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AAAスタジオは外部開発とどう向き合っているのか。Blizzard,SIE,Epicの担当者が語る「信頼の複利効果」とパートナー選定の基準[gamescom latam 2026]
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印刷2026/05/01 15:56

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AAAスタジオは外部開発とどう向き合っているのか。Blizzard,SIE,Epicの担当者が語る「信頼の複利効果」とパートナー選定の基準[gamescom latam 2026]

 ブラジルのサンパウロで開催中の「gamescom latam 2026」で,AAAタイトルの開発における外部パートナーシップをテーマにした「グローバル規模のゲーム構築:AAAスタジオにおける外部開発の編成手法」(Building Games at Global Scale: How AAA Studios Orchestrate External Development)というパネルディスカッションが行われた。

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 登壇したのは,Blizzard Entertainmentのデイヴィッド・ラム(David Lam)氏,ソニー・インタラクティブ・エンターテインメントのジュリアン・カスタノ(Julian Castano)氏,そしてEpic Gamesのステファニー・アーネット(Stephanie Arnett)氏という名だたるAAAスタジオで外部開発(External Development)を統括する面々だ。
 モデレーターは地元ゲーム業界誌The Gaming Eraのジャーナリストであるマルセロ・ヘンリケ・ヒメネス・ヴィエイラ(Marcelo Henrique Gimenes Vieira)氏が務めた。

 SIEのカスタノ氏は,外部パートナーを選定する際の基準として,「プロダクションの成熟度」「スケーラビリティ」「再現性」「コミュニケーションと透明性」の4つを挙げた。同氏によれば,かつてのように「高品質なアセットを納期通りに納める」ことは,今や議論の前提条件に過ぎないという。
 現在のAAA開発では,プロジェクトの核心部分に外部パートナーが深く関与することが常態化しており,単なる「外注」ではなく,ビジネスプロセスそのものの成熟度が厳しく問われるわけだ。

 また,アーネット氏はそれに続き,より具体的な「足切り」の条件にも触れた。Epic Gamesでは「Unreal Engineの経験」が必須であり,過去の経験がいかに優れていても,技術力がなければスタートラインに立てない現実がある。これは飛躍の機会を狙うラテンアメリカの開発スタジオだけでなく,特定の技術に強みを持つ小規模な日本のチームにとっても,自社の技術をどのプラットフォームに最適化させるべきかという点で大きな教訓となるだろう。

右から,Blizzard Entertainmentのラム氏,SIEのカスタノ氏,Epic Gamesのアーネット氏,そしてモデレーターを務めたヒメネス・ヴィエイラ氏
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 セッションの中で象徴的だったのは,ラム氏が言及した「信頼の複利効果(Compounding trust)」という言葉だ。AAAスタジオは,一度信頼関係を築いたパートナーに対しては,継続的に発注する傾向が強い。これは,パートナー側がスタジオのパイプラインやIP(知的財産),企業文化を深く理解することで,開発効率が加速度的に向上するためだ。
 この「複利」の輪に入るためには,まずリスクの低い小規模な案件で着実に実績を作り,スタジオ側の信頼を勝ち取ることが不可欠となる。ラム氏は,「最初からトップを狙うのではなく,一歩ずつ階段を上がることが重要だ」と,会場のデベロッパたちに語りかけた。

 一方で,物理的な課題として挙げられたのが「タイムゾーン」だ。アーネット氏は,ライブサービス型のタイトルでは即時の対応が求められるため,時差が最大の障壁になり得ると指摘していた。これは解消不可能な問題ではない。カスタノ氏はチーム全員が流暢な英語を話す必要はないとしつつも,フィードバックの意図を正確に咀嚼し,現場に伝えられる「ブリッジ役」になり得る人材がパートナー側に存在することの重要性を説いた。
 また,ラム氏はNetEase時代の経験を引き合いに出して北米と中国の文化的な差異を例に挙げ,「自らのバイアスを持ち込まず,相手の文化を観察し,理解しようとする姿勢」が,グローバルな協力体制を築くうえでの鍵になると述べた。

 昨今の業界の関心事であるAIについても,パネリストたちの見解は一致していた。効率化のためのツールとしての活用には肯定的だが,ゲームの核となるコンテンツ制作については,依然としてアーティストの「手」による作業が重視されている。
 カスタノ氏は,「我々はクラフト(職人技)を尊重している。異なるやり方を探ってはいるが,生成AIによるコンテンツ制作を議論する段階にはまだない」と明言。アーネット氏も,「アーティストや職人がゲームを作る」という目標が変わることはないと付け加えた。

 ちなみに,Epic Gamesは,もともと外部の受注相手だったブラジルのAquirisを2023年4月に買収している。現在はEpic Games Brasilとして「フォートナイト」のコンテンツ制作を担うなど同国でも大きな存在感を示しており,インディースタジオが成長していくうえで安定した経営を追求する1つのオプションとして,現地で注目されているようだ。

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 今回のディスカッションで示された方針は,独自の表現力や細部へのこだわりを持つ日本のクリエイターにとって,追い風ともいえるだろう。最新ツールによる効率化を取り入れつつ,人間にしかできないクオリティを担保できるチームこそが,次世代のAAA開発をサポートし,飛躍を目指すビジネスモデルにおいて不可欠な存在となるはずだ。

Epic Games Brasilが,インディーだったAquiris時代に開発した「Horizon Chase Turbo」は,リストラに伴い近日中にもサービス終了する予定だ。必ずしも「外部提携元で認められて買収される」というパスが,常に正しいというわけでもない
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