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[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に
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印刷2022/03/24 21:28

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[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に

Blizzard Entertainmentのケヴィン・トディスコ氏
画像集#002のサムネイル/[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に
 Blizzard Entertainmentでエンジニアスペシャリストを務めるケヴィン・トディスコ(Kevin Todisco)氏が,「ディアブロ II リザレクテッド」PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch)についての講演を行い,「ディアブロ II」を現代に甦らせるための驚きの奮闘記を紹介した。

 2021年9月にリリースされた「ディアブロ II リザレクテッド」は,2000年6月に発売された「Diablo II」のリマスター版だ。ゲーム史に残る傑作の1つに数えられる「Diablo II」は,すでに存在しない開発スタジオBlizzard Northで,ほぼ1人のプログラマーによってコードが書かれており,ドキュメントの多くが散逸したり,乱雑に倉庫にしまわれているため,長らく「リマスター版の制作は不可能だ」と考えられてきたという。

画像集#019のサムネイル/[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に

「ディアブロ II リザレクテッド」公式サイト


 そんな「Diablo II」の再生に挑んだのはニューヨーク州のVicarious Visionsだ。2005年にActivisionの傘下に入ったスタジオで,これまで「トニー・ホーク プロ・スケーター 1+2」「クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり!」「ギターヒーロー」などの移植やリマスター作業にあたってきた経験豊富なスタッフを擁している。「ディアブロ II リザレクテッド」に向けてBlizzard Entertainmentに所属を移されたのは,そうした彼らのノウハウを活かすための措置だったようだ。

 「Resurrecting a Classic: Bringing 'Diablo II' into the 3rd Dimension」(名作の蘇生: Diablo IIを3Dにする過程)と題されたセッションでまず語られたのは,オリジナル版が2Dで,リマスター版が3Dであることだった。しかし,まったく新しいゲームエンジンですべてを作り直すと,細かい部分でゲームバランスが変化することが避けられないため,彼らは古いゲームエンジンをベースに,まず地形を3D化。キャラクターやオブジェクトを3Dに置き換えつつ,照明効果やエフェクトを加えていくという,考えただけでも面倒で手の込んだプロセスを採用した。

画像集#003のサムネイル/[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に
オリジナル版では,まず地形タイルが順番にレンダリングされ,その上にオブジェクトが配置されていくという仕組みだった
画像集#004のサムネイル/[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に
こうした細かい計算式を作るのは,3Dデータを作るために必要なプロセスだ
 オリジナル版のキャラクターは2Dのスプライトで表現され,3Dで作られたオブジェクトもパーツ単位で2Dにするという手法が使われており,3D化するにあたって,トディスコ氏のチームは,それぞれのオブジェクトや距離感を掴む作業を開始したという。

 「Diablo II」の地形は,縦80ピクセル,横160ピクセルの菱形のタイルを敷き詰めて3D風の世界を作っており,彼らは仮想空間のカメラが30°下を向いていることを突き止める。160ピクセルを10フィートとすると,オリジナル版の800×600の解像度にうまく収まるので,いろいろと計算した結果,カメラから地形までの距離は883.88フィートであると仮定した。
 キャラクターなどのオブジェクトの高さは計算の結果,24ピクセル=0.577ヤードであり,1つのタイルの幅は上に書いたように10フィートだ。ヤードとフィートが出てくるのは,オリジナル版では単位としてヤードが使われていたと思われるのに対して,リマスター版ではフィートに統一しているからだという。

 こうした計算を行う必要があったのは,オリジナルの2Dデータを「トランスレータ」に通して,必要な3Dデータを引き出すためだ。トランスレーターには,さらに気象の状態やアニメーション,ユニットのリスポーンといった,さまざまな情報が追加されるのだが,データ記述言語としては,「JSON」 (JavaScript Object Notation)を採用した。軽量で使いやすく,広く使われていることが選んだ理由で,Vicarious Visionsでは過去にも使った経験があったという。
 もっとも,最終的に7500以上ものファイルが存在することになり,JSONファイルをロードするだけでも一苦労だったという。トディスコ氏は,「もし,もう一度同じプロジェクトをやれと言われたら,たぶんJSONは使わないだろう」と語った。

オリジナル版では階段も2Dだったため,すべてを3Dに作り直す必要があった
画像集#008のサムネイル/[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に
画像集#009のサムネイル/[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に

 さらにトディスコ氏らを悩ませたのが,レベル(マップ)だった。オリジナル版のレベルは「プリセット」で構成されており,プリセットとは固定された小さなセクションのこと。住居やカテドラル,洞窟のくぼんだ場所,ボスのいるアリーナなど,2416種という途方もない数のプリセットがあったという。これらのプリセットをアーティスト達がオリジナル版そっくりに作り直し,タイルの横幅を考慮しながら並べていくという気の長い作業が行われた。3Dになったことで,オブジェクトの相対位置が明確になり,高さを正しく調整することも可能になったとのことだ。

2416種もあったプリセットも,リマスターのためにすべて3Dに作り替えたという
画像集#014のサムネイル/[GDC 2022]「Diablo II」はどのように“ディアブロ II リザレクテッド”に生まれ変わったのか。グラフィックスから語るセッションが実施に

 こうしたさまざまな困難を乗り越えて実現したリマスター版だが,トディスコ氏が「短いコードを加えるだけで,大きな効果があった」とするのが,レガシーモードへのトグル機能だ。キー1つ(PC版では[G]キー)を押すだけで,オリジナル版の画面に戻るという便利な機能だが,これがあることで「ディアブロ II リザレクテッド」がオリジナルのゲームエンジンで動いていることを,改めて多くのファンに認識させたのではないかと述べて,セッションを終了した。

トディスコ氏が書いた短いコード。この「レガシートグル」は結果として,リマスター版の特徴を多くのファンにアピールすることになった
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オリジナル版とリマスター版で変わらないのが,このアルケーン・サンクチュアリの一部。3Dに見えるが2Dというトリッキーなマップはそのまま残されている
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