「メタルギア」のアートディレクター，新川洋司氏が「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」のラスボスをデザイン。その経緯と今後の展望を，新川氏と「武装神姫」の鳥山亮介プロデューサーに聞く

次のデザインは妊婦型!?

どうなる今後の武装神姫

4Gamer：
　今後も新川さんは武装神姫の制作に参加されるんでしょうか？

新川氏：
　評判次第ですかねぇ。

鳥山氏：
　僕はこれからも新川ルームに遊びに行きますよ！　だって，彼の机は面白すぎますから（笑）。

4Gamer：
　面白い……とは？

新川氏：
　色々と置いてあるんですよ。何度かメディアでも公開されてますよね。

鳥山氏：
　僕の好きな物だらけなんですよ（笑）。

4Gamer：
　やはりミリタリー系のプラモデルが多いんですか？

新川氏：
　ガンダムとかもあります。そういえば最初，鳥山に“ガンダム型”の神姫も提案してみたんですが……。

鳥山氏：
　……彼がこうやってボソッと提案する時って，本気なのか冗談なのか分かり難いんですよ。いきなりガンダム型の神姫を描き上げて，「コレ以外は認めない！」とか言い出したらどうしようかと（笑）。
　とはいえ，もし新川が何の制約もなく自由に神姫をデザインしたなら，何型の神姫を作るのかは気になるところですね。

新川氏：
　おなかに赤ちゃん型のメカを仕込んだ，“妊婦型神姫”を作りたいですね。

4Gamer：
　なんですって!?

鳥山氏：
　それ前々から言ってるけど相当ハードですよね（笑）。というか，この通りイラストはすでにあるという……。

新川氏：
　単純にギミックとして面白いかなと。お腹がパカッと開いて，中から子供が出てきたら立体パズルみたいで楽しいじゃないですか。

4Gamer：
　ついに神姫が妊娠する時代がやってきたか……。

鳥山氏：
　プロデューサーとして認めづらいですねぇ（笑）。だって，プレイヤーの機体として使えと言われても無理でしょう！

4Gamer：
　で，では妊婦型以外で新しい神姫を作るとしたら？

新川氏：
　ゲームとオモチャでは，作り方が変わってきますからね。もし次があるとしたら，もっと組み替えを楽しめるオモチャ寄りの神姫を作りたいですね。

鳥山氏：
　確かに絵の見栄えと実際に遊んだときの充実感というのは別物ですからね。両立できればそれが一番良いのですが，バランスを上手く考える必要があります。

4Gamer：
　そのほかに，何か構想などはありますか？

鳥山氏：
　スプリングを使って，腕飛ばしちゃおうか？　もしくは火花がバチバチ散る仕掛けとか，昔ながらのオモチャみたいなネタは面白いかも（笑）。

新川氏：
　僕はボイス機能を付けたいですね。でも，これが実はコスト的に難しくて……極小のスピーカーを内部に設置するとなると，なかなかの手間ですし。音質もなかなか良いのがないですから。

4Gamer：
　しかしこういったお話を聞いていると，やはり武装神姫がターゲットとして想定している年齢層は少々高めですよね。子供向けに作ろうという意志が見えないというか。

鳥山氏：
　そうですね。だって，小学生くらいの男子って見た目が女の子の神姫を見て「カッコいい！」とは思わないじゃないですか。

4Gamer：
　小学校くらいの頃って，得てしてそんな感じですよね。

鳥山氏：
　“こういうの”が分かってくるのって，順調に行けば中学生くらいからですよね？

新川氏：
　順調にこじらせ始める時期です（笑）。

4Gamer：
　「これはこれで……」と思い始める瞬間があるんですよね。

鳥山氏：
　中学生くらいの時期に好きになったものが一生好きなものになるって，よく言うじゃないですか。僕らもその時期に，特撮やプラモデルに出会っていますから。

4Gamer：
　お二人が武装神姫のような，いわゆる“メカ少女”に初めて触れたのもその頃なんですか？

鳥山氏：
　確か中学生の頃に読んだホビー誌の投稿ページで目にしたのが最初ですね。

新川氏：
　僕も同じで，やはりホビー誌ですね。

鳥山氏：
　それ以前は，女性型のロボットなんて“アフロダイA”くらいしかありませんでしたから。「アフロダイA超可愛い！」なんていう人はそうそういないと思いますので，ファンになるのは難しいですよね（笑）。

4Gamer：
　そういうのに萌える方々もいるにはいますけどね（笑）。

鳥山氏：
　その人達もきっと，中学生くらいから目覚めたんでしょうね（笑）。

4Gamer：
　でもそう考えると，“女性型ロボット”がジャンルとして確立している今の時代は面白いですね。

鳥山氏：
　アニメやマンガでも，女性型ロボットは人気ありますよね。とはいっても，普通なら一つの作品の中でキャラクターのバリエーションとして，一人か二人くらいがせいぜいでしょう。
　でも武装神姫は全ヒロインがロボットですから……よくこんなこっ恥ずかしいことを，5年もやってるなと自分でも思います（笑）。

4Gamer：
　好きだからこそ，でしょうか。

鳥山氏：
　それは当然です。でも，ただ自分が好きなものだけを世に出しているというわけでもありません。自分の好きなものがあまり受けなかったり，逆に好みから外れているものが受けたりもしますから，そこは冷静に見ています。
　例えば僕の中では，“神姫は戦ってこそ神姫”であり，ただ萌え要素のみを重視した神姫を作るという発想は無いんです。でも，もしそれを多くの方が望んでいるならば，提供していきますよ。望まれているものと，作りたいもののバランスを上手くとるのが大事ですからね。

4Gamer：
　なるほど……では今後の武装神姫について，夢レベルでも良いので何か展望はありますか？

鳥山氏：
　実際に動くところが見たいですよね。今のテクノロジーで，このサイズのロボットを作るのは難しいですが……。いつか異常に細い人工筋肉繊維でも誕生してくれれば，可能なはず！

新川氏：
　技術が追いつけば偉い人が作ってくれますよ，きっと（笑）。

4Gamer：
　夢のあるお話です（笑）。新川さんはいかがでしょうか？

新川氏：
　神姫を自分で作りたいです。もっと分かりやすく言えば，武装神姫のプラモデルが欲しいですね。

鳥山氏：
　ちなみにプラモデルとアクションフィギュアって，ユーザー層が重なっているように見えて，実はそうでもないんですよ。

4Gamer：
　そうなんですか？

鳥山氏：
　例えば“ジェフティ”のアクションフィギュアが発売され，プラモデルも発売予定ですが，データを見るとユーザー層があまり重なっていないんです。

4Gamer：
　なるほど。確かに完成品に対してプラモデルは自分で組み上げることに喜びを見い出せるか否か……という部分はありますよね。

鳥山氏：
　もちろん，今後そういった要望にもどうやって応えていくかは考えなければいけないんですけどね。

4Gamer：
　武装神姫の愛され方を見ていると，武装させるだけでなく，ミニチュアのちゃぶ台や湯呑みと組み合わせて生活空間を作るなどして遊んでいる人などもいますよね。こういう遊ばれ方は，プロデューサーとして想定していたものでしょうか？

鳥山氏：
　ある程度は，ですけどね。きっと，男の子も着せ替え遊びがしたいんですよ。

新川氏：
　僕は娘とよくやりますよ（笑）。

4Gamer：
　着せ替え遊びですか？

鳥山氏：
　そういえば新川と初めて会った時に“ストラーフ”と“アーンヴァル”を渡したんですが，「これ，娘が食べちゃうかも」って言われたのを思い出しました（笑）。

4Gamer：
　リアルぺろぺろ（笑）。でも男は基本的に凝り性ですからね，着せ替え……カスタマイズの部分で夢中になる要素が武装神姫には満載ですから。

鳥山氏：
　色々な方向性の楽しみ方がありますからね。

新川氏：
　武装神姫はアクションフィギュアの中でも少し特殊なんでしょうね。プラモデルとフィギュアの中間というか，プラモデルより手軽で，フィギュアより遊び甲斐があるんです。

4Gamer：
　“素体”が販売されているという部分では，ドールに近い魅力も感じます。

鳥山氏：
　確かに，そういった側面もあると思います。作るのが最も難しかったのが，素体でした。あの小さな体の中にどれだけ可動部分を作るか，とにかく苦労しましたね。神姫って腕一つをとっても，凄く細いんですよ。

4Gamer：
　よくあそこまで小さくできたなとは思いますね。

鳥山氏：
　プラモデルだと，ちょっとしたことでポッキリ折れてしまう細さです。なので，神姫をプラモデルにするなら，少し素体を大きくしなきゃいけないでしょうね。

新川氏：
　素体そのものが大きくなって，例えば30cmくらいになると，ちょっと雰囲気変わっちゃいますね。

4Gamer：
　そうなると，もう違うコンテンツですね（笑）。

鳥山氏：
　しかし細い部分の強度を考慮しなくていい分，逆に作りやすいかもしれません。より細かなデザインを施せるようになりますし，MMS素体の出来には自信があるのでそういった展開もアリかもしれませんね。

新川氏：
　となると，プラモデルで言うところの“X分の1”スケールが“X倍スケール”になるわけですね（笑）。

4Gamer：
　ゲームでも，巨大な神姫と戦うというのは楽しいかも知れません。

鳥山氏：
　それはアリですね。ラスボスの神姫が巨大なパワードスーツに乗っていて，腕や足から破壊していくような。……まさにメタルギアですが（笑）。

4Gamer：
　妄想は膨らむばかりですねぇ。
　それでは最後に，これからジャスティス型に挑むマスター達に向けてメッセージをお願いします。

鳥山氏：
　これから戦う人には「投げ出さないで！　頑張って！」という言葉を贈ります。一応クリアできるように作ってありますので（笑）。

新川氏：
　僕は特別に声優ファンというわけではありませんが，声を早く聞いてほしいです。そして僕も声を聞きたいです。あと，ラストバトルの演出はかなり気合が入っているみたいなので，そこをぜひとも見ていただきたいですね。

4Gamer：
　ありがとうございました！


　鳥山氏と新川氏の趣味繋がりで実現したと言っても過言ではない今回のプロジェクト。インタビューでは様々な話を聞くことができたが，なかでも新川氏が武装神姫シリーズの展開初期から“俺神姫”を描いていたというエピソードと，“妊婦型神姫”の構想には非常に驚かされた。
　また，稀有な魅力を持つ武装神姫というコンテンツの可能性についても話が広がり，ファンにとっては興味深いインタビューになっていたたと思う。
　今後も新川氏が武装神姫に関わっていく可能性は十分にありそうなので，その点にも期待したいところだ。……個人的にだが，妊婦型神姫はぜひとも実現していただきたい。

「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」公式サイト