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時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー
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印刷2010/08/25 00:00

インタビュー

時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー

ハイデフで描かれる,こだわりの2Dグラフィックス

「KOF XII」から継承されたコンテンツパイプライン


画像集#052のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー
 前作KOF XIIが「新世代の新たなKOF」をコンセプトに開発されていたのに対し,「KOFイズム」=「KOFらしさ」の再構築を掲げて制作された本作。しかしながらKOF XIIで生まれたハイデフ・グラフィックスは,前回高く評価されたこともあってか,今作でも継承が行われている。

 ところで,このKOF XII,およびKOF XIIIのキャラクターグラフィックスは,特殊なコンテンツパイプラインにて構成されていることをご存じだろうか。新KOFシリーズのキャラクターグラフィックスは,実は各キャラクターごとにポージング専用の3Dグラフィックスモデルをもとに制作が行われている。

 2Dドット絵の前段階として,まず3Dモデルを用いたポージングやライティングなどを行って描画を行い,それを2Dフレームとして出力。これに対して,さらにイラストテイストの表情や陰影をドット絵として描くポストプロセスを施すという,2Dドット絵の工程としては,かなり手間のかかる手順を踏んでいる。いわば,お手製・ハンドワークのノン・フォト・リアリスティック(NPR)シェーディングを実践していると考えてよい(?)。

久木野氏:
 基本的なコンテンツパイプラインはKOF XIIIでも同じです。ですから今回も,グラフィックスの作業は相当大変でした。ただ,前作で試行錯誤していたこの制作スタイルも,今作では洗練されました。デザイナー/プログラマの熟練度が上がったこともあって,かなりスムーズになったという実感があります。

 ――新生KOFにおける下絵ともいうべき,キャラクターのモーションを作り出す3Dモデルは,キャラクターの体格や衣装によって色々と幅がある。
 とくにアテナや舞のような女性キャラクターの衣装には,当然ながら(?)多くのボーンが仕込まれており,その動きは物理シミュレーションをベースにしながらも,ダイナミックや美しさを表現するために,手付けで修正することもあったという。パンチやキックのポージングやモーションも同様で,IK(Inverse Kinematics:逆運動学)をベースにしながらも,バトル時のリアルな臨場感が伝わるよう,わざと荒々しいアニメーションになるような修正も行われたとのこと。

画像集#045のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー 画像集#046のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー 画像集#047のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー
一部のキャラクターには専用のアクションも用意されている。とくに舞への愛情はかなりのものを感じる
画像集#048のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー 画像集#049のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー 画像集#050のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー 画像集#051のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー

久木野氏:
 あくまでドット絵の完成形をイメージしての3Dモデルなので,現実的には,拳が身体に比べて大きすぎるとか,バランス的におかしい部分もあります。

 ――こうした2Dアニメーション的な表現を行う際に,あえてバランスの崩れた3Dグラフィックスを応用するという事例は,しばしばよくあることだ。スタジオジブリのアニメ映画のメイキングにおいても,同様の事例が紹介されたことがあったし,ゲームにおいても「NARUTO-ナルト- ナルティメットストーム」でキャラクターのダイナミックなアクション表現を行うがために,手足バランスのおかしい3Dモデルを利用した事例もある。

 実際にKOF XIIIにおけるグラフィックス制作の過程を示した素材が以下になる。

下絵制作用の3Dモデル
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[A]3Dモデルを元に作成した2Dグラフィックス,[B]イラストテイストに加工した仮キャラ,[C]ハイライト表現などを付け加えた本キャラ
画像集#004のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー
画像集#008のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー

画像集#053のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー
 3Dモデルの形状や衣装は,あくまで,ドット絵を起こすための下地となるもののため,久木野氏の言うように完成形とはだいぶ違ったものになっているのが分かる。衣装のテクスチャは色分けを明示するためだけのものだし,表情も目鼻立ちの位置が分かる程度の簡略化されたものになっている。

 また,興味深いのは,3Dモデルへのライティングは拡散反射系のトゥーンシェーディングのみが行われていて,鏡面反射のハイライトは手付けで行われているという点だ。この手付けのハイライト表現は,KOF'94から脈々と継承が続けられてきた「KOFグラフィックスの味わい」という感じがする。

 なお,2Dに落とし込まれた完成形の2Dのドットグラフィックスは,ランタイムにおいて,3Dグラフィックスパイプラインのリアルタイムライティングが行われることはないという。ゲーム中,シーンの明暗変化や閃光などのエフェクト表現で色味が変わることがあるが,それらは,あくまでプログラム的な色操作によるものだそうだ。

 KOFシリーズでは,3Dグラフィックスを採用したKOFとして,すでに「MAXIMUM IMPACT」シリーズがあるため,ナンバリングのKOFシリーズとしては,王道の2Dグラフィックスにこだわり続けたいという思惑があるようだ。

アテナはスカート裾のヒラヒラした動きに注目とのこと
画像集#054のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー


時代を超え,受け継がれる「KOFイズム」


 最後に,KOF XIIIプレイヤーやシリーズのファンに向けてのメッセージをお願いしたので,掲載しておこう。

山本氏:
 開発も一段落し,私自分もゲームセンターなどに出向いて皆さんの対戦を見せてもらっていますが,とにかく対戦が熱く盛り上がっているようで嬉しいです。今後とも2D対戦格闘ゲームとしてのKOFシリーズを盛り上げていかなくては,と身の引き締まる思いがしています。

久木野氏:
 開発チームとしては,これまでにないほど気合いを入れて制作しましたので,とにかく遊び尽くしてくほしいです。今後ともKOFシリーズをよろしくお願いいたします


 ――KOF XIIではグラフィックスのテイストが変わったことに加え,ゲーム性も変わったことで,従来のファンの中には驚いてしまった人達もいたようなのだが,今作KOF XIIIでは,ことゲームプレイに関してはシリーズの伝統を受け継ぐ,スピーディでダイナミックな展開が期待できる。筆者としてもこれまでのKOFシリーズが帰ってきたという手応えがあり,嬉しい限りだ。グラフィックスについてはKOF XIIのテイストを継承しているものの,プレイフィールが従来のテイストになったことで,プレイしていても違和感はまったくない。
 ここ最近身を引いてしまった従来のKOFプレイヤー,またKOFシリーズ自体かなり久しぶりという人も,ぜひ一度本作に触れてほしいと思う。

画像集#012のサムネイル/時代を超え受け継がれる「KOFイズム」とは。西川善司が挑む,AC「THE KING OF FIGHTERS XIII」開発者インタビュー

「THE KING OF FIGHTERS XIII」公式サイト


 
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