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[GDC 2009#09]あのウィル・ライトの右腕が語る「ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツの美学」
ここ数年,ヘッカー氏は毎年のようにGDCで講義を行うようになっているが,その口調や講義スタイルも,だんだんライト氏風(?)になってきたようだ。
今回のセミナーでは,いつもにも増してスライドを多様しており,「ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ(以下,UGC)とは何か」「UGCをどのように使うのか」,そして「UGCをなぜ使うのか」という三つの項目にまとめつつ,早口のジョークを加えながら,一見本編とは関係のないような話題を次々と出していくというスタイルになっていたのは面白い。
最近では,IGDAの若いメンバーを中心に,このような手法で観客を楽しませてくれるセミナーが増えているが,取材する側としてもとても楽しいので,じゃんじゃんやってもらいたいところ。……とはいえ,よほど上手な講演でない限り,最後に「結局何の話だったんだ?」と感じてしまうのが難点ではあるのだが。
しかし,実際のプログラムやアートのみに限らず,「EVE Online」でプレイヤー達が自己勢力と相手のファクションを激突させ,大きな勢力を持っていたグループが一瞬にして滅んでしまうようなプレイヤーイベントもUGCの一つであるとし,「これが,どれだけ重要なことだか分かりますか? プレイヤー達の何千時間,何千ドルもの投資が,たったの数日間で消えてなくなってしまうのです」と語る。
このあたりから,「私自身,かなり自慢のUGCなんですが……」と娘の写真を出して笑いを取るなど,かなりのスピードで話題を進めていく。
その娘が着ているTシャツが,最近大きな話題となっている「Tシャツのデザインサイト」で作られたものであること,同じようにナイキも自分の好きなように配色できるサービスを始めていることなどを皮切りに,70年代から「自分の構造を複製するロボット」の研究が行われていたことなどや,ウィキペディアで書き込みや修正を頻繁に行う人は一部分に過ぎないことなどを解説。「UGCが大きく広がっているものの,それをリードする層は一部でしかない」「しかし,その一部の人々の活動が,コミュニティに大きな意義を生み出している」と強調する。
このようにヘッカー氏が熱弁を振るう講演であったわけだが,ここで一つのサプライズが発生した。突然,師匠であるウィル・ライト氏が,旧ソ連の国歌と共に飛び入り参加してきたのだ。
彼自身の講演で恒例となりつつある「Russian Space Minutes」のミニコーナーが,ここでいきなり始まったときには,会場に集まった人も大笑い。一気に会場が和やかな雰囲気に包まれたのは印象的であった。
ともあれ,そんなサプライズが一段落した後,ヘッカー氏は,「How do Games mean?」(ゲームは,どう意味をなしているのか?)という,今回の講義の本題ともいえる疑問を投げかけた。原意も直訳も分かりにくいが,「ゲームが,表現媒体の一つとして,どうやって意味/意義を作り出しているのか?」ということに近いだろう。
ヘッカー氏は, Blow(ジョナサン・ブロウ)氏や,Frank Lanz(フランク・ランツ)氏といった,GDCではお馴染みの業界仲間のスピーチを引用しながら,「例えば,本の題名と内容が違っていたとしても,題名だけで先制的な意味が形成されてしまう」,と作り手側の“力”の存在を明白にする。
「これは,作り手の独断ではないのか? 私にとっては,ゲームの最初から最後まで決められた道筋を通っていくMystよりも,角から出てきた相手のヘッドショットに成功したQuakeの3秒間の感動のほうが,表現媒体としての価値が高いように思える」と,ヘッカー氏は,自身のゲームデザインにおける思想を語る。ユーザーがゲームで生み出す個々の“体験”こそが,ゲーム開発者が求めていくことなのではないか? というわけだ。
最後にヘッカー氏は,花園とマッターホルンの画像を見せ,「どちらも美しいけれど,二つから与えられる感情は違うものです。険しい山岳からは,“美しい”(beauty)というよりも“崇高”(sublime)という印象を受ける。崇高には,「あの山に行ったら死ぬかもしれない」というような,“畏怖”の感覚が潜んでいるからです」と,プレイヤーが自分の体験や感情から得るものもUGCというコンテンツであることを提示し,「ゲームデザインもそうした視点をもったうえで模索していくべき」だとして,今回の講義を締めくくった。
おそらく,この“1%ルール”をゲーム業界で使ったのは,数年前のラフ・コスター氏だったと思うが,今ではUGCの説明で頻繁に目にするようになった |
決められたストーリーや世界観を楽しむMystと,プレイヤー個人個人が自分のゲーム体験から得るある種の感情。ヘッカー氏は,ゲーム開発者は後者を求めていくべきだという |
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