熱!南国景色とサマーバカンス】を参照されたい。筆者は本ストーリーの【MDM】本番ステージで,零が繰り返し「生きる」という言葉を口にしていたところに胸を打たれた。「生きる」という言葉は,死者でも不死者でもなく実に人間らしいと感じる。
・「……あのとき,立ち上がれなかった俺なんだ」/流星隊
本ストーリーの前半でショッキングな展開が多かった流星隊は,第五章で彼ららしい方法で活躍を見せてくれた。お約束の名乗り口上は微妙にアレンジの加わる場合もあり,一番バリエーション(?)豊富なのが高峯 翠だろう。今回披露しているのが正式な口上で,これは昨年の3年生卒業時期,「!」の【バトンタッチ!涙と絆の返礼祭】のときに初めてきちんと口にしたものである。さりげなく登場した「高峯バリケード」なる必殺技は,「!」の衣更真緒キャラクターストーリー「バスケ部の日常」で守沢千秋が名付けたものだ。
また,深海奏汰の実家の話や守沢千秋の天城燐音に対する「おまえは,間違ってしまった俺」という言葉の意味は,「!」の【追憶*流星の篝火】にヒントがある。ちなみに,【交差する/モーターショウ】は,この【MDM】が終わったあと(夏休み明け)のストーリーである。
・「血よりも濃い絆はあるがな」/紅月
舞台裏での天祥院英智と蓮巳敬人の会話で出てきた「血よりも濃い絆」という言葉は,まさにこの2人が互いのユニットを引っさげて“対決”した「!」の【決別!思い出と喧嘩祭】などで描かれた“紅月の強い絆”を表すものだ。「!」のメインストーリー第一部の紅月は,生徒会側のユニットであり,最初にTrickstarが戦いを挑んだ相手であった(英智のセリフ「(Crazy:Bが)『紅月』を狙ったのは,『Trickstar』の革命を知るものたちへのメッセージのような気もするけど」もこれを指している)。本ストーリーでは紅月にとって苦しい展開も多かったが,ただ攻撃をしてきた相手に恨みをぶつけるのではなく,多数のステージをこなして圧倒的な存在感を見せつけるところに,紅月らしい正々堂々とした男気を感じる。
<メインストーリー中に行われたライブまとめ>
最後に,メインストーリー第一章〜第五章で描かれたライブを時系列順にまとめてみた。詳しい内容や時期,出演者や勝敗などの結果はぜひストーリーを読んでみてほしい。
- Trickstarのゲリラライブ
- UNDEAD VS. Crazy:B →Crazy:Bデビュー
- 盂蘭盆会 →Switch主催,ALKALOIDデビュー
- 紅月 VS. Crazy:B →盂蘭盆会と同日
- アイドルロワイヤル →Crazy:Bが企画した特殊なドリフェス。当日でも出演は可能
- MDM前夜祭 →8月末に開催。オープニングではfineやEdenが登場
- MDM →前半後半に分かれ,前半で良い成績を収めれば後半に出場できる。ほとんどのユニットが参加していると思われる
◆ストーリー所感
筆者は本ストーリーを読んで,この5年の間に夢ノ咲学院でくり広げられてきた物語を思い出すことが多々あった。それらはここまでの解説で“読んでおくとより面白くなる”過去ストーリーとして紹介してきたが,いつか出てきた言葉を借りれば,アイドルたちはまさに「過去という地層の上に立っている」ということなのだろう。彼らがなぜこう言ったのか,こう動いたのかという理由は,過去の物語の中にたくさんのヒントがあるように思う。
読んでいて感じたことはもう1つある。それは,プレイヤー(読者=自分自身)が物語の中の観客やファンとリンクする感覚だ。「!」のメインストーリーでは,プレイヤーのほとんどが,夢ノ咲学院のアイドルたちがどういう人物なのかを知らない状態だった。だが今作では,おそらくはアイドルたちのことをよく把握している人が大多数だろう。話を読んでいると,物語の中の観客――“自分がよく知っているアイドルを応援しているファン”と自分自身が重なり,彼らを応援する気持ちに寄り添えるのだ。アイドルたちがくり広げる悲喜劇に対し,同じ物語のなかにいるファンが感じる想いは,そのまま読み手である私たちの気持ちとほぼ同じになった瞬間も多かったのではないだろうか。
第五章の【MDM】本番,Knightsは“オペラ”,流星隊は“ヒーローショウ”そのものと言っていいようなステージを見せる。オペラもヒーローショウも,舞台上に確固たる筋書きと演者たちの役割があり,物語を結末へと導くものだ。大勢のファンが見守る前で,ALKALOIDやCrazy:Bに役割と正当性を与え,話を大きく動かす役割を担ったのが,Knightsと流星隊だったのはある意味とても納得できる。
ストーリーを読んでいると,ステージで対決者に“蹴られた”大神晃牙は「!」での【竜王戦】を思い出すし,懐疑的な目を向ける観客と向かい合った天城一彩の姿は【SS】での明星スバルに重なる。「!」で積み重ねてきたアイドルたち自身の経験や,我々プレイヤーが見てきた彼らの姿がベースにあることで,物語はより深みを増したと言えるのではないだろうか。
本ストーリーでは,「正しさとは何か?」という問いかけが幾度もされてきた。ある有名な漫画のセリフでは,「どっちも自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」と語られており,子供のころにこれを読んだ筆者は非常に衝撃を受けた。この言葉は,ある選択において「どちらが正しいか」という結論の手前にある(当事者たちの)事実でもある。正しいものと間違ったもの,善と悪,本物と偽物……新章になった「あんスタ!!」には「ほんものの“アイドル”になる」というキャッチコピーがつけられているが,彼らが「正しい」と思うものを自分自身で選択し,「ほんもの」を見つけていく物語の始まりが,このメインストーリーなのではないかと感じた。
ここで紡がれる物語は,広い世界や無限の宇宙のなかではほんの小さな世界のできごとなのかもしれない。けれど,たった20年前後の自分の人生を変えてしまうくらいの激動の中で,彼らはもがき,悩み,懸命に生きている。そして,ふととなりに並ぶ仲間の顔を見て,そこにある“愛”を見つけるのだ。それこそが,「あんさんぶるスターズ!!」という物語に胸を打たれる理由の1つなのかもしれない。
本稿では新ユニットであるALKALOIDとCrazy:Bについての説明は極力控えたが,彼らが「ほんもの」なのかどうかはぜひ,ストーリーを読んでその目で確かめてみてほしい。筆者はストーリーを読み終えて,彼らの見つけたもの,たどりついた答えに目頭が熱くなり,それと同時に自然と“笑顔”になっていたような気がする。
第6回記事もお楽しみに!
■たまお(ライター)■
エンタメ系フリーライター。音楽・ゲーム業界などでの社会人生活を経て,作品やキャラの素晴らしさを文章で伝えるためにライターへ転向。現在4Gamerにて「あんさんぶるスターズ!!」のストーリー解説記事を連載中。このほか追いかけ中のタイトルは「アルゴナビス」「スタマイ」「ツイステ」「ヒプマイ」「パラライ」「刀剣乱舞」「A3!」「まほやく」など。
◆Twitter(@tamao_writer)
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