本稿で取り上げるのは,「RimWorld」のクリエイターであるLudeon Studiosディレクタータイナン・シルベスター氏を招いた対談セッションだ。モデレーターは,ゲーム文化批評や執筆,放送・展示への参画でも知られる「Game Generation」編集長のイ・ギョンヒョク氏。
対談のテーマは,拡張パックのタイトルでもあり,このゲームが重きを置くメッセージでもある「Ideology(イデオロギー)」に据えられた。
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イ氏はまず,シルベスター氏の創作者としてのアイデンティティを問うた。
氏はインタビューで繰り返し「自分は物語そのものを書く人ではなく,物語を生み出すシステムを作る人だ」と語ってきた。それは従来の“作家”なのか,それとも新しいタイプの創作者なのか――シルベスター氏の答えは明快だ。「一言で言えば,システムクラフター(system crafter)です」。
毎回同じ順序で進むイベントの連なりではなく,互いに連携して動く要素を組み合わせ,毎回一貫して興味深い物語を自動的に生み出し,しかもプレイヤーの行動に反応するシステムそのものを設計する人。その役割をぴったり言い表す言葉は,まだ存在しないのかもしれない,と氏は言う。
「だからこそ,とてもワクワクするのです」とシルベスター氏。絵画から音楽,小説,映画へと続いてきた人類の創作の系譜の先端にゲームがあるが,30〜40年前にはこうしたものはほとんど存在しなかった。土台にできる先行事例が乏しく,まだ誰も成し遂げたことのない新しいことを発見できる。「まるで,ホラー映画を誰も作ったことのない世界で,初めてのホラー映画を作るようなものです」。
音楽や映画はやり尽くされ,小さな居場所を探す環境だが,ゲームは「映画の100倍も幅広い」のだという。多くの失敗を重ねながらでも価値あるものを生み出しやすい――「50年後,100年後には,これは今よりはるかに難しくなっているでしょう」。
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もっとも,その新しい創作が扱う根源は,結局のところ人間や人間社会,人間の思考という,従来の創作と共通するテーマだ。イ氏が少し冗談めかして「人間のことがお好きですか」と尋ねると,シルベスター氏はこう答えた。
「人間は,この宇宙で最も恐ろしく,最も魅力的で,最も強く,そして最も愛すべき,最も複雑な存在です。だからこそ大好きなのです」。
同時に人間の内側には多くの闇や暴力性もある。「人類を現実的に見るとは,人間のさまざまな側面を同時に見つめ,統合しようとすること。好きか嫌いかを一方に決めつける必要はありません」。
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ここから話は「RimWorld」の核心へ。バニラ版では人間の死体を食べる「カニバリズム」がほかのキャラクターへのペナルティとして働く。これは「コードの側が善悪を決めている価値判断ではないか」というイ氏の問いを,シルベスター氏は明確に否定した。
「ゲームは行為に抽象的な価値判断を与えているわけでも,『宇宙がこれは正しい/間違っている』と宣言しているわけでもありません。ただ,人々が目にした出来事にどう反応するかを描いているだけです」。
それは「どうあるべきか」を語る規範的(normative)な文ではなく,「何が起きているか」を述べる記述的(descriptive)な文にすぎない,というわけだ。
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その設計思想が大きく前進したのが拡張「Ideology」だ。シルベスター氏いわく,これは「人によって価値観が異なるという事実をモデル化する試み」だという。
対立の多くは,結果への到達方法をめぐる意見の相違ではなく,単に「人によって望むものが違う」ことに行き着く。「ある人がチョコレートアイスよりバニラアイスが好きだと言うのと変わりません」。
カニバリズムが正しいか間違っているかも,一部は単なる好みの問題なのだと氏は言う。
ここでイ氏が「道徳とはきわめて相対的なものだ,というメッセージとも受け取れるが,深読みしすぎか」と踏み込むと,シルベスター氏は「かなり正確な見方だ」と認める。
重要なのは,いま自分が最善の方法を計算しているのか,それとも単にどちらかが好きなだけなのかを区別すること。「もし客観的な道徳があると言うなら,ある人たちの好みは正しく,別の人たちの好みは間違っている,という意味になります。しかし,どちらが正しいかを判定する“テスト”は存在しません。カニバリズムの是非を教えてくれる“空の上の何か”を,私は信じていないのです」。
だからこそ宇宙は理解しにくく,物事は複雑になる。「人は最終的な答えを欲しがりますが,現実にはそれは与えられず,私たち自身で見つけ出さなければならない。Ideologyではまさにその部分を描きたかったのです」。
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ここにこそ,従来のメディアの作家とゲームの作り手の最大の違いがあるとシルベスター氏は語る。
映画や小説では「これが正しい答えだ」と示すのは簡単で,「AならばBとCが起こる」と原因・結果・帰結を描く。だが「常にこれが正解だ」と明示するゲームを作るには,最後に決められた結論を押しつける――カットシーンや事前に書かれたストーリーを使うしかなく,その部分はもはやゲームとは言えないのだ。
デザイナーは本質的に結果をコントロールできない。だからこそこのメディアは,道徳のシステムがどう機能し,どう機能しないのかを検証するのに向いている。
「主眼は,人々に『もしこうだったら』を自由に探求してもらうことであって,毎回『これが正解です』と示すことではないのです」。
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話題は,多くのプレイヤーが実際に楽しむ“タブー破り”へ。イ氏はジョルジュ・バタイユのタブーと侵犯の快楽論を引きつつ,「カニバリズムプレイをする人々を,制作者としてどう見ているか」と尋ねた。
シルベスター氏は「ゲームとは感情を生み出すためのシステムです。人は何かを感じたいのです」と応じる。勝敗,物語,そしてタブーに踏み込み道徳観をもてあそぶこと自体が感情的体験になる。子どもが善悪を試して良心の反応を確かめるように,あるいは「こんなことをしてみたんだけど,どう思う?」と友人に見せて信頼を示すように,それは人と人とがつながる方法でもある。
「昔のゲームでは,そうしたことは偶然に起きる要素にすぎませんでした。私のデザイン手法の多くは,偶然うまく機能した要素に気づき,その糸をたぐり寄せて,ゲームの本質的な一部として組み込むことなのです」。
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興味深いやり取りもあった。イ氏はバニラ版からIdeologyへの移行で,カニバリズムへの反応が「全員一律のペナルティ」から「イデオロギー次第」へと変わったことに触れ,「タブーを越える快楽がむしろ薄まったのでは」と問う。
シルベスター氏は「信念を自分で作れるようにすると,逸脱を別のレイヤーに移しただけ」と答えた。バニラでは全員カニバルのコロニーはすぐ精神崩壊して運営不能だが,「カニバルの信念体系をIdeologyで作れば,そのタブーをさらに深く掘り下げていける」。体験を弱めるどころか,もっと先まで突き詰められるのだという。
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一方で「こんなことまで何でもできるのは問題では」という異議もある。
シルベスター氏は「不快さも一つの感情であり,正当な体験」としつつ,「人を不快にさせること自体を目的に何かを入れたいと思ったことはありません。それは搾取的です」と明言。特定の政治勢力や宗教を持ち上げたり抑え込んだりする意図の要素はゲームに一切なく,「何よりも“考える”というプロセスそのものに価値を置いている」と語った。
プレイヤーが付けた「戦争犯罪シミュレーター」「ジュネーブ条約チェックリスト」「臓器摘出シミュレーター」「人間の皮の帽子」といったあだ名についても,「とてもいい。気に入っています」「あれは非難ではなく,愛情のこもったミームだと思います」と笑顔で受け止めた。
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では,過酷な辺境で絆を育む“温かい共同体”を思い描く制作者として,暗いプレイに戸惑いはないのか。
シルベスター氏は,戦争犯罪的な遊び方は長期的には主流ではないと見る。「みんな一度試して,友だちに見せて笑って,その後はより健全な社会を築こうと協力するプレイに戻っていく」。信頼の厚いコミュニティは住みやすく,より大きな力を持つ社会になりやすい――ゲームはその現実のバランス(無差別な暴力より協力のほうがはるかに効果的,ということ)を反映している。
「『Mass Effect』でもプレイヤーの約85%が“善人側”を選んだと指摘されています。『RimWorld』でも同じ傾向です」。行き過ぎたプレイやModについては「あくまでビデオゲーム。現実のどこか別の場所でではなく,ゲームの中でやってもらったほうがずっといい」「12歳くらいの男の子がどうなるか試している,といったところでしょう」と達観してみせた。
“ショッキングなMod”については「名前を挙げると誰かが検索してしまうので言いません」としつつ,こう続けた。
「100万人規模の都市を想像してみてください。そこでは想像しうる限り最悪のものも含め,あらゆる犯罪が必ず起こります。母数が巨大だからです」。極端なものは巨大な炎の中の小さな火花にすぎず,作品全体で大きな割合を占めるわけではない,というわけだ。
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この流れからイ氏は,「RimWorld」を「制作者・プレイヤー・モッダーの意識が一つに結びついた“関係性としてのゲーム”,一種のネットワーク」と捉える見方を提示。シルベスター氏も「本当にそのとおり。ほかに考えようがありません」と全面的に同意した。
「人々が私の作ったものを土台にさまざまなものを作り,自己表現の方法を学んでくれたことを本当にうれしく思います」。そのために重要なのは「人々が望むあらゆる形で自己表現できるようにする勇気」だという。
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続いて,文学・映画批評の世界でしばしば論争になる「誤読」の概念をゲームに当てはめる問いへ。シルベスター氏は,ゲームづくりの一般原則として「プレイヤーが実際に体験したこと・感じたことは,おおむね正しい」と語る。
「ゲームの仕組みが動いている以上,実際に起きたことこそが真実であり,デザイナーの意図はあまり重要ではありません」。自分にあるのは大まかな方向性と全体としての哲学だけで,問題の現実は誰か一人の頭で把握しきれるほど単純ではない。
「私は作品を世に出し,あとは人々がそこから何かを受け取る番になる。彼らが何を受け取るにせよ,それはその作品の中に確かに存在しているのです」。誰かが本当にそう体験したのなら,その体験を「間違っている」とは言えない,と氏は述べた。
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ここでイ氏は最も挑戦的な問いを投げる。「価値判断をしないという姿勢自体も,一種のメッセージになり得るのではないか」。例として挙げたのは肌の色だ。
「RimWorld」の各ポーンは異なる肌の色を持つが,その違いがキャラクター同士の相互作用を生むことはない――「肌の色をめぐる論争や葛藤を,制作者は遮断したかったのではないか」。
シルベスター氏は率直に認めた。「これは非常に興味深い問題ですが,人々をあまりに強く刺激してしまうテーマなので,あえて描かないことにしました」。だからこそ肌の色からは人種が判別できないよう設計されている(濃い肌でもインド系かアフリカ系か豪州先住民か分からず,明るい肌でも東アジア系かノルウェー系か分からない)。
「踏み込みすぎるとゲームをかき乱してしまう。ただ,将来のどこかのデザイナーがその点を語ろうと試み,メカニクスに組み込むことはありえるでしょうし,興味深い試みになると思います。今はそのタイミングではないと感じました」。
なお拡張「Biotech」では,遺伝的な長所短所を持つゼノタイプ(ゼノ・ヒューマン)を登場させ,Ideologyではそれらに対する態度の違いを描いている――これを人種・肌の色の関係性の一つの“SF的な描き方”として受け取ることもできる,と補足した。
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「100%完全に客観的な「RimWorld」を作りたいか」というイ氏の問いに対し,シルベスター氏は「いいえ,できません」と答え,重要な持論を展開した。
「現実の世界そのものより小さい,現実世界のモデルを作ることはできません」。複雑系には単純化できない複雑さのレベルがあり,世界について語るあらゆる試みには解釈と曖昧さが伴う。そして――「良いゲームを作ることは,現実世界をそのまま再現することではありません」。
氏はこれを「イマーシブの誤謬(immersive fallacy)」と呼ぶ。すべてのゲームが現実と同じ完全な世界を目指している,という誤った前提だ。
「チェスやポーカーを思い浮かべてください。慎重に制限が設計された人工的なシステムです」。
娯楽性を生むのは,現実より小さく理解しやすく作られ,因果関係が明快で,関心のある相互作用が前面に出ているからこそ。「現実はノイズだらけで,テンポも最悪。だからゲームデザインとは複雑さを削ぎ落とすことであり,要素を増やすことではありません」。
感情的な物語の瞬間,道徳的な選択,戦略的に面白い選択肢を増やし,作業感ばかりの退屈な行為や背景ノイズを減らす――それが目指すところだという。
イ氏は「神になりたいのか,芸術家でありたいのか」と問うていたと明かし,「結局は芸術家としての嗜好の問題なのだと受け止めた。世界を動かす最も核心的な要素だけを集めて小さな世界を作るのは,従来のメディアの芸術家とまさに同じ文脈の“抽象”だ」と総括した。
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限られた時間の中で,何に取り組むかをどう選ぶのか。シルベスター氏はこれを「タスク選択(task selection)」と呼び,「ゲームデザインにおいて最も重要なのは,次に何に取り組むかを決めることです。それこそがゲームデザインなのです」と語る。
放っておくと人は気分のまま,自己満足的に「面白いからやりたいこと」を追いがちだ(グラフィックス好きのプログラマーがついグラフィックスばかり磨くように)。だが,ある程度を超えるとそこを良くしてもゲームは良くならない。
「1000万通りの選択肢があって最適は1つ。現実には上位半分か上位10%に入るものを見つけられればいい」。だからこそ,時間をかけてアイデアのプールを蓄積し,ときどき長所短所を分析・比較して,上位に浮かんだものから取り組む――氏が普段から実践している方法である。
そのアイデアの蓄え方も具体的だ。シャワー中や運転中にふと降りてくる思いつきを必ずメモし,100ページ分のメモを必要なときに見返す。
「最初の日に拡張版を順番まで決めておくわけではありません。時間をかけて蓄え,ときどき見直し,どれが一番強いアイデアか,互いにどうつなげられるかを考える」。
分析を一度にまとめてやるとその瞬間の偏りに引きずられるため,プロセスを時間的に分散させて柔軟性を保つことで,質の高い判断ができるのだという。
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対談は,AI時代の読み解きへと進む。イ氏は拡張「Anomaly」に登場する“超知能”が制御不能な現象をばらまく一方,その世界自体は制作者に強くコントロールされているという「奇妙な逆転」に着目した。
シルベスター氏は「自分より賢いものをどう書くか,という問いに行き着きます」と応じ,「RimWorld」の世界に最初から存在する超知能「Archotech(アーコテック)」について語った。
Archotechは宇宙の巨大構造物や惑星深部・恒星内部に隠れた,人間の理解をはるかに超える存在。「私は彼らを“全能の存在”として描きました。しかし,彼らはもはや何の関心もないので,物語を支配しません」。
もし関心を持てば一瞬で人間を消し去り作り変えられてしまう。だからこそ人間と同じ世界に共存できる。氏の比喩はこうだ――「オフィスビルの隣のアリ塚のようなもの。ビルの中の人々はアリ塚など気に留めず,ただ,ときどきうっかり踏みつぶしてしまうことはある」。
プレイヤーがArchotechと会話することは決してなく,理解できる目的も持たない。「彼らが何かをしようとしているなら,あなたが理由を理解する前に,それはもう完了しています」。
プレイヤーが触れるのは,彼らが吐き出した“ゴミ”や偶発的な副産物にすぎない。バニラ版でみんなの気分を落ち込ませるサイキック・ドローンも,実は遠方のArchotechが原因――その単純な要素をAnomalyで大きく広げたのだという。
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では,AIが多用される現在のゲーム開発環境を,超知能を描いた立場からどう見るか。
シルベスター氏はAIのアラインメント問題に触れつつ,「現時点では,ゲーム開発でそれが大きな問題になっているとは思いません」と冷静だ。
「AIでコードを生成しても,自分に十分な能力がなければコードをきちんと読まず,品質がひどくなって後で問題を引き起こす。私はお勧めしません。ただ,それでゲームのメッセージが変質することは基本的にない。要するに問題はクオリティの低さだけです」。
いずれAIがより多くを生み出す時代には「AIと共にどんな目標を定義するかを私たち自身が決めねばならない」が,今はまだその段階ではない,とした。
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締めくくりに,未来の開発者へのアドバイスを求められたシルベスター氏は,2点を挙げた。
1つは「このゲームがなぜうまくいくのかについての理論を,きちんと持つこと」。ゲームは感情的な反応を生む仕組みであり,その構成要素が何で,なぜ狙った感情を生むのかを分析できる必要がある。
もう1つは「とにかく安く作って,どんどんテストすること」。氏は「RimWorld」に至るまでに,グラフィックスを一切入れない“グレーボックス”だけのプロトタイプを6種類,それぞれ1〜1か月半ほどかけて作ったという。
「初日に最終形を全部決めてしまうのではなく,作っているものは変えていく覚悟を持つこと。これも重要です」。
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会場からのQ&Aも示唆に富んでいた。「自分を物語作法の後継者と見るか,新たな学派を生み出していると感じるか」との問いに,シルベスター氏は「物語の脚本執筆はほとんどしていません。むしろ意図的に避けています。私が好きなのはシステムを作ることです」と回答。多くのゲームは対戦・報酬サイクル・交流に焦点を当てており,システムで物語を生む領域はまだあまり掘り下げられていない,とした。
別の参加者は,ポーンのセリフをAIで生成するModを例に「AIをストーリーテラー(ランディ・ランダムのような語り手)そのものに据えることをどう思うか」と質問。
シルベスター氏は,出来事を文章で描写する“実況アナウンサー”的な使い方は有効な一例になり得るとしつつ,「本質的な部分――プレイヤーが何をし,どんな選択をしているか――は変えていない」と整理。一方,機械学習で“次に何が起きるか”を判断させる使い方には慎重だった。
「ゲームデザインで常に重要なのは,この先何が起きるかをコントロールできること。襲撃の間隔や敵の強さを予測可能に調整できることです」。機械学習モデルは挙動の理由が理解しにくく,変更も難しく,運用コストも高く壊れやすい。
「ゲームは本質的に要素を削ぎ落とすことが重要なので,機械学習が本当に価値を発揮するケースはほとんど,あるいはまったくないと考えています」。
「あなたの思考はまるで建築のように体系立っている。その論理的な考え方は何が育てたのか」という大学生の問いには,「複雑な問いもきちんと構造化していけば,そこから洞察を得られると信じてきました」と回答。難しそうなものを“ブラックボックス”と決めつけて諦めるのは簡単だが,同じ対象を別の切り口で何度も分解し分析する習慣があれば,かなり深いところまで到達できる。
「そして私は単純に,そうやって考えること自体を楽しんでいるのだと思います」と語った。
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対談の最後にイ氏は,「『RimWorld』が何を語ろうとしているのか」への自分なりの答えをこう述べた。
「タイナン・シルベスター氏が作り上げたのは,一つの巨大で動的なネットワークであり,その中で生じるあらゆる結果と,そこに関わるすべての人々だ。氏はその枠組みだけを作り,枠組みの中で動く全体こそが成果物なのだ」。
物語は焚き火を囲んだ原始の時代から続く人類の創作物だが,「RimWorld」は難度設定そのものを「どのストーリーテラーを選ぶか」という形にしている――「これは物語の次の世代です。私たちは物語そのものではなく,物語を創作するためのツールを作っているのです」。
物語メディアとして次世代のゲームを最前線で創り続けるシルベスター氏への感謝を述べ,対談は幕を閉じた。




















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