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Blu-ray Discは,前世代のDVDより先に姿を消してしまうのか? 時代に翻弄されたその歩みを,光ディスクの歴史とあわせて振り返る
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印刷2026/04/22 07:00

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Blu-ray Discは,前世代のDVDより先に姿を消してしまうのか? 時代に翻弄されたその歩みを,光ディスクの歴史とあわせて振り返る

 CDやDVDなどに続く第3世代の光ディスクとして登場し,映画やアニメ,ゲームなどの幅広いパッケージ商品に使用されてきたBlu-ray Disc(以下,BD)だが,その雲行きが怪しい。

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 2023年にパナソニック,2025年にソニーが記録メディア生産を終了し,それ以降もパイオニアの光ディスク事業撤退,TVS REGZAやソニーのBDレコーダー生産終了,PC周辺機器メーカーであるバッファローやエレコムのPC向けBDドライブ販売終了といったニュースが続いている。


 こういったBD縮小の流れに驚いている人もいると思うが,では最後にBDを触ったのがいつかを考えたとき,明確に思い出せない人が多いのではないだろうか。

 テレビ番組の録画データを視聴するだけなら,わざわざBDへ保存する必要はないし,見逃し番組視聴サービスの登場などによって,録画データを保存したBDを誰かに渡すといったことも少なくなった。そもそも,若年層を中心にテレビを視聴しない人の割合も増えている。BDの映像パッケージを購入した人の中にも「目的は特典だったから,BDはケースから出していない」といった人が一定数いるだろう。

 4Gamer読者には今さら説明するまでもないが,ゲームもダウンロード販売が主流になっており,PlayStation 5やXbox Series XにもBDドライブ非搭載モデルが登場している。BDの物理メディアをドライブで利用する機会が激減しているのだ。

 今後も利用機会は少なくなっていくと考えられるが,興味深いのは,競合する相手もいなければ,次世代となるメディアも登場していないのに終焉を迎えそうなところ。言い換えると,光ディスクそのものが終わろうとしているのだ。

 そこで本稿では,このBDが登場から今までどのような道を歩んできたのか,光ディスクの歴史を簡単に振り返ってみたい。


BD登場以前の「光ディスク」


 最初に,BDが登場する前の状況について軽く触れておこう。

 高速回転するディスクに対し,レーザー光などを使ってデータを読み書きするリムーバブルメディアを「光ディスク」と呼ぶ。

 初期の一般向け製品としては,1981年に登場した「レーザーディスク」(LD),1982年の「コンパクトディスク」(CD)があり,これ以外にも,PSPで採用された「ユニバーサル・メディア・ディスク」(UMD),ドリームキャストで採用された「ギガバイト・ディスク・ロム」(GD-ROM)なども光ディスクだ。また,書き込み時は磁気とレーザー光,読み出し時はレーザー光のみを使う「光磁気ディスク」(MO)や,音楽用として使われた「ミニディスク」(MD)なども,光ディスクのひとつとなる。

一口に光ディスクといっても,種類はさまざま
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 オーディオCDの最大収録時間は74分。カセットテープではそれより長時間の収録が可能なものが存在したことからも分かるように,容量面で大きなアドバンテージがあったわけではないが,読み出したい部分へ素早くアクセスできるランダムアクセス性能に優れていた。

 これにより,巻き戻すことなくいつでも最初から再生でき,次の章や曲へスキップするのも一瞬で行えるようになったのだ。また非接触での再生となるため,それまでのレコードやカセットテープなどで発生した,繰り返し再生によるメディアの劣化が少なく,画質や音質面で優れる部分もあった。

 LDに映像用のイメージを持っている人は多いだろうが,実はプログラムやデータを記録したLDも登場している。具体的には,パイオニアのMSX(palcom)用や,PCエンジン(LD-ROM2)やメガドライブ(メガLD)のゲームをプレイできる「レーザーアクティブ」向けのものだ。

 CDも最初こそ音楽用となっていたが,データ用途となるCD-ROMが登場すると,ゲーム機ではPCエンジン,PCではFM-TOWNSなどから採用されるようになった。

 容量1.2MBや1.44MBのフロッピーディスクが広く使われていた当時,CD-ROMは安価に製造できる650MBの大容量メディアとして重宝され,パッケージソフト用だけでなく,本や雑誌の付録用としても活躍。また,書き込みが可能なCD-RやCD-RWは,既存のCDドライブで読める再生互換性の高さから,記録用メディアとしても人気となった。

 第2世代となるDVDが登場したのは1996年。直径300mmと大きく扱いにくかったLDに替わる映像用の光ディスクとして開発され,CDと同じ直径120mmでありながら片面1層4.7GB,映像なら約2時間という大容量を実現したのが特徴だ。

 当初はプレーヤーの価格が高く,ビデオレンタルでもVHSテープのシェアを崩せずにいたが,DVDドライブを搭載し,プレーヤーとしても使えるPlayStation 2(以下,PS2)が2000年3月に発売されると,急速に普及していった。

 発売当初のPS2は3万9800円で,当時のゲーム機としては決して安くはなかったが,DVDプレーヤーの価格が2〜3万円だったため,DVDプレイヤーとしても使えるという点で割安感があったのは確かだ。

PS2本体が発売された頃のソフトとしては,ゲーム以外にも映画「マトリックス」のDVDが好調だった
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 また,2000年頃はDVDレコーダーやHDDレコーダーが登場し,家庭での番組録画がVHSテープからDVDやHDDへと移行していった時期と重なる。パッケージソフトの販売やレンタルなどでDVDが身近になると,その手軽さと便利さの影響もあってか,録画メディアとして記録型のDVDが広く使われるようになった。この記録型DVDは4.7GBという容量の大きさから,PC向けのデータ保存用としても期待された。

 ただし,記録型のDVDには複数の規格があり,少々クセが強く扱いにくいものになってしまっていた。例えば,追記型のDVD-Rは1.1GB未満のデータを書き込めず,どんな小さなデータでもダミーデータを加えて1.1GB以上にする必要があった。

 また,書き換え型のDVD-RWは反射率が低く,読み込み時に問題が起こりやすかったほか,PC用としてパケットライトで使用するには初期化に1時間以上必要だった。そして,DVD-RAMはそもそもDVD-ROMと物理的な互換性がない,という有様だ。

 この微妙に扱いにくい記録型DVDに,さらなる混乱を招いたのがDVD+R/RWの登場だ。これはDVDフォーラムによる正式な規格ではないのだが,DVD-ROMとの高い再生互換性をもち,1.1GB未満でもダミーデータなしで書き込み可能,初期化にかかる時間も数分という,使いやすいものだったのだ。

DVD+RWに対応したリコーのドライブ「MP5120A」
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 とくにPCでの利用を考えた場合,DVD-R/RW/RAMのどれよりも,DVD+R/RWの方が使い勝手がいい。しかも,登場当初は最大2倍速だったDVD-Rに対し,DVD+RWは2.4倍と,わずかではあるが高速だった。

 そのためユーザーは,どちらを選べばいいのか悩み,混乱は続いたが,この問題に終止符を打ったのが,規格の統一……ではなく,全規格に対応するDVDドライブ(DVDスーパーマルチドライブ)の登場だった。これにより,どのメディアも読み書きが可能となり,悩む必要がなくなったのだ。

 ずいぶんとマッチョな解決法だが,これがヒット。2003年以降,DVDスーパーマルチドライブが主流となっていった。ただし,物理的な構造が異なるDVD-RAMへの対応はそこまで重視されず,DVD±R/RW対応のものが多かった。

 こうしてDVDの時代が到来したが,2003年には地上デジタルテレビ放送が全国で開始され,一般家庭でも映像の主流がSDからデジタルのHD映像へと移っていくことは明らかだった。メディアとしてはさらなる大容量化が必須となるフルHD時代をにらんで開発されたのが,次世代DVDと呼ばれた「BD」「HD DVD」だ。


「BD」と「HD DVD」はなぜ対立したのか


 BDの規格はソニーやパナソニック(当時の社名は松下電器産業)など9社が中心となり,2002年2月に策定された。これに対しHD DVD(当初は「Advanced Optical Disc」)は,東芝やNECが中心となって提案し,2002年11月に承認された。

 興味深いのは,BD陣営が新たにBlu-ray Discファウンダーズという組織を立ち上げたのに対し,HD DVD陣営は,既存のDVDフォーラムで規格を提案したこと。このことで,「HD DVDこそがDVDの正統な後継規格」という印象を抱いた人は少なくないだろう。

 BDとHD DVDは,405nmの青紫色レーザーを使用するほか,直径120mmで1.2mm厚のディスク,多層化で大容量を実現するといった共通点はあるが,異なる部分も多い。

 大きな違いとなるのが,保護層の厚みだ。BDは保護層が0.1mmと薄く,傾きや反りに強いほか,高密度化と多層化による大容量化がしやすいのが強みだが,製造コストが高くなりがちだった。また傷に弱く,初期の記録型BD-REディスクはカートリッジに入っていた。

BD-RE Ver 1.0のディスク。カートリッジに収められており,現行のBDとは見た目から大きく異なる
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 これに対しHD DVDは,DVDと同じ0.6mmの保護層を採用。物理的な構造が既存のDVDに近いため,ドライブもメディアも製造技術が流用でき,安価に作れるのが強みとされた。ただし,レンズ開口数がDVDと同じであるため高密度化がしづらく,BDの片面1層25GB(初期は23.3GB)に対し,片面1層15GBと容量面で見劣りしていた。

●BDとHD DVDの主な仕様
Blu-ray Disc HD DVD
記憶容量(1層 / 2層) 25GB / 50GB 15GB / 30GB
レーザー波長 405nm (青紫色) 405nm (青紫色)
レンズ開口数 0.85 0.65
保護層の厚さ 0.1mm 0.6mm

 こうして2つの規格が対立することになったわけだが,そもそも,なぜ対立する必要があったのか。大きな理由の1つとしては,各企業が利益を追求したことがあるだろう。

 自社の特許や技術を規格に盛り込めれば,その規格の製品が発売されるたびに特許料が手に入る。また,製造に関わる部分でも,自社の特許や技術が有利になるよう規格を誘導できれば,さらに利益を大きくできる。それだけに,規格化団体内で主導権を握ることが重要だったのだ。

 もちろん理想は,関係するすべての企業が規格化団体に参加して技術を持ち寄り,そのうえで最適と思われる仕様が満場一致で決まることだが,それは不可能に近い。
 可能な限り多くの意見を反映させるのも,いい結果にはつながらない場合が多い。つぎはぎだらけで無駄が多いポンコツになる,あるいは製品化が困難になるといった具合だ。

 話がまとまりやすいのは,業界大手数社が手を組んだ場合だ。ここにBlu-ray Discファウンダーズの設立,ひいては規格の対立につながった理由があると考えられる。

 DVDフォーラム内で新たな規格を策定しようとすると,DVDに関わった多数の企業からの要望が殺到することが予想できたし,何より,すでに主導権を握っている企業の影響が大きい。その点,新規団体なら,先に手を組んだ少数の企業で大枠を決められるし,主導権も握れるだろう……というのがBD陣営企業の思惑だったのではないか。

 一方で,DVDフォーラム内で主導権を握っている方からすれば,わざわざ新規団体へと参加するメリットがなく,そのまま“DVDの後継規格”を策定したいのは当然だ。

 さて,そうして始まった規格争いだが,BDで興味深いのは,DVDとは異なり,先に書き換え型のBD-REから開発されたことだ。このことからも,パッケージソフトより録画機での利用が優先されていたことがわかる。DVDのような記録型での再生互換性問題を避ける狙いもあったのだろう。

 2002年10月に開催された展示会のCEATECでは,ソニーやパナソニック,シャープなど複数のメーカーが可動モデルを出展するほどだった。一般販売も早く,ソニーから初のBDレコーダー「BDZ-S77」が登場したのは2003年4月。翌年の2004年7月にはパナソニックから「DMR-E700BD」,12月にはシャープからBDとHDDを搭載した「BD-HD100」が発売されている。

「BDZ-S77」の希望小売価格は税込みで47万2500円だった
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 ただ,記録型BDの開発が先行した影響で,初期のBDレコーダーは後にリリースされるBDの映像パッケージ(Blu-ray Disc Movie)を再生できないという,少々奇妙な状況を生み出すことにもなってしまった。

「HD-XA1」の初期出荷分には,HD DVDの映画ソフト「バイオハザード」「ムーンライト・ジェリーフィッシュ」が同梱された
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 一方のHD DVDは,従来のDVDと同じくパッケージのビデオディスクを主軸に据えていたようだ。実際,HD DVD-ROMの規格が先に策定されたほか,世界初のHD DVD対応機は,2006年3月に発売された東芝のプレーヤー「HD-XA1」だった。なお,初のHD DVDレコーダーは,2006年7月に発売された東芝「RD-A1」だ。

 実機の登場に2〜3年ほどの差があるが,その間にBDの普及が大きく進んだわけではない。2000年にBSデジタル放送,2002年に110度CSデジタル放送,2003年に地上デジタルテレビ放送が開始されたとはいえ,受信していた家庭は少数。テレビもまだフルHDに対応していないものが多く,「フルHD映像をそのまま録画できる」ことのメリットはまだ小さかった。

 また,録画可能時間は1枚当たり約2時間で,ドラマやアニメの1クールを1枚のディスクに収めるようなことはできなかった。そうなると,大容量HDDを搭載したレコーダーの方が使いやすく,新しもの好き以外はそこまで魅力を感じなかっただろうと思われる。

 別の言い方をすれば,2000年代初頭から半ばまでは,多くのユーザーが「そのうち次世代DVDが必要になるだろう」と思いつつも「今はDVDで十分」だと感じていた時期だった。陣営ごとの開発動機やアプローチの違いもユーザーにとっては関係なく,どちらかを積極的に応援する理由もなかった。

 当時のユーザーの心境で一番多かったのは「似た規格が複数あると使いづらいから,自分が買うまでには統一してほしいなぁ」といったものだろう。実際,多くのショウや技術発表などで両陣営のアピール合戦が続く一方で,2005年頃に規格を一本化しようという動きもあった。

 企業間での無駄な争いが減れば,それだけ損失を抑えることもできるし,開発速度も上がる。しかし,リスクを取らなければリターンも少ないわけで,誰もが納得する一本化は難しい。結局,両陣営とも譲れない部分があって交渉は決裂し,本格的な規格争いに突入してしまった。


多くの企業を巻き込んだガチンコの争いへ


 本格的な製品がまだ登場していない中で,規格争いは少しずつエスカレート。一方が相手の欠点を指摘すれば,もう一方はすぐさま改善するし,一方が優位性をアピールすれば,もう一方も同等の技術や仕様を採用するといった競争が繰り広げられた。

 その結果,ハードウェア仕様や映像フォーマットの面では大きな差がなくなり,どちらが主流となってもおかしくないくらいには完成度が高まっていった。

 どちらでもいいのであれば,より多くの支持を得た方が勝つ。もちろん最終的にはユーザーの支持を得た方が勝つのだが,BDとHD DVD両陣営は,その前にドライブやメディアといったハードウェアの製造会社や,ソフトウェア,つまり映像コンテンツ提供会社の支持を得ようとした。

 ということで,プレーヤーやレコーダーが本格的に登場する2006年まで,ハードウェア関連企業の支持がどうなっていたのか見てみよう。

 BD陣営は規格の立ち上げ時から,日立製作所,LG Electronics,パナソニック,パイオニア,Philips,Samsung,シャープ,ソニー,Thomson(現在のVantiva)と,光ディスク分野の実績がある強力なメンバーを揃えていた。

 Blu-ray Discファウンダーズの立ち上げ後には,三菱電機やTDKなども参加。さらに,デルやHPといったPCメーカーも加わり,「Blu-ray Discアソシエイション」へと改称した2004年10月には,70社を超える企業が集まった。その後も参加企業は増加し,2005年3月にはアップルも幹事企業として参加。同年10月には150超の企業が名を連ねることになった。

 前述のとおり,HD DVD陣営は東芝とNECが中心となって,DVDフォーラム内で規格化を進めていた。同フォーラムにはBlu-ray Discアソシエイションを上回る200超の企業が参加しており,HD DVD陣営が“東芝&NEC”のイメージを払拭するためにDVDフォーラムの名前と参加企業数をアピールすることもあったが,これには少々疑問を感じざるを得なかった。フォーラムへの参加がHD DVD支持を意味してはいなかったからだ。

 そんな事情もあってか,HD DVD陣営はDVDフォーラムとは別に,普及活動を担う「HD DVDプロモーショングループ」を2004年12月に設立。これには東芝とNECだけでなく,三洋電機とメモリーテックも幹事会社として参加していた。

 ただし,三洋電機は2005年4月にBlu-ray Discアソシエイションにも参加を表明。離脱こそしていないものの,積極的なHD DVD推進までは期待しにくくなってしまった。
 その後,2005年9月に以前から支持を表明していたMicrosoftとIntelがHD DVDプロモーショングループに参加し,とくにPC業界へと少なからぬ影響を与えることになった。こちらも参加企業数は増え,同年10月の時点で110社を超えていた。

●BDとHD DVD両団体の主な参加企業
Blu-ray Discアソシエイション HD DVDプロモーショングループ
ソニー
パナソニック

シャープ
日立
パイオニア
Samsung
LG Electronics
Philips
Thomson
東芝
NEC
三洋電機
メモリーテック
Microsoft

 コンテンツをめぐってもBDとHD DVD両陣営による囲い込みが行われた。当のコンテンツ提供企業にすれば,複数の規格でのパッケージソフト販売はコスト増につながるため,できればやりたくなかっただろうと推測できる。また,DVDが主力の時代はしばらく続くため,BDとHD DVDのどちらが優勢になるかを見極めてからの本格参入でもいい,というのが本音だっただろう。

 しかし,ガッチリ規格が固まる前であれば,機能やフォーマットに関する要望を受け入れられる可能性は高い。また,早期に立場を明確にすることで,各陣営から有利な条件を引き出す狙いもあったと思われる。

 コンテンツ提供企業で特に注目を集めたのは,影響力の大きいアメリカの映画会社だ。BD陣営を支持したのはSony Pictures,Disney,20th Century Fox(現在の20th Century Studios)など。これに対し,HD DVD陣営を支持したのはWarner Bros. Entertainment(以下,Warner Bros.),Universal Pictures,Paramount Picturesなどで,米国市場をほぼ2分する構図となった。

 しかし2005年10月になると,HD DVDを単独支持していたWarner Bros.とParamount PicturesがBDでも作品を供給すると発表。HD DVDへの供給を取りやめたわけではないが,BD有利の情勢がはっきりとした。

●アメリカ映画会社の支持状況
Blu-ray Disc支持 HD DVD支持
Sony Pictures
20th Century Fox

Disney
Warner Bros.
Universal Pictures
Paramount Pictures

 Warner Bros.とParamount Picturesの姿勢が変化した理由の1つには,PlayStation 3(以下,PS3)の存在がある。2005年5月のE3で2006年春発売が発表されたのだ(のちに同年11月発売へと延期)。

 PS3のBDドライブ搭載自体はそれ以前から明らかにされていたが,DVDの普及に貢献したPS2の後継機で,少なく見積もっても10年足らずの期間に数千万台規模での販売が予想されるPS3の発売時期が定まったことは,Warner Bros.とParamount Picturesに少なからぬ影響を及ぼしただろう。この時点でどちらの陣営からもまだプレーヤーが発売されていなかったのだから,なおさらだ。

 HD DVD陣営も黙って見ていたわけではなく,2005年内の発売を目指してプレーヤーを開発していたほか,2006年1月には「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」(Xbox 360用の外付けHD DVDドライブ)を発表。ゲーム機で再生できるのはBDだけではないとアピールしたが,BDドライブ標準搭載のPS3と比べてしまうと後手に回っている印象は否めなかった。当時の4Gamerの記事からも,そんな温度感が伝わってくる。



PS3の登場によって,風向きが変わった


 先にプレーヤーと映像パッケージソフトを発売したのは,HD DVD陣営だ。2006年3月に発売された「HD-XA1」は,次世代DVD初のプレーヤーとして注目を集めた。

 しかしこの時期にHD DVD陣営の痛手となったのが,2006年4月にNECとソニーによる光ディスクドライブ事業の合弁会社,ソニーNECオプティアークが設立されたことだった(設立の発表は2005年11月)。出資比率はソニー55%,NEC45%。BDとHD DVD両対応ドライブの登場を期待する声もあったが,事実上,NECがHD DVD陣営から脱退したと見る向きが多かった。

「RD-A1」の希望小売価格は税込みで39万8000円だった
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 とはいえ,ソニーNECオプティアークがHD DVDドライブを製造しなくなったわけではなく,実際,7月に発売されたHD DVDレコーダーの「RD-A1」には,ソニーNECオプティアーク製のドライブが搭載されていたようだ。

 ちなみにこのRD-A1は,HD DVDドライブだけでなく1TBの大容量HDDも搭載し,ハイビジョン放送の長時間録画を実現。また,DVDをアップコンバートしたフルHD出力が可能と,機能面でも魅力ある1台となっていた。

 世界初のBDプレーヤーは,2006年6月にSamsungが米国で発売した。国内ではその時点で発売の動きはなく,映像パッケージソフトも11月以降のリリースとなった。これは,BDプレーヤーとしても期待されているPS3(11月11日発売)を待つ方針だったのだろう。国内ではレコーダーの人気が高いこともあって,単機能のプレーヤーは売りにくいとも判断されたのかもしれない。

 意外なのは,PCへの搭載が早かったこと。2000年頃から,PCでテレビ録画をしたり,DVDで映像コンテンツを楽しんだりする層が増えたことを受けて,大型液晶ディスプレイ一体型のデスクトップPCや,大画面AVノートなどが続々発売された「テレパソ」ブームにうまく乗った。

初のHD DVDドライブ搭載PCとなった「Qosmio G30/697HS」
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 最初に登場したのは,2006年5月の「Qosmio G30/697HS」。これは東芝のAVノートで,HD DVD-ROMドライブを搭載していた。その後も,ソニーのノートPC「VAIO type A VGN-AR90S」(6月)で記録型BDドライブ,富士通のノートPC「FMV-BIBLO NX95S/D」(6月)でHD DVD-ROMドライブ,同じく富士通の37型液晶一体型PC「FMV-DESKPOWER TX95S/D」(7月)で記録型BDドライブ,NECの一体型PC「VALUESTAR W」(10月,VW990/GG,VW790/GG)で記録型BDドライブが搭載された。

 前述のように,この時点でBDの映像パッケージソフトは発売されていなかったため,BDドライブはあくまで録画用の扱い。逆にHD DVDは記録型ドライブがまだなかったため,再生専用のROMドライブとなっていた(いずれもDVDスーパーマルチに相当する機能は搭載)。

 こうして次世代DVD競争はさまざまな分野で展開された。2006年の秋ごろまでは,プレーヤーや映像パッケージのリリースで先行していたHD DVDが目立っていたが,それもPS3の発売日となる2006年11月11日までだったかもしれない。映像パッケージソフトも続々登場し,BDが本格的に動き始めたのだ。

 PS3に合わせるように,映像パッケージソフトにも対応するBDレコーダーとして,11月にパナソニックが「DMR-BW200」「DMR-BR100」,12月にソニーが「BDZ-V9」「BDZ-V7」を発売し,録画・再生環境が出揃った。

PS2と同様に,プレーヤーとしての役割も期待されたPS3。HD DVDとの競争が終わった後のことではあるが,北米では映画「スパイダーマン3」のBDとのセット商品も販売された
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 HD DVDでは11月にはマイクロソフトから2万790円の「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」,12月には東芝から4万9800円という廉価なプレーヤー「HD-XF2」が登場したが,PS3はゲーム機としてだけでなく,BDプレーヤーやオーディオプレーヤー(スーパーオーディオCDに対応)としての評価も高く,ゲーマーに加えてAVファンの注目も集め,ユーザーの支持はBDへと傾いていった。

 2007年に入ると,BD優位の状況がよりはっきりしていった。特に大きかったのはハードウェアメーカーの差だ。HD DVDドライブを製造できたのが東芝,Samsung,LG Electronicsくらいだったのに対し,BDはソニー(NEC),パナソニック,パイオニア,Samsung,LG Electronicsという陣容だった。
 これだけ差があると,開発スピードや生産能力,製品数の差も大きくなる。実際,日本国内向けにHD DVDプレーヤーを製造・販売する企業は東芝のみという,かなり厳しい状況になっていった。

 これを受けてHD DVD陣営は,シェア拡大を図るためプレーヤーの低価格販売に踏み切った。これはHDコンテンツを手軽に楽しみたい層に魅力的だったのか,短期的なシェア向上には一定の効果があったようだ。

 しかし,当然ながらメーカー側には利益がほとんどなかったと推測できる。とくに東芝の廉価モデルは製造コストが価格を上回っているという指摘もあり,これに追従するには,利益を見込むどころか損失を覚悟する必要があっただろう。そして,こういった状況がHD DVDを普及させにくくする悪循環になっていった。

 そんな2007年における大きなニュースとして,8月にParamount Picturesがコンテンツの供給をHD DVDへ独占的に行うと発表したことがある。これを受けて,独占コンテンツがあるならHD DVDのシェアが大きく伸びるだろうと予想する向きもあった。

 BD優勢の状況下でのこの発表は少々意外だったが,ニューヨーク・タイムズ紙などが,Paramount Picturesの独占供給には,1億5000万ドル規模(当時のレートで計算すると約175億円)の見返りがあったと報道している。それが事実だとしたら,HD DVD陣営としては,稼ぎ時のホリデーシーズンに向けて,なんとか巻き返しを図りたかったのだろう。

 しかし結果を見ると,この独占供給の影響は一時的なものに留まったようだ。結局,ホリデーシーズンでもBD優勢の流れを変えるまでには至らなかった。

 状況が決定的に変わったのは,米国時間2008年1月4日のこと。年1回の大規模展示会「2008 International CES」開幕に先駆けて,HD DVDとBDの両方にコンテンツを供給していたWarner Bros.が,6月以降BDのみに供給すると発表した。これが呼び水となったのか,米国の小売業者やDVDレンタル業者がBDの取り扱いを拡大すると相次いで発表し,BDの勝利が誰の目にも明らかになった。

 そしてついに2月19日,東芝がHD DVD事業から3月末で全面撤退すると発表。3月28日にHD DVDプロモーショングループが解散し,次世代DVD争いは製品が登場してから約2年で終結した。


勝者になった後もBDの進化は続く


 こうしてBDが新世代光ディスクの主役になったが,もちろん技術開発は続き,有機色素素材を用いた「BD-R LTH TYPE」が2008年2月に登場。対応ドライブが必須となるものの,従来の無機素材を使ったメディアよりも安価に製造できるメリットがあった。

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 また,2010年6月に最大128GBという大容量の「BDXL」が登場。3層100GB,4層128GBの2種類の規格があり,従来の2層50GBと比べ2倍以上の容量を実現した。

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 映像関係では,3D映像に対応した規格「Blu-ray 3D」が2009年12月に策定された。多くのプレーヤーに加えてPS4(2013年11月発売)やXbox One(2013年11月発売)も対応したが,プレーヤーに加えて対応テレビも必要だったためか普及が進まず,現在ではほとんど使われなくなっている。

 解像度を大きく向上させた規格として,3840×2160ピクセルの4K向け規格「Ultra HD Blu-ray」が2015年5月に策定された。SDからフルHDの時ほど画質の変化を感じられないことや,そもそも4K対応テレビの普及が緩やかなこともあり,現在でも高画質を求める一部の熱心なユーザー向けという印象が強い。

Xbox One Sは,Ultra HD Blu-Rayへ以外にも,4K映像のストリーミング再生やHDR(ハイダイナミックレンジ)に対応するなど,映像面での進化が特徴となっていた
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 とはいえ,ゲーム機では2016年11月発売のXbox One Sが初めて対応し,BDプレーヤー/レコーダーでの対応も順調に増え,4K映像を楽しめる環境は年々増加している。もちろん,2020年11月発売のPS5やXbox Series XもUltra HD Blu-rayに対応している。


配信サービスの台頭で,物理メディアの必要性が低下


 HD DVDに勝利し,フルHDが普及する時期から4Kが一般的になってきた現在まで,20年ほどを現役で活躍してきたBDだが,この記事の冒頭で触れたように,先行きは不透明だ。

 そもそも,記録メディアの価値の大部分は,記録方式などではなく,大きなサイズのデータをコンパクトに収めて利用者の手元へ届けるための手段となることにある。これはCDやDVDの時代から変わらない。つまり,この手段が別のもので代替できてしまえば,光ディスクの価値は暴落する。

 とくに,2000年前半からは光回線サービスの普及が進み,2010年頃には世帯カバー率が90%を突破。2014年には1Gbpsのサービスも開始されるなど,さらなる回線速度の向上が進んだ。これにより,高画質な映像配信が可能になっただけでなく,以前では時間がかかって難しかった大型ソフトのダウンロード販売も現実的になった。

 前述のとおり,BDの映像パッケージソフトが発売されたのは2006年だが,これは光回線の普及期と重なる。また,この頃から番組契約やコンテンツ販売といった形式の配信サービスが本格的に始まったほか,2010年代になると,月額固定で使い放題のサブスクリプション型サービスも登場した。

 つまり,映像などのコンテンツの楽しみ方が,パッケージの購入やレンタルといった物理メディアによるものから,データの送信に変わっていったわけだ。また,この傾向はゲームでも同じで,物理メディアでの販売からダウンロード販売,そしてライセンスのみの販売やサブスクリプションへと移行してきている。

 こうなると,BDであることの必要性が小さくなってくる。実際,2020年に登場した現行世代のゲーム機には,「PlayStation 5 デジタル・エディション」「Xbox Series S」といったように,BDドライブ非搭載のモデルがラインアップされた。ソニーの2025年3月期決算の補足資料によると,ダウンロード販売の比率は76%にものぼっているとのことだ。


録画文化の衰退と番組録画の役割変化


 もうひとつBDにとって不幸といえるのが,録画文化の衰退だろう。

 日本ではテレビ番組などを録画するだけでなく,ドラマなどを全話まとめて個人ライブラリー化するといった,ユニークな録画文化があった。
 しかし,権利者側からすると,地デジなどのデジタル放送はコピー時に劣化がないため,制限なくコピーできるとコンテンツ販売に影響する懸念があったようだ。

 そこで採用されたのが,2004年4月に始まったコピー・ワンスという規定だ。これは,録画した番組のコピーを認めず,1度だけムーブ(移動)を許可するもの。しかし,これによりHDDに録画したものをDVDやBDにムーブするとHDDから消えてしまうため,ライブラリー化して別メディアにまとめることや,万一に備えバックアップを取ることがほぼできなくなってしまった。

 当然ながら,ムーブ先のメディアが読み出せなくなれば,録画した番組は二度と見ることができなくなる。この使い勝手の悪さはユーザーにも不評で,2008年6月にコピー・ワンスはダビング10(9回のコピー+1回のムーブ)へと緩和された。だが,この時期を境に録画は「リアルタイム視聴できないものを一時的に保管しておくためのもの」という認識に変わり,かつての録画文化は衰退していったように思う。

 そして,一時的な保管にとどまるのであれば,テレビそのものに録画できる方が便利だろうということで,2000年代後半にはHDDによる録画機能搭載テレビが一般的になり,とくにライト層がBDレコーダーを買う理由がなくなってしまった。

 さらに追い打ちとなったのが,2007年に「U-NEXT」(GyaO NEXT),2011年に「Hulu」,2015年に「Netflix」や「Amazon Prime Video」といった大手配信サービスが日本でも始まったこと。魅力的な映画やドラマ,アニメが多数ラインナップされており,そもそもテレビ番組を録画する動機すらなくなっていった。

 2011年には地デジ完全移行という特需があったため,BDレコーダーも2011年まではよく売れていた。しかし,2012年に急激に販売数を減らし,以降は右肩下がりになっている。映像の楽しみ方が,録画+保存から一時録画,そして録画不要の配信サービスへと変化していく中では,当然の流れといえるだろう。


BDにとっての“本当の敵”はDVDだった?


 さらに,前世代の光ディスクであるDVDとの世代交代が進まなかったことも,BDの大きな誤算になった。

 BDがHD DVDに勝利しても,当然ながらその時点での主流メディアはDVDで,コンテンツの提供会社もBDだけで映像パッケージソフトを販売することはなかった。DVDでリリースされるならDVDでいいや……と消費者が考えるのは自然だろう。

 それでも,BDの普及が進めば逆転するはずだったが,そうはならなかった。いまだにDVDが現役なのは多くの人が知っているとおりだ。

 この理由の1つには,純粋に映像メディアとしてDVDの過去資産が膨大であり,古いものが継続して販売されていることがある。

 映像データとして古い720×480ピクセル以下の解像度のものは,フルHD以上が前提となるBDでリリースし直すメリットがない。もちろん,ノイズを除去したり解像度をアップスケーリングしたりといったリマスター版がBDで発売されることもあるが,それは手間をかけても売り上げが見込める有名作品に限られる。そのため,いまでもDVDでしか見られない作品は少なくない。

 実際,一般社団法人日本映像ソフト協会が公表している2025年のビデオソフト売り上げデータ(外部リンク)を見ると,個人向けの売上金額ではBDがDVDの約2.6倍,売上数量では約1.6倍となっており,いまだにDVDが一定の割合を占めている。

 そして,レンタル店用の数字に目を向けると,DVDが売上金額と枚数の両方でBDを大きく上回っていることが分かる。個人向けの数字と合算した場合,BDは売り上げでこそDVDを上回るが,枚数ではHD DVDに勝利した2008年から20年近くが経とうとする今でも,DVDを超えられていないのだ。

 この理由としては,「多くのユーザーにはDVDの画質で十分だった」「傷がつきやすいBDはレンタル用途としては敬遠された」など,さまざまな説があるが,いずれにせよBDは,動画配信に押される中,物理メディアとして活躍できるはずだったレンタル店でもDVDのシェアを崩せないという,八方ふさがりの状態になってしまった。 


想定されていた役割の終焉


 BDの使命は,個人が扱うデータ量の増加に対応できる大容量化だった。とくに登場初期においては,フルHDの高画質映像録画,映像パッケージソフトの販売,ゲームソフトの販売用などとして期待されたし,それに十分応えてくれたと感じる。

 しかし,一般家庭でのインターネットの常時接続,しかも100Mbpsや1Gbpsといった速度が当たり前になると,物理メディアに縛られる理由はなくなっていった。録画しなくても視聴できる配信サービスや,発売と同時に入手できるダウンロード販売が一般的になれば,使われなくなっていくのは当然だろう。

 ある意味,すでに役目を終えた状況になっている現在,BDレコーダーやBDドライブの販売終了,BD-R/REメディアの製造終了などが続くのは不思議ではなく,むしろ必然とさえいえる。仮にPlayStationやXboxの次世代機で光ディスク搭載モデルがラインナップされなくても,驚きではないだろう。

PS5の上位モデルであるPS5 Proは,BDドライブ非搭載(別売りのドライブを装着可能)。ゲーム機でも光ディスクの居場所は減りつつある
画像ギャラリー No.011のサムネイル画像 / Blu-ray Discは,前世代のDVDより先に姿を消してしまうのか? 時代に翻弄されたその歩みを,光ディスクの歴史とあわせて振り返る

 データの長期間保存といったアーカイブ用途では今後も研究開発が続くと思うが,一般用途向けの光ディスクとしては,BDが最後となる可能性が高い。

 光ディスクは,その初期から日本企業が多く参入し,研究,開発,製造,販売をしてきたメディアだが,そういった企業の多くは,事業から撤退したり,海外企業の傘下に入ったりしている。

 BDをけん引したソニーも,1月にホームエレクトロニクス事業を本体から切り離すことを明らかにした。HD DVDの中核だった東芝も,本体は発電をはじめとしたBtoB事業を主に手がけており,家電を扱う東芝ライフスタイルは中国の美的グループの傘下にある。 


 それだけに,緩やかに終焉へと向かっていく光ディスクが,日本企業の製品に囲まれて生活する時代が終わろうとしている現状に重なってしまう。BDそのものよりも,こういった部分に寂しさを感じてしまうのは,筆者だけではないだろう。

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