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MSI「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」レビュー。30cm超級の巨大なRTX 2080 Tiカードが持つ実力を探る
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印刷2018/10/29 00:09

レビュー

30cm超級の巨大なRTX 2080 Tiカードが持つ実力を探る

MSI GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO

Text by 宮崎真一


 2018年9月27日にデビューした「GeForce RTX 2080 Ti」(以下,RTX 2080 Ti)は,搭載グラフィックスカードの税込価格が安価なものでも17万円半ば,高いものだと20万円超え(※2018年10月29日現在)と,極めて高価だが,「現時点における世界最速のGPU」ということで,市場における引き合いは多いようだ。
 今回はそんなRTX 2080 Tiカードのなかから,MSIオリジナル設計の製品「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」(以下,MSI 2080 Ti GAMING X TRIO)を入手できたので,その特徴や実力をチェックしていきたい。

GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO
メーカー:MSI
問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン MSIお客様ご相談窓口 supportjp@msi.com
税込実勢価格:18万9000〜19万5000円程度(※2018年10月29日現在)
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動作モードは3つ。ただし現状では設定ツールに不具合あり


製品ボックスから取り出した状態ではいろいろシールが貼ってある
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 まずはMSI 2080 Ti GAMING X TRIOの製品仕様から確認していこう。
 本製品はメーカーレベルで動作クロックを引き上げた,いわゆるクロックアップ(Factory Overclocked)モデルである。GPUベースクロックは1350MHz,メモリクロックは14GHz相当(実クロック1.75GHz)と,いずれもリファレンスから変わっていない一方,ブーストクロックは1755MHzと,リファレンスの1545MHzと比べて310MHzも高くなっているのが特徴だ。

NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」を見たところ。ブーストクロックが1755MHz,メモリクロックが14GHz相当になっていることを確認できる
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 G Seriesに属するGeForce GTX 10世代のMSI製グラフィックスカードが「Gaming APP」というアプリケーションから3つの動作モードを切り換えられる仕様だったのを知っている読者は少なくないと思うが,この「3モード制」はGeForce RTX 20シリーズ世代でも健在だ。ただ,今世代で「OC」「Performance」「Silent」の各モードを切り換えるためには統合アプリケーション「Dragon Center」を利用する必要がある。

Dragon Centerから[Performance]ボタンをクリックすると,プルダウンメニューから動作モードを選択できる。[OC][Silent]ボタンをクリックすることで変更が可能で,選択した状態から再度クリックすればPerformanceモードに戻る仕様だ。[Profile 1][Profile 2]ボタンについては後述する
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 工場出荷時設定はPerformanceモードで,その動作クロックは前述のとおりだが,残る2モードの動作クロック設定は以下のとおり。3モードともPower Target(電力目標)は100%のままだった。

  • OCモード:ベース1365MHz,ブースト1770MHz,メモリ14.28GHz相当
    (※ブーストクロックはPerformanceモード比で+15MHz上がり,メモリクロックも280MHz相当上がっている)
  • Silentモード:ベース1140MHz,ブースト1545MHz,メモリ14GHz相当
    (※ブーストクロックはPerformanceモード比で−210MHz)

 ちなみに,後述するテスト環境で,各モードにおけるテスト中の最高動作クロックをMSI製オーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.0 Beta 9)で追ったところ,OCモードが1965MHz,Performanceモードが1935MHz,Silentモードが1740MHzだった。

入手した個体だと,OC,Performance,Silentの各モードにおけるテスト中の動作クロックは順に1965MHz,1930MHz,1740MHzに達した
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 ただし,Dragon Centerのバージョン1.0.0.16だと,OCモードおよびSilentモードにおいてCPUリソースの消費が大きくなるという問題があった。アプリケーションを終了させるとPerformanceモードに戻ってしまうため,Dragon Centerを利用した動作モードの切り換えを行うにはDragon Center自体をシステムに常駐させる必要があるのだが,この「常駐」の負荷が現時点では高いのである。
 後段で「どれほどの悪影響があるか」は簡単に触れたいと思うが,この制限があるため,今回のテストではPerformanceモードのみを検証対象とするので,この点はあらかじめお断りしておきたい。

 なお,MSIも「現状のDragon CenterがCPUリソースを異常に消費する」不具合は認識しているそうで,将来的には解決するという見通しを示していた。安価でもないカードを購入して,ユーティリティソフトウェアが使い物にならないというのはさすがにどうかと思うので,早急な改善を望みたいところだ。

Afterburnerからコアクロックを250MHz、メモリクロックを200MHz相当それぞれ引き上げた例
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 話を戻すと,動作クロック自体は(メーカー保証外になることを覚悟すれば)前出のAfterburnerから変更できるようになっている。
 ブーストクロックは「Core clock」というスライドバーから,−502〜+1000MHzの範囲を1刻みで指定可能だ。ブーストクロックを変更するとベースクロックも自動的に変わるので,その点は注意してほしい。
 GPUコア電圧は,「Core Voltage」というスライドバーを使うことにより,現在の電圧に対する増加分を0〜100%の範囲から1刻み,メモリクロックは「Memory Clock」というツールバーを使うことにより−502〜+1000MHz相当の範囲をやはり1刻みでそれぞれ指定できるが,このあたりは以前からあるAfterburnerと同じ仕様だ。

AfterburnerからVoltage/Frequency curve editorを起動したところ。グラフ中の各点をマウスで動かすことで駆動電圧と動作クロックの設定を変更できる
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 ただ,Core clockスライドバーのすぐ左にある「携帯電話の電波状態を記すアンテナのようなマーク」をクリックすることで開ける「Voltage/Frequency curve editor」には,GeForce RTX 20に向けた拡張が入っていた。
 ここではグラフ中の点を動かすことによってコア電圧と動作クロックの関係を指定できるのだが,右上の「OC Scaner」をクリックすると「MSI Overclocking Scanner」というログウインドウが開き,そこで「Scan」ボタン(※押すと[Stop]ボタンに変わる)を選択すると,Turing世代で新たに実装されたオーバークロック補助機能「NVIDIA Scanner」を実行可能だ。

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OC Scannerからログウインドウを開いたところ。右下にある[Scan]ボタンを押すとNVIDIA Scannerを実行できる
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MSI 2080 Ti GAMING X TRIOにおけるNVIDIA Scannerの実行結果。茶色の細い実線が工場出荷時設定で,点グラフで結ばれた赤色の線が「新たに設定された各電圧における動作クロック」となる
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Voltage/Frequency curve editorのTemperatureタブを選び,GPUの温度と動作クロックの関係を示したグラフを表示したところ。グラフ中の点を動かすことで第2温度目標を変更できる
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Dragon CenterからZero Frozrを無効にすればファンが常時回転するように指定できる。「Cooler Boost」というのはファンを最高回転で動作させられる機能だ。工場出荷時設定ではZero Frozrが有効になっている
 また,「Temperature」を選ぶと,GPUの温度と動作クロックの関係を示したグラフが表れ,GeForce RTX 20シリーズの自動クロックアップ機能「GPU Boost 4.0」で用意された「Second Temperature Target」(第2温度目標)をカスタマイズできるようになる。

 GPUクーラーのファンは,GPU温度が60℃を下回ったときに回転を止める「Zero Frozr」(ゼロフローザー)機能が標準で有効になっている。Dragon Centerから有効/無効を切り替え可能だが,前述のとおり現状ではDragon Centerを常駐させるメリットが薄いので,Zero Frozrを無効化したいときはAfterburnerに頼ることになるだろう。

 Afterburnerには「Fan Speed」というスライドバーがあり,ここから25〜100%の範囲を1刻みで指定することによりファン回転数を固定できる(※あるいはスライドバーの右にある「Auto」をクリックすることでも無効/有効切り換えを行える)。
 スライドバーの左側にある歯車のアイコンをクリックすると「MSIアフターバーナーのプロパティ」が「ファン」タブを開いた状態で開き,「自動ファン制御プロパティ」からグラフ中の点を動かすことによって温度とファン回転数の関係をカスタマイズできるようにもなっている。

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Afterburnerからファンの回転数を50%固定にすべく設定している例
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自動ファン制御プロパティではグラフからGPU温度とファン回転数の関係を設定できる


カード長は300mm超級で,クーラーは3スロット仕様。端的に述べて「大きい」MSI 2080 Ti GAMING X TRIO


カード長は堂々の30cm超級である
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 ここからは入手したMSI 2080 Ti GAMING X TRIOのカードを概観していこうと思うが,そのカード長は実測で約322mm(※突起部含まず)。基板長自体も同306mmと相当に長いが,そこからさらにGPUクーラーがはみ出ているわけだ。ちなみにRTX 2080 Tiの「Founders Edition」だと同267mmなので,全長は55mmも長い計算になる。

 また,マザーボードに差したときの垂直方向へは,I/Oブラケットから実測約31mmはみ出し,さらに搭載するGPUクーラーは3スロット仕様だ。文句なしに巨大なグラフィックスカードである点を押さえておきたい。

カードの表側と裏側。クーラーは基板長を超えた長さだが,背面のバックプレートは基板全体をほぼ覆うサイズになっていた
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MSI 2080 Ti GAMING X TRIOを横から見たところ。3スロット仕様のGPUクーラーを搭載しているため,かなり厚みがある
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あまりにも巨大(かつ重い)ということで,ブラケットに装着してカードを支えるためのサポートブラケットが付属する。電源ケーブルの6ピン→8ピン変換ケーブルも付属

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外部出力インタフェースに近い1基のファンのみが90mm角相当と小さくなっているのが非常に特徴的だ
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サイズは異なれども,Torx Fan 3.0仕様のファンブレードを採用するのは共通だ
 そのGPUクーラーはMSIオリジナルの「Tri Frozr」(トライフローザー)だ。
 MSI 2080 Ti GAMING X TRIOが搭載するTri Frozrは,外部出力インタフェースに近い1基のみが90mm角相当で,残る2基が100mm角相当と,サイズが異なるのが面白い。

 ファンの羽形状はMSIは「Torx Fan 3.0」と呼ぶこれまた独自仕様で,2つの突起があるうえ,付け根から半分くらいを境に角度が変わるものと,途中からひねりを設けたものが交互に並ぶ,ユニークな見た目になっている。MSIによれば,このTorx Fan 3.0仕様を採用することでエアフローと風圧がいずれも向上し,冷却効率が上がっているとのことである。

NVLinkベースのSLIを利用するための端子はクーラーの“下”にあるため,SLIを有効化する場合は2本のビスを外してクーラーの一部を取り外せるようになっている。I/Oインタフェース側のファン径が小さいのも含め,新しいSLIの仕様に合わせるためにいろいろ対策してあるというわけだ
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Mystic Light 3では18種類もの発光パターンから好きなものを選択できる。ファンを囲む4ブロックと,MSIおよびGaming Dragonロゴ部の2か所で異なる設定を行うことも可能だ
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 Tri Frozrには,3基のファンを上下から挟み込むような格好で4か所にLEDを埋め込んであり,さらに側面部はG Seriesのロゴ,そしてMSIが「Gaming Dragon」と呼ぶ竜のロゴと,その脇を走るライン部にもLEDを搭載している。
 LEDイルミネーションは付属アプリケーション「Mystic Light 3」から色や光り方,消灯を含む明るさを調整できる。バージョン3.0.0.27で試した限り,光り方は,

  • 虹色に光る「レインボー」
  • 右から左へ点灯箇所が流れる「レインドロップ」
  • 色が次第に変っていく挙動を示す「マジック」
  • 点滅が左右に往復する「Patrolling」
  • 左右から中央へと点灯する場所が変わっていく「Streaming」
  • 白い点滅がランダムで発生する「Lightning」
  • 上下段で交互に「点灯部が左右に往復する」挙動を示す「ウェーブ」
  • 上下段で同時に「点灯部が左右に往復する」挙動を示す「マーキー」
  • 左から右へと一方向へ点灯部が移動する「メテオ」
  • 上側から次第に点灯箇所が増えていき,全部付いたら消灯する挙動を繰り返す「スタック」
  • 上側が右から下側が左から点灯箇所が増えていき,全部付いたら消灯する挙動を繰り返す「Flowing」
  • 上下で交互に点灯する「Twisting」
  • 点灯している状態で一部分が消灯しそれが流れていく「ラミネート」
  • 2色を設定するとその間で色が変わる「Fade-in」
  • 指定した色がゆっくり点滅する「ブレス」
  • 指定した色が点滅する「フラッシュ」
  • 指定した色が2回点滅を繰り返す「ダブルフラッシュ」
  • 常時点灯する「エフェクトなし」

の計18とおりと非常に豊富だ。

工場出荷時設定は「レインボー」になっている
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赤(左),緑(中央),青(右)のそれぞれ単色で光らせた例
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 補助電源コネクタは8ピン×2+6ピン構成の3系統だ。Founders Editionだと8ピン×2だったので,6ピン1つ分(=75W分)だけ電力供給量の増強が入っていることになる。
 外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.0b Type-A×1,USB 3.1 Gen.2 Type-C×1という構成で,配置も含めてFounders Editionと同じ。5系統のうち同時に利用できるのが4系統までとなるのもFounders Editionから変わっていない。

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補助電源コネクタは8ピン×2+6ピン構成。コネクタは一段低い位置に置いてあり,マザーボードに差したときの垂直方向へこれ以上幅を取らないような配慮が見られる
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外部出力インタフェースは,構成だけでなく配置も含めてRTX 2080 Ti Founders Editionと完全に同じである


Founders Edition以上に充実した電源周り


背面プレートを外すと,大きめの熱伝導シートが基板との間に挟まっているのが分かる。補強板兼ヒートシンクとして機能するようにしてあるわけだ
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 GPUクーラーの取り外しはメーカーの保証外の行為であり,クーラーを取り外した時点でメーカー保証は失効する。それを踏まえたうえで,今回はレビューのために取り外し,GPUクーラーと基板を詳しくチェックしてみたい。

 Tri Frozrは,GPUコアの熱をプレートで受けて,それを8mm径が1本,6mm径が6本で計7本のヒートパイプにより2か所の放熱フィンブロックへ送り,3基のファンで冷却する仕様になっている。
 メイン電源部の熱は熱伝導シート経由でGPUから遠いほうの放熱フィンブロックへ,サブ電源部の熱はメモリチップの熱と合わせて補強板を兼ねるヒートシンクで受けているのも見てとれよう。

左はTri Frozrクーラーを取り外したところ。GPUクーラー側にメイン電源部の熱を受けるための熱伝導シートがあり,また,GPUクーラーの下にメモリチップおよびサブ電源部の冷却と基板の補強を兼ね備えた金属製フレームがあるのが分かる。右はそのフレームを取り外したところだ
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 いまとくに説明もなく「メイン電源部」「サブ電源部」という話をしたが,RTX 2080 Ti Founders Editionと同様に,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOでも電源部はGPUを挟むように2か所に散っている。そのため規模の大きなほうをメイン電源部,小さなほうをサブ電源部と呼んだ次第だが,それらを合計した層フェーズ数はMSI 2080 Ti GAMING X TRIOで14+3だ。RTX 2080 Ti Founders Editionだと13+3フェーズ構成だったので,1フェーズ増えている計算になる。

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基板面積の都合上,14+3フェーズ構成の電源部は写真でGPUを左右から挟みこむようなレイアウトで実装されている
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基板の背面側。GPUやメモリチップのところにはチップコンデンサが数多く見られるが,電源部の背面側はかなりスッキリした印象だ

 電源部を細かく見ていくと,MOSFETにはドライバICとの1パッケージ化を果たしているOn Semiconductor製の「FDMF3170」を採用していた。
 FDMF3170は,電流および温度の監視機能を有したICで,ざっくり言えば、RTX 2080 Ti Founders Editionが搭載する「iMON DrMOS」と同等の機能を持っている。MSIはとくに説明していないが,RTX 2080 Ti Founders Editionがそうであったように,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOでもFDMF3170を活用することで動的にフェーズ数を制御し,低負荷状況における電力損失を抑制していると思われる。

外部出力インタフェース側に6フェーズ,GPUを挟んでその反対側に残りの8+3フェーズ電源回路を搭載している。どちらもRTX 2080 Ti Founders Editionが採用するiMON DrMOSと同等のOn Semiconductor製MOSFETを採用しているのがポイントだ
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PWMコントローラチップは,uPI Semiconductor製「uP9512P」。電源規模が大きいためか2つ搭載していた(左,中央)。右はITE TECH製「iTE 8295FN-56A」。LEDイルミネーション制御用チップである
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Micron Technology製のGDDR6メモリチップを搭載している
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 搭載するメモリチップはMicron Technology製GDDR6の「MT61K256M32JE-14」(14Gbps品,チップ上の刻印は「8PA77 D9WCW」)。8Gbit品のチップを11枚搭載することでメモリ容量11GBを実現している。
 なお,基板にはメモリチップ1枚分の空きパターンが用意してあるので,基板レベルでは「TU102」のフルスペック版対応を見越している可能性もあるだろう。


RTX 2080 Ti Founders Editionと直接比較。ドライバにはテスト開始時の最新版となる416.34を利用


 テスト環境の話に移ろう。
 今回,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOの比較対象としては,ここまでも取り上げてきたRTX 2080 Ti Founders Editionを用意した。MSI独自設計かつクロックアップ仕様のRTX 2080 TiカードがFounders Editionに対してどれくらい優位性を確保できているのかを確かめようというわけである。
 なお,前述したとおりMSI 2080 Ti GAMING X TRIOには3つの動作モードがあるが,現時点ではDragon Centerの不具合があるため,「Dragon Centerの不具合状況を確認する」目的で一部テストのスコアを掲載するのを除き,今回は工場出荷時設定であるPerformanceモードのみでテストを行うことになる。

 用いたグラフィックスドライバはテスト開始時における最新版となる「GeForce 416.34 Driver」。Windows 10の電源プランには,最高性能が発揮できるよう「高パフォーマンス」に設定した。それ以外のテスト環境はのとおりとなる。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション22.0に準拠。テスト解像度は,RTX 2080 Tiが4Kをターゲットにしていることから,3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選択している。


RTX 2080 Ti Founders Editionより若干高いスコアながら,最小フレームレートが大きく改善するケースあり


 以下,グラフ中に限りMSI 2080 Ti GAMING X TRIOを「MSI 2080 Ti GX」と表記することをお断りしつつ,「3DMark」(Version 2.6.6174)のスコアから見ていこう。後述するとしていた「Dragon Centerの不具合」を確認すべく,ここではOCモードに設定した状態も参考スコアとして掲載する。

 グラフ1はDirectX 11ベンチマークである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだが,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOはRTX 2080 Ti Founders Editionと比べて2〜3%程度高いスコアを示し,多少ながらもクロックアップの効果が出ている。
 また,参考値として示しているOCモードのスコアがPerformanceモード比で96〜101%程度となっており,とくにGPU負荷の低い“無印”で明らかに置いて行かれているのも見てとれよう。

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 続いてグラフ2はそのFire StrikeからGPUテスト「Graphics test」のスコアを抜きだしたものになるが,ここでMSI 2080 Ti GAMING X TRIOとFounders Editionとの差は1〜4%程度となった。描画負荷の最も高い「Fire Strike Ultra」で最もスコア差は開いているので,クロックアップの効果は描画負荷の高い状況でこそ活きるようである。
 なお,OCモードの参考値は描画負荷がより高い2条件でPerformanceモードのスコアを上回っているため,総合スコア低下の原因がCPUテストにあるとよく分かる。

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 というわけでCPUテストである「Physics test」のスコアをまとめたグラフ3を見てみると,CPUが揃っているため,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOとRTX 2080 Ti Founders Editionのスコアはほぼ横並びになるのだが,それだけにOCモードの参考値が落ちているのが目を惹く。Dragon Center常駐によるペナルティは3DMarkにおいて3%といったところであり,やはり現時点でOCモード(あるいはSilentモード)の利用は避けたほうがいいだろう。

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 グラフ4はGPUとCPU両方の性能がスコアに影響を及ぼす「Combined test」の結果となる。ここでもMSI 2080 Ti GAMING X TRIOはRTX 2080 Ti Founders Editionに対して2〜5%程度のスコア差を付け,その内訳も描画負荷が高まるほどスコア差が開く点で一致している。
 なお,OCモードのスコアの落ち込みは,このCombined testでより顕著だ。とくに“無印”の落ち込みはインパクトが大きい。

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 3DMarkのDirectX 12のテストである「Time Spy」,その総合スコアをまとめたものがグラフ5である。MSI 2080 Ti GAMING X TRIOとRTX 2080 Ti Founders Editionとのスコア差は約4%と,Fire Strikeの総合スコア比で若干開いたが,これはTime SpyのほうがFire Strikeより描画負荷が高いためだろう。

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 Time SpyにおけるGPUテストの結果を抜き出したものがグラフ6,CPUテストの結果を抜き出したものがグラフ7だ。前者ににおけるMSI 2080 Ti GAMING X TRIOとRTX 2080 Ti Founders Editionのスコア差は4〜5%程度なので,ほぼ総合スコアを踏襲したと言っていい。後者はほぼ横並びだ。
 OCモードのスコアはGPUテストのほうでPerformanceモードとほぼ横並びといった感じであり,ここでも現行Dragon Centerの悪影響が出ていると言える。

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 では,実際のゲームではどうなのか,グラフ8〜10は「Far Cry 5」のテスト結果をまとめたものになる。
 ここでMSI 2080 Ti GAMING X TRIOはRTX 2080 Ti Founders Editionに対して平均フレームレートで1〜5%程度のスコア差を付けているが,ギャップが最も広がったのはやはり3840×2160ドット条件だった。3DMarkと同様にFar Cry 5でもMSI 2080 Ti GAMING X TRIOは高負荷環境でスコアを伸ばす傾向があるわけだ。逆に言うと,Far Cry 5の2560×1440ドット以下の条件ではMSI 2080 Ti GAMING X TRIOにとって“軽い”状況が発生しているということなのだろう。

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 それはグラフ11〜13にテスト結果を示した「Overwatch」でも同じである。
 Overwatchの場合,ゲームの仕様によりフレームレートが300fpsで頭打ちになり,結果として1920×1080ドット時のスコアは完全に横並びとなっている。そこで2560×1440ドット以上を見ていくことになるが,平均フレームレートのスコア差は2560×1440ドットで約2%なのに対し3840×2160ドットでは約5%といった具合だ。

 またMSI 2080 Ti GAMING X TRIOは3840×2160ドット条件での最小フレームレートが142fpsと,垂直リフレッシュレート144Hz対応ディスプレイのポテンシャルをほぼ活かし切れるスコアを示している。これも要注目のスコアと言えるだろう。

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 「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果がグラフ14〜16だが,ここでは相対的なCPUボトルネックによる影響で1920×1080ドット条件でスコアが丸まっている。なのでやはり2560×1440ドットを見ていくことになるが,ここで両者のスコア差は平均フレームレートで5〜7%程度と,これまでと比べて若干開いた。最小フレームレートでも4〜5%程度の違いが出ているので,PUBGにおいてはMSI 2080 Ti GAMING X TRIOの高クロック設定が効果を発揮できている(=PUBGは動作クロックの影響を受けやすい)ということになる。

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 グラフ17〜19は「Fortnite」のテスト結果だが,ここでも1920×1080ドットではスコアの頭打ちが発生してしまっている。
 なので2560×1440ドット以上の解像度条件を使って考察を進めるが,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOは,RTX 2080 Ti Founders Editionに対して平均フレームレートで5〜7%程度,最小フレームレートでも4〜5%程度のスコア差を付けた。傾向はPUBGと同じだ。

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 「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)のテスト結果はグラフ20〜22のとおりだが,ここではまた少し異なる傾向が見られた。というのも,最小フレームレートでMSI 2080 Ti GAMING X TRIOがRTX 2080 Ti Founders Editionに7〜9%程度ものスコア差を付けているのだ。
 Shadow of Warはグラフィックスメモリに対する負荷が大きいテストだが,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOのメモリクロックはFounders Editionと変わらないなので,最小フレームレートの引き上げはメモリ周りに起因するというよりは,GPUのコアクロックがかなり高いところで推移しているためと考えるのが妥当ではないだろうか。

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 グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)のスコアをまとめたものだが,ここでは2560×1440ドット以下のテスト条件で相対的なCPUのボトルネックに起因するスコアの丸まりが生じている。そこで3840×2160ドット条件のスコアを見てみることになるが,テスト対象となる2製品のスコア差は約4%だ。
 それにしても,この解像度でスコア1万1000超えを実現しているRTX 2080 Tiの実力にはあらためて驚かされる。

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 次にグラフ24〜26はFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものだ。端的に述べて総合スコアを踏襲した数字であり,平均フレームレートは3840×2160ドット条件でのみ平均フレームレートは約4%の違いが生じ,2560×1440ドット以下では1〜2%程度のスコア差に留まる。

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 「Project CARS 2」の結果がグラフ27〜29だが,ここでも1920×1080ドット条件ではスコアの頭打ちが発生している。
 2560×1440ドット以上だと,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOはRTX 2080 Ti Founders Editionに対して平均フレームレートで3〜4%程度,最小フレームレートで5〜7%程度と,後者でよりスコア差を付けた。Shadow of Warと同様に,動作クロックの引き上げが最小フレームレートの向上に寄与したと思われる。

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消費電力には覚悟が必要なMSI 2080 Ti GAMING X TRIO。Tri Frozrクーラーは非常に優秀


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 繰り返すが,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOはクロックアップモデルである。なので当然,クロックを引き上げた分だけ消費電力の増大が懸念されるわけだ。とくに補助電源コネクタが3系統に増え,十分な電力供給を行える仕様になっているわけで,消費電力がかなり大きくなっているであろうことは容易に想像が付く。

 実際はどうだろうか。「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力を測定したものがグラフ30となる。

 ここでMSI 2080 Ti GAMING X TRIOは450W超を26回記録し,そのうち2回は500Wを超えてしまった。RTX 2080 Ti Founders Editionだと400W超が9回となり,そのうち一度も450Wには到達していないので,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOの消費電力はかなり高いと言っていいだろう。

グラフ画像をクリックすると横に引き伸ばした拡大版を表示します
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 上のデータから中央値を求めたものがグラフ31だ。テスト対象となる2製品の間には30W近いスコア差が付いており,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOは,電源ユニットへの要求がRTX 2080 Ti Founders Editionと比べて明らかに高くなっていると言わざるを得ない。

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 念のため,ログが取得可能なワットチェッカーである「Watts up? PRO」でシステム全体の最大消費電力を比較したものがグラフ32となる。
 ここでのテストにあたっては,Windows 10の電源プランを標準の「バランス」に戻したうえで,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されるように設定。そして,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分間放置した時点を「アイドル時」としている。

 スコアを見てみると,各アプリケーション実行時におけるMSI 2080 Ti GAMING X TRIOのスコアはRTX 2080 Ti Founders Editionより32〜55W程度高い。4Gamer GPU Power Checkerの測定結果を裏付けるように,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOの消費電力が高い傾向を確認できる結果となったわけだ。

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 「GPU-Z」(Version 2.13.0)を用いてGPUの温度もチェックしておこう。ここでは室温を約24℃に保った環境で,システムをPCケースに組み込まない,いわゆるバラック状態に置く。そのうえで,3DMarkを30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,アイドル時ともどもGPUの温度を取得することになる。

 その結果はグラフ33のとおりだ。MSI 2080 Ti GAMING X TRIOとMSI 2080 Ti GAMING X TRIOで温度センサーの位置が同じとは言い切れず,そもそも温度の制御法とGPUクーラーも異なるため,横並びの評価にあまり意味はない。それを踏まえたうえで結果を見ていくが,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOの高負荷時におけるGPU温度は72℃と低めになっている。消費電力の高さを考慮すると,GPUクーラーの冷却性能は十分に高いと言ってよさそうだ。なお,アイドル時において43℃高めなのは,Zero Frozrによりファンの回転が停止するためである。

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 MSI 2080 Ti GAMING X TRIOが搭載するGPUクーラーであるTri Frozrの動作音もチェックしておきたい。ここではカードに正対する形で30cm離した地点にカメラを置き,アイドル状態で約1分間放置した後,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを約4分間実行したときの様子を,合計約5分のビデオにまとめてみた。
 まず,最初の1分間はファンが停止するため,聞こえるのは周りの環境音だ。ベンチマークを実行すると10秒ほど(ファイル冒頭からは70秒ほど)でファンが回転を始め,次第に回転数を増していく。ベンチマーク実行3分後(ファイル冒頭から4分後)には,ファンの回転数は最大に達しているが,その動作音はこのクラスの製品としては静かと言っていいだろう。
 ただし,サイズの異なるファンを採用しているためなのかどうか,ファンの風切り音に高い周波数のものが混じっており,やや耳に付く印象はある。搭載するPCケースの密閉度合い次第では気にならないと思うが,この高周波ノイズを受け付けないという人はいるかもしれない。



消費電力とバグ入りユーティリティがマイナスながら,カードとしての高い総合点は魅力


製品ボックス
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 以上,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOは工場出荷時設定でRTX 2080 Ti Founders Editionよりざっくり4〜7%高い性能を期待できる製品とまとめていいように思われる。このスコア差を大きいと思うかどうかは人によると思うが,高負荷環境における最小フレームレートの改善に期待できる点は十分に魅力的と言っていいように思われる。充実した電源周り,そして巨大なGPUクーラーが実現する高い冷却能力にグッとくる人もいるだろう。

 実勢価格は18万9000〜19万5000円程度(※2018年10月29日現在)。「そもそもRTX 2080 TiカードがNVIDIAの北米市場におけるメーカー想定売価と比べて高すぎる」という問題はあるのだが,ひとまずそれを脇に置いておくと,豪華な仕様のMSIオリジナルモデルながら他社製品と比べて極端に高いわけではない価格設定も悪くない。

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 ネックとなるのは「数%の性能向上」を実現するためのトレードオフとして明らかに増大している消費電力と,ハイエンドモデルに付属するユーティリティソフトとしてはあまりにもお粗末なDragon Centerの完成度だ。巨大すぎるカードサイズも環境によっては導入のハードルになるはずである。

 国内市場でほぼ欠品状態なので,まずはちゃんと買えるようになってくれないと話が始まらないものの,ハードウェアレベルの総合点が高いことを活かして長く使っていきたいとか,強化された電源周りを活かしてさらなる高クロック化を自己責任で試したいとかいったとき,MSI 2080 Ti GAMING X TRIOはよい選択肢となるのではないかと思う。

MSI 2080 Ti GAMING X TRIOをパソコンショップ アークで購入する


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