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[E3 2014]Wargaming.netという「ブランド」を管理するグローバルブランドディレクターにインタビュー。“あの人”の新作の情報も思わず飛び出す
「World of Tanks」に始まり,「World of Warplanes」「World of Tanks: Xbox 360 Edition」「World of Tanks Blitz」(iOS/Android),「World of Tanks Generals」,そして「World of Warships」と,気がつけば,ラインナップを順調に広げつつあるベラルーシのゲームメーカー,Wargaming.net(以下,Wargaming)。
今年のE3 2014でも会場前にシャーマン戦車を持ち込むと同時に,ショウフロアには例によって巨大なブースを設営し,(多分レプリカだと思うが)T-62を宙吊りにするという派手なディスプレイで来場者の目を集めている。今年は,とくに日本のプレイヤーも注目するWorld of Warshipsの詳しい情報が出てくるのではないかという期待感が高い。
そんな中,Wargamingでグローバルブランドディレクターを務めるAl King氏に話を聞く機会を得た。King氏は,World of Tanksの「ROLL OUT」やWorld of Warshipsの「ACTION STATIONS」,そしてWorld of Warplanesの「GET AIRBORNE」などのコピーを考えた人物で,Wargamingという「ブランド」を主に扱っている。ゲーム業界で約20年というキャリアを持っており,うち10年間は,Electronic Artsに在籍していたとのことだ。
正直な話,こうした偉い人に話を聞くのは面白いのだが,新作や次回作などといった,なんというか広報的な情報はあまり出てこないのが常だ。しかし,最後にとっておきの秘密情報が明かされて,インタビューした我々メディアも驚かされた。
ノリと勢いだけではない,Wargamingのブランド戦略とは
Wargamingというブランドからイメージできることは,「オンライン」「Free-to-Play」,そして「チームバトル」という要素であり,同社のコピーはこれらが直接プレイヤーに届くようにと考えて作られたそうだ。
また,言葉はすべてミリタリーに関連したものになっており,基本的に世界のほとんどの地域で英語バージョンが使われるが,タイや中国など,一部の国では現地語に翻訳されているという。
Wargamingのロゴは,丸い地に2本の矢印が入ったものだが,これは軍事地図などにある部隊の進行を示したもの。2本の矢印が迂回して前方で交わろうとしているのは,戦略家の理想である包囲殲滅戦を示している。では,何を包囲して殲滅するのか。
King氏はボツになったアイデアとして,同じ図柄で,円に緯度と経度が描かれたものがあったことを教えてくれた。まさに,地球を包囲するという姿だが,あまりにも攻撃的すぎるという理由で,なしになったのだそうな。なるほど。
King氏の主要な業務としては,プレイヤーの掘り起こしがある。Wargamingのタイトルをプレイする人々はもちろん,PCとネット環境を持ち,さらにミリタリーに少なからず興味を持っていることが前提になるだろう。King氏らは毎年,上記の条件に当てはまる人達,約1万人を対象にアンケート調査を行っているそうだ。
調査結果から,いわゆるセグメンテーションを行うと6つのカテゴリーに分けられ,そのうち,ゲーマー,ミリタリア(ミリタリーマニア),そして一般の人々が,Wargamingの働きかけるべき潜在的なプレイヤー層として重要になるという。
国や地域によってセグメントの割合は大きく異なるが,日本でも同様の調査を行ったところ,ゲーマーもミリタリアも十分にいることが分かったそうだ。
日本のユーザーで特徴的なのが,「ヤングガンナー」と名付けられた層で,彼らは比較的年齢が低めで,ゲームに親和性が高く,競い合うことが好きという人達だ。なんとなく分かる気がする。
また,「シニアヒストリア」と名付けられた層も重要視すべきだという。これは,軍事史や歴史に興味があり,年齢層は高め。戦略戦術などミリタリーの基となっている部分に興味がある人々である。
Wargamingではとくに「シニアヒストリア」を重要視しているため,スタッフにも多数の軍事専門家や実際に軍事に関わっていた人を用意して,イベントなどでも可能な限り歴史的,軍事的に間違いのないもの,正確なものを追求しているとのことだ。
また,一般の人々というカテゴリーの中で重視されるのが「ソーシャルシニア」である。こちらは,年齢層が高めで,経済的にも余裕のある層だ。「ヤングガンナー」「シニアヒストリア」はもともとゲームに近いので,プレイヤーになってもらいやすい。それに対して「ソーシャルシニア」をプレイヤーにするのは難しいものの,エンターテイメント全般には興味があり,趣味に投資する人が多いので,アプローチする価値があるとのこと。
以上のように分けたカテゴリのうち,各地域で最大3つにターゲットを絞って,プレイヤーを増やしていくことに務めているという。
筆者が知っている限りでは,Wargamingにはゲーム好きでノリのいい人が多いので,勢いでここまで会社が大きくなったような印象を受けていたが,やるべきことはちゃんとやっていたんですね。
以上で,King氏の説明は終了し,ここから質疑応答に入った。
“あの人”が開発中の新作はe-Sports的な作品に!?
潜在的なユーザーに向けて,オンラインでの宣伝活動や,テレビや大きなイベントなどを通じた積極的なPRを,どの地域でも共通して行うことになるという。
また,ブランドイメージとしては,「常に大きく」を心がけている。Wargamingの場合,何をやるにも上から「伝説的なものにしろ」という命令が来るとのことで,いろいろな施策が,大体大きくなるそうだ。さらに,ルーツを忘れないことも大切なので,軍事博物館に寄付をしたりなど,支援活動も行っている。歴史の保存に貢献するのも重要だそうだ。
ちなみに,「ガールズ&パンツァー」とのコラボなど,世界的にもなかなか個性的なプロモーションを行っている雰囲気の東京オフィスだが,その地域に一番詳しいのは,その地域に住んでいる人ということで,プロモーション活動には地域ごとにかなりの柔軟性をもって臨んでいるとのことだ。
続いて,日本でのローンチから10か月が経過したが,日本市場についてどう考えているか,という質問に対しては,数字は悪くないが,判断を下すにはまだ時期が早いと思うとKing氏は答えていた。日本だけでなく,アジア全域を含めた数字はどんどん伸びているので,いずれはロシアのように成長するのではないかという希望もあるそうだ。ロシアの場合も出足は非常に遅く,成長するのに時間がかかったとのこと。
World of Tanksの成功の要因をどう考えるかという問いに対しては,まず同作がニッチなジャンルであったことが大きいとした。なおかつ,戦車しか出ない戦車戦に特化したゲームであり,しかも当時の欧米では珍しかったFree-to-Playタイトルで,さらに高品質だった。こんなに作り込まれているのに,無料でいいのかというほどだったが,これらの要素が合わさって起爆剤になったのではないかとKing氏は分析している。
また,多くの企業は,ゲームが売れ始めたり,いいものができたりした場合,それでいかに稼ぐかを重点的に考えてしまうという。その結果ユーザーが離れて失敗する企業も少なくない。
それに対してWargamingはすべて無料で提供しており,多くのプレイヤーが,こんなに面白いのだから,課金してもいいだろうという気持ちになってくれるところも大きいとのことだ。
最後にe-Sportsについての質問がメディアから飛んだ。「Wargaming.net League」を設立するなど,積極的にe-Sportsを支援している同社だが,現状や将来性についてどう考えているかというわけだ。
これについてKing氏は,自分自身は最近までe-Sportsというものに関わったことがなかったと明かした。初めて見たのは2013年にソウルで行われたイベントで,そこでe-Sportsの熱狂を肌で感じたとのこと。
プレイヤーが集まって賞金をかけて戦い,その戦いを見に大勢の観客が集まり,イベンの背後では裏方の人々がいろいろな準備を行い,司会がプロの実況をする。全体として,ゲームというエンターテイメントが一つ上のレベルに上がったように思え,改めてWargaming.net Leagueの重要性を感じたそうだ。
e-Sports専門の社員を雇用し,予算も増やしたので,大会の賞金も大きく上がるはず。現在はWorld of Tanksが中心だが,World of AirplanesでもWorld of Warshipsでも,プレイヤーが求めるのなら,今後も広げていきたいとKing氏は述べた。
さらに,Chris Taylor(クリス・テイラー)氏が現在開発中の新作もe-Sportsに関わるものだという。おっと,これは聞き捨てならない話。Dungeon Siegeシリーズや,「Supreme Commander」などで知られるテイラー氏率いるGas Powered Gamesを,Wargamingが買収したのは2013年のこと。以来,新作を開発しているという話は聞くものの,詳細はまったく外に出てこなかった。
King氏は「おそらく来年のE3で何か大きな発表ができると思います」と語り,さらにその作品が,e-Sports的な要素を持っているというのだ。しかも,Wargamingのブランドイメージにも合致する内容で,そして,20世紀が舞台ではないという。これ以上のことは「ノーコメントとさせていただきます」となってしまったが,最後にとんでもない話が出てきた。
最後はテイラー氏に持っていかれた感じだが,以上で質疑応答は終了となった。氏の新作が気になる人は,Wargamingという「ブランド」と,Free-to-Play,チームバトルというキーワードを組み合わせつつ,いろいろと妄想してみよう。
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