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[CEDEC 2017]シニア向けゲームの現状と未来が語られたセッション「はじめてスマホに触れるシニア世代のゲーム事情」をレポート
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印刷2017/09/02 12:40

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[CEDEC 2017]シニア向けゲームの現状と未来が語られたセッション「はじめてスマホに触れるシニア世代のゲーム事情」をレポート

 2017年8月30日〜9月1日,パシフィコ横浜でゲーム開発者向けカンファレンス CEDEC 2017が開催された。本稿では,8月31日に行われた講演「はじめてスマホに触れるシニア世代のゲーム事情」の模様をレポートしたい。

フレイムハーツ ゲーム本部 マネージャー/プロデューサー 洲巻雄介氏
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 この講演では,フレイムハーツ ゲーム本部のマネージャー/プロデューサーの洲巻雄介氏が,同社の展開する「らくらくスマートフォン」専用ゲームコーナーの利用状況から,シニア世代がどのようにゲームと関わっているか,そして運用上どんな工夫をしているかなどが紹介された。

 らくらくスマートフォンは,主にシニア世代が初めてスマホを使うことを想定して開発された端末で,販売数はシリーズ累計で200万台以上に達しているという。ホーム画面に「電話」「メール」「インターネット」などの大きなアイコンが表示されており,それらを押すだけで必要な機能が立ち上がるといった具合に,きわめて分かりやすい操作が特徴だ。

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 ゲームコーナーも用意されており,脳トレ系や,オンライン対戦が可能な麻雀,将棋,リバーシなどが遊べる。これらのゲームタイトルは,らくらくスマートフォンの使用者だけがアクセスでき,ほかの端末のユーザーは遊べない。
 現在,このゲームコーナーの会員数は30万人を超えており,アンケートによると,会員の実に4分の3がほぼ毎日,もしくは週に4〜5回という高頻度で利用しているという。

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 洲巻氏は,ゲームコーナーが高い頻度で利用されている理由を,らくらくスマートフォンユーザー専用SNS「らくらくコミュニティ」にあると分析した。らくらくコミュニティでは,ユーザー同士の交流が活発に行われており,例えばユーザーが自分で作ったクロスワードパズルを公開して,ほかの人がそれを解くといったやり取りが頻繁に行われている。

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 また将棋の対局後,プロが行う感想戦のように「あの一手はよかった」などと,お互いの感想を述べ合う光景も見られるとのことで,洲巻氏は「一般的なオンラインゲームでは,対戦したあと,掲示板で感想を述べ合うなどということは,なかなか見られない」と述べ,独特のコミュニティがSNSに形成されたことが人気につながっていると説明した。

 シニア世代のユーザーには,オンラインゲームをプレイするのが初めてという人も多く,24時間いつでも対戦相手が見つかるという,これまでになかった状況から,つい熱心に遊んでしまうという場合が多いそうだ。

 フレイムハーツは,ゲームコーナーの各タイトルの開発に加えて,サーバーの保守やユーザーサポートなどの運営面を担当している。洲巻氏によれば,運営にあたっては,初めてスマホやオンラインゲームに触れる人を想定して,「ユーザーに寄り添うこと」を心がけている。一般的なオンラインゲームなら「そこまでやらなくていいだろう」とされるようなところまで,丁寧にサポートしているという。
 例えば麻雀の説明では,覚えるべきルールや用語に優先順位を付けたり,用語にカナを振ったりするなど徹底的に分かりやすくしており,さらに,ユーザーからの問い合わせに応じて適宜アップデートしているという。

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 ゲームコーナーではまた大会を開催し,上位ランキングを公開するなど,ユーザーのやりがいをより高めるような施策を行っている。
 一般的なオンラインゲームでは,一定以上のランクに上がると報酬が提供されるなどの付加価値がないと,ユーザーのイベント参加をなかなか見込めないと洲巻氏は述べ,それに対して,らくらくスマートフォンのユーザーはランクが上がることにモチベーションを見出している人が多いという。

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 洲巻氏は続けて,「報酬で釣るようなやり方だと,それがなくなったときにやりがいを見出せなくなる。とくにシニア向けの運営では,ユーザーが自ら目標を見つけ,挑戦するようにしたほうがうまくいくのではないか」と述べ,「ターゲットをシニア層に設定した場合,シニアに必要ない部分はそぎ落としていく。イベントでは『もっと盛り上げる施策を』となりがちだが,あえてシンプルにすることで,より分かりやすく,かつターゲットユーザーに継続的に喜んでもらえるコンテンツになることが分かった」と話した。

 セッションの終盤では洲巻氏が,「シニア世代向けのゲームの未来」に対する見解を披露した。知られているとおり,今後の日本は高齢化がさらに進み,人口が減少していくと予想される。したがって,シニア向けゲームの市場規模も拡大していくことになる。
 そして,高齢化については世界各国と比較して日本がトップであるとし,「今からシニア向けゲームに取り組んでいれば,世界の最先端になれる」と語る。

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 では,シニア向けに最適化されたゲーム設計とはどのようなものなのか。まず洲巻氏は,「現状のゲーム開発者の多くがまだシニア世代に達していないため,きちんと意識しないとシニア向けゲームは作れない」と指摘した。最初は,自身の両親や祖父母を念頭に置き,どんなサービスを提供するか考えていくと分かりやすいという。

 洲巻氏は,シニア向けゲーム設計の具体的なテーマの例として,以下の3つを挙げた。まずは,「ゲームを通じた家族とのコミュニケーション」というテーマで,ドラマ「光のお父さん」のように,初めてオンラインゲームに挑戦する親を子どもがサポートしたり,昼間,孫が学校に行っている時間に祖父母がゲーム内の畑を耕したり,家族で協力できるようなアイデアが紹介された。
 らくらくスマートフォンは若い世代が親や祖父母のために買って持たせているという傾向があるため,シニアならではの知識が必要となる部分を用意するなど,若い世代をフックとしつつ,シニア世代を巻き込むようなゲーム設計にするのがいいとのことだった。

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 2つめは,「位置情報を使った健康促進」というテーマだ。現行の位置情報ゲームがどちらかといえば若い世代向きであることから,シニア世代向けにはより理解しやすいモチーフを選択することが必要になり,また日々のやりがいを見いだせるように作ることなどが挙げられた。

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 最後の,「懐かしい風景,ノスタルジー」というテーマでは,映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で,昭和の町並みがCGで再現された事例をヒントに,最新の技術を使って,あえてノスタルジックなものを描くことで,シニア世代にも受け入れられやすくなるのではないかというアイデアが披露された。

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 洲巻氏の指摘のとおり,社会が高齢化するのに伴って,シニア向けゲームの需要が高まっていくであろうことは想像に難くない。現在のシニアに向けたものはもちろん,筆者のようにすでにゲームに慣れ親しんでいる世代がシニアになったとき,どんなゲームが登場するのかという点も興味深いところだ。
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