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メモリクロック引き上げ版「GeForce GTX 1080」「GeForce GTX 1060 6GB」をテスト。ゲーマーはこれらをどう受け止めるべきか
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印刷2017/04/29 00:00

レビュー

従来比で1GHz高いメモリクロックのGTX 1080とGTX 1060 6GBをどう受け取るべきか

MSI
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G
GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G

Text by 宮崎真一


GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G(左),GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G(右)
メーカー:MSI
問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン MSIお客様ご相談窓口 supportjp@msi.com
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G実勢価格:8万6200円前後(※2017年4月29日現在),GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gメーカー実勢価格:4万3000円前後(※2017年4月29日現在)
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 2017年4月20日の記事でお伝えしているとおり,従来よりも1GHz相当高いクロックのメモリチップを組み合わせた新しい「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)および「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB)搭載グラフィックスカードの販売が始まっている。

 4Gamerでは登場に合わせて,まさにこれらを採用するMSI製グラフィックスカード「GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G」「GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G」を入手し,性能速報をお伝え済みだが,ようやく残るテストデータも取れたので,カードの紹介も含め,あらためてテスト結果をお届けしたいと思う。より高いメモリクロックのGTX 1080カードとGTX 1060 6GBカードが持つ性能に何をどれだけ期待できるか,ぜひチェックしてほしい。


GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gは「+なし版」」のマイナーチェンジ


 搭載するGPUとメモリチップの概要紹介と,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GおよびGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gの動作クロック設定に関する話は性能速報記事で済んでいるため,本稿ではカードの概観から入っていこう。

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 まずはGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gからだが,本製品のカード長は実測で約278mm(※突起部除く)。「GeForce GTX 1080 Founders Edition」(以下,GTX 1080 FE)が同267mmなので,それと比べると約11mm長い計算になる。
 また,マザーボードへ差したときの垂直方向にI/Oブラケットから同35mmはみ出しており,8ピン6ピン各1の補助電源がそのはみ出した基板の縁(へり)でさらに垂直方向を向いているため,マザーボードの垂直方向には相当な空間的余裕が必要となる。この点は十分に注意が必要だろう。
 ちなみにここまで述べてきた仕様は,「+なし」の従来製品「GeForce GTX 1080 GAMING X 8G」と同じ。リンク先の記事を見てもらうと分かるように,見た目も瓜二つだ。

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補助電源コネクタは8ピン×1,6ピン×1という構成で,8ピン×1であるGTX 1080 FEと比べると電力供給量の強化が図られている
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外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b(Type A)×1,Dual-Link DVI-D×1で,GTX 1080 FEとまったく同じ

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 GPUクーラーは2スロット占有タイプである「Twin Frozr VI」。見た目が瓜二つなので当然と言えばそれまでだが,100mm径相当のファンを2基採用するこのMSIオリジナルクーラーは,GeForce GTX 1080 GAMING X 8Gが採用するのと同一のものであるように思われる。

基板は表側がTwin Frozr VI,裏側が放熱用兼補強用と思われる金属板でほとんど覆われている
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ブレードの形状を交互に違え,さらにブレード間の隙間も小さくしたTorx Fan 2.0を採用する
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 一般的なエアフローを生む羽と,エッジの傾斜を変えることでエアフローを分散させる羽を交互に配置する「Torx Fan」(トルクスファン)は,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gでも「Torx Fan 2.0」として健在だ。もちろん,GPUコア温度が60℃を下回る低負荷時にはファンを停止する「Zero Frozr」機能もあり,性能速報記事でも紹介した「Gaming APP」からユーザーがZero Frozrの有効/無効を切り換えられるようになっている。なお,工場出荷時設定は有効だった。

Gaming APPから起動できるLED設定ツール
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 GPUクーラー側面にあるMSIロゴと「MSI Dragon」マーク部に埋め込まれたLEDイルミネーションの色と光り方を,Gaming APPから変更できるのも,従来製品と変わらずだ。色は約1677万から,光り方はゆっくり点滅する「呼吸」,早い点滅の「フラッシュ」,2回の点滅を繰り返す「ダブルフラッシュ」,そしてそれらの中からランダムとなる「ランダム」の4種類から選べる点も変わりなしである。

 GPUクーラーの取り外しは自己責任であり,取り外した時点でメーカー保証は受けられなくなる。それを断ったうえで,今回はレビューのために取り外して,GPUクーラーと基板を詳しく見ていこう。

Twin Frozr VIクーラーを取り外したところ
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 先にクーラーの話を済ませておくと,Twin Frozr VIは,8mm径が2本,6mm径が4本で計6本のヒートパイプを用い,GPUの熱を放熱フィン部へ運ぶ設計になっているのが分かる。実のところこの仕様は「+なし」のGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gでも変わっていないので,同じクーラーを引き続き採用している可能性が高そうだ。
 また,基板をほぼ覆い尽くすほど大きな放熱フィン自体も従来製品から変わっていない。クーラーの下ではメモリチップを覆うヒートスプレッダ兼補強板,電源部に対しては放熱フィン付きヒートシンクを採用している点もこれまでどおりである。

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ヒートパイプの構成をはじめ,GPUクーラーの仕様はGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gから変わっていない
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基板の両面をヒートスプレッダ兼補強板とが覆い,冷却効果の向上とたわみ防止に寄与している(と思われる)

 一方の基板だが,そこにあるシルク印刷には「V336 VER:3.0」とあった。これは「+なし」のGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gの基板にあるシルク印刷とまったく同じなので,基板は共通という理解でいいだろう。

基板はGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gと共通。GPU周りがかなりスッキリした印象なのは,もちろん変わらない
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 電源部は見る限り8+2フェーズ。電源部の部材はMSIが独自に定める品質規格「Military Class 4」に準拠したものとされている。

MOSFETの並びから8+2フェーズ構造と推測される電源部。GPU用にはOnSemiconductor製のDual MOSFET「4C86N」を採用していた
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デジタルPWMコントローラはおなじみの「μP9511P」(左)。電流および電圧のモニタリングチップとしてTexas Instrumentsの「INA3221」を搭載するのも確認できた
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GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gは冷却機構の簡略化が入る


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 続いてはGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gだが,ざっくり言ってしまえば,見た目はGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gとほとんど同じだ。なので,外観の違うところだけを挙げてみると,PCI Expressの補助電源コネクタは8ピン×1で,マザーボードに差したとき,実測6mmほどマザーボード寄りに凹んだところでの実装となっている。GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gと比べると,多少は取り回しが容易だろう。
 またGTX 1060 6GBというGPUの仕様上,SLIブリッジコネクタは採用していない。

外観は基本的にGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gと共通ながら,補助電源コネクタ部と,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GでSLIブリッジコネクタがある部分のデザインが異なっている。ちなみにGTX 1060 6GBのリファレンス仕様だと補助電源コネクタは6ピン×1なので,この点は強化されたことになる
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クーラーが2スロット仕様である点や外部出力インタフェースの仕様などはGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gと変わらない。外部出力インタフェースはGTX 1060 6GBのリファレンス仕様とも同じだ
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GPUクーラーを取り外したところ
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 もっともクーラーを外すと,GTX 1080搭載の上位モデルとはかなり異なることが分かる。まず,同じTwin Frozr VIという名称ではあるものの,クーラーが採用するヒートパイプの構成は8mm径×1,6mm径×2という構成に簡略化され,基板上でメモリチップと電源部を覆うパッシブクーラーも,ヒートシンクなしの1枚構成となっている。GTX 1060 6GBクラスであればこの程度で十分という判断なのだろう。

Twin Frozr VIクーラーはGPUのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)に合わせて簡略化(左)。基板側のパッシブクーラ―にもコストダウンの跡が見える(右)
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 基板側の電源部は見る限り5+1フェーズ構成。GPU用とメモリチップ用それぞれ1フェーズ分の空きパターンがあるので,基板設計上はさらなる上位モデルも実現できそうな印象だ。

GPUに合わせて電源部が簡略化されているため,前掲のGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gと比べると,部品点数はかなり減っている
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 その電源部だが,GPU用のMOSFETにはUBIQ Semiconductor製の「QM3816N」,メモリ用にはTexas Instrumentsの「SM7320」をそれぞれ搭載していた。

5+1フェーズの電源部。さらに上位モデル用なのかGPUとメモリ用に1フェーズ分の空きパターンが見られる。なお,デジタルPWMコントローラとモニタリングチップはGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gと同じものを搭載していた
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Founders Edition,そして「+なし」の現行モデルと比較してみる


CUDA SDKに付属する「deviceQueryDrv.exe」を主役の2製品に対して実行した結果。メモリクロック引き上げ版GTX 1080とGTX 1060 6GBに特別な名称は(NVIDIAの内部的にも)与えられていないことが分かる
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 テスト環境のセットアップに入ろう。
 GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gの比較対象には,GTX 1080 FEと,「+なし」モデルであるGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gを用意。GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのテストでも同様に,「GeForce GTX 1060 6GB Founders Edition」(以下,GTX 1060 6GB FE)および「+なし」モデルである「GeForce GTX 1060 GAMING X 6G」と比較することにした。
 性能速報でもお伝えしているとおり,今回の主役となるGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GとGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gは,ともに3つの動作モードを持つため,全モードでテストを実施する。ただしスケジュールの都合から「+なし」モデルの2製品は,工場出荷時設定である「ゲーミング」モードのみでテストを実施するので,この点はご了承を。今回取りあげる各製品の公式クロック情報は以下のとおりとなる。

テストに用いたGTX 1080搭載製品の動作クロック
  • GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G(OC):ベース1709MHz,ブースト1849MHz,メモリ11112MHz相当
  • GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G(ゲーミング):ベース1683MHz,ブースト1823MHz,メモリ11008MHz相当
  • GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G(サイレント):ベース1607MHz,ブースト1747MHz,メモリ11008MHz相当
  • GeForce GTX 1080 GAMING X 8G(ゲーミング):ベース1683MHz,ブースト1822MHz,メモリ10108MHz相当
  • GTX 1080 FE:ベース1607MHz,ブースト1733MHz,メモリ10010MHz相当

テストに用いたGTX 1060 6GB搭載製品の動作クロック
  • GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G(OC):ベース1594MHz,ブースト1810MHz,メモリ9128MHz相当
  • GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G(ゲーミング):ベース1569MHz,ブースト1785MHz,メモリ9028MHz相当
  • GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G(サイレント):ベース1506MHz,ブースト1722MHz,メモリ9028MHz相当
  • GeForce GTX 1060 GAMING X 6G(ゲーミング):ベース1569MHz,ブースト1784MHz,メモリ8008MHz相当
  • GTX 1060 6GB FE:ベース1506MHz,ブースト1708MHz,メモリ8008MHz相当
 テストに用いたグラフィックスドライバは「GeForce 381.65 Driver」となる。NVIDIAからはさらに新しい公式最新版グラフィックスドライバとして「GeForce 381.89 Driver」もリリースされているが,こちらを導入できていないのはひとえにスケジュールの都合だ。
 なお,381.65と381.89の両ドライバはいずれもRelease 381世代なので,性能面にそれほどの影響はないものと考えている。381.89で修正の入った「アイドル状態の駆動電圧が高い問題」の影響はあるが,これはやむを得ないものとして話を進めたい。
 そのほかのテスト環境はのとおりだ。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション19.0準拠。ただし「3DMark」のテストは性能速報記事で済んでいるため,今回は割愛する。
 解像度は,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gのテストにあたっては3840×2560ドットと2560×1440ドット,一方のGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gでは2560×1440ドットと1920×1080ドットの2つをチョイスした。CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,その挙動がテスト状況によって変わる可能性を排除すべく,同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。

 ちなみにここまで説明してきたテスト環境と方法は,4月18日に掲載した「Radeon RX 580」のレビュー記事とまったく同じ。そこで今回,GTX 1060 FEのスコアは,流用できる限り先の記事から流用している。

 最後になるが,MSI製カードはグラフ中に限り「MSI 1080 X+」「MSI 1080 X」「MSI 1060 6GB X+」「MSI 1060 6GB X」と表記し,さらに動作モードはその後ろに丸括弧で加えていることをここでお断りしておきたい。


GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G:メモリクロック引き上げの効果は最大約5%ながら,ほぼ得られないことも


 まずはGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gの性能から見ていこう。
 グラフ1,2は「Far Cry Primal」のテスト結果だが,ゲーミングモード同士で比較すると,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gは,「+なし」のGeForce GTX 1080 GAMING X 8G比で4〜5%程度高いスコアを示している。両製品の間にある違いはほとんどメモリクロックのみと言っていいレベルなので,メモリクロックの約1GHz引き上げがこの違いを生んだということになるだろう。ちなみにGTX 1080 FEに対しては6〜10%程度高いスコアだ。
 GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gの動作モード間で比較すると,OCモードの効果はほとんどないと言わざるを得ない。一方,3DMarkだとPower Limitの影響でGTX 1080 FEよりスコアを落としていたサイレントモードがここではGTX 1080 FEと同等以上に立ち回っており,この点は興味深いところである。

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 続いてグラフ3,4は「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)の結果である。
 ARKでは「Low」プリセットの2560×1440ドットで,CPUのボトルネックが近いためかスコアが頭打ちになりつつある。そこでそれ以外を見ていくと,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GはゲーミングモードでGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gに対して3〜5%程度,GTX 1080 FEに対して6〜8%程度高いスコアを示した。Far Cry Primalとおおむね同じ傾向と言えそうだ。
 GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gにある3つの動作モード間にある違いも,Far Cry Primalのそれと大差ない。

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 Vulkanモードで実行した「DOOM」は,ここまでと異なるスコア傾向が出た(グラフ5,6)。GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GのゲーミングモードはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gと2〜3%程度のスコア差しか付けられていない一方,GTX 1080 FEに対しては描画負荷が高まるほどスコア差を開き,最大では約16%ものギャップが生じている。DOOMにおいてはメモリクロックの引き上げよりもGPUコアクロックのほうがフレームレートに効くというのがよく分かる結果である。

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 グラフ7,8は「Fallout 4」のテスト結果だ。ここでは2560×1440ドットで相対的なCPUボトルネックが発生している気配があるため,4K解像度のテスト結果を見ていくことになるが,ここでもDOOMと同じ傾向というか,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GのゲーミングモードはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gとほとんど変わらないスコアに留まる一方,GTX 1080 FEに対しては約6%高いスコアを示している。
 DOOMとは異なる,Fallout 4はいまとなっては十分に“軽い”タイトルという理由で,ここではGPU性能のほうがスコアを左右しやすくなっているということなのではなかろうか。

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 「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ9,10だが,このクラスのGPUにとって「標準品質(デスクトップPC)」のスコアはあまり意味がなく,実際,スコア差も大してついていないため,より現実的な「最高品質」のスコアを見ていこう。
 すると分かるのは,ゲーミングモードで動作するGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GがGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gに対して1〜3%程度,GTX 1080 FEに対しては9〜10%程度高いスコアを占めていることだ。おおざっぱにまとめると,Far Cry Primalのスコア傾向とFallout 4のスコア傾向の中間,どちらかと言えば後者寄りといったところか。

※グラフ画像をクリックすると平均フレームレートベースのスコアを表示します
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 グラフ11,12はDirectX 12モードで実行した「Forza Horizon 3」のテスト結果だが,2560×1440ドット条件ではスコアが頭打ちとなりつつあるため,3840×2160ドットで比較してみると,ゲーミングモードのGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gと変わらないスコアだ。GTX 1080 FEと比べると8〜9%程度高い数字を出しているものの,ここでもメモリクロックの引き上げに明白なメリットは見出せない。

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GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G:メモリクロック引き上げ効果はここでも数%程度


 続いてはGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gである。グラフ13,14だが,ここでゲーミングモードのGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gは「+なし」のGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gに対して3〜5%程度高いスコアを示した。両製品のGPUクロック設定はほぼ同じなので,この3〜5%程度というのが,約13%メモリクロックを引き上げた効果ということになるだろう。
 対GTX 1060 6GB FEだと,スコアは6〜7%程度高かった。また,OCモードとサイレントモードのスコアは,それぞれゲーミングモードと比べると最大約2%,フレームレートにして1〜2fpsの違いを生んでいる。

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 ARKのテスト結果がグラフ15,16だが,Lowプリセットの1920×1080ドットでは相対的なCPUボトルネックによりスコアが頭打ちになっている。そのためそれ以外を見ていくことになるが,ゲーミングモードのGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GはGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gに対して最大でもスコアは約2%高いだけに留まる。GTX 1060 6GB FEと比べると4〜6%程度高いスコアなので,クロックを全体的に引き上げるメリットはあるのだが,そこからメモリクロックだけ引き上げることのメリットは「なくはない」レベルに留まる印象だ。

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 グラフ17,18はDOOMの結果だが,ゲーミングモードにおけるGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのスコアは対GeForce GTX 1060 GAMING X 6Gで100〜102%程度。GTX 1060 6GB FEとの比較だと約5%高いスコアなので,ここでも「クロック全体を引き上げた効果はあるものの,メモリクロックだけをさらに引き上げたことの効果はそれほど大きくない」結果になっていると言える。

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 Fallout 4のテスト結果がグラフ19,20だ。ここでGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのゲーミングモードと「+なし」のGeForce GTX 1060 GAMING X 6G間でスコアはほぼ横並び。メモリクロックはスコアに影響をまったく与えていない。

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 グラフ21,22はFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果で,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GのゲーミングモードはGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gに対して2〜3%程度高いスコアを示した。メモリクロックが約13%高いことを考えればわずかだが,少なくとも上で示したFallout 4よりは景気の良い数字だ。
 GTX 1060 6GB FEに対しては3〜7%程度高いところにいる。

※グラフ画像をクリックすると平均フレームレートベースのスコアを表示します
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 Forza Horizon 3のテスト結果がグラフ23,24で,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GのゲーミングモードはGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gとほぼ横並び。Fallout 4と同じく,メモリクロック引き上げの効果は得られていない。

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メモリクロック引き上げによる消費電力の増加はごくわずか。Twin Frozr VIの冷却性能と静音性は申し分なし


 さて,クロックアップモデルでは,どうしても消費電力の増大が懸念される。そこで今回も,ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定してみよう。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 まず,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gとその比較対象におけるテスト結果はグラフ25のとおりだ。アイドル時はGTX 1080 FEが若干低いものの大差はなく,横並びと言っていいだろう。
 ではアプリケーション実行時はという話になるが,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GのゲーミングモードはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gとほぼ変わらず,GPUの個体差かどうか,むしろテストによっては低い消費電力を示している。少なくとも,グラフィックスメモリチップの高クロック化に伴うペナルティは大きくないか,無視できるレベルだと言えるだろう。
 GTX 1080 FEと比べると12〜50W増大してしまっているものの,これはPascal世代のGeForce上位モデルに共通する傾向であり,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gだけの特性というわけではない。

 GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GのサイレントモードがGTX 1080 FEから8〜28W低いスコアを示している点は目を惹くところで,ゲーム性能に大差がない割に,Power Limitの効果が出ている点は評価できそうだ。

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 続いて,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gとその比較対象におけるテスト結果がグラフ26となる。こちらもアイドル時はGTX 1060 6GB FEが若干低いものの,全体としては横並び。アプリケーション実行時もGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GとGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gとで消費電力に大差はないという,グラフ25を踏襲した結果となっている。
 なお,こちらのサイレントモードでPower Limitがかかっていないという話は性能速報記事でお伝えしているとおりだが,実際,目立った消費電力の低減はなく,むしろわずかながらGTX 1060 6GB FEより高い。

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 Twin Frozr VIクーラーの冷却性能を確認すべく,GPU温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 1.20.0)からGPU温度を取得することにした。テスト時の室温は24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態でテスト用の机に置いている。GPU温度が低い状態ではファン回転を止める,工場出荷時設定を用いた。

 グラフィックスカードの場合,GPUごとに温度センサーの場所は異なる可能性が高く,また搭載するクーラーも,その制御法も異なるため,横並びの比較はできない。なのであくまでもGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GとGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gの温度がどれくらいかを見るに留めるが,グラフ27,28を見ると,高負荷時における両製品のGPU温度がまったく問題ないレベルにあることが分かる。
 アイドル時にファン回転を止める仕様のため,どうしてもFounders Editionと比べるとアイドル時のGPU温度は高くなるものの,それでもGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gで44℃なのだから,まったく問題ない。とくに,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのアイドル時における30℃台半ばというのは,ファンが停止していることを考えると見事だ。

 なお,横並びの比較に意味はないと言っておいてなんだが,同じクーラーを採用することもあり,「+あり」と「+なし」のMSI製カードでGPU温度に大差がない点は目を惹くところだ。Twin Frozr VIクーラーの能力に「+あり」と「+なし」とで大きな違いはないと見ていいだろう。

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 気になる動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gと,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GはGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gと大差なく,いずれも比較対象となるFounders Editionと比べて明らかに静かだ。定評あるTwin Frozr VIクーラーは十分な静音性を確保できている。


高いクロックに大きな期待は禁物。価格差を見て取捨選択したい


製品ボックス。お馴染みのデザインである
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 以上,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GとGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gをそれぞれチェックしてきた。MSIの「+なし」モデルと比べると,実ゲーム環境においてはメモリクロック引き上げの効果が出たり出なかったりであり,おそらく,確実に効果を得たいのであれば,自己責任でOCモードを上回るGPUコアクロック設定を行うなりなんなりのリスクを取らねばならないだろう。ゲーム用途でそのリスクを取ることはあまりお勧めできないことからすると,両製品とも「性能向上は期待できるが,過度の期待は禁物」という評価になるはずだ。

 問題は価格設定で,2017年4月29日現在の実勢価格で比較すると,以下のような感じになっている。

  • GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G:8万6200円前後
  • GeForce GTX 1080 GAMING X 8G:7万7200〜8万円程度
  • GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G:4万3000円前後
  • GeForce GTX 1060 GAMING X 6G:3万2400〜3万5500円程度

 これを見る限り,「+付き」の2モデルが数%の性能向上に見合った価格かと言うと,少なくとも現時点ではノーだと言わざるを得ないだろう。発売からしばらくして,価格がこなれてくると,「メモリクロックの高いGTX 1080やGTX 1060 6GBも一考の価値あり」と言えるのようになるのではなかろうか。

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