レビュー
RTX 4080との性能差は? RTX 4090にはどの程度迫れる?
NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition
Palit GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC
今回,RTX 4080 SUPER搭載カードとして,NVIDIA純正の「GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition」(以下,RTX 4080 SUPER FE)と,Palit Microsystems製「GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC」(以下,Palit 4080 SUPER OC)の2枚を試用する機会を得たので,その実力を検証したい。
AD103のフルスペック版を採用。メモリクロックは23GHz相当に向上
まずは,RTX 4080 SUPERがどのようなGPUなのかを説明しておこう。
RTX 4080 SUPERは,GPUコアとしてRTX 4080と同じAda Lovelaceアーキテクチャの「AD103」を採用している。TSMCがNVIDIA向けにカスタマイズした「4N」プロセスで製造されている点や,146mm2のダイサイズに,約189億個のトランジスタを内包している点に違いはない。
AD103コアは,GPCを7基有するが,そのうち1基はSMを減らした8基構成だ。それゆえ,AD103コアのフルスペックは,SMの総数が12×6+8で80基となり,CUDA Coreの総数は128×80で10240基となる。しかし,RTX 4080では歩留まりを向上させるためか,残り6基のGPCのうち2基で,SMを2基無効化した10基となっていた。それゆえ,RTX 4080のSMの総数は,12×4+10×2+8で76基となり,CUDA Core数も128×76で9728基となるわけだ。それに対して,RTX 4080 SUPERは,AD103のフルスペック版となっており,RTX 4080比でCUDA Core数は約5%増強された計算になる。
また,ほかのGeForce RTX 40シリーズと同じく,RT Coreは第3世代に進化しており,その数はSM数と同じ80基だ。公称スループットは121 RT-TFLOPSで,これはRTX 4080の113 RT-TFLOPSを約7%上回っている。一方,第4世代のTensor Coreは320基を有しており,その公称スループットは836 AI TOPS。こちらも,RTX 4080の780 AI TOPSを約7%上回る。
もちろん,NVIDIA独自の超解像技術「DLSS 3.5」に対応し,フレーム生成をサポートしている点は,ほかのAda Lovelace世代のGPUと同じだ。
後述するテスト環境において,負荷をかけた状態のコアクロックを「GPU-Z」(Version 2.57.0)で追ってみたところ,RTX 4080 SUPER FEでは2730MHzまで,Palit 4080 SUPER OCでは2760MHzまで,それぞれ上昇しているのを確認した。同様のテストで,RTX 4080は2775MHzまで上がっていたのと比べると,回路規模が大きくなった影響か,動作クロックの上がり幅が若干減少している。
RTX 4080 SUPERは,グラフィックスメモリに容量16GBのGDDRXを組み合わせており,メモリインタフェースは256bitと,RTX 4080と変わっていない。ただし,RTX 4080 SUPERのメモリクロックは23GHz相当と,RTX 4080の22.4GHz相当から引き上げられているので,それゆえメモリバス帯域幅は736GB/sとなり,RTX 4080の716.8GB/sから約3%だが向上している。しかし,上位のRTX 4090は,メモリバス帯域幅が1008GB/sもあるので,その差はまったく埋まっていない。
大容量L2キャッシュの搭載もRTX 4080と同様で,その容量はまったく同じ64MBだ。
RTX 4080 SUPERのTGP(Total Graphics Power)は320Wで,これはRTX 4080と同じだ。NVIDIAいわく,「ゲームプレイ時の平均的な消費電力(Average Gaming Power,AGP)は246Wで,定格出力750Wの電源ユニットの使用を推奨する」とのこと。750W出力の電源ユニットを推奨している点は,RTX 4080と同じだが,RTX 4080のAGPは251Wだったので,5W減っていることになる。
なお,PCI Express(以下,PCIe)補助電源コネクタは,12VHPWRに対応した16ピンを1基備えるが,RTX 4080 SUPER FEには3系統の8ピンを1本の16ピンに束ねる変換ケーブルが付属していた。
そんなRTX 4080 SUPERの主なスペックを,RTX 4090とRTX 4080とともにまとめたものが表1となる。
RTX 4080 SUPER FEのカードをチェック
それでは,RTX 4080 SUPER FEとPalit 4080 SUPER OCのカードそのものについて,それぞれ見ていこう。
RTX 4080 SUPER FEのカード長は,実測で約305mm(※突起部除く)で,RTX 4080 Founders Edition(以下,RTX 4080 FE)とほぼ同じサイズだ。
ただ,フレームの色がブラックになり,裏面のGPU名ロゴもブラックになったことで,全体的にかなりシックな印象を受ける。
重量は実測約2120gと,結構重い点もRTX 4080 FEとほぼ同じだ。
GPUクーラーは,3スロット占有タイプで,かなり厚みがある。2基のファンは,周囲のバリアリングとブレードが一体成型されたタイプで,GPUコアの負荷が軽い,いわゆるアイドル時にファンの回転を停止する機能が用意されている。
マザーボードに装着すると,垂直方向に32mmほどブラケットからはみ出る点も同じで,
カードを横から見る限り,基板自体は205mm程度と短めで,ファンを避けるように窪んだ形状もRTX 4080 FEと変わらないようだ。
Palit 4080 SUPER OCのカードをチェック
続いて,Palit 4080 SUPER OCの実物を見ていこう。
なお,Palitが公開している設定ツール「ThunderMaster」(Version 4.14)を使用すると,ブーストクロックを−1000〜+1000MHzの範囲で1MHz刻みに増減できる。また,メモリクロックも−2000〜+6000MHz相当で2MHz刻み(アプリ内表記では−1000〜+3000MHzで1MHz刻み)に変更可能だ。
そのほかにもThunderMasterでは,GPUコアの電圧を1%刻みで最大+100%,つまり2倍にまで増やせる設定も用意されている。
カード長は,実測で約326mm(※突起部除く)で,マザーボードに装着すると,垂直方向にブラケットから21mmほどはみ出る。先のRTX 4080 SUPER FEより10mmほど背の高さを抑えた分,20mmほど長くなった感じだ。
なお,重量は実測約1613gで,RTX 4080 SUPER FEより500gも軽くなっている。
また,アイドル時にファンの回転を停止する「0-dBテクニック」という機能も備える。
なお,ThunderMasterでは,ファンの回転数を30〜100%の間で1%刻みに固定できるほか,GPUの温度と回転数の関係を示したファンカーブから,任意の温度における回転数を,1150〜3600rpmの範囲で指定することも可能だ。ちなみにThunderMasterでは,3基のファンのうち,両端の2基と中央の1基を,個別に設定できるようになっている。
カードを横からみると,基板自体は170mmほどしかないようで,GPUクーラーがカード後方に大きくはみ出し,エアーが前面から裏面へと抜ける構造になっている。
GPUの直上には,幅広の銅製ベースが装着され,そこからカード後方に6本,前方に2本の6mm径のヒートパイプが伸びる構造だ。なお,放熱フィンは「Y FORMULA FINS」と呼ばれるもので,エアデフレクターとして作用することで,空気抵抗を減らし,動作音の低減に一役買っている。
Palitによると,電源部にはDr.MOSを採用しているほか,GPUクーラーと基板の間には「反重力プレート」と称する金属製フレームが挿入されており,カードの剛性を保っている。
カード側面にはLEDが搭載されており,ThunderMasterから制御が可能だ。
補助電源コネクタは16ピンを1基用意しているが,付属の変換ケーブルは2系統の8ピンを16ピンに束ねるもので,RTX 4080 SUPER FEとは異なる。
映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4×3,HDMI 2.1×1という構成で,RTX 4080 SUPER FEとまったく同じだ。
2枚のカードでテストを実施
それでは,RTX 4080 SUPERのテスト環境に話を移そう。
今回,比較対象には,RTX 4090とRTX 4080を用意した。既存のRTX 4080からどのように性能が変化して,上位モデルであるRTX 4090との差はどの程度縮まったかを見ようというわけである。
また,RTX 4080 SUPERは,RTX 4080 SUPER FEとPalit 4080 SUPER OCの両方でテストを実施。Palit 4080 SUPER OCのテストにより,RTX 4080 SUPERのクロックアップモデルが,リファレンス仕様に対してどれぐらいアドバンテージがあるのかを検証したい。以降,文中とグラフ中ともに,RTX 4080 SUPER FEをRTX 4080 SUPERと表記して区別する。
使用したグラフィックスドライバは「GeForce 551.22 Driver」で,これはNVIDIAがRTX 4080 SUPERのレビュワー向けに配布したものだ。原稿執筆時点での一般向け最新バージョンは「GeForce 551.23 Driver」なので,ほぼ同等の内容で,RTX 4080 SUPER対応を果たしたものと捉えてよさそうだ。それ以外のテスト環境は表2のとおり。
CPU | Core i9-14900K(P-core 定格クロック3.2GHz, |
---|---|
マザーボード | ASRock Z790 Steel Legend Wi-Fi |
メインメモリ | Corsair VENGEANCE RGB DDR5 |
グラフィックスカード | GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition (グラフィックスメモリ容量16GB) |
Palit Microsystems GeForce RTX 4080 SUPER GamingPro OC (GeForce RTX 4080 SUPER, |
|
GeForce RTX 4080 Founders Edition (グラフィックスメモリ容量16GB) |
|
GeForce RTX 4090 Founders Edition (グラフィックスメモリ容量24GB) |
|
ストレージ | CFD CDDS-M2M1TEG1VNE (NVMe,1TB) |
電源ユニット | CoolerMaster V1200 Platinum(定格1200W) |
OS | Windows 11 Pro 22H2 |
チップセットドライバ | Intel チップセットINFユーティリティ |
グラフィックスドライバ | GeForce:GeForce |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション28に準拠。NVIDIAは,RTX 4080 SUPERについて,3840×2160ドットでのゲームプレイを想定しているため,テスト解像度には1920×1080ドットと2560×1440ドット,それに3840×2160ドットの3つを選択している。
また,レイトレーシング性能を確認するため,「3DMark」(Version 2.28.8217)において「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」を実施。さらに,DLSS適用時の性能もチェックしたいので,「DLSS feature test」を解像度3840×2160ドットと2560×1440ドットで,DLSS modeは「Quality」で実行する。
そのほかには,「Fortnite」では,レギュレーションにある「TILTED TOWERS BENCHMARK」がアップデートにより使用できなくなっため,バトルロイヤルのマップでプレザント・ピアッツァから一定のルートを歩き,その間のフレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)で測定するというレギュレーション26の方法を踏襲している。
RTX 4080とほぼ同程度の性能。オーバークロックでの伸びは今ひとつ
それでは3DMarkの結果から順に見ていこう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
RTX 4080 SUPERは,RTX 4080からスコアが1〜2%程度向上しているものの,RTX 4090との差は依然として7〜39%程度もあり,とくに高解像度での開きは圧倒的だ。なお,Palit 4080 SUPER OCとRTX 4080 SUPERとの差は,最大でも約2%ほどしかなく,テスト解像度が高まるにつれて差は縮まりつつある。
続くグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。
RTX 4080 SUPERとRTX 4080との差は,最大でも約2%ほど。CUDA Coreの総数では約5%の差があることを踏まえると,スペックの開きほどRTX 4080 SUPERはスコアを伸ばしていない。そのため,RTX 4090とは最大約42%も離されており,まったく太刀打ちできていない。
なお,Palit 4080 SUPER OCはRTX 4080から1%もスコアが向上しておらず,クロックアップの効果はあまり表れていない。
GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものがグラフ3だ。
CPU性能の影響が大きいテストであり,テスト解像度が低い状態ではCPUがボトルネックとなるようで,スコアが1万6000程度で頭打ちになっている。そこで,テスト解像度が3840×2160ドットのFire Strike Ultraを見ていくと,RTX 4080 SUPERはRTX 4080から約1%ほどスコアを伸ばす一方で,RTX 4090には約43%も引き離されている。
Palit 4080 SUPER OCとRTX 4080 SUPERの差は1%にも達しておらず。ここでもクロックアップの効果はほとんどないと言っていい。
次に,DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう。グラフ4は総合スコアをまとめたものだ。
RTX 4080 SUPERのスコアは,RTX 4080とほぼ肩を並べており,同程度と言っていいレベル。一方,RTX 4080 SUPERとRTX 4090の差は23〜29%程度もあり,依然として大きい。
Palit 4080 SUPER OCは,RTX 4080 SUPERからスコアを1%も伸ばせておらず,ここでもクロックアップの恩恵は感じられない。
続くグラフ5は,Time SpyのGPUテスト結果となる。
CPU性能の影響がなくなるとはいえ,RTX 4080 SUPERはRTX 4080に差を付けることができず,ほぼ横並び。RTX 4090との差は30〜38%程度もあり,格の違いを見せつけられている。
クロックアップの効果はここでもあまりなく,RTX 4080 SUPERからほとんどスコアは上昇していない。
もうひとつのDirectX 12のテストであるSpeed Wayの結果を,グラフ6に示す。
Time Spyの傾向を踏襲した結果で,RTX 4080 SUPERは,RTX 4080とほぼ同等のスコアだ。RTX 4090との開きは約38%もある。クロックアップもRTX 4080 SUPERからスコアを伸ばせず,その差はほとんど見られない。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果が,グラフ7だ。
RTX 4080 SUPERは,RTX 4080に1%ほどの差を付けるのがやっとで,公称スループットほどスコアに差が表れていない。リアルタイムレイトレーシングでも,RTX 4080 SUPERは,RTX 4080と同等の性能と言ってよさそうだ。
Palit 4080 SUPER OCはRTX 4080 SUPERからスコアがあまり伸びておらず,クロックアップの効果はあまりない。
もうひとつのレイトレーシング性能を測るDirectX Raytracing feature testの結果がグラフ8だ。
ここでは,RTX 4080 SUPERがRTX 4080を3%ほど離し,Port Royalより差が開く傾向となった。RTX 4090との開きも58%にも達しており,上位モデルにはまったく届いていない。また,ここでもPalit 4080 SUPER OCの伸びは芳しくなく,RTX 4080 SUPERからあまり変わっていない。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ9となる。
DLSS onの結果を比較すると,RTX 4080 SUPERのRTX 4080からの伸びは約1%ほど。RTX 4090との開きは27〜35%程度と,かなりある。Palit 4080 SUPER OCが,RTX 4080 SUPERから伸びていないのも,これまでと似た傾向だ。
さらに,DLSS onでDLSS offからどれだけフレームレートが上昇したかを計算すると,RTX 4080 SUPERは237〜286%程度で,これはRTX 4080の238〜285%程度とほぼ同じだ。つまり,Tensor Coreの恩恵は,RTX 4080 SUPERとRTX 4080とであまり変わらないということになる。
では,実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ10〜12は,「Call of Duty: Modern Warfare III」(以下,CoD:MW3)の結果となる。
RTX 4080 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4080より若干向上しているものの,実フレームレートで1fpsにも満たないレベルで,性能的に大差ないと言っていい。それは,1パーセンタイルフレームレートでも同じで,RTX 4080 SUPERで,RTX 4080からゲームの快適性が変わることはまずないはずだ。
Palit 4080 SUPER OCも,RTX 4080 SUPERから平均フレームレートや1パーセンタイルフレームレートが1fps程度伸びるぐらいで,クロックアップの効果を体感することはまずないだろう。
次に,「バイオハザード RE:4」の結果がグラフ13〜15だ。
バイオハザード RE:4でも,RTX 4080 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4080からほとんど変わってない。1パーセンタイルフレームレートも同じ傾向で,RTX 4080 SUPERのパフォーマンスは,RTX 4080とほぼ同じと言っていい。クロックアップのスコアが,RTX 4080 SUPERからあまり伸びていないあたりも,CoD:MW3と同じだ。
Fortniteの結果をグラフ16〜18に示す。
ここでも,RTX 4080 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4080からほとんど伸びていない。最小フレームレートも,最大約1.5fps向上している程度で,あまり変わっていない。Palit 4080 SUPER OCの平均フレームレートは,RTX 4080 SUPERから1%伸びるのがやっとで,やはり大勢に違いはない。ただ,最小フレームレートを見ると,2560×1440ドットでRTX 4080 SUPERから約2%強向上しており,クロックアップの効果も垣間見える。
グラフ19〜21は,「Starfield」の結果だ。
Starfieldでも,RTX 4080 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4080とほぼ同じ。ただ,1パーセンタイルフレームレートが最大でRTX 4080から約2%ほど向上しており,RTX 4080 SUPERのほうが若干高性能と言えなくもない。
Palit 4080 SUPER OCの平均フレームレートは,RTX 4080 SUPERから1〜3%程度伸びており,1パーセンタイルフレームレートも約2%ほどの差を付けるなど,クロックアップの効果は若干見て取れる。
グラフ22は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
CPUがボトルネックとなるため,1920×1080ドットではスコアが4万4000程度で丸まりつつある。そこで,それ以外の解像度を見ていくと,RTX 4080 SUPERはRTX 4080から最大約1%伸びているものの,差はほとんどないと言っていい。また,スクウェア・エニックスが示す指標では,スコア1万5000以上が最高評価とされているが,RTX 4080 SUPERは,3840×2160ドットでもそれを大きく上回っており,快適にプレイできそうだ。
Palit 4080 SUPER OCは,RTX 4080 SUPERから1%もスコアが向上しておらず,クロックアップの効果はまったく見えない。
そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ23〜25だ。
平均フレームレートは,総合スコアを踏襲したものとなっている一方で,最小フレームレートは,CPU性能の影響が色濃く表れるため,どれもほとんど差がない。
グラフ26〜28には,「F1 23」の結果をまとめた。
ここでは,1920×1080ドットにおける平均フレームレートに着目したい。RTX 4080 SUPERは,RTX 4080から約2%ほど上昇し,実フレームレートでも3.5fpsの違いをみせている。この差はさほど大きいものではないものの,RTX 4080 SUPERのほうが,RTX 4080より若干性能が高いとは言える。ただ,高解像度になると,その差はほとんどなくなっている。
Palit 4080 SUPER OCは,RTX 4080 SUPERとほとんど同じスコアで,クロックアップの効果はあまりない。
ゲームテストの最後は,「Cities: Skylines II」だ(グラフ29〜31)。
ここでも,RTX 4080 SUPERの平均フレームレートは,RTX 4080とほぼ同じ。1パーセンタイルフレームレートも,差が1fpsもなく,横並びの性能と言っていい。
Palit 4080 SUPER OCは,平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートともに,RTX 4080 SUPERからの伸びは1fpsに届いておらず,クロックアップの効果は認められない。
RTX 4080 SUPERの消費電力は290W弱。GPUクーラーの冷却性能はどちらも優秀
先述したとおり,RTX 4080 SUPERのTGPは320Wで,RTX 4080との違いはない。では,実際の消費電力はどの程度なのだろうか。Palit 4080 SUPER OCもクロックアップモデルだけに,消費電力の増加は気になるところだ。
そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,テストは,3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中に行っている。その結果をグラフ32に示そう。
この結果を見ると,RTX 4090が頭ひとつ抜きんでているが,RTX 4080 SUPERとRTX 4080,それにPalit 4080 SUPER OCでは,消費電力があまり変わらない感じだ。いずれも,300Wあたりで推移しているように受けられる。
そこで,グラフ32の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求め,最大値と合わせてまとめたものがグラフ33となる。
RTX 4080 SUPERの中央値は約287.7Wで,これはRTX 4080より2W低いものの,ほぼ横並びと言っていいレベル。ただ,最大値を見ると,RTX 4080 SUPERはRTX 4080より約8Wほど低く,瞬間的な消費電力の増大をRTX 4080 SUPERは抑えている印象だ。
Palit 4080 SUPER OCの中央値は約295.8Wで,RTX 4080 SUPERから8Wほど増えており,クロックアップによる電力面の影響は,多少あるようだ。
続いて,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測した結果も見てみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ34だ。
各ゲーム実行時において,RTX 4080 SUPERのほうが,RTX 4080よりも10〜32W程度高くなっている。このテストでは,ピーク値を結果として採用するため,どうしても差が大きくなる傾向がある。しかし,それを考慮しても,RTX 4080 SUPERのほうが,RTX 4080より若干消費電力は高いと言えそうだ。
Palit 4080 SUPER OCとRTX 4080 SUPERの差は3〜24W程度で,クロックアップによる消費電力の増加は,こちらでも確認できる。
GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっており,ファンの制御方法も違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ35のとおり。
RTX 4080 SUPERは,高負荷時でも70℃以下に収まっており,GPUクーラーの冷却性能は申し分のない出来だ。Palit 4080 SUPER OCも,高負荷時で70℃を超えることはなく,こちらも冷却性能は優秀だ。
最後に,筆者の主観であることを断ったうえで,RTX 4080 SUPERとPalit 4080 SUPER OCの動作音について触れておこう。まず,RTX 4080 SUPERは,静かな印象を受けたが,ハッキリ言ってRTX 4080との違いを感じることはなかった。続いてPalit 4080 SUPER OCは,ファンの回転数を抑えているためか,RTX 4080 SUPERよりも静音性が高い印象。少なくとも,ケースに入れてしまえば,その動作音が気になることはまずないはずだ。
性能的にはRTX 4080と同等レベル。実勢価格もほぼ同等でそのまま移行
以上の結果から,RTX 4080 SUPERの性能はRTX 4080とほとんど変わらないとまとめていいだろう。RTX 4080から性能をそのままに置き換えたモデルという理解で正しく,RTX 4080ユーザーであれば,わざわざRTX 4080 SUPERに乗り換える必要はない。
RTX 4080 SUPERの米国におけるメーカー想定売価は999ドル(約14万7500円前後,税別)となっており,これはRTX 4080がリリースされたときの1199ドルより,200ドルも安価な設定だ。NVIDIAによると,RTX 4080 SUPER搭載カードの国内における想定売価は税込16万2800円からだそうで,RTX 4080が17万4000円〜22万円程度で販売されているのと比べると,本当にこの価格で発売されるのであればかなり魅力的だ。
ただ,RTX 4080 SUPER搭載カードの売り出し価格は税込で18万円後半〜20万円後半らしく,既存のRTX 4080とほとんど変わらない。つまり,RTX 4080 SUPERの立ち位置はRTX 4080を置き換えるGPUであり,それ以上の存在意義はあまりない。
いずれ,NVIDIAが想定する価格に落ち着いてくれば,お買い得感が増すことは間違いないので,RTX 4080 SUPERは今後の価格動向に注目といったところではないだろうか。
PalitのPalit 4080 SUPER OC製品情報ページ
- 関連タイトル:
GeForce RTX 40
- この記事のURL: