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AIが実装の壁を崩していく時代に,ゲームは何で勝負するのか。NEXON Korea共同代表が「文脈の複利」を語った基調講演をレポート[NDC26]
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印刷2026/06/16 13:43

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AIが実装の壁を崩していく時代に,ゲームは何で勝負するのか。NEXON Korea共同代表が「文脈の複利」を語った基調講演をレポート[NDC26]

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 NEXON Koreaのカンファレンスイベント「Nexon Developers Conference 26(NDC26)」では,NEXON Korea共同代表のカン・デヒョン氏による基調講演が行われた。テーマは「実装が容易になる時代,我々は何で競うのか」。AIによってゲームの“実装”という壁が急速に崩れていくなか,開発者は何を競争力とすべきかを問う,重みのある内容となった。

 カン氏は,これは大きな問いだが,自身にとってまったく新しい問いではないと切り出した。8年前,まさにこのキーノートのステージで,似た問いを投げかけたことがあるというのだ。当時のタイトルは「楽しみに向けた航海」。氏は少し恥ずかしい告白から話を始めたという。かつてカーリングをとても退屈なスポーツだと思っていた,という話だ。ルールも分からず,解説も耳に入らず,応援するチームもいなかったからである。

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 本日(2018年4月24日),ネクソングループが主催するゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 18」が韓国で開幕した。Nexon Korea副社長のカン・デヒョン氏が,ゲームの面白さはどこから生まれるのかを来場者に問いかけたキーノートの模様をレポートする。

[2018/04/24 20:41]

 ところが2018年の平昌オリンピックで,そのカーリングが国中を熱狂させた。競技のルールはそのまま。ストーンが重くなったわけでも,リングが大きくなったわけでもない。変わったのは“文脈”だった。応援するチームができ,手に汗握る逆転ドラマが生まれ,みんなで叫べる「ヨンミ」という名前ができた。
 これに着想を得て当時のライブゲームのデータを開いてみると,興味深いことが見えてきたという。ゲームの満足度を分けるのは,我々がふだん“実装”と呼ぶグラフィックスやサウンド,ルールといった静的な要素だけではなかった。ゲームの面白さには,ルールのような静的要素よりも,「誰と出会い,どんな出来事を経験するか」という動的な要素が大きく作用する場面が多かったのだ。8年前の結論は,こうだった。面白さの本質は,実装の外側にもある

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 今日も同じ問いを携えてきた,とカン氏。ただし状況はより切迫している。2018年には「本質は実装の外側にもある」と発見するだけで十分だった。しかし2026年には,実装という壁そのものが急速に崩れつつある。ならば,本質はこれからどこへ向かうのか。それが今日の問いだという。
 まず氏は,「実装が容易になる」というのが心地よいスローガンではなく,目の前の事実であることから確認していく。誰しもこんな経験があるのではないかーーNetflixを点け,「何を観よう」と30分スクロールし続け,結局何も選べないまま消してしまう。観るものがないからではない。多すぎるからだ。選択肢が爆発すると,むしろ選ぶことが難しくなる。

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 いま,ゲーム産業に同じことが起きている。2015年にSteamでリリースされたゲームは約2800本。2025年には約2万本。10年で約7倍に増えた。ところが,この2万本あまりのうち,レビュー1000件を超えて幅広い注目を集めたゲームは608本,全体の約3%に過ぎなかった。供給は爆発しているのに,ユーザーの一日は依然として24時間のままだ。だからNetflixのスクロールと同じことが起きる。選択肢が増えるほど,ユーザーは確実に信頼できる場所に留まるのである。
 実際,2024年にはPCとコンソールのプレイ時間の57%が,リリースから6年が過ぎたゲームに集中した。プレイヤーの時間の半分以上が新作ではなく既存ゲームへと流れており,新作に回る時間はその分だけ減っているということだ。

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 資本の流れも同じ話をしているとカン氏。Steamの同時接続者数はここしばらくで3度も記録を塗り替え,今年3月にはユーザー数4200万を突破し,過去最高を記録した。業界推定では昨年の売上も史上最大だったという。ところが,ほぼ同じ時期に,ゲーム分野の初期段階への投資は,近年でも最低水準にまで落ち込んだ。一方は史上最高,もう一方は数年内で最低。ひとことで言えば,市場は大きくなっているのに,成功の門は狭まっているということだ。

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 ここにAIが加わる。コードをより速く書き,画像をより速く描き,プロトタイプをより速く作ってくれる。氏はここで蒸気機関を例に挙げた。効率が良くなれば石炭を使う量は減るだろうと誰もが予想したが,結果は正反対で,石炭の消費はむしろ激増した。効率が良くなったことで,それまで手も出せなかった産業までもが軒並み蒸気機関を導入したからだ。仕事が楽になったからといって,競争が終わるわけではない。むしろ土俵は広がり,競争が起きる場所が変わったのである。誰もが簡単にできるようになったことは,もはや優劣を分けなくなり,競争の重心は別の場所へと移っていく。

 これは我々の業界もすでに何度か経験してきたことだ,とカン氏は2つの例を挙げる。
 1つめは,商用エンジンの普及だ。かつてはエンジンを自前で作ること自体が技術力の尺度だった。ところが商用エンジンが一般化したことで,その壁は事実上消えた。では開発費は減ったのか。正反対だ。エンジンでは優劣をつけられなくなると,重心は「何を見せるのか」,すなわちアートとコンテンツへと移っていった。作りやすくなった分だけ,より豊かに,より精緻に作らねばならないほうへと,競争が移ったのである。
 2つめは,デジタル流通の一般化だ。かつてはゲームをパッケージとして製造し,流通網に乗せること自体が巨大な壁だった。その壁が消えると,誰もが世界中にゲームを出せるようになった。すると重心はまた移る。「作って売る」ことではなく,2万本のゲームのなかから「発見され,選ばれる」ことへと。ユーザーの目を引き,関係を結ぶことが最も熾烈な戦場となり,ブランディング,パーソナライズ,マーケティング,UA(ユーザー獲得),アルゴリズムなど,数多くの新たな競争が生まれた。

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 ならば問いはこう変わる。実装が容易になる時代に,重心はどこへ移動するのか。カン氏の答えは「文脈(コンテキスト)へ移動する」だ。これからのゲームは,実装の水準ではなく,文脈の深さで勝負しなければならないという。
 では文脈とは何で,どう働くのか。氏は「メイプルストーリー」の帽子を例に出した。一見それらしく見えるが,メイプルのアバターには被せられない帽子と,ちゃんと被せられる帽子がある。後者は,メイプルというゲームの要求仕様への深い理解のなかでしか作れない。ただし,ここで一つは認めなければならないとカン氏。スタイルガイドのようにデータへ移せる文脈は,AIが今後ますますうまく扱えるようになる。だが文脈には,データだけでは移せないものがある。ユーザーと交わしてきた生きた関係や,守り続けてきた時間がつくり出すものだ。

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 カン氏は,こうして時間が積み上げたものを「文脈資本」と呼びたいという。この文脈資本は,作る側と楽しむ側の両方に積み上がっていく。
 まず作る側の文脈。開発者が何年,何十年と一つの井戸を掘り続けて培ったジャンル理解と感覚だ。Larianが20年かけて積み上げたCRPGの感覚や,15年以上をかけて固まっていったフロム・ソフトウェアの“難度の哲学”のようなもの。AIがコードを代わりに書いてくれる時代だからこそ,この判断の感覚はむしろ貴重になる。ライブゲームなら,ここに運営データやバランス調整のノウハウ,経済システムを回してきた経験までもが加わる。

 そして楽しむ側の文脈。ユーザー同士が結んだ関係,コミュニティが共に記憶する事件,世代を越えて受け継がれる感情だ。「Undertale」のファン考察,「ダークソウル」の“YOU DIED”,「ゼルダの伝説」のスピードランのように,パッケージゲームでもユーザーは文脈を積み上げていく。ライブゲームでは,これがはるかに分厚い。BTSのジン氏とのコラボイベントにユーザーが一斉に押し寄せたり,ロッテワールドの全館貸し切りイベントで1万席の1次予約がわずか30秒で売り切れたりと,データの向こう側にある文脈の深さは,プロンプトでは作れない。AIモデルは誰もが持ってきて使えても,作る側であれ楽しむ側であれ,時間が積み上げた文脈は,お金だけでは買えない。ただ時間によってのみ手に入る。これこそがAI時代の本当の資本,文脈資本なのだという。

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 ただし,見落としてはならない点がある。時間が流れたからといって,それが自動的に資産になるわけではないということだ。同じ20年を作り続けても,作品を出すたびにファンが深まるスタジオもあれば,毎回ゼロから自分を説明し直さねばならないスタジオもある。同じ20年を運営しても,ユーザーの日常に染み込んでいくゲームもあれば,「昔は面白かった」という思い出だけで残るゲームもある。この差は何が生むのか。
 カン氏は,金融の概念を一つ借りてくる。単利と複利だ。単利とは,同じ場所で同じパターンを繰り返すこと。パッケージであれライブであれ,前作で学んだことが次の作品に引き継がれなければ,それは単利だ。複利は違う。作る側では,前作の経験が次の作品の完成度を引き上げる。楽しむ側では,ゲーム内の経験がゲームの外へと広がっていく。直接プレイする時間,動画を観る時間,コミュニティで語り合う時間,クリエイターがコンテンツを作る時間…… これらすべての時間が互いを育てる。利子がまた利子を生むのである。

 複利が実際にどう働くのか,よくある一場面で見てみよう,とカン氏。あるゲームで,特定のダンジョンボスにユーザーが繰り返し倒されているというデータがあるとする。数字だけ見れば結論は単純だ。「難しすぎるので難度を下げよう」。ところがコミュニティを見ると,このユーザーたちはボスの攻略法を互いに分かち合い,クリア映像を自慢し,「ついに倒した」と一緒に祝っていた。だとすれば,このボスは厄介者ではなく,このゲームの“文化”だ。難度を下げた瞬間,その文化を自分たちの手で殺してしまうことになる。データ一つだけでは見えなかったものが,文脈と文脈がつながることで,互いに見えるようになるのだ。
 もう一歩踏み込めば,ユーザーが本当に愛したのはこのボスではなく,「挑戦し,ついにやり遂げる物語」だという,より深い文脈が見えてくる。これが分かれば,同じ感情の曲線を描く新しいコンテンツを設計できる。一つのボスから出発した気づきが,次のアップデート,次のシーズン,次のシリーズの設計原理へと伸びていくのだ。もちろん,こうした分析自体はAIが手伝える。しかし,その結果を前に,難度を守るか否かを決め,責任を負うのは,結局は文脈を知る人間である。

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 文脈の連結は,複利のように働く。最初は遅いが,一定の密度を超えた瞬間,その価値は爆発的に大きくなる。だからこそ時間と連結が重要だ。文脈は一朝一夕には作られない。運営し,見守り,失敗し,直し,また積み上げる。その過程でゆっくりと蓄積されていく。そしてこうして積み上がった文脈はそこで止まらない。経験が連結し,複利で膨らんだ文脈は一つの“世界”を成し,その世界のなかで一つひとつの文脈はさらに大きな意味と力を得る。

 サッカーが良い例だ。サッカーが世界で一番面白いスポーツだから一生の趣味になるのだろうか。実は,サッカーを趣味だと考える人のなかには,実際に試合でプレーする人よりも,そうでない人のほうがはるかに多い。ボールを蹴るうちに面白さを覚える人もいれば,ワールドカップで国民みんなと応援するうちにハマる人もいる。そして意外に多くの人が,実際のサッカーよりも先にゲームでサッカーに出会い,この世界に入ってくる。やがて好きな選手やチームができ,ユニフォームも買い,ダービーマッチに込められた20年来の因縁まで知るようになる。そうして90分が一編のドラマになる。
 何より,こうして積み上がった経験はバラバラに散らばらず,「サッカー」という一つの世界のなかで互いにつながる。自分でプレーする人,中継を観る人,ユニフォームやスパイクを集める人,YouTubeを観る人,ゲームで楽しむ人が,同じ生態系のなかで互いの経験をやり取りする。150年という時間が,この生態系によって複利で積み上がってきたのだ。本当の格差は,面白さの大きさよりも,「経験が複利で積み上がる世界があるかどうか」によって生まれる。

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 カン氏は,自社のゲームで起きた出来事も紹介した。あるゲームで5年間ともに遊んできたカップルが,思い出とともに結婚の知らせを届けてくれたという。二人が喧嘩して口をきかなかった日でも,ボスだけは一緒に倒さねばならず,ゲームのなかでだけは会話を続けていたのだそうだ。「我々がしたことは,小さなお祝いを送ったことだけ。その5年間の思い出は,我々のものではないのですから」。二人にとってゲームは趣味ではなく,ともに生きてきた時間そのものだった。

 こんな出来事もあった。2009年,「メイプルストーリー」で,あるユーザーがイベントで受け取った「黒い包み」を,街・ヘネシスのど真ん中で開けた。中からは当時の超高レベルボスモンスター「ジュニアバルログ」が飛び出し,街は一瞬で大混乱に陥った。これは運営が企画したコンテンツではなかった。ところがユーザーたちは,この荒唐無稽な事件に「ヘネシス大惨事」という名前を付け,その話は15年以上にわたって伝説のように語り継がれる,メイプルの文化となった。
 そして時は流れて2023年末,今度はユーザーたちが,その時代のメイプルを自らの手で作ってしまった。創作プラットフォーム「メイプルストーリーワールド」では,あるユーザー(天使)が公開した「メイプルランド」で,この事件を再現できるようにしたのだ。運営が作った思い出を元に,ユーザーが新しい世界を自ら建てたのである。

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 この二つの場面は,「我々が何かをうまくやった」という話ではない,とカン氏は言う。むしろ逆だ。ユーザーはゲームを消費しない。ゲームのなかで生きている。ギルドを作り,取引をし,新規ユーザーに道を教え,愛する人と時間を積み,去った人を懐かしむ。我々がコードで作ったのは,その人生が広がる舞台だけであって,人生そのものはユーザーが満たした。そして皆さんのゲームにも,きっとこうした場面があるはずだ。ただ,我々がまだ十分に見ていなかっただけなのだと。
 これはつまり,文脈の複利は開発会社が一人で作るものではなく,ユーザーとともに作り上げていくものだ,という意味だ。そして氏は,これこそがゲームという媒体ならではの特別さだと考えている。小説にも映画にも熱いファンダムはある。だが,ファンが作品のなかに入って生き,その人生がリアルタイムで作品そのものを変えていく媒体は,ゲームだけだ。サッカーが150年かけて成し遂げたことを,ゲームはユーザーの手で直接世界を築かせることによって,一世代のうちに成し遂げる。ユーザーが過ごした時間がゲームの文脈になり,その文脈が次のユーザーの経験になる。ユーザーとともに成し遂げたこの循環は,どんなAIにも複製できない。

 だからカン氏は,ゲームは“出力物”ではなく“約束”だと考えるという。ライブゲームでは「この世界は続いていく」という約束として。パッケージゲームでは「完成した世界がいつまでもあなたを待っている」という約束として。あなたが積み上げた時間を無駄にしない,という約束だ。AIは出力物をますますうまく作るだろうが,約束だけは出力できない。約束は守られたときにだけ積み上がり,破られた瞬間に最も速く崩れる。我々の業界は皆,その重さを知っている。昨日の約束を守ってこそ,今日の約束が信じられる。その信頼こそが,これまで語ってきた文脈資本の別名なのである。

 この文脈と約束の話で,一つ触れておきたいことがある,とカン氏。「文脈が時間でしか積み上がらないのなら,結局は古いゲームを長く運営してきた大企業が有利という話ではないか。始めたばかりのチームはどうすればいいのか」という疑問が浮かぶかもしれない。だが,氏はそうは思わないという。複利で格差を生むのは元金の大きさではなく,利率,つまり“積み上げ方”だからだ。今日登場したゲームをもう一度見てほしい。Larianはかつて倒産寸前まで行ったスタジオであり,Robloxも2006年に登場した当時は誰も注目しないゲームだった。彼らが今の地位に上り詰めたのは,スタートが大きかったからではなく,小さな経験一つも取りこぼさず,次の作品へ,次のユーザーへとつなぎ合わせてきたからだ。むしろ小さなチームほど決定が速く,ユーザーとの距離が近いため,今日学んだことを明日のゲームへとより速く再投資できる。利率では,小さなチームが有利でありうるということだ。

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 プレイ時間の半分以上がリリース6年超のゲームに集まるという事実も,見方を変えれば,強者の閉じた壁ではなく,文脈の複利が実在することの証拠だ。だから本当の戦いは,実装の競争ではなく,複利構造を設計する競争である。逆に言えば,どれほど大きな元金も単利のままでは現状維持にすぎない。ネクソンが持つ20年の文脈もまた,完成した資産ではなく,今日積み上げることをやめた瞬間に光を失う資産なのだ。

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 ここでカン氏は,冒頭の問いに戻る。実装が容易になる時代,我々は何で競うのか。氏はこの問いに「文脈の複利」と答え,話を締めくくるにあたって2つの“AI”を語りたいとした。一つは,我々が毎日口にするArtificial Intelligence(人工知能)。その上に,二つめのAIを誰よりも分厚く積み上げること。それがAccumulated Intelligence(蓄積された知能),時間がつくる競争力だ。
 Artificial Intelligenceは買って使える。しかしAccumulated Intelligenceは,文脈を積み上げてきた時間によってしか作れない。AIが作る帽子は世界に数百万個ある。だが,あなたのゲームでだけ意味を持つ帽子,ユーザーが見た瞬間に微笑む帽子は,あなたにしか作れない。重要なのは出発点の大きさではない。複利は,始まりが小さくてもすぐに大きくなる。重要なのは,今日積み上げ始めたかどうかだ。

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 そしてその文脈づくりは遠くにあるわけではない,とカン氏。NDCもまた,毎年互いの文脈を分かち合う場だ。今年も数多くのセッションが皆さんを待っている。他チームの文脈から学び,自分の文脈を分かち合い,その連結から新しい可能性を見つけてほしいと呼びかけた。
 「8年前,私はカーリングを退屈なスポーツだと思っていた,という告白でこのステージに立ちました。今日はこう申し上げて降りたいと思います。競技はそのままでも,文脈は世界を作る。皆さんのゲームが,誰かにとってそんな世界になる瞬間も,今日積み上げ始めたその時間の上にやって来るでしょう」。そう述べて,カン氏は基調講演を締めくくった。
 時間が積み上げる“文脈資本”という概念は,AI時代を貫く重みのあるメッセージだったといえるだろう。

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