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本作の開発を手掛けるのは,全世界2500万以上のダウンロード数を記録した人気スマホゲーム「クルセイダークエスト」で知られるLoadCompleteが立ち上げた社内スタジオ,NEMO Studioだ。
スタジオを率いるペク・ホヨン氏は,韓国向けPC版「メイプルストーリー」に10年携わり,クリエイティブディレクターを務めていた人物でもある。
先日閉幕した韓国最大級のインディーゲームイベント「BIC2026」の会場で,ペク氏にインタビューする機会を得た。
プロジェクトの成り立ちから,学園ものだったという初期構想,そして「なぜプレイヤーは店長なのか」まで,じっくりと聞いてきた。
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか。
ペク・ホヨン氏(以下,ペク氏):
何を話せばいいのか少し迷いますが……(笑)。「ボイドダイバー」は昨年から作り始めました。その前は韓国の「メイプルストーリー」の開発に10年ほど関わっていて,新しい挑戦をしようと機会を探していたところ,LoadCompleteと縁があって合流しました。
4Gamer:
「メイプルストーリー」ではどのような役割を担当されていたのでしょうか。
ペク氏:
肩書としては副ディレクターで,対外的にはクリエイティブディレクターとして出ていました。放送にも出演しています。
当時の総括ディレクターがカン・ウォンギ氏(関連記事)で,彼の下で担当を分けていました。
コンテンツ全般は私がまとめて見て,課金コンテンツとイベント周りは別の担当が見る,という形です。
4Gamer:
イベントというのは,ゲーム内イベントのことですか。
ペク氏:
ゲーム内も外部の活動も含めて全部です。イベントの多いゲームなので。
4Gamer:
「ペク・ホヨン メイプル」といった形で検索をしたら,「虎影」(コカゲ)がヒットしました。韓国語名だと「ホヨン」ですね。もしかしてモデルになったのですか。
ペク氏:
あれには,ちょっとしたヒストリーがあるんです(笑)。自分の名前を付けたかったわけではないんですよ。
候補はいくつもあって,そのなかにあの名前があったんです。私は「自分と同じ名前だから,あとで絶対に叩かれる」と思って反対しました。
ところが社内で投票したら,圧倒的な1位で。それで決まってしまいました(笑)。
4Gamer:
そんなエピソードが(笑)。ところで,LoadCompleteと出会ったきっかけは何だったのでしょう。
ペク氏:
あまり劇的な話ではなくて。ちょうど気持ちが落ち着かない時期に,求人サイトの履歴書を更新したんです。それを見たLoadCompleteから「興味があります」と連絡をいただき,ここでなら新しい挑戦ができるかもしれないと思いました。
LoadCompleteの社内に「メイプルストーリー」出身の方がいて,口添えしてくれたそうです。
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4Gamer:
NEMO Studioは別法人として設立されたものだと認識していたのですが。
ペク氏:
そこは少し誤って伝わっているようですね。別法人ではなく,社内の開発スタジオだと思っていただければと思います。
4Gamer:
つまり,完全に独立したインディーとして始まったのではなく,最初から親会社が存在する状態でのスタートだったと。かなり恵まれた環境ですね。
ペク氏:
本当に運が良かったと思います。
4Gamer:
ただ,運だけではないと思うんです。開発費を出してもらう,契約してもらうにはきっかけがあったのではないでしょうか。
ペク氏:
うーん,本当に履歴書がきっかけなんですよ(笑)。少し前のことなので細かく覚えていないのですが,履歴書を更新して,それを見ていただいた,という。
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4Gamer:
「メイプルストーリー」のようなオンラインゲームのライブ運営と,Steamの買い切り型ではビジネスモデルがまったく違います。数字の読み方なども含めて,ご自身の中でどう変換されているのでしょうか。
ペク氏:
キャリアはオンラインゲームで始めましたが,もともとSteamでゲームを探して遊ぶのが好きなんです。
数字については,正直に言うと事業領域の話でもあって,私に特別なノウハウがあるわけではありません。やりながら学んでいる状態です。
会社自体も本格的なSteamでの事業は初めてですし,「こうじゃないか,ああじゃないか」とお互いに学びながらやっています。そういう会社に入れたのも,またラッキーだったのかもしれません。
大きな会社を出るという選択
4Gamer:
10年勤めた大きな会社を離れて,小さなチームで作ると決めるのは,簡単なことではないと思います。
ペク氏:
実は,LoadCompleteから連絡をもらったのが最初の分岐ではなかったんです。大きな会社を出ることへの不安はありましたから,まずは社内で新しいことができないかと考えました。
新規部門で機会をもらえるという話があって移ったのですが,実際にはなかなかそうもいかなくて。
大きな組織には大きな組織なりの事情や制約があり,動かせる範囲がどうしても決まってくる。それなら外に出たほうが話は早いのではないか,と考えるようになりました。
4Gamer:
そこで改めてLoadCompleteに?
ペク氏:
私のほうから「あのお話はまだ有効ですか」と聞きました(笑)。今は社内の力学のようなものに巻き込まれることもなくて,とても気楽です。
4Gamer:
奥様は反対されなかったんですか。
ペク氏の奥様:
いいえ。この人が本当に作りたがっている,その情熱を知っていたので,応援したいという気持ちがありました。
今やらなかったら,いつやるんだと。だから積極的に背中を押しました。
4Gamer:
漫画みたいな,胸が熱くなる答えが返ってきましたね。奥様はゲーム業界の方なのでしょうか。
ペク氏の奥様:
ゲーム会社に勤めた経験はありません。普通の会社員です。ゲームは大好きですけれど。あとはコスプレを。
4Gamer:
では,「奥様はコスプレ担当」と書いておきますね(笑)。ちなみに女性キャラクターを作るとき,奥様がモチーフになったりは?
ペク氏:
……それを答えると炎上するかもしれないので(笑)。
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4Gamer:
制作そのものには関わっていないのでしょうか。
ペク氏:
直接は関わっていませんが,アイデアの段階で「この案はどう?」と聞いてみることはあります。
4Gamer:
どんな返事が返ってくるんですか。
ペク氏:
「これはいい」「それはダサい」と(笑)。
4Gamer:
本作はアーバンファンタジーということですが,実際にはSCP的というか,ホラー寄りの雰囲気があります。これも奥様の趣味が反映されている?
ペク氏の奥様:
それは完全に本人の好みです。私は関係ありません(笑)。
4Gamer:
(笑)。前職が「メイプルストーリー」なので,もっと明るい世界観のほうが好みなのかと思っていました。
ペク氏:
私は雑食なので何でも好きなんですよ。ただ,明るいものを作ってきたので,今度はこちら側を作ってみようか,という気持ちのほうが大きかったですね。
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学園ものから,現代都市ファンタジーへ
4Gamer:
開発を始めた時点で,チームの規模はどのくらいだったのでしょうか。
ペク氏:
10人には満たなかったと思います。
現在は14人ほどです。
4Gamer:
LoadCompleteはモバイルに強い会社という印象があります。そのメンバーでPC向けのタイトルを作るのは大変ではありませんでしたか。
ペク氏:
確かに,最初はみんなモバイルゲームの経験が長いので,UIなどに「モバイルらしさ」がかなり出ていました。
そこはずいぶん直しましたね。直さないわけにはいかないので。
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4Gamer:
プロジェクトとしては,何もない状態からのスタートだったと思います。「ボイドダイバー」の企画はどこから生まれたのでしょうか。
ペク氏:
何を作るか悩む期間があって,プロトタイプをいくつか作りました。最初はモバイル向けのPvPvEだったんです。
ただ実際に作ってみると,モバイルでは厳しいなと。PvPはハードルが高いですし,結局は大きく当たるか,大きく外すかのどちらかになる。それで「PvEでいこう」と決まりました。
そこから具体化していく過程で,最初はファンタジーだったものが,だんだんとアーバンファンタジーになっていきました。
4Gamer:
初期の構想はどのようなものだったのですか。
ペク氏:
明るい学園ものです。放課後の部活動としてダンジョンに潜りに行く,という感じで。
先ほど話したとおり,モバイル出身のメンバーが多く合流していて,サブカルチャーが好きな方が多かったこともあり,その方向でやってみようかと。
でも作っているうちに「これは何か違うな」と感じて,自分の好みを1つずつ入れていったんです。あれも入れて,これも入れて,とやっているうちに,まるごと方向転換して今の形になりました。
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4Gamer:
エクストラクションという部分は,最初から変わっていないのでしょうか。
ペク氏:
そこは変わっていません。変わったのはコンセプトのほうで,学園ものだった頃も,放課後にダンジョンへ行って脱出する,という構造は同じでした。
4Gamer:
可愛いキャラクターを作っていたメンバーからすると,急にホラー寄りの方向になったわけですよね。反発はありませんでしたか。
ペク氏:
まあ,あっても仕方ないですね(笑)。
4Gamer:
(笑)。ただ,学園ものの企画も面白そうです。エクストラクションはまだまだ発展中のジャンルですし。
ペク氏:
機会があれば,そういうものも作ってみたいですね。
ドット絵と「東西の中間」を狙ったアートスタイル
4Gamer:
ドット絵を選んだ理由を教えてください。
ペク氏:
LoadCompleteはドット絵で知られている会社ですし,合流してくれたアーティストには「クルセイダークエスト」でドットを打っていた方が多かったんです。
ある意味,ほかに選択肢がなかったとも言えますね(笑)。
4Gamer:
アートスタイルについてはいかがでしょう。アニメ調ではありますが,いわゆるサブカルチャー系そのものという感じでもありません。
ペク氏:
エクストラクション系はコンセプトを固めていく過程で,FPSやリアル志向のほうへ行く傾向がありますよね。
銃器で怪物と戦うようなタイトルも出てきていますが,あれは西洋寄りの趣味だと思っていて。
かといって,完全にサブカルチャー系に振り切って作るのは,当時の私たちには負担が大きい状況でもありました。
それなら中間で落ち合ってみよう,と。絵柄も完全にサブカルチャーを目指すというより,「Helltaker」のように東洋と西洋を少し混ぜたようなものを作ろう,という企画から変形して現在の形になっています。
4Gamer:
いろいろな要素が混ざっている印象です。
ペク氏:
そうですね。東洋的なものも混ぜますし,出せるものは何でも出そう,という感じで作りました。
4Gamer:
ミックスしたということですが,クリエイティブディレクターという立場から見て,本作のターゲット層はどのあたりになりますか。
ペク氏:
サブカルチャー寄りのエクストラクション系はあまりないので,アジアが主なターゲットになると思います。
そのなかでも,完全にサブカルチャー好きという層より,エクストラクション系のゲームでもあるので,そういうものも好きな一般のゲーマーではないかと考えています。
4Gamer:
「Escape from Tarkov」を遊びつつ「ブルーアーカイブ」も遊んでいる,というような層でしょうか。
ペク氏:
まさにそのようなイメージです。
なぜプレイヤーは「店長」なのか
4Gamer:
脱出ものはFPSが多く,プレイヤー自身が現場で動くタイトルがほとんどです。一方,本作のプレイヤーは拠点にいる遺物商の店長で,外に出るのは別のキャラクターたち。この設計はどこから来たのでしょうか。
ペク氏:
店長という存在は,あとから追加されたものです。遺物商を経営しなければならないのに,キャラクターはどんどん入れ替わっていく。
彼らとどういう関係があって,なぜここで経営をするのか。それなら,経営する存在が必要ではないかと。そこから店長が出てきました。
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そうすると,必然的に自分が店長になるしかなくて,全体を指揮する立場になる。ただ正直に言うと,プレイヤーが「たくさんのダイバーを操作しているのに,なぜ自分は店長なんだ」と疑問に思うかもしれない,という不安は心のどこかにあります。
4Gamer:
キャラクターが複数いるという構造は,最初からあったのでしょうか。
ペク氏:
状況に応じて,使いたいキャラクターに入れ替えられるゲームを考えていました。「今回のダンジョンはこのキャラクターが有利だから,これで」というような。
4Gamer:
現在のビルドでは,ダンジョンとの相性で選ぶというより,好きなキャラクターを使える形になっている印象です。
ペク氏:
作っていくうちに後者になりました。育成要素が多くなってくると,特定のキャラクターにだけ有利・不利を付けるのが難しいんです。
結局は「ディアブロ」のように,1体のキャラクターでずっと遊び続ける形になりました。
4Gamer:
現在のキャラクターを見ると,タンク,DPS,ヒーラーに分かれているようです。マルチプレイを前提に設計されているのでしょうか。
ペク氏:
ある程度ですが,マルチプレイ時のポジションは考えてはいます。ただ,MMORPGのようにきっちり役割を分けようとは思っていません。
どうあってもソロプレイが成立しなければならないので,たとえばタンク寄りのキャラクターでもダメージを出せるようにしていますし,ヒールが使えるけれど実際にはほとんど使わなくていいキャラクターもいる。
完璧なパーティ構成を組ませることは,むしろ避けようとしています。
買い切り型の選択,デモ版の反響
4Gamer:
エクストラクション系はライブサービス型から発展したジャンルでもあります。買い切り型との相性について,どう考えていらっしゃいますか。
ペク氏:
おっしゃるとおり,このジャンルはほとんどがライブサービスです。ただ,私たちはサーバーを運営しない前提で,最初に「パッケージでいく」と決めてから開発を始めました。当時はまだ「エスケープ フロム ダッコフ」も出ていなかったんです。
開発中にダッコフが出てきて,「ああ,これでも問題ないんだな」と思えたところはあります。
プロジェクトの規模が大きくなかったので,オンラインサービスを維持し続けるのは負担が大きかった,というのが実際のところです。
このままパッケージで進めるつもりで,リリース後はDLCという形で新要素を出していくことを考えています。
4Gamer:
ダッコフが広がった背景にはMOD文化もありますが,本作のMOD対応の予定はいかがでしょうか。
ペク氏:
ゲームの寿命を延ばすには必須だと思っているので,準備を進めています。メインプログラマーもSteam向けは初めてだったため,最初は「どうすればいいか分からない」と言っていたのですが,最近になって「いけそうです」と(笑)。
4Gamer:
デモ版は今年1月に公開,4月にはキャラクターを追加するなど,かなり長期間運用されています。買い切り型のタイトルでこれだけ長くデモを公開すると,製品版の新鮮味が落ちるリスクもあると思うのですが,社内ではどう天秤にかけたのでしょうか。
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ペク氏:
社内でも議論はありました。ただ結局のところ,デモを出すまでは社内でもプロジェクトへの確信がなかったんです。まず出して,反応を見てから考えよう,と。
正直に言うと,私の基準ではまだ完成度が足りない状態で出したと思っています。その後のアップデートまでは,「ユーザーがもっと面白いと感じるものを作ろう」というところまでしか考えていませんでした。
そこから先になると,正式リリースにふさわしいボリュームに増やそうという方針で作っています。
4Gamer:
現在,ウィッシュリストは25万件を超えています。事前の想定と比べていかがでしょうか。
ペク氏:
「うまくいけば5万くらいかな」と思っていました。
4Gamer:
5倍ですか。
ペク氏:
とても気持ちがいいです(笑)。
4Gamer:
(笑)。社内では「これなら成功だ」と言えるラインを設定していますか。
ペク氏:
まだリリース前なので,成功か失敗かを判断するのは難しいですね。デモの公開前は5万を目標にしようという話でしたが,今は正式リリースを控えているので,何本売るべきかという計算をしている段階です。
私自身も会社としてもSteamは初めてなので,どのくらいが妥当なのか,パブリッシャの力を借りながら計算しているところです。
4Gamer:
地域ごとの反応で,何か傾向は見えていますか。
ペク氏:
プロモーションなしで自然に入ってくるユーザーは,最初から日本がいちばん多いです。YouTubeなどの動画投稿も日本の方がとても多くて。
最近は中国のパブリッシャがマーケティングを始めたので数字が動いていますが,オーガニックでは今も日本が最多だと認識しています。
4Gamer:
中国で2Dのエクストラクションを作っているところも,「ボイドダイバー」をかなり意識しているようですよ。ChillyRoomの方も褒めていました。
ペク氏:
その記事を読んでいて知っています。実はパブリッシャどうしの仲がいいので(笑)。
[インタビュー]開発ラインは10以上。200人規模ながら,少人数のチームがいくつも自律して動く,深センのインディー集合体のようなデベロッパ・ChillyRoom(凉屋游戯)とは
「Soul Knight」のChillyRoomは,200人規模ながら少人数のチームをいくつも並走させる体制を採る。CEOの李泽阳氏に聞く。
正式リリースに向けて
4Gamer:
今後のアップデートでキャラクターを追加していく構想はありますか。
ペク氏:
ゲームが成功すれば何でもできますよ(笑)。DLCも出せますし,スキンも追加できます。
4Gamer:
(笑)。今の調子なら,次のタイトルも作れそうですね。
ペク氏:
そうなってほしいですね。まず1作目がうまくいかないと,次を考えることもできませんから。
4Gamer:
最後に,デモ版を遊んでいる読者へメッセージをお願いします。
ペク氏:
デモ版のセーブデータは製品版に引き継がれる予定なので,安心して遊んでいただければと思います。製品版ではデモより,ずっと多くのコンテンツを用意していますし,プレイアブルキャラクターも増えます。一生懸命作っていますので,期待していてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。



















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