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[GDC 2011]あの間違い電話がなければ今でも豆を売っていたかも。業界の重要人物ピーター・モリニュー氏が「ポピュラス」を生み出せた秘訣(または幸運)とは?
1987年,モリニュー氏は「Taurus Impact」という新しいゲーム販売会社を立ち上げることになったが,ビジネスの中心になっていたのは,煮込み豆の缶詰を中東に向けて販売するという輸出業務だったという(このビジネスは当時付き合っていたガールフレンドの父親の薦めによるものだとか)。1缶ごとに1セントを受け取るという条件だったとのことだが,もちろんヨーロッパ式の煮込み豆など中東ではほとんど需要がなく,販売する量よりも自分で食べた量のほうが多かったとモリニュー氏は笑いを誘う。
そんなある日,モリニュー氏に大きな転機が訪れる。当時,コンピュータ製作会社として有名だったCommodoreから「あなたの会社のことはよく耳にしています。実は新製品を開発中なのですが,一度我々の社に来ていただけませんか?」との電話を受ける。モリニュー氏は「なぜCommodoreのような企業が自分の会社のことを知っているのか」といぶかしんだが,とりあえず煮込み豆の缶をかばんに詰め込んで,Commodoreに行ってみることにした。
この話,“Commodoreはモリニュー氏のTaurus Impactのことを,当時業務用のネットワークソフト開発で知られていたTorusという会社と勘違いしていた”というオチなのだが,「新製品のAmiga 1000を10台送りますから,ぜひウチのために新製品を作ってください」という誘惑は強烈だった。そのため,モリニュー氏自身は勘違いに気付いたことを言い出せず,結局数週間後に新品のAmiga 1000を10台確保することになる。
ネットワークソフトについて知らなかったモリニュー氏は,度重なるCommodoreの催促に応じる形でなんとか「The Ultimate Database」というもっともらしい名称のビジネスソフトを開発して,その義理を果たす。その後「12歳の少年が作ったアドベンチャーゲーム」という触れ込みの「Druid II: Enchantment」というゲームソフトをAmiga向けに移植するという仕事が舞い込んだことから,社名を変更して,ゲーム開発会社として再スタートを切る決意を固めた。
月曜の朝,コープス氏がいじっていたプログラムを試して“地面を上げ下げするだけで楽しい”という点に可能性を感じたモリニュー氏は,すぐに何らかのゲームの土台にしようという思いが湧いたという。そしてモリニュー氏が地形データやAIなどを担当し,コープス氏はグラフィックスやインタフェースのプログラミングに取りかかった。
その後,マップ上に散らばったキャラクターを一か所に集める「ピープル・マグネット」や,天災やハルマゲドンが追加。またそれらの命令を発すると消費するマナは,人口を増やすことで溜まっていく,などといったアイデアが次々に追加され,開発の開始から6か月が経った頃には「これはゲームとしてヒットする」という手応えを感じたという。
今回のセッションでモリニュー氏が念を押していたのは,そうしたアイデアがどんどん浮かんだのは,モリニュー氏とコープス氏が,まるで日課のようにゲームをテストして遊んでいたからだという点だ。「Minecraft」のようなゲームがずっとβ状態なのは,テストセンターのようなリソースを持たない開発者が,プレイヤーにテストを代行してもらっているからだろう」と説明するモリニュー氏だが,むしろこうしたプレイテストを続けなければ,本当に面白いアイデアは生まれてこないと力説する。「ポピュラスが今の開発者の参考になる点があるとすれば,それは“テストを重ねることで洗練されていった昔のゲームの好例である”という点だろう」と,モリニュー氏は続けた。
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