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メタバースに対しアバター関連ビジネスはどのように取り組むべきか。REALITYとcocone connectの事例を紹介
イベントでは「Apps Everywhere、モバイル2.0の世界へ」をテーマに,モバイル業界で活動する各社が,国内外のモバイル市場の動向や,事業の展望などを紹介している。本稿では本日(3月24日)行われた,「最新メタバース市場トレンド」と題されたセッションをレポートしよう。
メタバースのブームを受けてアバター関連ビジネスが加速
メタバースは,2021年10月にFacebookが社名をMetaに変更するなど,世界中で話題となっている単語だ。その一方で急速に知れ渡ったこともあり,解釈にブレも生じている面もある。
そういったなか,モバイル業界におけるデータ分析を事業とするdata.aiは,メタバースに対しCrypto,VR/AR,SNS,ゲームの4分野のサービス(メーカー)が関わっていると分析。そのうえでゲーム分野について深掘りすると,ワールドワイドでは「Roblox」が大きな存在感を示しているそうだ。
4Gamer読者にとっては馴染みのないアプリかもしれないが,RobloxはDAU(Daily Active User。1日あたりのアクティブユーザー数)が4950万を超えるなど,ワールドワイドでは一大アプリである。2021年におけるダウンロード数,消費支出,月間アクティブユーザーの3指標で3位以内を達成しており,アメリカでは3冠を実現しているとのこと。またRoblox側も,今後のメタバース界を先導すると投資家に向けて宣言しており,今後もさまざまな面で注目されそうだ。
世界中のZ世代を熱狂させる「Roblox」とは何なのか。メタバース界に台頭する“ゲーム版YouTube”
「Roblox(ロブロックス)」というタイトルを見聞きしたことがあるだろうか。本作は,アメリカに拠点を構えるRoblox社がサービス中の“オンラインゲーミングプラットフォーム”。大多数のプレイヤーはティーンエイジャー,いわゆるZ世代の若者たちだという。
一方で,data.aiによるモバイル端末のアプリ利用率を俯瞰すると,ゲームカテゴリは全体の10〜15%に留まっているという。最も利用率が高いのはSNSだが,昨年はTikTokに代表される写真/ビデオのカテゴリの伸びが著しかったという。
そして,TikTokのユーザー層が他にどういったアプリを利用しているのかを調べた結果,コミュニティサービス「Yay!(イェイ)」や,アバター生成アプリ「ZEPETO - メタバースで遊ぶ」,そして動画編集アプリなどの親和性が高いと分析。これらを踏まえ,アバター関連のビジネスが加速しているとの見方を示した。
こういった流れを受け,今回のセッションではアバター関連のビジネスを展開している,REALITY代表取締役社長のDJ RIO氏と,cocone connect代表取締役社長の冨田洋輔氏を招いての,メタバースに関連したトークセッションが行われた。
“メタバース”によって複雑だった概念が広く浸透
最初に会社紹介を行うと,REALITYはアバタービジネスに軸足を置くメーカーである。代表アプリの「REALITY」(関連サイト)は,スマホ1台でアバターの作成からライブ配信,コミュニケーション,ゲームまで楽しめることをウリとしている。いかにも日本らしいアニメ調のアバターは,海外でとくに人気が高いそうだ。
また,そのほかには,仮想空間内でのサービスを企業向けに提供する「REALITY XR Cloud」(関連サイト)などを展開している。
「REALITY」公式サイト
一方のcocone connectは,アバタービジネスを10年以上行っているココネのグループ企業として,2021年に設立された会社だ。同グループは「ポケコロ」(関連サイト)を2011年に開始しているほか,cocone connectも「セルフィ」(関連サイト),「農園婚活」(関連サイト)などのサービスを行っている。
「cocone connect」公式サイト
つまり両社は,現在のバズワード化するよりも前からメタバース方面の活動を行っている。現在,メタバースが注目される風潮に対し,両社がどのように受け止めているか気になるところだが,DJ RIO氏と冨田氏は大いに歓迎しているそうだ。
冨田氏によると,以前はポケコロなどに対してアバタービジネスと言われることが多かったそうで,この表現では的確に言い表せていないと感じていたという。
たとえば,本作などをきっかけにウェディングフォトグラファーに就職したり,家具をデザインしたり,出会ったプレイヤー同士が結婚したりしている。アバタービジネスというより,もっと大きなデジタルワールドを手掛けている自負があったそうだ。
DJ RIO氏にとっても,冨田氏に似たジレンマを感じていたそうだ。同社が展開するREALITYは,「アバターライブ配信」「バーチャルライブ配信」と標榜しているが,それはアプリが持っている1つの面に過ぎない。アバターという新しいペルソナを通じて,もう1つの世界や人間関係を実現するプラットフォームを作り上げる。そんな心構えで活動しているという。だが,この新たな概念を端的に説明する表現がこれまで無かったため,もどかしさがあったわけだ。
そういった想いを抱えていたなか,Facebookの社名変更などで,メタバースという分かりやすいネーミングが注目された。その概念が分かりやすく伝えられるようになり,このように広く浸透することで,自分達が手掛けてきた道は間違っていなかったという手応えを2人は得ているという。
また,冨田氏は,現在のメタバースは人によってさまざまな定義・解釈がされており,思い描く世界も違っていることを認識している。それでも,各々が最終的に目指す場所はきっと一致しているとのことで,Meta社がメタバースという単語を広めることで,その方角を示してくれたと述べていた。
アバター関連のビジネスに注力する理由とは
続いて,REALITYとcocone connectがアバター関連のビジネスに注力する背景について説明がなされた。
ココネはアバター関連のビジネスを長年展開しているが,その背景には,多くの人が着せ替えを楽しみたいという欲求があるからだと冨田氏は説明する。デジタルデータなら,(リアルのように)収納スペースが要らないなど手間が掛かりにくいため,着せ替えを自由に楽しみたいというプレイヤーから好評を博しているそうだ。
これを受けたDJ RIO氏は,人々がファッションやアパレルに注目する大本の理由を辿ると,自分なりに表現した姿を他の人にも見てもらいたいという欲求があると述べた。実際にファッションやアパレルメーカーの各社は,こういったニーズを受けて商品やブランディングを展開しているという。
たとえば,Nikeやアディダスは,かつて学生が放課後にバスケットコートに多く集まっていたことを受けて,魅力的なバスケットシューズやウェアなどを展開していた。
だが,近年はオンラインゲームが浸透し,コロナ禍も長く続いている。現在の学生のなかには,放課後にバスケットコートではなく,「フォートナイト」や「Roblox」のゲーム内で待ち合わせて遊んでいる人も多いのだ。すでに仮想空間内におけるブランディングを展開しているアパレルメーカーもあり,こういった動きは今後も加速するのではと分析していた。
また,現在のインターネットにアクセスするデバイスは平面ディスプレイが主流のため,SNSなどで自己を表現する手法も写真やイラストが多いという。しかし将来的にはXR(VRやARなど,現実にはないものを知覚できる技術の総称)などが進化して,これが人々にとって当たり前になるかもしれない。そういった世界では,自己を表現する手法も2次元ではなく,立体的なアバターとなるだろうとDJ RIO氏は言う。そして,来たるべきメタバース時代における基盤として,アバター関連のビジネスは欠かせない存在になると述べていた。
NFTや“Play to Earn”に向けた施策も
今回のセッションでは,近年のメタバースとセットで語られることが多いNFT(非代替性トークン)や暗号通貨についても言及された。
DJ RIO氏によると,個人的にはNFTとメタバースを安易に結びつける昨今の風潮に対し,懐疑的な見方を示しているという。だがNFTそのものに対しては,将来的には不可欠な要素になると認識しているようだ。
というのも従来のインターネット関連サービスは,決済やお金の流通に対して弱い部分がある。今後,NFTや暗号通貨などのインターネット向けに発明された資産が浸透すれば,デジタル上で経済活動が活性化することも期待できるという。
現在のNFTはバブルのようなもので,いったん落ち着くタイミングが来るかもしれないが,それが一段落した後,広く浸透する可能性があるのでは,という見解を示した。
これを受けた冨田氏によると,NFTとの親和性が高いPlay to Earn(P2E)の進化に期待しているという。このP2Eをざっくり説明すると,ゲームを遊ぶことでお金を稼ぐことを指しており,WeMadeのMMORPG「MIR4」が東南アジアを中心に高い注目を集めるなど,ワールドワイドでは大きなトレンドとなっている。またcocone connectとしても,P2Eを踏まえた新作アバターサービス「ClawKiss」を現在開発中とのことだ(関連サイト)。
DJ RIO氏によると,Play to Earnに関しては,現在の日本における法整備が十分に整っていないという。自身も法務省などからヒアリングを受けている段階だそうで,日本国内で本格的に浸透するのは,まだ先になるかもしれないそうだ。
しかし冨田氏としては,NFTやP2Eはグローバル市場ですでに大きなトレンドとなっており,今から動かねばならないと感じている。そのため,グローバルスタンダードに向け,先回りして「ClasKiss」を展開することになったというわけだ。
「data.ai」(旧App Annie)公式サイト
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