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2026年4月24日に発売された「Titanium Court」は,ローグライトというジャンルの大海から生まれた新たな宝石の1つだ。発売前から「Independent Games Festival」でSeumas McNally Grand PrizeとExcellence in Designを受賞し,Steamでは“圧倒的に好評”となっている。
ただ,現時点では公式に日本語が実装されておらず,日本語圏の読者にとっては内容をつかみにくい作品でもある。絵的な特徴こそあれど,何が面白いのかがパッと見で分かりにくいのは確かだろう。本稿では実際にプレイした体験を通じて,その内容をお届けしていく。
満潮で地形を動かし,干潮で戦う。3マッチで導くローグライトパズル
現実で普通に生活していたプレイヤーは,突如として“世界が砕ける”体験に出会う。周囲の地形はスライドパズルのように流れていき,気づいた頃には「Titanium Court」(チタニウムの宮廷)が目前にそびえ立っていた。
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そこは妖精たちが住む宮廷であり,プレイヤーはなぜか女王として歓待を受ける。ここから現実世界へと戻るためには,地形の流れを読んで先へと進み,どうにかして物語を終わらせなければならない――というのが,本作のあらすじとなる。
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女王になってしまったプレイヤーの仕事は,宮廷を無事に目的地まで進めること。この世界には,地形が流動的になる「満潮」と,地形が固まる「干潮」が存在する。干潮になると敵が攻めてくるので,干潮までに有利な地形を作らなければならない。
なんだか複雑そうに聞こえるかもしれないが,満潮時にプレイヤーがやるのはシンプルな3マッチパズルだ。同じ地形を3つ揃えると消滅するので,それを利用して“戦場”を作り変えていくのが基本的な考え方になる。
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干潮時の処理は自動進行で操作を受け付けないが,満潮時に盤面をうまく調整すれば,敵城からやってくるユニットを険しい地形で妨害したり,逆に密着して自軍ユニットを送り出して先制攻撃したりと,さまざまな対処ができるわけだ。
ただし,満潮時に地形を消す動作は「資源収集」とも紐付いており,麦畑を消せば食料,森林を消せば木材,水場を消せば水が手に入る。自軍ユニットの生産には資源が要るため,満潮時に地形の整理だけを考えて行動していると,のちのち困ることになる。
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そして,ステージを進むごとに新しいギミックがどんどん追加される。消さないまま干潮を迎えることで報酬を得られる「宝箱」,干潮時に周囲を巻き込んで大爆発する「火山」,一直線に弾丸を投げ込んでくる「投石機」など,その種類は多種多様だ。
進行するステージは3つのルートから選択可能で,出現する主なギミックや,地形(資源)の偏りもしっかり表示される。現時点で手元にある資源や,生産可能なユニットを鑑みて,適切なルートを選ばなければならない。
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宮廷が敵の攻撃で破壊されてしまった場合,すべてがリセットされ,最初からゲームを再開することになる。その際に「Comfort」(快適性)が少しずつ向上し,Comfort Levelが上がると難度を緩和するアップグレード要素をセットした状態でゲームを開始できるようになる。
アップグレードの内容は自由にカスタムできる。単純に初期資源を増やすだけでなく,戦況を細かく分析するツールを導入するなど,プレイの快適性を高めるアップグレードも用意されているので,自分のスタイルに合ったカスタムを探してみよう。
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それは卵? フットボール? メカニズムが“意味”を書き換える
こうやって要素を説明していくと「よくできたローグライトパズル」という印象を受けると思う。要素のバリエーションも多く,クオリティは高いのだが――実際に遊ぶと,単なるメカニズムの面白さ以上の魅力が詰まっていることが分かる。
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それは,これらのメカニズムがそのまま物語の語り口になっているからだ。仕組みに紐付いたアート,キーワード,演出のすべてが,本作の独特な世界観を表現するツールとして機能し,ゲームプレイそのものが物語体験に接続されている。
たとえば,ランダムに現れる特殊ギミックの1つに「フットボール」がある。これは,拾ったフットボールをステージのエンドゾーン(終端)まで運ぶことで報酬を得られる,というものだ。
ただし,その見た目はどこからどう見ても「卵」である。もちろん,プレイヤー(主人公)もこれを卵と認識するのだが,配下の妖精たちはこれをフットボールと呼ぶのだ。単なる不条理ギャグにも見えるが,本作ではこうしたズレが頻繁に起こる。
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しっかりとプレイしていくと,妖精たちが“現実の常識”ではなく“メカニズム”に従ってオブジェクトを認識していることが分かる。たとえ物質的に卵であったとしても「フィールド上でエンドゾーンまで運ぶことで利益を得る」というメカニズムがあるなら,妖精たちはそれをフットボールとして扱い,そして――実際にそのとおりの作用を発揮する。
本作においては,こういった“認識と作用のズレ”がムーディーでシニカルな演出とともに連発される。いうなれば,不条理な妖精の世界観をテキストとゲームメカニズムの連携によって表現しているようなイメージだ。
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示された要素が分からなくとも,仕組み自体は“よく出来たローグライトパズル”なので,すべての意味を解き明かす必要はない。ただし,プレイヤーが抱えるであろう「あれはどういう意味なんだろう」「なんでそうなったんだろう」という感覚は残ったままゲームが進む。
そんな不安をそっちのけで,妖精たちは楽しげに女王をサポートしてくれる。記号論的な見方でこの世界を“解読”しようと試みるか,あくまでゲームとして向き合うかはプレイヤー次第だ。
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読んでいてなんとなく分かると思うが,本作は万人向けのゲームではない。基礎はあくまで3マッチパズルであり,それを繰り返しながら戦場を整えていく構造に馴染めるかどうかが大きい。
それに加えて,ナンセンスな会話や比喩を含むテキストを把握しきるのはなかなかハードルが高い。物語を明快に理解したい人や,システムだけを淡々と楽しみたい人には,ちょっと回りくどい作品に感じられるかもしれない。
一方,パズルや考察が好物な人にはガッチリとハマるであろう要素が多い。ゲームメカニズムと物語表現が噛み合ったコンテンツを求めるのであれば,強くマッチする作品になる可能性が高い。
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現時点で公式の日本語表示には対応していないが,Steamレビューではファンによる非公式の日本語訳MODが掲載されており,筆者が触れた範囲ではそのクオリティも十分に高かった。体験版も公開されているので,手触りが気になる人はまずそちらをチェックしてみるのがオススメだ。































