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ついに発売されたTRPG「サイバーパンクRED」に見る,2045年のナイトシティ。2077へと続く世界と最新ルールの見どころを徹底解説
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印刷2022/06/04 12:00

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ついに発売されたTRPG「サイバーパンクRED」に見る,2045年のナイトシティ。2077へと続く世界と最新ルールの見どころを徹底解説

画像集#001のサムネイル/ついに発売されたTRPG「サイバーパンクRED」に見る,2045年のナイトシティ。2077へと続く世界と最新ルールの見どころを徹底解説
 テーブルトークRPG「サイバーパンクRED」(以下,RED)が,ホビージャパンから2022年3月に発売された。4月にはPDF版の販売もスタートしており,書籍版とPDF版共に7920円(税込)で購入可能となっている。

 本作は2020年12月に発売されたデジタルゲーム「サイバーパンク2077」PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X / Xbox One,以下2077)と世界観を同じくするテーブルトークRPGだ。「RED」は「2077」の約30年前にあたる西暦2045年を舞台としており,「サイバーパンク」世界の設定資料集としても楽しめる側面を持つ。
 また一方で,「RED」は1990年代に発売されたテーブルトークRPG「サイバーパンク2.0.2.0.」(以下,2020)の続編でもあり,ゲームシステムの面でも大きくリニューアルが施された,最新のゲームタイトルでもある。

 そこで本稿では,「2077」をプレイして「サイバーパンク」世界をもっと掘り下げて知りたくなった人向けに,「RED」にどんな情報が掲載されているかを紹介していこう。価格から手を出しづらいファンは,購入の参考にしてほしい。
 また記事の後半ではテーブルトークRPGとしての「RED」について,ゲームシステムを軸に解説している。ゲームとしての「RED」に興味がある人は,こちらも目を通してもらえたら幸いだ。

「サイバーパンクRED」の書籍版を手にした人は,まずその重厚さに驚くはず。A4版ハードカバーでフルカラー464ページ――厚さにして約3cm,重さ約1.7kgという大ボリュームの豪華仕様だ。ちなみに原書でも60ドル(約7700円)なので,これでも税抜なら日本語版のほうがお得だったりする
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 11月の発売に向け期待が高まる「サイバーパンク2077」だが,そのベースとなったTRPG版について知る人は,日本ではそう多くないだろう。本稿では「2077」へと引き継がれているこの世界の成り立ちを,キーマンであるジョニー・シルヴァーハンドの足跡と共に紹介する。「2077」をより楽しむための副読本として活用してほしい。

[2020/09/19 10:30]

「サイバーパンクRED」公式サイト

「サイバーパンク2077」公式サイト



“赤の時代”の「サイバーパンク」――2020と2077を結ぶミッシングリンク


 まずは本作の舞台である“赤の時代”について,簡単に説明しておこう。
 冒頭でも触れたように,本作は西暦2045年――「2020」と「2077」の狭間の時代を舞台としている。「2020」で語られたジョニー・シルヴァーハンドの物語については,以前に掲載した記事に詳しいのでぜひ参考にしてほしいが,その結末において,ジョニー・シルヴァーハンドは最後の戦いに挑み,歴史の表舞台から姿を消してしまうことになる。

ジョニー・シルヴァーハンドが消えた2023年以降,世界は文明崩壊寸前にまで荒廃してしまった。超巨大多国籍企業アラサカとミリテクによって引き起こされた“第四次企業戦争”が,2025年まで続いたためだ。
 戦災によって世界中の街や工業施設が破壊されたのみならず,アメリカ北西部では森林がほとんど焼き尽くされるほどの山火事が発生。さらに軌道上からの爆撃と,ナイトシティで炸裂した核兵器の爆発が相まって,膨大な量の微粒子が大気中にまき散らされることに。その結果,世界中の空が真っ赤に染まる現象が発生した。2045年にはだいぶ収まっているが,いまだに朝日と夕日は鮮やかな赤い色に輝き,ナイトシティではときおり,汚染された微粒子を含んだ血のような赤い雨が降る。
 それゆえ,第四次企業戦争後20年あまりの時期のことは“赤の時代”(タイム・オブ・ザ・レッド)と呼ぶ。「RED」という本作のタイトルは,それゆえに付けられたものなのだ。

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 “赤の時代”は復興の時代だ。戦争で破壊し尽くされたナイトシティからは瓦礫が撤去され,新たなビルが建ち並び始めている。「2077」でVが住んでいた薄汚れたメガビルディングも,この時代にはまだ新築間もないピカピカの状態だ。シティには企業が戻ってきており,工場も再建されつつある。だが,物流網は寸断されたまま。食料も日用品も武器も,戦前のようにそこいらの商店や通販で気軽に買うことはできない(キブルと呼ばれる不味い合成食料ならいくらでも手に入るが)。
 今や陸海空の物流を支配するのは企業や国家でなくノーマッドのキャラバンだ。人々は必要な物資を,商店でなく地元のフィクサー達が主催する闇市“夜の市(ナイト・マーケット)”で購入する。取引される商品も,そのほとんどは新たに生産されたものではなく,廃墟や放棄された倉庫,輸送船から略奪された2020年代の遺物なのだ。
 復興途上であるがゆえ,“赤の時代”のナイトシティには新参者がのし上がるチャンスがそこらじゅうに溢れている。つまり君がナイトシティの新たなるレジェンドになることだって,不可能ではないということだ。


■それでジョニーはどうなった?


 とは言え「2077」をプレイした人にとって一番気になるのは,ジョニー・シルヴァーハンドの消息,あるいはその痕跡ではないだろうか。彼についての新情報は,果たして本書にあるのか。結論から言えば……「ある」。しかも度肝を抜くようなヤツが。

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 「RED」には,ジョニーにまつわる3本の短編小説が収録されている。1本目の「ネヴァー・フェイド・アウェイ」は,ジョニーとオルトの物語――「サイバーパンク2077」のメインストーリーの発端となる事件を描いた小説だ。2本目の小説「巨塔の落日」は,ジョニーが2023年にアラサカ・タワーを襲撃し,彼がアダム・スマッシャーによって殺されるまでの顛末が描かれている。ここまでは以前の記事で紹介したとおりの内容だが,もちろん小説ではより詳細に出来事が描写されているので,ジョニーのファンはぜひ目を通しておくといい。
 中でも重要なのは,「サイバーパンク2077」で主人公のVが追体験したジョニーの記憶と小説の描写に,かなりの食い違いがあることだ。三人称で語られるこの小説を読めば,ジョニーの視点では知り得なかったいくつかの謎に対する答えが得られるだろう。あるいは語られる事実の差異から,その理由を推測してみるのも面白い。筆者としては,ジョニーの記憶の中でトンプソンやシャイタンの扱いが悪いのは,彼の死後に生き残ったこの2人がローグとくっつくのを無意識に恐れたからではないかと勘ぐっているのだが……。

 そして3本め。巻末に収録された小説「ブラック・ドッグ」は,ジョニー自身の物語ではなく,彼が遺した幻の曲を探し求めるエッジランナー達の物語だ。この小説には「ネヴァー・フェイド・アウェイ」に登場したサンチァゴの息子・トレースや,「サイバーパンク2.0.2.0.」のサプリメント「クロームブック2」でジョニーを助けた全身義体の女性消防士・サマンサが登場する。
 本書が初収録の小説なのでネタバレは避けるが……そのラストシーンで「2077」ファンは驚愕の声を上げることになるだろう。そして「2077」では語られなかったジョニー・シルヴァーハンドとRELICチップの真実,そして新たな謎の数々に,衝撃を受けるに違いない。

「クロームブック2」より,ジョニーとサマンサの出会いのシーン
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 このように,本書には作品世界の理解を深めるのに役立つ小説や膨大な資料――さまざまな巨大多国籍企業(メガコープ)やギャング,文化や生活習慣などの設定が,これでもかと詰め込まれている。全464ページの半分以上がワールドガイドに割かれており,さらにテーブルトークRPGのルール解説の部分にさえ,そこかしこに世界観を感じさせるフレーバーテキストが散りばめられている凝りようだ。
 「サイバーパンク」世界とナイトシティの歴史についても,本書以上に詳細に記された資料はほかになく,ファンにとってはまさに珠玉の一冊と言って過言ではないのである。

(コラム)2045年以降の重大事件


「ワールド・オブ・サイバーパンク2077」(リンクはAmazonアソシエイト)
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 第四次企業戦争終結から2045年までの時期に,世界的な事件はさほど起こっていないようだ。水面下ではネットウォッチがNETの再建に頓挫していたり,旧来の巨大企業群(メガコープ)に代わる新興企業ネオコープが台頭してきたりはあるものの,基本的にはどの勢力も回復と再拡大に専念せざるを得ない,復興の時代だったからだろう。

 なお「サイバーパンクRED」の権利元であるR. Talsorian Gamesによれば,2045年から2060年頃までの時代を扱ったサプリメントやシナリオを,今後製品として展開していく予定とのこと。だからなのか,この時期の設定も現在のところほとんど明らかにされていない。
 しかし「サイバーパンク2077」のゲーム内テキストや「ワールド・オブ・サイバーパンク2077」(G-NOVELS刊)の記述を読み解けば,その片鱗は見えてくる。
 以下の表は,「サイバーパンク2077」内のニュース番組などで言及されている2045年以降の重大事件をまとめたものだ。「サイバーパンクRED」のP.236〜241記載の年表と合わせて読めば,「2077」へと続く歴史を補完できるはずだ。

年代 出来事
2051年
2059年
2061年
ナイトシティでは数度にわたり“鳥インフルエンザ”が大流行する。2051年には7000人以上が,2059年には1万人が,2061年には1万2000人が死亡する(「2077」のVの部屋で観られるN54のテレビ番組「ジギーQの“ナイトアフターナイト”(Night After Night with ZiggyQ)」内で言及あり)。
2062年 気候変動と度重なる巨大ハリケーンの発生により,ハイチ政府が崩壊。多数の難民がナイトシティのパシフィカ地区に流入する。
2063年 度重なる“鳥インフルエンザ”の大流行を受け,ナイトシティ市議会は“鳥類駆除法(Avian Extermination Act)”を施行。市の境界から18マイル(約29km)以内の鳥類を絶滅させる。
2067年 アラサカのボディガードが日本の天皇の暗殺を阻止。ギャング団“モックス(Mox)”が結成される。
2069年 新合衆国,エリザベス・クレス(P.258)に代わってロザリンド・マイヤーズが大統領に就任。なおマイヤーズはミリテク社の元CEOだった(彼女は「2077」の“悪魔”エンディングにて荒坂三郎と会談し平和協定を結ぶこととなる)。
新合衆国,自由州連合に侵攻を開始。統一戦争(Unification War)が始まる。当時の最新鋭兵器が多数投入されたことから,統一戦争は“メタル・ウォー”とも呼ばれた。
2070年 統一戦争は新合衆国軍優位で推移し,一時はナイトシティを包囲するに至る。しかし市議会議員ルシアス・ライン(P.306)がアラサカに支援を要請。アラサカが派遣した巨大空母がナイトシティ沖に到着したことで,新合衆国軍は撤退を余儀なくされる。
統一戦争終結。自由州連合は事実上敗北し,統一条約に署名して新連邦政府に加盟する。アラサカの庇護を受けたナイトシティは新合衆国から独立した自由都市として存続するが,以後は巨大企業群の強い影響下に置かれることとなる。
アラサカ,旧アラサカ・タワー跡地に新社屋を建設開始。
2071年 ナイトシティ市政府,“鳥インフルエンザ”を防ぐため,市内で鶏などの家禽類の販売を禁止する。
2072年 ナイトシティで動物の媒介する感染症“ネズミ熱(Rat Fever)”が大流行する(「2077」では“鼠咬症(Rat Bite Fever)”という実在の病気と同じ病名に訳されているが,恐らくは別の病気)。
2076年 「サイバーパンク2077」のプロローグ。Vとジャッキーが出会う。
2077年 「サイバーパンク2077」本編開始。


トレンドに合わせて進化した「RED」のゲームシステム


 「2020」の発売から30年ほどが経過し,舞台となる時代も大きく進んだ「RED」だが,テーブルトークRPGとしての「RED」はどう変化したのだろうか。ここからはゲームとしての「サイバーパンク」,そして「2020」と「RED」の違いについて,その特徴を紹介してみたい。

画像集#014のサムネイル/ついに発売されたTRPG「サイバーパンクRED」に見る,2045年のナイトシティ。2077へと続く世界と最新ルールの見どころを徹底解説

 「2077」をプレイした人ならお分かりだと思うが,「サイバーパンク」の世界は皆がよく知るほかのテーブルトークRPG――「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以下,D&D)のようなファンタジー世界や「クトゥルフ神話TRPG」のような現実に隣接した世界とは,かなり勝手が違っている。
 明確な敵となるモンスターや邪神はいないし,魔法も存在しない。人間存在のすべてを機械と電子データに置き換えられるほど科学技術が発達し,一般市民に手が届くレベルで普及しているにも関わらず,ほとんど無法状態といっていいほど治安が悪く,人助けなど馬鹿か狂人のやることだと思われるくらい,人心が荒廃している。
 そこに生きるプレイヤーキャラクターもまた,いわゆる“善人”とは限らない。むしろ“悪党”であることが望ましい。ただし“悪党”であっても“悪人”ではない。そこがポイントだ。

 ナイトシティは悪徳と暴力が支配する無法の街。ちょっとでも隙を見せれば後ろからバッサリやられて何もかも奪われる。誰も,何も信用できない。そんな世界の中で,プレイヤーキャラクター達は欲得ずくで,あるいはただ生き残るため,仕方なくチームを組むことになる。それぞれの得技を活かして協力し,目の前の仕事を片付けるために。そしていつかは大きな仕事を成し遂げるために。
 悪意に満ちた世界の中で,ちっぽけな良心と人間性や誇りのために,意地と虚勢を張り通す,スタイリッシュで格好いい“悪党”。それがあなたが操るキャラクターであり,「サイバーパンク」のプレイスタイルでもある。

サイバーパンクもののシナリオを作るときの考え方としては,マイク・ポンスミス氏がかつて筆者に語った「サイバーパンクは,現代の出来事を未来へと拡大投影したものだ」という言葉が非常に参考になる。現代社会における諸問題――例えば臓器密売や政治家の汚職など――を再解釈し,舞台に投影するこの手法は,往年のテレビ時代劇の作劇にもよく似ている。かたや江戸時代,かたや“暗黒の未来”という違いはあるが,有用なテクニックだ
画像集#010のサムネイル/ついに発売されたTRPG「サイバーパンクRED」に見る,2045年のナイトシティ。2077へと続く世界と最新ルールの見どころを徹底解説

 「2020」にせよ「RED」にせよ,基本ルールは共通で非常にシンプルだ。判定は[能力値+技能レベル+1d10]の上方判定で,合計が目標値(難易度)を上回れば成功となる。これは戦闘においても共通するルールなので,すぐに覚えられるはずだ。そのうえで最新版である「RED」で変化したポイントを指摘するなら,まず挙がるのは全体的にルールが“軽く”なった点だろう。

 「2020」には,戦闘にリアリティを持たせる演出的なルールが数多く存在し,それらがやや煩雑で分かりにくかった。それがとくに顕著だったのが“アーマーの重ね着”“段階貫通”のルールだ。
 例えば皮下アーマーなどのサイバーウェアの上に防弾チョッキなどを重ね着していたりすると,防御力(SP)を算出するのに表を用いなくてはならなかった。そのうえ防御力は頭/胴/右腕/左腕/右脚/左脚の6つの部位ごとに別管理で,かつ敵の攻撃が防具を貫通するたび,低下した防御力を戦闘中に再計算する必要が生じる。こうした処理に手間がかかり,ゲーム内時間なら数秒に満たないはずの戦闘に,何時間もかかることがしばしばあった。
 ……なぜそんなに煩雑なルールだったのかといえば,当時の海外産テーブルトークRPGでは,それがトレンドだったから。戦闘はシンプルで抽象的なものよりも,リアリティを演出する複雑なものが好まれる時代だったのだ。

「2020」の技能判定修正値(の一部)。射撃を一つ取っても,状況によっても細かな修正が加わるなど,煩雑な部分が多かった
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 最新版の「RED」は“現代のトレンド”に合わせてこうした煩雑な部分がバッサリそぎ落とされ,リアリティよりもプレイアビリティを優先したゲームシステムが採用されている。重ね着したアーマーは防御力がもっとも高いものだけが適用されるようになり,SPの減少も一括処理になった。部位も“頭部”と“身体”の2か所のみになり,とくに狙わない限り“身体”に命中する。戦闘にグリッド・マップを使用する場合も,機会攻撃や呪文がないぶん,D&D第5版と比べてもスピーディなくらいである。

D&D第5版以降のトレンドに合わせ,プレイアビリティ重視になった「RED」の戦闘ルール。ただし“不幸な事故”が起きる確率は,D&Dの低レベル帯に引けを取らない
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 「RED」のもう一つの大きな変化は,実際のゲームプレイでは扱いにくかったいくつかの要素が,ルールと世界観の両面から再構築されたことだろう。それが端的に表れているのが,「ロール」ごとに設定されている特殊能力だ。ロールとは,本作におけるキャラクターのクラスや職業に相当するもので,それぞれに特殊能力が用意されているのだが,「2020」ではこれがかなり“大雑把”で使いづらい面があったのだ。

 例えばロッカーボーイには聴衆を扇動する能力があるとされ,(ジョニー・シルヴァーハンドがそうであったように)うまく使えば何千人ものファンを暴動に駆り立てることができたが,そのお膳立てを考えると,ゲーム中に有効活用するのは難しかった。「RED」ではこの使い道がより具体的な形で拡張されており,ファンを使った情報収集や噂の流布,物資調達,または戦闘への加勢といった具合に,扇動以外にも幅広い使い方ができるようになっている。

 またネットランナーが持つネットラン(ハッキング)の能力にも,大きく手が入っている。「2020」におけるネットランは,それ自体がもはや別のゲームと言っていいほど独立したルールで構成されており,しかも処理が複雑で時間がかかるものだった。そのうえネットランナーは世界中のどこからでも――それこそ自宅から一歩も出ることなく――NET(コンピュータ通信ネットワーク)に接続できたので,ほかのキャラクターと一緒に行動する意味も薄かった。このためネットランのシーンでは,ネットランナー以外のキャラクターはやることがなく,一方でそれ以外のシーンで,ネットランナーは暇を持て余しがちだったのだ。
 しかし「RED」は世界規模のNETが崩壊しているため,ネットランナーもまた仲間と共に現地に出向き,ローカルネットワークに接続して仕事をせざるを得なくなった。ネットランのルールもシンプルになり,仲間達が銃撃戦を繰り広げる傍らで,建物のセキュリティを解除したり,自動砲台や警備ロボットの制御を奪って操ったりといったことを,同時進行できるようになった。
 つまりファンタジーRPGでいうところの盗賊のような役割を与えられ,パーティの一員として活躍することが期待されるようになった……と言った方が分かりやすいだろうか。電子的な鍵や罠を解除し,情報という宝物を盗み出すために欠かせない存在として。

 このように「RED」では,「2020」にあったさまざまな問題が改善されたことで,遊びやすく現代的なテーブルトークRPGへと生まれ変わっている。

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(コラム)「2077」のあのキャラのロールは?


 「RED」には,プレイヤーキャラクターとして使用可能な10種類のロールが用意されている。ここではそれぞれのロールの特徴を,「2077」の登場人物に当てはめて紹介してみたい。あの人物みたいなキャラクターで遊びたい,あるいはゲームマスターとして,自作のシナリオに彼らを登場させたいと思ったとき,参考にしてほしい。

ロール キャラクターの一例
ロッカーボーイ 演奏,芸術,弁舌を駆使して権力と戦うロックンロールな反逆者。
例:ジョニー・シルヴァーハンド,ケリー・ユーロダイン,アラサカ・ヨリノブ(2020)
ソロ 戦闘のプロフェッショナル。無法なる新世界の暗殺者,ボディガード,殺し屋,傭兵。
例:アダム・スマッシャー,オダ,ジャッキー,タケムラ,ローグ(2020)
ネットランナー コンピュータ・ネットワークに侵入し,秘密裏に情報を盗み取るサイバー・ハッカー。
例:アラサカ・ハナコ,オルト,スパイダー・マーフィー,T-バグ,虫熊(バグベア)
テク 機械修理と改造に長けたメカニック。超先端技術の開発者。
例:ジュディ・アルヴァレス
メドテク 最先端のサイバー技術に精通した医師。
例:ヴィクター・ヴェクター,ミルト・ナウマン
メディア 真実や栄光のためにすべてを賭ける,報道記者,ニュース番組の人気司会者,ソーシャル・メディアのインフルエンサー。
例:トンプソン,ベス・アイシス
エグゼク 世界を再び巨大企業の支配下に置くべく戦う,エリート社員。政財界の黒幕や乗っ取り屋。
例:アーサー・ジェンキンス,アラサカ・サブロウ,アラサカ・ヨリノブ(2077),メレディス・スタウト
ローマン 悪意の街をパトロールする武装警官。いざという時には仲間の警官たちを増援に呼ぶことができる。
例:アナ・ハミル,スティンツ警部,リバー・ウォード
フィクサー 戦後の闇市で暗躍する商人,交渉屋,仲介屋,情報屋。
例:エヴリン・パーカー,カーク・ソーヤー,デクスター・デショーン,レジーナ,ローグ(2077),ワカコ・オカダ
ノーマッド プロの運び屋,放浪の戦士,世界の流通を支える密輸業者。ヴィークル操縦の専門家。
例:サンチァゴ,ミッチ・アンダーソン,パナム

「2077」の主人公であるVがどのロールに当てはまるかは育成次第だが,プロローグの時点ではソロかテク,あるいはネットランナーに相当すると思われる。「RED」には“転職”(いわゆるマルチクラス)ルールもあるので,組み合わせれば複数の能力を持つキャラクターも作成可能だ。なおR. Talsorian Gamesによれば,ゲーム開始時のVがインストールしているサイバーウェアは次のとおり:ニューラル・リンク,チップウェア・ソケット,インターフェイス・プラグ,バイオモニタ,サイバーアイ(+カイロン),サイバー聴覚基本システム(+内蔵型エージェント),サイバーアーム(+サイバーデッキ,皮下グリップ);合計価格3500eb;人間性喪失合計53
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マイク・ポンスミス氏が提唱する,新たなテーブルトークRPG体験


 ここまで「RED」の特徴を紹介してきたが,本作が革新的な部分はこれだけではない。「RED」の前書きにおいて,著者であるマイク・ポンスミス(Mike Pondsmith)氏は以下のように語っている。

「RED」は「2077」の出発点となるテーブルトークRPGとして作られた。「RED」と「2077」は過去と未来の時間軸をループする物語の糸を,テーブルトークRPGとビデオゲームの両面から辿っていく,奥深く複合的なゲーム体験を提供してくれるだろう。

 このマイク・ポンスミス氏の言葉は,何を意味しているのだろう。筆者なりの解釈をお伝えして,本稿の締めとしたい。

 「2077」をプレイした人は,ゲーム内の情報がところどころ不完全であることに気付くはずだ。「2077」のプレイヤーがゲーム内で得る情報は,主人公たるVの視点による,2077年のナイトシティに生きる人々が知り得る範囲のものでしかない。ジョニー・シルヴァーハンドが見せる記憶でさえ,欠落したり改竄されたりしていて,過去の出来事の正確な記録とは言いがたい。テーブルトークRPG的に言うなら,「2077」で語られる情報はすべて,(プレイヤーでなく)キャラクター視点のものでしかない。
 一方,「RED」はルールブックであるが故に,そこに記されている世界は詳細かつ正確だ。「2077」では断片的に言及されたり曖昧にほのめかされたりするだけだった設定やエピソードも,神の視点によって客観的に開示される。つまり,プレイヤーやゲームマスターの視点で世界を俯瞰できてしまう。

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 「2077」をプレイ済の人は,「RED」に目を通してから――つまり2045年以前のナイトシティとその住人達の情報を頭に入れてから,もう一度「2077」をプレイしてみてほしい。きっと知らずに見逃してきた数々の手がかりやイースターエッグを見つけて,新鮮で驚きに満ちたゲーム体験ができるに違いない。あるいは真実だと思い込んでいた情報が,実は間違いだったと気付くことも……あるかもしれない。
 またテーブルトークRPGとして「RED」を楽しみたい人も,「2077」はぜひ先にプレイしておくことをオススメする。「2077」でVとして体験した出来事の数々が,世界を高い解像度で思い描くことを可能にしてくれる。それらはプレイヤーやゲームマスターとしてキャラクターやシナリオを生み出すときに,きっと役立つことだろう。
 「RED」の記述から「2077」の謎を読み解くだけでなく,「2077」の表現から「RED」の世界をより深く理解する。その楽しみ方の相補関係こそが,マイク・ポンスミス氏が提唱する“奥深く複合的なゲーム体験”なのだと,筆者は考えている。

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 なお日本語版の公式サイトでは,PDF形式のキャラクターシートのほか,短編シナリオ「レッド・クローム・カーゴ」や,作成済キャラクターやNET構造体を含むサンプルデータ集「シングル・ショット・パック」が無料ダウンロードできる。近日中には,キャラクターの住居に関する設定集「カーゴ・コンテナ&キューブ・ホテル」や,筆者が作成したオリジナルシナリオも,ここに追加される予定だ。
 また今後の展開として,短編シナリオ6本にGMスクリーン,12枚の追加バトルマップなどがセットになったサプリメント「サイバーパンクREDデータパック」(仮題)の発売が決定している。

 海外ではシナリオ集「Tales of the RED」,「2020」の「クロームブック」に相当するアイテム・データ集「Black Chrome」,探偵企業デンジャー・ギャルの設定資料集「Danger Gal Dossier」,「2077」にも登場したローグの名を冠した追加武器データ&カード集「Rogue's Street Weapons」が順次発売予定となっているが,これらも発売され次第,翻訳にとりかかる予定だ。時期は未定だが,こちらもお楽しみに。
 さらにマイク・ポンスミス氏が海外メディアの取材に答えたインタビュー記事(リンクは外部サイト)によると,将来的には「サイバーパンク2077」のサプリメントも制作予定とのことだ。発売はかなり先になるだろうが,こちらも期待したい。

 ちなみに6月26日には,本作を含む各種テーブルトークRPGの体験会イベントが秋葉原で開催の予定だ。いずれのタイトルも無料で遊べるので,この記事で興味を持った都内近郊の人は足を運んでみてはいかがだろうか。

 それでは“赤の時代”のストリートで会おう!

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■参考文献
「サイバーパンクRED」(ホビージャパン刊)
「ワールド・オブ・サイバーパンク2077」(G-NOVELS刊)
「サイバーパンク2.0.2.0.」「クロームブック2」(ホビーベース・イエローサブマリン/FEAR刊)

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