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よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた
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印刷2019/11/02 12:00

インタビュー

よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた

 さかのぼること1年半,2018年3月7日,吉本興業によるeスポーツ事業への本格参入が発表された(関連記事)。同社のeスポーツの軸は「プロチーム運営」「大会・イベント運営」「ゲーム実況配信」の3つだ。
 プロチーム運営は紆余曲折ありつつも,「よしもとゲーミング」は順調にその規模を大きくし,格闘ゲーム・アクション部門,スポーツゲーム部門,そして9月25日に加入が発表された「レインボーシックス シージ」部門の「YOSHIMOTO Gaming Lamy」と順調にその活動範囲を広げている。
 イベント運営も2019年シーズンからPCゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の国内公式プロリーグ「League of Legends Japan League」(LJL)の運営に参画。渋谷にあるヨシモト∞ホールをフル活用した大会運営が行われている。また「パズル&ドラゴンズ」の公式大会「パズドラプロリーグ」の運営も行っている。

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 2018年3月7日,吉本興業はeスポーツ事業に本格参入するという発表を行った。屈指の規模を誇る芸能プロダクションの参入は驚くべきことだ。発表が行われた記者会見にて,eスポーツ事業の概要が語られたので,その内容を紹介しよう。

[2018/03/07 16:13]

 さて,その活動実績からもよしもとの「本気度」が見えてくるが,実際のところはどうなのだろうか。同社eスポーツ事業のキーパーソンである,山本英二郎氏と“RAIN”こと小坂哲久氏に話を聞いてきた。
 LJL運営についてのアレコレや,プロチームと企業の付き合い方,コンプライアンスについての問題など,気になることをズバッと聞いてきたので,ぜひ最後まで読み進めてほしい。

山本英二郎氏(右),小坂哲久氏(左)
画像集 No.006のサムネイル画像 / よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 両名にお聞きしますが,よしもとではどのようなことをしているのでしょうか。

山本氏:
 基本的にはよしもとがやっているeスポーツのほぼすべてに関わっていますね。チーム運営,イベント運営,選手のマネジメント,スポンサー営業まで,すべての業務に関わっています。

RAIN氏:
 私も同じような感じですね。加えて選手としても活動してます。

4Gamer:
 それは……大変ですね。

山本氏:
 そうですね(笑)。2018年によしもとがeスポーツ事業を立ち上げるときに(まだ発表される前の話ですけど)eスポーツに見識のある人間を探している中で,担当の方とお会いする機会があり,以前からeスポーツ関係の仕事をしていたのですが,ちょうどそこを離れたタイミングで「お手伝いできることがあれば」というところから始まりました。

4Gamer:
 立ち上げから携わっているわけですね。

画像集 No.005のサムネイル画像 / よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた
山本氏:
 はい。当時はよしもとの中に,eスポーツを知っている人間がいなかったので,まずは自分の今までの経験をもとに,eスポーツの現状をお伝えするところからです。
 eスポーツチーム「よしもとゲーミング」の選手の選定や,どういった方向性でやっていくのかということも,ゼロベースに近いところからいろいろと話しながら構築していきました。

4Gamer:
 よしもとは,eスポーツチームの運営と,大会やリーグ運営の両方を事業としてやっていますよね。公平性などの観点からだと,両立しづらく大会の運営面でもリスクになりやすいと思うのですが,なぜ両方ともやろうと思ったのでしょうか。

山本氏:
 もともと,よしもと自体がプレイヤーとオーガナイザーの両方をやってる会社ですから。お笑い芸人やタレントのマネジメントのイメージが強いと思いますが,昔から自社の劇場を持ってイベント制作などもかなりやってまして。ですので,最初からチーム運営とイベント運営のどちらかに特化するという考えはなかったんです。

4Gamer:
 吉本新喜劇をはじめとする興行などはお家芸というか,伝統になっていますね。

山本氏:
 はい。ただ,仰られた通り公平性の観点もありまして,例えばLJLなんかはそうなんですけど,開催・運営している団体は参加チームを持てない制限もあります。
 チーム運営事業として考えれば制限は受けるのですが,ただすべてのタイトルでチームや選手を抱えなければいけないわけでもないので,その時々の最適な判断で,チームを運営するかはオーガナイザーとしてやるか,切り分けて考えています。

RAIN氏:
 例外ですが,パズドラプロリーグであればリーグ運営も選手出場も両方OKだったりします。

山本氏:
 そこはメーカーさんとしっかり話し合ってやってます。

4Gamer:
 たしか,パズドラプロリーグはあっき〜選手が出場してましたよね。

RAIN氏:
 はい。しかも優勝してます。

4Gamer:
 それは(笑)。何かそういう声は出なかったのですか?

画像集 No.007のサムネイル画像 / よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた

山本氏:
 なかったですね。ルールはしっかりと公平性を保ったもので,人間的なジャッジが介入しづらいものですし,両立できるものは両立できます。

4Gamer:
 なるほど。
 少し話は変わりますが,発足当初は既存チームとのコラボレーションで,海外にも挑戦していましたが,あの当時の,発足当初のタイミングでなぜいきなり海外に挑戦しようと思ったのでしょうか。

山本氏:
 やはりeスポーツと言えば海外の方が先行している状況でした。発足当初から国内だけでなく世界を見据えた動きは考えていまして,それが日本ではそこまで知名度は高くないですが,世界的にeスポーツの一線級のタイトルである「Dota 2」で,「よしもとデトネーター」という形になりました。
 残念ながらその試みは,目的を達成できないまま終わってしまいましたが……日本と海外の温度差ですとか,ハードルはまだまだ高いなと。ただ世界を見据えた挑戦というのは今後も続けていきたいと思っています。


LJL運営の今までとこれから


4Gamer:
 2019年からLJLの運営に携わっていますよね。ほかにも選択肢はあったのではと思うのですが,なぜLJLだったのでしょうか。

画像集 No.001のサムネイル画像 / よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた
山本氏:
 いろいろと理由があるんですが,1つ大きいのはヨシモト∞ホールを“eスポーツ化する”という話がありまして,かなり巨額の投資をして,あの場所をeスポーツのイベントも行えるような会場に改装したんです。
 そこでどういうeスポーツイベントを実施するのか,という話がありまして,同じやるなら目玉となるものをやりたいと。いろんなメーカーさんとお話をしたのですけど,それで最終的にLJLに決まった流れですね。

4Gamer:
 ほかのイベントになる可能性もあったわけですね。

山本氏:
 そうですね。LJLの後になりますけど,パズドラプロリーグもスタートしましたし。今後もあの場所を使ったeスポーツイベントをいろいろとやっていきたいと思っています。

4Gamer:
 LJLのレギュラーシーズンが終了しましたが,実際に運営に携わってみて,成功した面,あるいは失敗した面というのはありましたか。

RAIN氏:
 我々がLJLの運営を引き継いだときは,WorldsでDetonatioN FocusMeが活躍したあとということもあって,数字という面では伸びました。世界で活躍したということと,eスポーツが一般にも認知されてきた分が大きかったのかなと思います。
 失敗したというよりは,もう少し力を入れられたと思ったのは,プロモーションの部分ですね。具体的にこうとは言いにくいですが,もっといろいろとできたのではないかと。

山本氏:
 会場がヨシモト∞ホールで観戦人数が増えたのも大きいんですが,僕がいちばん大きいと思っているのは「チケットを購入して観戦してもらう」ということができたことですね。野球とかサッカーなどのスポーツだと当たり前に行われていることですが,定期開催しているeスポーツイベントでは初の試みで,かつ継続できているのはLJLのみだと思います。
 その「観戦チケットを販売する」という前例が作れたのは,業界にも大きく貢献できたことなのではと考えています。

4Gamer:
 単独かつ定期開催のeスポーツリーグで「観戦チケットを販売する」というのはLJLだけですからね。それが実現できた意味は非常に大きいものだと思います。

山本氏:
 ただ,2019年度のLJLはレギュレーションを守りながら運営を行っていくことに全力を注いだので,やはりそのほかの部分でよしもとの強みを出せていなかったかなと。
 とくに一般メディアへの訴求がまだまだできていないんです。よしもとがいちばん力を発揮できるはずのところですし,そこに仕掛けきれていないので,来年以降の課題はそこですね。

4Gamer:
 個人的な感想ですが,LJLにはもう少し毎週観戦しに行けるような,会場ならではの施策がほしいなと感じました。ファンミーティングがあったりはするのですが,毎週それだと特別感があまりないですよね。

山本氏:
 もっと盛り上げていく施策は考えています。ほんとにいろんなアイデアがあるので,来シーズン以降,徐々に実施していこうと思っています。ファンミーティングに関しても大きなテコ入れを考えているので,期待してください。

RAIN氏:
 グッズ販売はしたいんですよね。まだ準備はできていないのですが,チームグッズを充実させていきたいです。春,夏とやってきて,いろいろと改善点も見えてきているので,来シーズンはより良いものにできると思います。

4Gamer:
 TGS 2019の翌日がLJLファイナルでしたが,これは意図的だったんですか。

RAIN氏:
 いや,会場のスケジュール的にそこしかなかったというのが本当のところです。ただ,東京ゲームショウに遠方から来られた人が,ついでにLJLファイナルも見られるという,結果として良い日程になったと思います。

LJL Finals
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 2019年9月16日,「リーグ・オブ・レジェンド」の国内プロリーグ「LJL 2019 Summer Split Finals」の試合が行われた。本稿ではその模様をお届けしよう。決勝の舞台は立川立飛アリーナ。2017年のファイナル以来となる大規模会場での試合で,会場は熱気に包まれていた。

[2019/09/19 21:00]

4Gamer:
 なるほど。会場を押さえるのが大変だという話はそこかしこで聞きますね。

山本氏:
 会場問題は最近顕著に出てきています。「ちょうどいい大きさ」の会場がほとんどないのが,日本のeスポーツ業界全体の課題になっている気がします。

4Gamer:
 ちょうどいい大きさというと?

山本氏:
 1000人規模の会場です。ヨシモト∞ホールは300人規模で今までになかった部分を埋めることはできたのですが,その1つ上の1000人規模の場所となるとなかなかないんですよね。

4Gamer:
 最近は大人数が一度に参加するバトルロイヤル系のゲームも人気で,一度に多くのプレイヤーが登壇できるステージも必要になってきています。

山本氏:
 そういった面でも必要なのは感じてます。

4Gamer:
 よしもとさんが作ったり……?

山本氏:
 できればいいですね。劇場自体を自前で持つというのがよしもとのスタイルで,eスポーツで使える施設も,よしもとゲーミングの立ち上げに合わせて設置できたので。eスポーツが文化として根付くと,見に来る人も増えてくるので,そうなればもっと施設を増やせると思います。


よしもとが目指すeスポーツのカタチ


4Gamer:
 よしもとが目指す,eスポーツの未来はどんなものでしょうか。

山本氏:
 そうですねぇ……。日本のゲーム人口は一説によると4000万人くらいいると言われてますけど,それがeスポーツという切り口になったとたん,十分の一,あるいはもっと少ないかもしれないくらいの市場規模でしかなくなるんです。
 我々よしもとが見る未来って言うのは,100万人,200万人とかではなくて,4000万人全員が熱狂するような状況を,よしもとだからこそできる形で実現できればなと。お笑いのように広く一般に受け入れられる“文化”にしたいですね。

画像集 No.003のサムネイル画像 / よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた

4Gamer:
 ではその未来を目指すための課題は何だと思いますか。

RAIN氏:
 これはよしもととしてではなく僕個人の考えで,課題というよりは懸念していることなんですが,選手目線と運営目線でのお金のバランスが合ってないと感じてるんですよ。その結果,企業的な体力が持たないんじゃないかなと思っています。

4Gamer:
 選手が求めすぎている?

RAIN氏:
 そうですね。企業も投資フェーズで与えすぎているんじゃないかと。それを継続していけるのかを考えると怖くなってきます。破綻してしまっては元も子もないので。

 オリンピック競技でもメジャーなスポーツとマイナーなスポーツがありますよね。メジャーなスポーツの選手は注目されて,多くの収入が得られていたりします。逆にマイナーなスポーツだと,例えメダリストでも働きながら活動している選手もいる。
 eスポーツは画一的にいい待遇を求めようとしすぎているんじゃないかなと。選手目線と運営目線の両方から見て,求めすぎているし,与えすぎな状態に見えています。あくまで僕の個人的な考えで,よしもとの総意ではないですが。

4Gamer:
 スポーツにもいろいろな形がありますからね。

RAIN氏:
 そうなんです。スポーツの高い部分を基準に見すぎているのかなと,懸念しています。

山本氏:
 本当にいろんな課題があるので,ひとえには言えないところではあるんですけど。

RAIN氏:
 まだまだ課題だらけです。見る文化,観戦する文化も根付いていないので,そのあたりも成長させていかないとダメですよね。ゲームをプレイはするけど,大会を見て楽しいと思えるところまで来ている人はまだ少ないかなと。将来的には増えていくと思うんですけど,今はやっと入口に立ったかなという状況ですね。

4Gamer:
 見て楽しいという文化を作っていくのが運営側のお仕事だと思うのですが,具体的な方策はあるんでしょうか。

RAIN氏:
 昔から言われているのはスター性のある選手を育成することですね。分かりやすいところだと,ウメハラさんとか,ときどさんとかはカリスマ性があって,その人が出るだけで配信を見てくれる人がたくさんいる。
 そのくらいのカリスマ性を持った選手を,いくつものタイトルで育てていく必要があるので,選手にフォーカスしていくっていうのがもっと必要じゃないかなと思っています。

4Gamer:
 カリスマ性のある選手と言っても,その選手個人の才能や資質に左右される部分が大きいと思うんですが,よしもとゲーミングのチームの運営としては,どうやって育成していくかの方策はあるんでしょうか。

画像集 No.004のサムネイル画像 / よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた

山本氏:
 また難しい質問ですね(笑)。今すぐのフェーズではないですが,考えているものはあります。ご存じのように,よしもとにはNSCという育成事業もありますし,一般的にはあまり知られていないのですが,ヨシモト∞ホールには卒業した若手芸人が競う場があるんです。
 3部制のお笑いバトルという感じで,NSCを卒業した若手芸人が参加していて,人気があればどんどん上のステージに登っていくというシステムです。テレビに出ているのはそういった競争を勝ち抜いてきた若手なんです。

 今のところ,eスポーツはトップリーグだけで成り立っている部分があるので,トップリーグを軸にいかに下部リーグを整備して,切磋琢磨していく環境を作っていけるか。そういうのが作れれば,自然とそこを勝ち上がってきた人間がスターとして出てくるんじゃないかと思っています。

4Gamer:
 ですが,LJLでは下部リーグに当たるチャレンジャーシリーズはなくなりましたよね。

山本氏:
 なくなっちゃったんですけど,絶対やらないというわけではないです(笑)。今はLJLの運営にまず注力しているので……それも今後の課題ですね。

4Gamer:
 国内で盛り上がっているタイトルと,海外で盛り上がっているタイトルの差というのもありますよね。

山本氏:
 そうですね。海外と日本で人気のあるタイトルが違うのですが,そうした状況の中で「リーグ・オブ・レジェンド」は日本でも海外でも人気がある稀有なタイトルだと思っています。そうした意味でもまだまだ発展していくだろうと考えています。

4Gamer:
 リーグ運営の面では,LJLがファイナルまで無事終了して,一安心といった感じだと思います。
 新規に立ち上げたパズドラプロリーグの状況はいかがでしょうか。

山本氏:
 LJLはよしもととプレイブレーン,ライアットゲームズの3社で行っているのに対して,パズドラプロリーグはよしもととガンホーの2社でやっています。また,LJLはこれまでずっと続いていたリーグを引き継ぐ形で参画したので,ベースがすでにできていました。
 一方,パズドラプロリーグは1から作り上げていったリーグなので,その難しさはありましたね。立ち上げたばかりで,人材の豊富さにも差がありましたし,パズドラの場合は選手達にもいろいろと協力してもらいながら,築いています。

4Gamer:
 スマートフォン向けタイトルのeスポーツはどういった状況なのでしょうか。

山本氏:
 冒頭でも言いましたが,プレイ人口とeスポーツ人口の差が特に顕著に表れているかなと感じましたね。圧倒的なプレイヤー数がいるのですが,eスポーツを楽しんでいる割合は高くない。それでも,プレイしている人が多いので最初のハードルは超えています。まったくプレイしていない人に大会を見てもらうことに比べれば,はるかに近い距離にいるので,非常に将来性があると考えています。

4Gamer:
 ポテンシャルはすごく高いと。

RAIN氏:
 はい。次に来るのはスマートフォン向けのタイトルだと思っています。中高生に流行ったタイトルはeスポーツ化という意味では,今後盛り上がっていくんじゃないのかなと。いまの時代,スマートフォンは誰でも持っているので。10年後,目玉はスマートフォン向けゲームになっている可能性もある。そうした面では,スマートフォン向けゲームにも注力していくべきところだと思っています。


プロチーム運営の課題と未来


4Gamer:
 プロチームとしてのよしもとゲーミングの強みとはどういう部分なのでしょうか。

山本氏:
 今のところ,それなりの規模感の企業がやっているチームって少ないんですよね。そうしたところはよしもとゲーミングの強みかなと思っています。企業が運営してますよっていうのは「信頼」の面で有利な部分ですから。

4Gamer:
 選手や,へたをすればチームの運営側でさえ不用意な発言で炎上したり,出してはいけない資料が流出したり,定期的にそうしたことが起こっていますから……。そのあたりでチームも選手も信頼を失っているように感じますね。そこも含めての「信頼」ですか。

山本氏:
 選手個人の管理は非常に難しいんですよね。SNSでの不用意な発言など,ほかのスポーツと比べても目立ちますね。しっかりとデータを取っているわけではないですが。
 スポンサーなどはそういったところにリスクを感じるはずで,そこを企業としてしっかりとケアできるのが,よしもとゲーミングの強みだと思っています。今のところ順調にスポンサー様も増えていっているので,きちんとした黒字運営のプロゲームチームを作れればと思っています。

RAIN氏:
 スポンサーを獲得することももちろん重要なんですが,チームをしっかりとブランディングして,人気を得て,グッズ販売などにも広げていく,欧米などでよく見られるスタイルなんですが,日本もそういうエコシステムをしっかり作らないと,チーム運営は立ち行かなくなるんじゃないかなと。
 そのためには1人1人の選手のカリスマ性,チームの人気も必要です。そのあたりをひっくるめてのチームを運営していかなければならないと思っています。

4Gamer:
 なるほど。今までのお話をまとめると,選手の教育と育成,スター選手の輩出,そしてチームのブランディングをしっかりしていかなければならない,ということですね。
 だとすると,まずは1にも2にも,選手の教育が必要だと思うのですが,どのような体制でやっているのですか。

画像集 No.002のサムネイル画像 / よしもとがeスポーツ事業へ参入して1年半。LJL運営を経て目指すところはどこか。キーパーソンに聞いた

山本氏:
 コンプライアンスに関する研修や,タレントマネジメントのノウハウがあるので,その部分を活かしています。

4Gamer:
 所属している選手達には,そういう教育をすでに行っていると。

山本氏:
 まだ完璧に,というわけではないですが,きちんとした形で教育していく考えです。

RAIN氏:
 実際にコンプライアンス面談などは選手1人1人とやっています。よしもとで発表があったと思うんですけど,もちろんよしもとゲーミングもしっかりとやっています。

4Gamer:
 eスポーツ事業においても変わらずコンプライアンスは徹底していくというわけですね。
 では,よしもとが直近で目指すところはどこでしょうか。

山本氏:
 よしもとはeスポーツとして3つの事業を展開しています。1つめはチーム運営事業,2つめはイベントオーガナイザー事業,3つめはキャスターのマネジメントです。この3事業を大きくしていくというのが,直近の目標ですね。

4Gamer:
 eスポーツ全体に言えることですが,現状,あまり利益は生まれないですよね。そのあたり,よしもと的には覚悟をしてやっているのでしょうか。

山本氏:
 今現在は投資フェーズで,1年や2年という短いスパンで利益を出そうとは考えてはいません。ただ,その投資フェーズをいつまで続けていくか,5年,10年続けるなんてことはできるわけではないので。よしもとは中長期的な目線でeスポーツを見ています。

4Gamer:
 eスポーツ業界は人手も足りてないですよね。

山本氏:
 まったく足りてないですね(笑)

4Gamer:
 人材の発掘はeスポーツ業界全体の課題に見えますね。最後にeスポーツ業界を目指す人にアドバイスを頂けますか。

山本氏:
 そうですね。自分の好きなタイトルだけじゃなく,幅広いタイトル,リアルのスポーツなども見て,どういう「仕組み」で成り立っているのかを考えて,幅広い知識や視野を持ってほしいんです。
 「このタイトルめちゃくちゃ好きなんですよ」といった熱意を1つのタイトルに向けている人は多い印象です。ただ,プロになるならそれだけじゃ足りないというか。

RAIN氏:
 個人的には何かの大会を自分で開催してみるとか,運営のお手伝いをしてみると良いと思います。私も「ウメブラ」の前の主催者をやっていたので。そうした経験を持ったうえで,いろいろなタイトルに興味を持てば,自分が関われることの間口も広くなると思います。実際,いま業界にいる人はそういう人たちが多いですしね。

4Gamer:
 ありがとうございました。

「よしもとゲーミング」公式サイト

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