![]() |
とはいえ,単にキースイッチを交換できるだけなら,今や珍しい話ではない。重要なポイントは,G512 Xシリーズでは,メカニカルキースイッチと磁気ホール式キースイッチを混在させられることにある。
またそれ以外にも,ガスケットマウントの採用や,高ポーリングレート対応など,トレンドを押さえた仕様が目を引く。
G512 Xシリーズの10キーレスタイプ「G512 X 75」を試用する機会を得たので,テストレポートをお届けしよう。
全体的に美しい仕上がりの外観。だいぶ派手に光る
G512 Xシリーズは,10キーレスタイプで75%サイズのG512 X 75と,フルキーボードタイプで98%サイズの「G512 X 98」の2種類がある。
それぞれにカラーリング(ブラックかホワイト),搭載メカニカルキースイッチの種別(タクタイルかリニア)のバリエーションがあるため,モデル数は8通りだ。なお,本稿執筆時点で正式に国内販売されるのは,日本語配列モデルのみだ。
![]() |
なお,フルキータイプのG512 X 98は,基本的に本体サイズと10キーの有無が異なるだけで,本稿で説明している部分は共通と理解していい。
![]() |
外観から見ていくと,見てのとおり,75%というサイズが目を引く。実測の本体サイズは,約330(W)×153(D)mmだ。
![]() |
75%サイズに馴染みのない方向けに補足をしておくと,10キーレスよりコンパクトでありながら,ゲームからビジネスユースまで,大抵の用途に必要なキーを備えたサイズだ。
扱いやすいサイズとレイアウトだと,筆者は思っている。
実測本体重量は約861g。コンパクトなわりにズッシリとした重さを感じる。とはいえ,片手で簡単に持ち上げられる重さではあるし,イベントなど外出時の持ち運びも苦にならないだろう。
![]() |
キー配列はオーソドックスな日本語配列がベースで,省スペースのキーボードでは省略されることも多い,[無変換]キーもある。
FPSやTPSを好むゲーマーの間では,英字配列を好む人も多い。しかし,ゲーム以外の用途も重視する人や,MMORPGを好むゲーマーなどには,ゲーム内で日本語チャットを打つ場面も多々あるので,好みや用途によりけりといったところか。
一方,日本語配列でキーを省略していないため,[Space]キーの横幅は実測で約80mmと短めである。
![]() |
なお,省略されている[Ins][Home][End]キーは,[Fn]キーと[Print Screen][PgUp][PgDn]キーの同時押しで入力する仕組みだ。
![]() |
初期設定では,左側のダイヤルでLEDイルミネーションの輝度調整,押し込みでLEDのオン/オフが,右側のダイヤルは音量調整,押し込みでミュート/ミュート解除の動作が割り当てられている。
本体の高さは場所によって異なる。キーキャップを含まない実測では,[Space]キーの列が机上から約23mm,ファンクションキーの列が約30mmだった。
列によって若干異なるが,キーキャップ自体の高さが約11mmなので,[Space]キー列のキートップは,約34mmの高さとなる。
そのままでも扱えるが,別売りパームレストと併用したほうが扱いやすいだろう。
![]() |
本体底面には,シリコン系素材の滑り止めが5つ装着されている。
筆者のデスクは,天板が非常に滑りやすいのだが,試用中にG512 X 75がズレることは1度もなかった。優れた滑り止めと評価したい。
![]() |
G512 Xシリーズのユニークな点は,後段で説明するキースイッチの交換に使用する付属の「キーキャッププラー」と「キースイッチプラー」が,チルトスタンドを兼ねていることだ。
これらを底面奥側の滑り止めに取り付けることで,ファンクションキー列のキートップが,約51mmまで持ち上がる。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
筐体そのものは樹脂製だが,内部にシリコン系素材を用いたガスケットマウントを採用しているのもポイントだ。
カスタムキーボード愛好家の間で支持されてきたガスケットマウントだが,最近ではメーカー製のゲーミングキーボードでもトレンドになっている。ちなみにLogicool Gのキーボードでは,G512 Xシリーズが初のガスケットマウント採用製品だ。
打鍵感はいわゆる「コトコト」系の上質なもの。底打ちしたときの反響音も比較的抑えられており,その効果はしっかりと感じることができる。
![]() |
![]() |
また,耐久性に優れる「PBT」(ポリブチレンテレフタレート)素材を使用した,二重射出成形のキーキャップを使用している点もポイントだ。
ゲーミングキーボードを頻繁に買い替える人は多くないと思うので,キーキャップの耐久性に期待ができる点は好ましい。
PCとの接続方式は,USBによるワイヤード接続のみに対応する。接続に使う付属のUSB Type-C to Type-Aケーブルは,長さ約1.8mだ(※端子部含まず)。
![]() |
ポーリングレート(USBレポートレート)は最大8000Hzに対応する。
キーボード内部でのキースキャン周期,キーボードからPCへのデータ転送周期のどちらも最大8000Hzで動作することから,ロジクールは本製品を「True 8K」のキーボードとうたっている。
少し惜しいと感じたのが,USBケーブルが布巻ではなく,ビニール系の素材で覆われるタイプだったことだ。3万円オーバーの税込直販価格を考えると,この点は高級感が欲しかったというのも正直なところだ。
直近のLogicool G製品は控えめに光ったり,そもそも光らないなど,質実剛健なイメージを展開しているものも多い。そんな中,G512 Xシリーズは,LEDイルミネーションを前面に押し出したデザインが特徴だ。
![]() |
各キーのライティングはもちろん,キーボード前面には「ライトバー」と称する,表面にスラッシュパターンが施されたライティング機構が備わる。
G512 X 75のライトバーは,33ゾーンに分割されており,プリセットのエフェクトのほか,ユーザーによってカスタムした発光パターンで光らせることも可能だ。
くわえて,G512 X 75,G512 X 98には,専用のパームレスト「Palmrest 75」(6490円)「Palmrest 98」(7480円,いずれも税込)も別売で用意されているのだが,これもまた光る。
![]() |
専用パームレスト自体は半透明のアクリル製で,LEDは内蔵していない。
しかし,G512 Xシリーズと組み合わせて使用すると,キーボード本体のライトバーの光を拡散して,パームレスト全体が光って見えるわけだ。
なかなか遊び心があるアイテムになっている。
デスク周りは光ってナンボという人や,配信映えを意識する配信者には,うってつけのアイテムだ。「推しのテーマカラーでデスク周りを彩りたい」という方にもいいのではないだろうか。
メカニカルもアナログも混在OKなG512 X
G512 Xシリーズ最大の特徴であるキースイッチの混在機能「デュアルスワップ」を見ていこう。
G512 Xシリーズの標準装備はメカニカルキースイッチで,すべてのキーがユーザーによる交換が可能になっている。通電状態でもキースイッチを交換できる,いわゆるホットスワップ対応だ。
そのうえで,キーボード左側の37キーと,右側の矢印キーの計41キーは,メカニカルキースイッチから磁気ホール式アナログキースイッチに交換できる。
つまり,すべてのキーが交換可能だが,アナログキースイッチに交換できるのは,そのうち41キーに限られるということだ。
![]() |
メカニカルキースイッチを外して,付属のアナログキースイッチに交換すれば,交換したキーでだけアクチュエーションポイントのカスタマイズや「ラピッドトリガー」が使えるようになるという仕組みである
![]() |
付属する磁気式アナログキースイッチは9個だ。最大41個のキーが交換可能なことを考えると,少ない気もする。とはいえ,ゲームプレイをするうえで,ラピッドトリガーを有効にする必要を感じるキーは,それほど多くないのも事実。必要十分な数なのだろう。
使用していないキースイッチを収納するためのスペースが,キーボード背面に備えられているのも,G512 Xシリーズの面白いポイントだ。
「ちょっとキースイッチを変えてみたいな」というときに,キースイッチを製品ボックスから引っ張り出す必要もなく,サッと入れ替えられる。
![]() |
![]() |
なお,付属の磁気式アナログキースイッチについては,セットアップガイドに「Gateron KS-20」と書かれていた。
キースイッチメーカーのGATERON Electronic Technology製で,磁気式アナログキースイッチとしては非常にポピュラーなものだ。俗に「KS-20互換」と呼ばれる互換品も多く出回っている。
付け加えると,メカニカルキースイッチはCherry MXシリーズ互換の「3P」型だった。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
G512 Xシリーズではアナログキースイッチの特性を生かし,キーのストローク量(=押した深さ)に応じ,2段階のキー入力を割り当てる「マルチアクション」機能がある。
たとえば,[W]キーを軽く押せば「前進」,深く押せば「ダッシュ」といった具合に,ひとつのキーで2つの動作を実現できるというものだ。
ただ,どれくらい押し込むと入力が変化するのかは,実際に使っての慣れが必要になる。
そこでSAPPリングを装着しておくと,ストロークの最中にリングが接触するので,入力変化のタイミングを直感的に感じられるのだ。
それ以外にも,キーとキーキャップの間にクッションを挟む形になるので,若干の静音効果も見込める。
最後に,試用にもとづいた筆者の印象を付け加えておこう。
ゲームプレイ用に,いくつかのキースイッチをアナログキースイッチに変更した状態でG512 X 75を使用したのだが,メカニカルキースイッチとアナログキースイッチの打鍵感を同じようにしたいのなら,リニアタイプのメカニカルキースイッチを搭載するモデルをおすすめしたい。
アナログキースイッチとメカニカルキースイッチには,押下圧の差があるものの,リニアタイプであることは共通だ。よって,差を感じる場面はありつつも,そこまで強烈な打鍵感の差を覚えることはなかった。
逆に,メカニカルキースイッチにフィードバックのある打鍵感を求め,アナログキースイッチのリニアな感触が混在しても問題ないという人や,キースイッチごとの差をハッキリさせたいという人は,タクタイルタイプのメカニカルキースイッチのモデルを選ぶといいだろう。
![]() |
ラピトリ,SOCD,マルチアクションは「G Hub」で管理
![]() |
G512 Xシリーズにおいて,G Hubでカスタマイズが可能なのは,主に以下の点だ。
- LIGHTSYNC:LEDライティングの動作をカスタマイズする
- 割り当て:特定のキーに別のキーやマクロを割り当てる
- アナログキースイッチ:アクチュエーションポイント,ラピッドトリガー,SOCDの設定
- パフォーマンス:ゲームモード時に無効化するキーの設定,ポーリングレートの変更
これらの設定をプロファイルで管理し,ゲームや起動するアプリケーションによって動作を切り替えるのが,G512 XシリーズとG Hubの基本的な使い方だ。
ここからはG512 Xシリーズを用いる点で,とくに重要な部分へ触れていこう。
まずは「LIGHTSYNC」だが,LEDイルミネーションの設定を行うものだ。
筆者は大抵,この手のキーボードは単色に設定してしまうのだが,用意されているプリセットは試しているとなかなか楽しい。もちろん,ライティングの無効化も可能だ。
![]() |
![]() |
次に「割り当て」だが,デフォルト,[Fn]キー併用時,「Gシフト」時という3種類のマッピング(キー割り当て設定)ができる。先述したダイヤル押し込み時の機能割り当てもこちらで行う。
![]() |
また,アナログキースイッチ使用時,キーのストローク量に応じて,2段階のキー入力を割り当てる「マルチアクション」も,ここで設定できる。
注意点として,マルチアクションと後述する高速トリガーは併用できず,有効化できるのはどちらかひとつだ。
![]() |
ゲーマー的にもっとも重要なのは「アナログキースイッチ」だろう。
ここで設定できるのは,アナログキースイッチ使用時のアクチュエーションポイントの調整(0.1〜4.0mm),高速トリガー(いわゆるラピッドトリガー)の感度調整(0.1〜2.0mm)。そして,キーの優先順位(SOCD)だ。
特性上,先の2つはアナログキースイッチを使用しないと有効化できないが,SOCDのみ,メカニカルキースイッチでも使用できる。
![]() |
SOCDは,オンライン対戦ゲームによっては使用を禁止している場合もあるので,ゲーム側,あるいは参加するイベントのルールで禁止されていないかなど,使用する前に必ず確認してほしい。
![]() |
「パフォーマンス」タブのゲームモードは,モードを有効にしたときに任意のキーを無効化する設定だ。先述したゲームモードボタンを押すことで,モードの有効/無効が切り替わる。
デフォルトでは,[Windows]キーが無効化対象に設定されているが,それ以外のキーを追加できるわけだ。
![]() |
レポートレート(ポーリングレート)も,パフォーマンスタブから設定可能だ。1000Hzと8000Hzのどちらかを選択できるが,8000Hz使用時はCPUへの負荷が増えることに注意が必要だ。PCのスペックやプレイするゲームによっては,フレームレートが下がる可能性もある。
8000Hzで運用してみて,問題が起きたら1000Hzに変更という使い方でもいいだろう。
![]() |
ここまでG512 Xシリーズについて説明してきたが,筆者が使用しているG512 X 75の試用機では,ラピッドトリガーの動作に問題が生じた。
試用期間は,本稿掲載時点で2か月弱だ(※PCを使うときに常用していたわけではない)が,いつ頃からか,ラピッドトリガーを有効にした際の動作が,ときおり不安定になったのだ。
具体的には,ラピッドトリガーを0.1〜0.2mmの設定で有効化すると,キーを底まで押し続けていても,入力が途切れることがある。筆者が試した範囲では,キーに斜め方向の力を加えながら押したときに,とくに発生しやすかった。
問題の発生後は,G Hubとファームウェアの更新に加えて,アナログキースイッチの交換,ポーリングレートの変更,USBケーブルや接続先PCの変更も試したが,症状は変わらなかった。
しかし本稿掲載直前に,ファームウェアアップデート「G512 X 75: 181.3.18」が配信され,これを適用したところ筆者の環境では症状が解消した。高速トリガーも問題なく動作している。
同様の症状が出ている場合は,ファームウェアの更新を試してみるといいだろう。
いつものキーボードにトレンドと好奇心を持ち込む1台
ここまで紹介してきたことから分かるように,ガスケットマウントの採用や,8000Hz高ポーリングレートへの対応など,G512 Xシリーズは単なる「カスタマイズ系おもしろキーボード」ではない。
幅広いユーザーに受け入れられやすいメカニカルキースイッチを標準搭載し,アナログキースイッチはユーザー自身の交換によって利用できる。ゲーマー向けキーボードならではの試行錯誤や楽しさを,エンスージアスト以外にも味わえるようにしたLogicool Gなりの回答が,G512 Xシリーズなのだと感じた。
![]() |
ゲーマー向けの先進的な機能を備えつつ,比較的オーソドックスな日本語配列を持つキーボードは意外と数が少ないので,そうした意味でも貴重な選択肢のひとつだ。3万円台という価格はハードルだが,競争が激化するゲーマー向けキーボード市場に,新たな方向性を携えた存在が登場したといえるだろう。























































