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[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante\'s Inferno」のデザインワークをレクチャー
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印刷2010/03/13 20:40

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[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante's Inferno」のデザインワークをレクチャー

画像集#002のサムネイル/[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante's Inferno」のデザインワークをレクチャー
 Electronic Artsが2010年2月に発売した「Dante's Inferno」(邦題 ダンテズ・インフェルノ 〜神曲 地獄篇〜,PS3/Xbox 360)の最大の特徴は,舞台となる地獄を描いたグラフィックスのすさまじさだ。亡者の肉体で形作られた巨大な壁や,徘徊する不気味な魔物のデザインなど,ゲームそのものは比較的シンプルな三人称視点のアクションゲームながら,正気の沙汰とは思えない地獄の存在感が圧倒的なのだ。
 そのため,GDCのレクチャーに「Going Hell-A Concept Design Overview of Dante's Inferno」(地獄堕ち:ダンテズ・インフェルノのデザインコンセプト)というタイトルを見つけたときに,これは行くしかないという気持ちになったのも無理はないだろう。

 筆者は個人的な予想として,かなり“イっちゃってる”デザイナーが,悪魔的な高笑いをしながらレクチャーしてくれるのではないかと思っていた。しかし,もちろんそんなわけはなく,スピーカーを務めたアートディレクターAsh Huang氏は,ごく普通の人物というか弁舌爽やかな好青年風で,ちょっと残念だ。

画像集#003のサムネイル/[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante's Inferno」のデザインワークをレクチャー


 プロジェクトのスタートは2007年で,エグゼクティブ・プロデューサーのJonathan Knight氏を中心に,13人のメンバーでコンセプトが煮詰められたという。開発期間は2年と決められ,プロジェクトの通称は“CoreX”または“Go to Hell”だったとか。
 初期プロトタイプの制作に用いられたのは,「The Simpsons Game」(2007年)のSimsons Engineで,グラフィックス部分には,「Dead Space」(2008年)や「The Godfather II」(2009年)にも採用されることになるエンジンが使われた。スプリングフィールドを駆け回るホーマー・シンプソンが,地獄で魔物と戦うダンテに姿を変えたのだ。ほほう。

画像集#004のサムネイル/[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante's Inferno」のデザインワークをレクチャー 画像集#005のサムネイル/[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante's Inferno」のデザインワークをレクチャー


画像集#006のサムネイル/[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante's Inferno」のデザインワークをレクチャー
 ご存じのように,ダンテズ・インフェルノのベースとなっているのは,中世イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリが14世紀初めに書いた「神曲」の「地獄篇」だ。
 ダンテは地獄の様子を詩で表現したわけだが,ドラクロワやロダン,ダリなどが,その神曲からインスピレーションを受けた絵画,彫刻を制作しているし,現代美術や映画などにもダンテの地獄をモチーフにした作品が多い。グラフィックスチームはまず,それらの膨大な作品のリサーチから始めたと,Huang氏は語る。

 地獄という,ある意味,おなじみの世界をビジュアライズするにあたって,彼らは原作どおりの層構造を採用した。最上部には地獄の入り口であるLimboがあり,最下層まで,九つの層に分かれている。全体的には漏斗のような形をイメージすると分かりやすい。まあ,かなり目を細めてみたりすれば,どんぶりに見えないこともないかも。

 それぞれの層は,プレイヤーに分かりやすいように,カラーとテーマが決められた。例えば,最下層の「裏切り」はブルーを基調にした冷たく凍りついた世界,第5層の「憤怒」の地獄は,オレンジを中心とした炎の世界という感じだが,ピンクとかイエローとかは使えないだろうし,人を不安にするような色合いには限りがあるので,かぶっちゃっているエリアも多いような気がする。

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 レンダリング的観点からは,環境光を抑えめにして,キャラクターにピンスポットが当たっているような,コントラストのハッキリした画面が使われることになった。これによって,地獄の不自然さや不気味な雰囲気が強調されるのだ。古典絵画や宗教画にも,このような光りの使い方をした作品が多い。
 さまざまな構造物は,地獄のスケール感を出すため,古代遺跡や現代の巨大建築物をモチーフとしており,朽ち果てたようなディテールが付け加えられている。
 また,地獄を描いた古い絵画や彫刻を真似て,建築物の一部が罰を受ける人間の肉体で作られているというアイデアも採用されている。印象的な肉の壁のほか,柱や梁など,いたるところに人間の体が埋め込まれていたりするため,建築物は例えば,ガウディのサグラダ・ファミリアのように有機的なデザインになる。なんだか,だんだん地獄らしくなってきたようだ。

画像集#011のサムネイル/[GDC 2010]阿鼻叫喚の地獄はこのようにして作られた。「Dante's Inferno」のデザインワークをレクチャー
 あとは,ひたすらトライ&エラーが続けられたという。メインキャラクターであるダンテは,中世の騎士風で,胸に赤い十字というコンセプトに沿って,さまざまなスケッチが描かれた。
 途中,武器として巨大な鎌「デスサイズ」の使用が決まったので,そこからはこの武器とのバランスを取る必要も出てきた。

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 愛欲地獄のボスであるクレオパトラは当然,エロチックでなくてはいけないが,モンスター的な要素も必要だ。彼女の配下の魔物達も同様で,美しい女性のようでいながら背筋が寒くなるようなデザインが望ましい。
 ミノス王については,「盲目の巨大ヘビ」という基本コンセプトがあったが,“ヘビメタバンドのギタリスト”のイメージも盛り込みながら,最終的なデザインに仕上げたという。

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 キャラクターやモンスター,構造物などは,作り込もうと思えばいくらでも作り込めるのだが,やはりゲームならではの制限もあると,Huang氏はいう。アクションを滑らかにするため,60fps以上のフレームレートを実現することが開発初期に決められており,複雑すぎるデザインは避ける必要があったそうだ。
 そのためボツになったデザインも数多く,Huang氏は,ダンテが乗り込めるジャイアントクリーチャーに,今もなお不満に感じている部分があると語る。プレイヤーのあいだではモンスターの種類の少なさが話題に上ることもあるが,その理由も込み入った地獄のデザインにあるのだろう。

 現在,Dead Spaceの続編に取りかかっているというHuang氏。Dante's Infernoの続編はあるのかという聴衆の質問には残念ながら答えてくれなかったが,とりあえず地獄のようなゲームグラフィックスの仕事を一段落させて,一息ついているように見えた。
  • 関連タイトル:

    ダンテズ・インフェルノ 〜神曲 地獄篇〜

  • 関連タイトル:

    ダンテズ・インフェルノ 〜神曲 地獄篇〜

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