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ゲームプランナー/大学教授の米光一成氏が聞き手となるトークイベント「粒谷区立ツブヤ大学レギュラー講座『GaMe』」1時限目を受講してきた
このイベントは,ゲーム業界関係者を招いて,そのときどきの旬の話題をテーマにトークを繰り広げるというもの。聞き手となるのは,ゲームプランナー/ライターで,立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏だ。
第一回となる今回は,Route24の西 健一氏やアートディンクの八木正紀氏,ハンゲームのスタッフなど,7組のゲストが登場。トークはゲームそのものの話題に留まらず,iPadの可能性やゲームの技術を応用したコンテンツに言及したり,あるいは電子書籍をその場で出版してみせたりと,盛りだくさんの内容となった。
小沢さんは,米Amazon.comのサービス「Digital Text Platform」を使い,日本初(推定)のKindle向け電子書籍を出版した経歴の持ち主だ。会場でも,自身の手がけたコミックを使って,電子書籍の“生”出版を解説付きで披露した。
米光氏は,わずか5分前後で一通りの手続きを終える小沢さんを見て,「凄い。凄いことなんだけど,簡単すぎて実感が沸かない」とコメント。
小沢さんによれば,手続き終了から実際に購入可能となるまでには審査が入るため,1〜2日ほどかかるとのことだが,それでも5分程度でワールドワイドでの権利を保有した正式な出版ができることに,会場からは驚嘆の声が挙がった。
ビジネスモデルの面からいえば,もちろん広告収入もあるが,実は企業向けにQ&Aサイトのシステムとデータを提供するサービスを展開しているとのこと。
サービスの開始から10年が経過し会員も160万人を超えているため,データベースを一から構築する必要がなく,また信頼性も高いそうで,利用する企業は130社以上に及んでいるという。
また,なぜ人々が無料で他人の質問に答えるのかについては,「自分の知っていることを他人に教えたい」「大っぴらにいえない事柄でも,匿名なら答えやすい」といった人間の心理が働いていると語っていた。
その一方,Twitterを利用した新しいQ&Aサイト「おけったー」のサービスを展開。こちらはOK Waveより匿名性こそ低くなるものの,より気軽に質問できて早く回答が得られること,そして誰が質問/回答しているのかが見える安心感がポイントになっているため,企業とユーザーの間でのQ&Aなどの利用を見込んでいる。
簡単に紹介しておくと,geotrionは,GPSの位置情報と世界地図を利用したゲームだ。地図上で発見したほかのプレイヤーとラインを結んで三角形を作り,その面積を競うというルールで,Twitterとも連動している。
西氏は,提携企業の店舗を囲んで三角形を作るとクーポンが貰えるといったようなビジネスモデルを示唆していた。geotrionは現在,Appleの位置情報関連に関するレギュレーション変更に伴う修正を施している最中で,4月中に正式リリースされる予定だ。
もう一方のFollowarsはTwitterと連動したゲームで,プレイヤー自身がフォローしている人の中から,最大二人をキャラとして召喚して戦うという内容。
それぞれのキャラはTwitter歴やつぶやきの回数によって能力が異なり,相互にフォローしているとスペシャルな技が出せるとのこと。また勝利するとポイントがもらえ,それを使った転職システムも実装予定であるという。
会場では,イベントに先駆けてアメリカで収録された(?)というiPad実機でのプレイデモが披露された。西氏はiPadの画面の大きさについて「一人でプレイするだけでなく,テーブルの上に置いて対戦したり,あるいはギャラリーが覗き込んだりする楽しさがある」と言及していた。
Followarsは,実機上で発生している不具合の修正が終わり次第,正式にリリースされる予定だ。
なお,geotrionとFollowarsについては,すでに4Gamerでも取り上げている。そちらも併せて確認してほしい。
「geotrion」 |
加えて「不思議の国のアリス」をアプリ化した「Alice for the iPad」や,元素記号を学ぶためのアプリ「The Elements」,コーディネートを確認してその場で購入できるGAPの電子広告などを紹介。
会場ではタッチスクリーンに触れたり,iPadを振ったりすることで画面内のオブジェクトがさまざまな動きを見せる様子が披露され,米光氏は「従来のゲームではないけれども,蓄積された技術を使った新しいゲームの形」と感想を述べた。
併せてXbox 360のProject Natalも紹介され,iPad界隈だけでなく,各社がさまざまな形でゲームの新しいプレイスタイルの提案や,ゲーム技術の応用を模索している現状が説明された。
五番手は,書籍「デバッグではじめるCプログラミング」の著者,山本貴光氏。山本氏は現在,ゲームデザインについて記された「The Game Design Reader: A Rules of Play Anthology」(The MIT Press刊)を翻訳中で,その前半部分にあたる上巻が日本でも2010年内にソフトバンク クリエイティブより出版される予定だ。
米光氏もこの書籍を「ゲーム開発者や業界を志す学生が読めば,業界全体の底上げになる」と絶賛。また山本氏は,「これを読めば,日本のゲームデザイナーも持論や自身の経験などを書き足したくなるはず」と付け加えた。
米光氏は,これもまた従来のゲームではないが,実際に利用しているユーザー達にとっては遊びの一つであり,新たなゲームといえるのではないかとの見解を示した。
八木氏は,自身が制作プロデューサーを務め,バンダイナムコゲームスから発売されたPSP用ソフト「ガンダムアサルトサヴァイブ」のプロモーションにおいて,Twitterを活用した事例を紹介した。
当初,八木氏は,Twitterを広報活動だけに利用しようとしていたが,書籍「Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流」(洋泉社刊)の影響により考え方を改めたという。
すなわち“顔の見えない”活動はTwitterにそぐわないとし,八木氏自身がに聞いている音楽のことや,お子さんの微笑ましい姿といった日々のプライベートなつぶやきの中に,時折ゲームの宣伝を交えるというスタイルに切り替えたのである。
また,ガンダムアサルトサヴァイブの体験版を面白いといってくれる人をフォローしていったが,ゲームそのものについてはあまり触れずに,彼らのつぶやきの中から八木氏自身も興味を持っているものをチョイスして返信していったとのこと。
ゲーム本編の発売後には攻略法に関するつぶやきも数多く見られたが,八木氏が直接回答するのではなく,「ここで詰まっている人がいる」とリツイートすることで,プレイヤー同士の交流を促していったそうだ。
八木氏はそれらを“深夜ラジオのDJ”スタイルと総称し,米光氏もまた「“人と人とを引き合わせる”“モノとモノとを組み合わせる”編集者的な役割」と評した。
さらにゲーム本編の発売後に行ったTwitter上のアンケートでは,1000名以上の八木氏のフォロワーの中から172名が回答。その中には,八木氏のフォローが購入に影響したという人が40名以上,実際に購入を決めたという人が10名いたという。
また,体験版をプレイした上で購入に至らなかったという人も含めて,多くの人がアンケートの自由記入欄に長文でゲームの感想や要望,意見などを書き込んでいたそうだ。八木氏はこうした活動により,Twitterによる宣伝効果を実感したと述べた。
事前の告知でiPadや電子書籍がキーワードとなっていたこともあり,当日の会場にはゲームにあまり詳しくない人も集まっていた。そのため,例えば4Gamerでは詳細な説明を省いているMMOとMOの違いやProject Natalといった事項があらためて説明されたのだが,そうしたゲームを取り巻く現状が,他業界の人達の関心を惹く様子はなかなか感慨深い。
このイベントは,必ずしも具体的なゲームタイトルを掘り下げるような内容ではないため,生粋のゲーマーには少々物足りないかもしれない。
しかし,普段慣れ親しんでいるゲームがさまざまな形で社会や他業界に応用されていることを直接感じ取れる数少ない機会である。この記事を読んで興味を持った人は,2時限目以降の講義に参加してみよう。なお,次回は5月28日(金)に開催予定。詳しくは,粒谷区立ツブヤ大学公式サイトなどをチェックしてほしい。
粒谷区立ツブヤ大学公式サイト
- 関連タイトル:
Followars
- 関連タイトル:
geotrion
- 関連タイトル:
ガンダムアサルトサヴァイブ
- 関連タイトル:
ドラゴンネストR
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