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GeForce GTX 600
  • NVIDIA
  • 発表日:2012/03/22
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「GeForce GTX 650 Ti BOOST」レビュー。1万9800円で市場投入される“GTX 660の弟分”は買いなのか
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印刷2013/03/26 21:00

レビュー

169ドルで市場投入される“GTX 660の弟分”は買いなのか

GeForce GTX 650 Ti BOOST
(GeForce GTX 650 Ti BOOSTリファレンスカード)

Text by 宮崎真一


GTX 650 Ti BOOSTリファレンスカード
画像集#006のサムネイル/「GeForce GTX 650 Ti BOOST」レビュー。1万9800円で市場投入される“GTX 660の弟分”は買いなのか
 日本時間2013年3月26日21:00,NVIDIAはミドルクラス市場向けの新型GPU「GeForce GTX 650 Ti BOOST」(以下,GTX 650 Ti BOOST)を発表した。
 その製品名から想像がつくとおり,既存の「GeForce GTX 650 Ti」(以下,GTX 650 Ti)へ,負荷状況に応じた自動クロックアップ機能「GPU Boost」を追加したという位置づけの製品だ。
 搭載カードの実勢価格が1万円台前半から購入できるGTX 650 Tiと,2万円台前半からとなる「GeForce GTX 660」(※価格はいずれも2013年3月26日現在)。その間に割って入ることになるGTX 650 Tiだが,そこに居場所はあるのだろうか。NVIDIAのリファレンスカードを用いたテストから明らかにしてみたい。


「HD 7850キラー」と位置づけられるGTX 650 Ti BOOST

GPU Boost以上に足回りの強化がポイント


GTX 650 Ti BOOST GPU。ダイ上の刻印は「GK106-240-A1」で,GK106の後ろに続く3桁数字は,GTX 650 Tiより20大きく,GTX 660より160小さい
画像集#013のサムネイル/「GeForce GTX 650 Ti BOOST」レビュー。1万9800円で市場投入される“GTX 660の弟分”は買いなのか
 GeForce GTX 600シリーズのなかで,GeForce GTX 650だけは,これまでGPU Boostが有効にされていなかった。だからこそGTX 650 Ti BOOSTでNVIDIAは型番に「BOOST」を追加し,長い製品名になることを許容したのではないかと思われるが,実際のところ,「GK106」コアをベースとして768基のCUDA Coreを集積するという部分において,GTX 650 Ti BOOSTとGTX 650 Tiの間に違いはない。

 なら,本当に「GTX 650 TiのGPU Boost対応版に過ぎない」のかというと,これがそうでもなかったりする。

GTX 650 Ti BOOSTの主なスペック。3基のメモリコントローラはグラフィックスメモリを容量512MB×3のブロックに分けてフレームバッファ用として用い,残る512MBは,必要に応じて使うような実装になっている。この点もGTX 660と同じなので,詳細はGTX 660のレビュー記事を参照してもらえればと思う
画像集#016のサムネイル/「GeForce GTX 650 Ti BOOST」レビュー。1万9800円で市場投入される“GTX 660の弟分”は買いなのか
 まずは動作クロックだ。GPU Boostの対応に合わせて……かどうか,コアのベースクロックは925MHzから980MHzへと引き上げられ,ブーストクロックとして1033MHzも設定されたが,実のところこれらのクロック値はGTX 660と同じ。また,GTX 650 Ti BOOSTでは,GTX 650 Tiで128bitだったメモリインタフェースが192bitへ拡張され,合わせて8基1パーティションのROPユニットも24基へと増強されているが,これら足回りのスペックもGTX 660とまったく同じなのである。

 つまり,GTX 650 Ti BOOSTというGPUは「GTX 650 TiのGPU Boost対応版」というよりむしろ,「GTX 660からStreaming Multiprocessor eXtreme(SMX)にして1基,CUDA Core数にして192基分を削ったもの」という理解のほうがより正しいわけだ。あるNVIDIAの関係者は「GTX 650 Ti BOOSTはGTX 660のブラザーだ」という表現をしていたが,確かにGTX 660の弟分と見るのが適切かもしれない。

GK106コアのブロック図を基に,「GTX 650 Ti BOOSTにおける可能性」を示したもの。2パターンあって性能が変わらないのかという疑問に対しては,GTX 650 Tiのレビュー記事が回答になるだろう
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 表1は,そんなGTX 650 Ti BOOSTのスペックを,GTX 660とGTX 650 Ti,そして価格帯的に競合となり得る「Radeon HD 7850」(以下,HD 7850)および「Radeon HD 7790」(以下,HD 7790)と比較したものだが,GTX 650 Ti BOOSTとGTX 660の類似性に注目してほしい。

画像集#037のサムネイル/「GeForce GTX 650 Ti BOOST」レビュー。1万9800円で市場投入される“GTX 660の弟分”は買いなのか

GTX 650 Ti BOOSTはGTX 650 Tiと比べて最大40%高速とされる。ちなみにGTX 650 Tiのメーカー想定売価は129ドル
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 ちなみにNVIDIAは,「従来のGTX 650シリーズでは,1920×1080ドット解像度で高いグラフィックス設定を行うと,性能が足りないことがあった」とし,この問題を解決する存在がGTX 650 Ti BOOSTであると位置づけ,同時に,本製品がHD 7850キラーであるともしている。あまりにも発表がHD 7790と近いため,「HD 7790対抗ではないか」と思った人は多いのではないかと思われるが――というか,筆者も最初はそう思っていた――もう少し上のラインを狙うことになるようだ。
 もっともNVIDIAは,北米市場における搭載グラフィックスカードの想定売価が,グラフィックスメモリ2GB版で169ドル,1GB版で149ドルになるという見込みも示していた。グラフィックスメモリ1GB版の想定売価はHD 7790のそれとほぼ同じなので,HD 7790も十分に意識しての市場投入ではあるのだろう。


基板から大きくはみ出たクーラーを搭載

GPU Boostでは最大1084MHzへの到達を確認


カード長は実測241mm(※突起部含まず)
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 冒頭でも紹介したとおり,今回入手したGTX 650 Ti BOOSTはNVIDIAのリファレンスカードである。カード長は実測241mm(※突起部含まず)で,これもGTX 660のリファレンスサイズと同じだ。
 GTX 650 Tiのリファレンスカードだとカード長は同143.5mmなので,10cm弱も長くなってしまっているが,これはGPUクーラーがカード後方へ大きくせり出しているためである。「GeForce GTX 670」のリファレンスクーラーと同形状だが,ともあれ,基板自体の長さは同175mmとコンパクトなので,カードメーカー各社から,小型サイズの製品が登場する可能性はあるだろう。

 なお,従来のGeForce GTX 650シリーズがSLI非対応だったのに対し,SLIブリッジコネクタが用意されて2-way SLIに対応したのも,GTX 650 Ti BOOSTにおいては大きな特徴ということになる。

GTX 650 Ti BOOSTリファレンスカード。GPUクーラーはカードの後方へ大きくせり出している
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GPUクーラーを取り外したところ
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 ちなみにこのGPUクーラー,70mm角相当のブロワーファンを搭載し,カード前方へ風を送るというシンプルな構造だ。カバーを取り外してみるとよく分かるのだが,ヒートシンクが取り付けられているのはGPUだけで,電源部やメモリチップに,これといった冷却機構は設けられていない。

 カバーを外したついでにGPU用のヒートシンクも外してみると,電源周りは4+1フェーズ構成であることを確認できる。GTX 650 Tiのリファレンスカードだと2+1フェーズ構成だったので,電源周りはかなり強化されている印象だ。
 なお,前段でグラフィックスメモリ容量は2GBか1GBだと紹介したが,リファレンスカードはSamsung Electronics製のGDDR5「K4G20325FD-FC03」(2Gbit,6Gbps品)をカードの両面に4枚ずつ搭載することで容量2GBを実現していた。

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電源部は見る限り4+1フェーズ構成
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メモリチップは計8枚で容量2GBとなる

Precision XからGPU Boostの挙動を追ったところ。なお,(当たり前だが)「GeForce GTX TITAN」用の機能となる「Temperature Target」と「Display Overclocking」は利用不可だった。電圧変更用の「OverVoltage」は利用できる
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 ここで,GTX 650 Ti BOOSTにおけるGPU Boostの挙動を確認しておこう。1033MHzというブーストクロックはあくまでも目安でしかないため,後述するテスト環境を用い,EVGA製のオーバークロックツール「Precision X」(Version 4.0.0)でコアクロックを追ってみたところ,今回は最大1084MHzまで上がることを確認できた。GTX 660のレビュー時に使ったASUSTeK Computer製カード「GTX660-DC2T-2GD5」でも最大値は1084MHzだったので,偶然の一致を見たわけだが,同じGK106コアなので,概ねこのあたりまでは上がるということなのだろう。

 オーバークロック時にキモとなるPower Targetの上限は110%だったが,これがPCI Expressスロットと6ピンの補助電源コネクタ2基とで供給可能な電力容量(75W+75W)の上限だとすれば,100%は136Wということになる。


上位&下位モデルに加えてHD 7850やHD 7790とも比較

テストに用いたドライバは314.21


 では,テスト環境の構築に話を移そう。今回,利用したテスト環境は表2のとおりで,比較対象となるGPUは,表1でその名を挙げたものとなる。
 このうち,GTX 650 Ti搭載カードとして用意したPalit Microsystems製「NE5X65T01301-1071F」と,HD 7790搭載カードとして用意したSapphire Technology製「SAPPHIRE HD7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION」は,いずれもメーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップ品だ。そのため,前者はPrecision Xから,後者はドライバソフトウェアである「Catalyst Control Center」から,それぞれリファレンス相当にまでクロックを引き下げた状態でテストを行うことにした。

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NVIDIAコントロールパネルから「システム情報」を開いたところ
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 GeForceのテストに用いているドライバは,NVIDIAから全世界のレビュワーに配布された「GeForce 314.21 Driver」だが,これには少し説明が必要だろう。
 3月18日の記事でお伝えしているとおり,NVIDIAが一般に公開している314.21ドライバは公式β版だが,この314.21β版ドライバは当然のことながらGTX 650 Ti BOOSTをサポートしていない。一方,GeForce Driverは,バージョン番号が同じであれば,アプリケーションに向けた最適化やバグフィックスの内容は同じとされているので,つまりレビュワー向けのGeForce 314.21 Driverというのは,「314.21βドライバをGTX 650 Ti BOOSTへ対応させたもの」ということになるわけだ。
 GTX 650 Ti BOOST対応のドライバとしては,北米時間3月25日に公開された公式最新版「GeForce 314.22 Driver」もあるが,こちらを使っていないのは,単純にテストスケジュールの都合によるものである。

 なお,HD 7790のテストには,AMDから配布された「12.101.2.1-130313a-154550E-ATI」,HD 7850には「Catalyst 13.3 Beta2」を用いる。HD 7850に対応した最新版ドライバは「Catalyst 13.3 Beta3」だが,Beta3ドライバの変更点はOpenGL周りの変更だけなので,本稿で用いるテストの場合,大勢に影響ないはずだ。

外部出力インタフェースはDual-Link DVI-D,Dual-Link DVI-I,DisplayPort,HDMI各1
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 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション13.1準拠。加えて,新世代「3DMark」から,DirectX 11ベンチマークとなる「Fire Strike」と,その高負荷版となる「Extreme」プリセットとを2回実行し,いずれもテスト結果の高いほうをスコアとして採用する。テストに用いる解像度は,1600×900ドットと1920×1080ドットの2つだ。
 なお,テストにあたっては,自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」の効果に違いが生じるのを防ぐため,「Core i7-3970X Extreme Edition/3.5GHz」の同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。

 ちなみにここまでのテスト条件は,HD 7790のレビュー記事とまったく同じ。そのため今回,GTX 650 TiとHD 7850,HD 7790のスコアは同記事から流用するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。


GTX 660とGTX 650 Tiの中間に収まる性能

HD 7850とはまずまずいい勝負


 テスト結果の考察に入ろう。グラフ1は「3DMark 11」(Version 1.0.4)から,「Performance」と「Extreme」の両プリセットにおける総合スコアをまとめたものだ。
 GTX 650 Ti BOOSTの示した値は,GTX 660の86〜87%程度,GTX 650 Tiの121〜128%程度なので,ほぼ順当に中間のところへ収まってきたと評していいだろう。

 競合製品との比較では,直接のライバルとなるHD 7850に対し,Performanceプリセットで約92%,Extremeプリセットで約107%のスコアを示した。メモリインタフェースではHD 7850の256bitに対して192bitと後れを取り,メモリバス帯域幅でも若干置いて行かれているGTX 650 Ti BOOSTだけに,3DMark 11のExtremeプリセットでHD 7850より上のスコアを出している理由は,正直なところよく分からない。GTX 650 Tiでボトルネックとなっていた足回りの制限が外れたことで,素直にスコアを伸ばせるようになったのかもしれない。

※グラフ画像をクリックすると「Extreme」プリセットのスコア順で並び替えたグラフを表示します
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 続いてグラフ2は3DMark(Version 1.0.0)の結果だ。HD 7790のレビュー時に指摘したとおり,GTX 650 TiはExtremeプリセットでスコアを大きく落とすため,それ以外を見ていくが,GTX 650 Ti BOOSTは,GTX 660比で87〜88%,GTX 650 Ti比で約129%のスコアを示しており,3DMark 11と変わらない傾向を示した。

 最新世代の高負荷なベンチマークテストということで,グラフィックスメモリ周りの負荷は非常に高くなっているが,実際,Extremeプリセットで,128bitメモリインタフェースのHD 7790に対して約64%という大差をつけている点も押さえておきたいところだ。現状の3DMarkはRadeonが優勢ということもあって,HD 7850にまったく歯が立たない点も指摘はしておく必要があるとも感じるが。

※グラフ画像をクリックするとFire Strikeのスコア順で並び替えたグラフを表示します
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 グラフ3,4は,描画負荷を高く設定した「Far Cry 3」でのテスト結果だ。GTX 660とGTX 650 Tiの間にGTX 650 Ti BOOSTが入るという点では3Dベンチマークソフトと変わらない結果だが,ここでは「標準設定」時に22〜23%程度となるGTX 650 Ti BOOSTとGTX 650 Tiのスコア差が,「高負荷設定」だと33〜34%程度まで開いた。GTX 650 Ti BOOSTにおける足回りの強化が如実に違いとして出た結果といえるだろう。
 HD 7850との関係は3DMark 11と同じ。高負荷設定では最大で約17%のスコア差をつけている。

※いずれもグラフ画像をクリックすると1920×1080ドット解像度のスコア順で並び替えたグラフを表示します。以下グラフ14まで同
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 「Battlefield 3」(以下,BF3)のテスト結果も,Far Cry 3のそれを踏襲するものとなった。グラフ5,6を見ると,GTX 650 Ti BOOSTはGTX 660とGTX 650 Tiの中間に入り,高負荷設定でGTX 650 Tiとのスコア差を広げている。HD 7850に対しては,ほぼ互角の勝負に持ち込んだ。

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 古い世代のゲームエンジンを前にしたときの挙動を見るため採用している「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)の結果がグラフ7,8で,ここでもGeForce勢におけるGTX 650 Ti BOOSTの立ち位置は変わらず。シンプルにテクチャフィルタリング性能が問われることもあって,GTX 660には歯が立たず,HD 7850からも置いて行かれているが,一方でGTX 650 TiやHD 7790には格の違いを見せつけている。

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 グラフ9,10は,「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)のスコアをまとめたものだ。
 Skyrimでは公式の高解像度テクスチャパックを導入することでグラフィックスメモリ負荷を高めているため,GTX 650 Tiのように,メモリインタフェースが128bitのGPUだと,とくに「Ultra設定」で苦しくなっていく。だが,192bitメモリインタフェースの採用など,足回りが強化されたGTX 650 Ti BOOSTは,高負荷設定でもそれほど劇的にはスコアを落とさない。Ultra設定の1920×1080ドット解像度で平均58.3fpsを出し,HD 7850すら上回っているのは注目に値しよう。

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 「Sid Meier's Civilization V」(以下,Civ 5)のテスト結果がグラフ11,12となる。Civ5のテストには,3D性能だけでなくGPGPU性能も問われる「Leader Benchmark」を採用していることもあって,こちらもメモリ周りの負荷が高くなっているのだが,そうなると,製品の位置づけの割にメモリ周りのスペックが高いGTX 650 Ti BOOSTは,上位陣と比べてもまずまずのところで戦っていられる。大きくスコアを落とすGTX 650 Tiとのスコア差は31〜45%程度と歴然だ。

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 3D性能検証で最後となるのがグラフ13,14の「F1 2012」だ。本作で採用されているゲームエンジン「EGO ENGINE」は,Radeonへ最適化されているにもかかわらず,実際にはGeForceが優勢という傾向にあるのだが,果たしてGTX 650 Ti BOOSTはHD 7850に対して11〜22%程度も高いスコアを示した。
 一方,GeForce間の比較だと,GTX 650 Ti BOOSTはGTX 660の87〜91%程度,GTX 650 Tiの114〜127%程度で,ここまでの傾向を踏襲した結果となっている。

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消費電力はGTX 650 Tiからかなり増加

134WというTDPに見合ったものに


 GTX 650 Ti BOOSTのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は134W。これは140WのGTX 660よりわずかに低いレベルで,GTX 650 Tiの110Wと比べると24Wも高い。そのため,GeForce GTX 650シリーズのGPUとしては消費電力の高さが懸念されるが,実際にはどれくらいなのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力計測を行ってみよう。

 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定。そのうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果をまとめたものがグラフ15で,アプリケーション実行時のスコアは,GTX 650 Tiから28〜58Wも増えてしまった。GTX 660と比べると1〜28W低く,またHD 7850とは同等か若干低いレベルといったところなので,GPU Boostと,高い動作クロックのグラフィックスメモリを採用することが,消費電力に与えるインパクトは相応にあるということなのだろう。
 なお,アイドル時の消費電力はほぼ同じレベル。ただし,HD 7850とHD 7790は,無操作状態が長く続いたときにディスプレイ出力を無効化するよう設定しておくと,「AMD ZeroCore Power Technology」が機能し,それぞれ86Wと87Wにまで低下したので,本機能まで考慮に入れると,Radeonのほうがアイドル時の消費電力は低いということになる。

※そのまま掲載すると縦に長くなりすぎるため,簡略版を掲載しました。グラフ画像をクリックすると完全版を表示します
画像集#035のサムネイル/「GeForce GTX 650 Ti BOOST」レビュー。1万9800円で市場投入される“GTX 660の弟分”は買いなのか

 最後にグラフ16は,3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.9)でGPU温度を取得した結果だ。テストは温度24℃の室内で,システムをPCケースに組み込まず,バラックの状態で行っている。
 GPUクーラーが異なるうえ,GPU温度の取得法はGPUごと,カードごとに異なるため,横並びの評価には適していない。そのため結果はあくまで参考程度に捉えてもらいたいが,GTX 650 Ti BOOSTの温度は,アイドル時,高負荷時ともミドルクラスGPUとしてはやや高めながら,概ね問題のないレベルにまとまっていると述べていいのではなかろうか。

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 なお,GTX 650 Ti BOOSTリファレンスカードが搭載するGPUクーラーは,毎度毎度筆者の主観で恐縮だが,「静音とまでは言わないものの,少なくともうるさくはないレベル」だった。


「HD 7850キラー」とまでは言い切れないが

フルHDゲームプレイ用の廉価GPUとして価値はある


NVIDIAが示した,HD 7850との性能比較グラフ
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 数日前に掲載したレビュー記事の焼き直し感が強いまとめになるが,GTX 650 Ti BOOSTの実力は,GTX 660とGTX 650 Tiのほぼ中間という,たいへん順当な結果となった。HD 7850とはいい勝負といったところなので,「強力なHD 7850キラー」とまでは言えないものの,対抗モデルとしては十分な性能を持っている印象だ。
 性能面に関しては,192bitメモリインタフェース,そして6GHz相当のメモリクロックがもたらす「高い描画条件下での(相対的な)強さ」を,テスト中に各所で感じられたことも述べておきたい。

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 冒頭でもざっくり紹介したが,円安の進行もあって,GTX 650 Tiカードは1万4000〜1万8000円程度,GTX 660カードは2万2000〜2万6000円程度の実勢価格になっている(※価格は2013年3月26日現在)。つまり,GTX 650 Ti Boostは,両製品の間にある狭い場所へ,グラフィックスメモリ2GBモデルと1GBモデルで20ドルという価格差を持ったまま投入されることになるわけである。
 NVIDIA Japanは,日本におけるグラフィックスメモリ2GB版GTX 650 Ti BOOST搭載カードの想定売価を1万9800円(税込)としているが,GeForceだけでなく競合のHD 7850やHD 7790も存在し,さらに,カードメーカーレベルのクロックアップモデルなども投入されるわけで,1万円台半ばくらいから2万円台前半くらいは,今後,相当にカオスな状況になりそうな気配だ。選択肢が増えるメリットと,性能の違いを把握するのが難しくなるデメリットが共存する価格帯になったとも言えるだろう。

 ただ個人的には,GTX 650 Tiのレビュー時に「納得できない」としたGPU BoostやSLIにGTX 650 Ti BOOSTが対応したことを歓迎したいとも思う。その意味で本製品は,ようやっと登場した「GeForce GTX 600シリーズ,真の最廉価モデル」と言えるかもしれない。

NVIDIAのGeForce製品情報ページ

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