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ハンドガンの残弾はたったの4発。
目の前の水浸しの廊下には,死体が3体。そのうちの1体が,ぎこちない動きで首をもたげる。細い通路で,引き返しても先には進めぬ。ここを通るしかない。
構えて,狙いを付ける。頭――ではない。このゲームで頭を撃っても意味はない。敵が動き出した瞬間,体のどこかに腫瘍が浮き上がる。今回は左の太ももじゃった。撃つ。潰れる。次の腫瘍が,今度は肩に出る。撃つ。3つ目は腹。撃つ。残弾1発。膝から崩れた死体から,蟲が一斉に這い出してくる。駆け寄って踏みつける。
振り返ると,残りの2体がもう間合いに入っておった。
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「The Sinking City 2」の舞台は,半分ほど水没したアーカムじゃ。移動手段はボートのみ。街の中を,運河になってしまった通りを,縫って進んでいくわけじゃ。
前作にあった探偵ものの色は薄い。遊んでいて何度も思い出したのは,リメイク版の「SILENT HILL 2」じゃった。
マップの構造自体は章が進むたびに変化する。最初の章はリニア的で,ボートで進むと,やがて水門が閉じていて先へ行けなくなる。
近くの桟橋にボートを寄せ,建物に上がり,水門のスイッチを動かすための謎を解き,開けて,また進む。その繰り返しで街を少しずつ開けていく感じじゃ。
次の章からはがらりと様子が変わり,大きな建物ひとつを舞台にした「バイオハザード RE:2」型――つまりはメトロイドヴァニアっぽい構造になる。
鍵のかかった扉と謎解きで行き先を制限され,ショートカットを開けながら同じ場所を何度も通るあの感じじゃな。
その行ったり来たりを支えているのが地図の存在じゃ。アイテムを回収し終えた部屋は青く,まだ何か残っている部屋は赤く塗られる。しかも一度でも視界に入れたアイテムは,マップ上に位置が示される。
「あの部屋に何か取り残していたはずじゃが,何だったかのう」と悩むことがない。方向音痴のワシでも,ストレスなく歩き回れたぞい。
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戦闘で重要なのは2つ。弱点を狙うことと,回避することじゃ。
敵の正体は,死体に寄生した蟲――スリザーに操られたものたちじゃ。特徴的なのは,ゾンビのように見えて急所が固定されていないところじゃな。
戦闘が始まると腫瘍がひとつだけ浮き上がるのじゃが,その位置は毎回異なる。胴体や顔に出てくれればまだいい。厄介なのは腕と脚でのぅ,敵が動くたびに振り回されるから狙いが定まらん。
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外す。もう一発外す。潰せば次の腫瘍がまたどこかに出て,雑魚でも3個〜4個は潰さんと沈まん。狙いが甘ければ甘いほど,1体倒すのに必要な弾が増えていくというわけじゃ。
そしてこのゲーム,弾がとにかく足りない。落ちている弾はせいぜい3発〜4発じゃ。
クラフト要素もあるのじゃが,貴重な火薬と鉄くずを合わせてもようやく10発。同じ素材はショットガンの弾にも回せるから,何をどれだけ作るかも悩ましい。
だから外すたびに,あとで確実に困る。狙って,当てて,倒す。弾を節約するにはそれなりのAIM力が要求されるわけじゃな。
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一方の回避は,スタミナの概念がないゆえ,好きなだけ使える。これがとにかく気持ちいいのじゃ。
囲まれても,攻撃の予備動作を見て避けて距離を取り直せば,被弾ゼロで切り抜けられるわけじゃな。
このあたりは「バイオハザード RE:3」の緊急回避を,もっと素直にした感触に近いかもしれん。弾はケチり,回避は惜しまない。そう割り切って戦うとだいぶ心に余裕が生まれるはずじゃ。
そして,倒したあとにもやることが残っておる。死体から出てきた蟲を踏み潰しておかないと,死体に入り直して起き上がってくることがあるのじゃ。
ワシは一度これをやられてからは,倒すたびに必ず踏みに行くようになった。どことなくDead Spaceを思い出したぞい。
そうじゃ,一番大事なことを忘れておった。主人公はごく普通の人間じゃから,一発がとにかく痛い。回復も当然カツカツになる。ゆえに,戦えるかどうかより「戦わずに済むか」を先に考えるようになる。
細い通路にいる1体だけは仕方なく倒し,広間の3体は無視して走り抜ける。この取捨選択をしているときが,いちばんサバイバルホラーを遊んでいる感じがしたぞい。
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そんでもってゲーム中,常に頭の中で考えていたのはインベントリのことじゃ。
このゲームに至っては,序盤のインベントリがわずか6マスしかない。拠点となるセーフルーム――次元が歪んで自室とつながっているという設定がまた良い――の保管庫も最初は7マスだけじゃ。何を持って出るかで,そのまま生存率が変わるわけじゃな。
探索を丁寧にやる理由もここにある。奥まった部屋にはボールペンのような特殊な鍵で開く宝箱があって,中には銃のカスタムパーツや,インベントリを拡張するポーチが入っておるのじゃ。隅々まで歩いておくと,次の戦闘が確実に楽になるぞ。
実はちょっとした成長要素もある。主人公が肌見放さず持ち歩いている「夜の仮面」というアーティファクトには,裏側に大スロット1つと小スロット3つがあってのぅ,開放したスキルを装着できるのじゃ。
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大スロットには,「自分を倒した敵を数秒以内に倒すと起き上がれる」みたいな効果の大きいスキルが入る。
じゃが,小さいほうも侮れない。人型の敵から受けるダメージを減らす,懐中電灯を消しているあいだ与ダメージが上がる,弾の生産量が増える。並んでいるのは,どれも直前まで自分が困っていたことばかりじゃった。
スキルを開放するにはポイントが必要なのじゃが,これは敵を倒しても手に入らない。戦闘と探索の合間に推理があり,集めた手がかりを捜索ボードで線でつないでいき,正しく結べると完成してポイントが入るのじゃ。
シャーロック・ホームズシリーズを作ってきたスタジオらしい部分じゃな。人物の表情の作り込みにも,そのノウハウが出ておる。
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世界観もしっかりクトゥルフものとして作り込まれておるぞ。最初に目指すのはミスカトニック大学。そして第3章では,深きものが姿を見せる。ほかにも邪神の眷属が出てきたり,読み物やアイテムのテキストも豊富で,元ネタを知っているとにやりとさせられるぞ。
もうひとつ書いておきたいのは,このゲームはちゃんと怖いということじゃ。物陰から急に飛び出してきて驚かせる,という手も使ってはくるものの,基本的にはじわじわ来るほうの怖さで,そこがいかにもクトゥルフじゃと思う。
腫瘍を探して敵の体を見つめる時間が長いゆえ,見たくない造形をいやというほど見ることになるのも大きい。
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興味深いのは,クトゥルフものの定番であるSAN値の類がないことじゃな。正気度まで管理させられていたら,そのための道具がインベントリを圧迫して,あの6マスの奪い合いはもっと別の面倒になっていたはずじゃ。保管庫の前で数えるものが弾と回復薬だけで済んでいるのは,ありがたいことじゃな。
総じて「The Sinking City 2」は,名作ホラーたちの美味しいところを詰め込みつつも,決してただのコピーゲーにはなっていないと感じた。
開発者の「本気のクトゥルフ・サバイバルホラーを作りたい」という熱意が画面の端々から伝わってくる,見事な一作じゃった。
クトゥルフファンはもちろん、歯ごたえのある極限のサバイバルを味わいたいすべてのゲーマーに,胸を張ってすすめたい作品じゃな。



























